第弐拾参話



「私は、どうすれば良いんだろう?」

ミサトは煎餅布団の上で自らの手を眺めながら呟いた。
傍らには加持が寝息を立てている。
ミサトの掲げた手の先が淡くオレンジ色に輝く。

壁と言う程、強固な物では無い。
ただ、こうやって暗がりで見ると周りの空気がオレンジ色に浮かび上がる程度だ。
しかし、それが何なのか、ミサトには解りすぎる程解っている。

寝返りをうつ加持。
ミサトは加持の背中から抱付くようにして再び眠りについた。



「以上がこれまでの使徒戦並びに人類補完計画の報告です」

暗い会議室で、ナンバーリングだけのモノリスが居並ぶ空間に、ユイ、キョウコ、ナオコの三人だけが椅子に座って報告していた。
三人の前には机があり、端末と資料が広げられている。

『もはや修正の余地は無いと言うのか』

「修正どころか、初手から大きな勘違いと言う事です。その尻拭いのためにエヴァが建造された。余りにも大きな代償でしたが、なんとか残る使徒も2体と言うところまで漕ぎ着けました」
「人類補完計画は、全くの誤解。人類は疎か全生命体を巻き込む集団自殺以外のなにものでもありませんわ」

ナオコとキョウコの言葉に沈黙が流れる。
会議室にはモノリスしか映って居ないため老人達がどのような顔をしているのかは、解らない。

『人類補完計画は、君達の協力が無いために既に頓挫している』

「あら?協力してますわよ。ダミーシステムも開発致しましたし、人類補完計画についてもこのようにちゃんと報告しているではありませんか」

『しかし、その内容は常に懐疑的なものでしかなかった』
『賛同しているとは思えない内容ばかりであった』

「それは仕方ありませんわ。調査を進めれば進める程、その内容は人類を補完するものでは無く滅亡させるものでしかないのですから」

『元々反対しているから、そのような報告を上げるのではないのかね』
『止さぬか。解った。報告ご苦労であった』

ブンッと言う音と共にモノリスは姿を消していく。

「本当に解っているのかしら?」
「怪しい物だわ」

「何れにせよ、これでこの報告書は表に出して問題ないわ」
「そうね、特に口止めされなかったし」

これが3人の本当の思惑であった。
この3人も元から老人達が簡単に諦めるとは思っていない。
しかし、これまで再三に渡り報告してきた事は人類補完計画の中止を促す物であり、今回は完璧に否定した物であったのだ。

そして、この事実をいち早く国連や日本政府に流すために今回の報告は行われたのである。
老人達に報告していない事を流すと、それは漏洩になるが、既に報告したことであれば、開示となるだけだからである。
勿論、口止めされなければであるが、老人達はそんな事を釘刺す気力もない程打ち拉がれていたと見える。



『これはまずいのでは無いか?』
『ふん、所詮、黄色い猿の浅知恵、我らの崇高な志は理解出来んのだよ』
『左様、我らが神への階梯を登る事に嫉妬した報告だよ。これは』

『NERV、我らゼーレの実行機関として結成されし組織』
『我らのシナリオを実践させるために用意されたもの』

『だが、今は一個人の占有機関と成り果てている』
『さよう、我らの手に取り戻さねばならん』
『約束の日の前に』
『NERVとエヴァシリーズを本来の姿にしておかねばならん』

『しかし、元々人類補完計画もユイ博士の裏死海文書の解読によるもの。この報告も無視する訳にはいかん』

『ならば今更中止すると言うのか?』
『エヴァシリーズの製造に着手してしまった今となっては、中止は多大な損失となる』
『かと言って、失敗すると解っているものに金を掛けるのは愚行だ』

『この報告を信じると申されるのか?』
『いや、全ての情報を以てシナリオを修正する』

『ならば、全ての情報を手に入れる必要がある』
『そして事実を知る者が必要だ』



「ごめんなさいね。アスカちゃん」
「だぁいじょうぶだってママ。特に身体に異常は無いそうだし、なんと言っても綾波先輩に助け出して貰えたんだし。これってアクション映画の王道よね!危機的状況のヒロインを主役が助け出す。その後に芽生える愛」

アスカは、異常にテンションが上がっている。
それが心配さすまいと言う強がりであるのは、キョウコには充分解っていた。

「まぁアスカを攫った奴等はコテンパンに叩き潰してあげたから安心して良いわよ」
そう言いながら入ってきたのはミサトである。

「ミサトなら皆殺しにしそうね」
「ちゃ、ちゃんと捕まえたわよ?!」
アスカの突っ込みに眼が泳いでいるミサト。

そんなミサトの姿にアスカは吹き出し、ミサトも膨れていたが、その顔はにこやかである。
アスカ、キョウコ、そしてミサトが吹き出し、笑いで病室が包まれた時に警報が鳴り響いた。

「敵襲?」

頷き合うミサトとキョウコ。

「アスカちゃん、ゆっくり休んでいてね」
キョウコの言葉にアスカはコクリと頷く。

「だぁいじょうぶよ。使徒ならレイ君がちゃっちゃとやっつけてくれるわ」
「うん、綾波先輩に宜しく言っておいて」
アスカの言葉に微笑みながら頷くとミサトを親指をぐいっと突き出し、病室を後にした。



「状況は?!」
発令所に飛び込んで来たミサトは、マコトの元へ行くといきなり状況の確認を行う。

「膠着状態が続いています」
「パターン青からオレンジへ周期的に変化しています」
いち早く答えたのは、マコトとシゲルであった。

「どういうこと?」
しかし、ミサトにはその内容は不可解であった。
再度疑問符を投げかけるミサト。

「MAGIは回答不能を提示しています」
「答えを導くにはデータ不足ですねぇ」 ミサトの疑問に答えるようにマヤとマコトが答える。

「ただあの形が固定形態でないことは確かだわ」
そう呟いたリツコの視線には、大型スクリーンに映し出される使徒の姿。
螺旋状の帯に見える光の輪が回転を続けている。

「レイ君達は?」
「出撃準備完了しています」

「初号機、零号機、参号機発進、地上直接迎撃位置へ」

『目標接近、強羅絶対防衛線を通過』
『目標は大涌谷上空にて滞空、定点回転を続けて居ます』

「目標のATフィールドは依然健在」

「先に手は出せないか・・・レイ君!暫く様子を見るわよ」
「・・・いえ、来る」
ミサトの言葉に答えたのはレイであった。

レイの言葉と共に使徒がその姿を変え、1本の槍のように零号機を目指す。

「レイちゃん!応戦して!」
「駄目です間に合いません!」
ミサトの言葉にマコトが叫ぶ。

零号機の咄嗟に張ったATフィールドを難なく突き破り接触する使徒。
零号機は、使徒を掴みライフルを撃ち込むが効果はない。

『レイ!』

初号機が、零号機の元へと急ぐ。

「目標、零号機と物理的接触」
「零号機のATフィールドは?」

「展開中、しかし使徒に侵食されています」
「使徒が積極的に一次的接触を試みているの?零号機と?」
リツコは使徒の行動が理解できなかった。
いや、今までと違う使徒の攻撃方法に驚いているのだろう。

「レイ君!試作品だけども槍のコピーを出すわ」
シンジに声を掛けたのはナオコであった。

『了解!カヲル君!受取って』
『了解したよ』

「32番よ!」

初号機は、エヴァ射出口から射出された武器は参号機に任せ、零号機の元へと向かう。

「危険です、零号機の生体部品が犯されて行きます」

使徒の反対側を掴み、手が侵食されるのも厭わず使徒を引っ張る初号機。
そこに駆付けた参号機が使徒に攻撃を加える。
レイの声で悲鳴を上げる使徒。
カヲルは攻撃を躊躇する。

「目標、更に侵食!」
「危険ね、既に5%以上が生体融合されている」
リツコの呟きに唇を噛み締めるミサト。

「レイ君!レイちゃんを助けて!」

零号機の中では、侵食した使徒がレイとの接触を試みていた。
使徒の侵食に伴い、ミミズ腫れの様なものがレイの身体に広がっている。
それがプラグスーツの上からでも見て取れた。

「誰?私?EVA?・・いえ、私以外の誰かを感じる・・あなた誰?使徒?・・私たちが使徒と呼んでるヒト・・」
「私と一つにならない?」

「いえ、私は私、あなたじゃないわ」
「そ、でもだめ、もう遅いわ・・・私の心をあなたにも分けてあげる・・この気持ち、あなたにも分けてあげる・・イタイでしょ?ほら、 心がイタイでしょ?」

「いたい・・いえ違うわ・・さびしい・・そう寂しいのね・・」
「サビシイ?・・分からないわ・・」

「一人が嫌なんでしょ?・・・私たちは沢山いるのに・・一人でいるのが嫌なんでしょ?それを『さびしい』と言うのよ」
「それはあなたの心よ。悲しみに満ち満ちているあなた自身の心よ」

「甘いわ・・・あなた如きでは私を取り込めない」
「何?この力は・・・あなた誰?」

その時、使徒の反対側が初号機へと一直線に向かう。
その使徒を掴む初号機。
使徒は、無数のレイの形を取り初号機の手に頬ずりをする。

(・・・これは私の心、碇君と一緒になりたい・・・駄目、碇君と一つになるのは私)

「ATフィールド反転、一気に侵食されます」
マヤの悲痛な叫びが発令所に響く。

「使徒を押さえ込むつもり?」

『駄目だ!レイ!!止めるんだ!』

シンジの叫びが通信を通じて発令所に流れる。
シンジの中では自爆する零号機がフラッシュバックしている。
一気に膨れあがる零号機のコア。

「・・・私に還りなさい。記憶のままに」
「あぁぅぁぁぁ」
レイの身体に浮かんでいたミミズ腫れが引いていき、逆にレイの姿を模している使徒にミミズ腫れが浮かんで行く。

「フィールド限界、これ以上はコアが維持できません」
「レイちゃん!機体を捨てて逃げて!」

『・・・問題ないわ』

ミサトの叫びに返って来たレイの通信に発令所は凍る。

「レイちゃん!死ぬ気?」
「コアが潰れます、臨界突破!・・・え?ふ、復旧します!」

「「なんですって?!」」

『レイ?』
『・・・使徒殲滅』

「はっ!も、目標消失」

「殲滅・・・したの?」
「本気で使徒を押さえ込んだの?」
シゲルの言葉にミサトとリツコは、信じられない物を見るようにスクリーンを見ていた。
そこには先程までコアが膨れあがっていた零号機が何事も無かったかのように佇んでいる。

と、その時いきなり零号機が吠え、装甲が吹き飛ばされる。

「な、拘束具が」
「拘束具?」
「あれは、衝撃から身を守る装甲板ではなく、エヴァの有り余る力を押さえ込むための拘束具なのよ・・・呪縛を自らの力で解いたエヴァはもう誰にも止められないわ」



「さてさて、零号機の覚醒と解放・・・これもシナリオの内ですかな?碇司令。ゼーレが黙っちゃいませんぜ」
双眼鏡で戦況を眺めていた加持がニヤリと笑いながら呟いていた。



「使徒に乗っ取られたの?」
参号機の時の状況がフラッシュバックするミサト。

「レイちゃん?」

『・・・問題ありません』

「も、問題無いって・・・」

「現時刻を以て作戦を終了。第一種警戒態勢へ移行」
「了・解、状況・イエローへ・速やかに・移行」
呆けているミサトを余所に、作戦の終了をゲンドウが告げる。
それに対し、マコトはたどたどしく復唱した。

「碇、まずいのでは無いか?」
「・・・零号機は封印だろうな」

「それで済めば良いのだが・・・」
「ふん・・・老人達には精々その程度しか出来んよ」



「レイ!」
零号機のケイジでシンジはエントリープラグが排出されると、急いでハッチをこじ開ける。

「レイ!」
そこには疲れ切っているが、シンジの顔を見ると微笑むレイが居た。
叱り付けようと勢い勇んで来たシンジだったが、その顔を見ると自然と涙が零れる。

「レイ・・・」
「・・・ごめんなさい」

「いいんだ・・・無事で良かった・・・お帰り」
「・・・ただいま」

それだけを言うとレイはシンジの胸に倒れ込む。

「レイ?」

寝息を立てているレイ。
シンジは苦笑を浮かべるとレイをお姫様抱っこし、ケイジを後にした。



「単に疲れて眠っているだけのようね」
レイの身体に聴診器を当てていたユイが、シンジに向きそう告げた。

レイの身体の事は、やはりユイに委ねるのが一番だと思い、シンジはユイの元へ連れてきたのである。

「でもあれは驚いたわ」
「僕もです」

「全く無茶をしたものね」
「全くです」

「良かったわね。無事に戻ってきて」
「はい」

心ここに在らずと言う感じで受答えするシンジにユイは、微笑んでいた。

(本当に良かった)

シンジの記憶を知るユイも、その時はかなり焦っていたのだ。
静かな寝息を立てているレイを二人は穏やかに見ていた。



『ただ今留守にしております。発信音の後にメッセージをどうぞ』

公衆電話から電話を掛けている加持。
周りは、よくこんな所に公衆電話があるなと言うような田園風景だ。
実は、ここはMAGIを誤魔化すために色々と細工を施している公衆電話だった。
第三新東京市内の公衆電話や携帯電話では、MAGIに痕跡を残してしまう。
その為に色々と細工を施している公衆電話であったのだ。

周りに人があまり居ない事から工事員を装えば簡単に細工が出来たのだ。
これが第三新東京市内であればMAGIの映像に残る可能性もある。
それで、こんな辺鄙な場所の公衆電話を選んだのだ。
加持のとっておきの一つでもあった。

「最後の仕事か・・・まるで血の赤だな」
NERVのIDカードを見ながら加持は呟いた。



「拉致されたって、副司令が?」
「今より2時間前です、西の第八管区を最後に消息を絶っています」
ミサトの執務室にやって来た黒服は、端的に答える。

「うちの署内じゃない。アスカに引き続き貴方達、諜報部は何やってたの?」
「身内に内報及び先導した者が居ます。その人物に裏をかかれました」

「諜報2課を煙に巻ける奴・・・まさか!!」
「加持リョウジ、この事件の首謀者と目される人物です」

「で、私の所に来た訳ね」
「ご理解が早く助かります」

「作戦課長を疑うのは同じ職場の人間として心苦しいのですが、これも仕事ですので」
「彼と私の経歴を考えれば、当然の処置でしょうね」
そう言うとミサトは机の上に拳銃とIDカードを置く。

「ご協力感謝します。お連れしろ」
黒服に連れられてミサトは執務室を後にする。

「書類が滞ると困るから日向二尉に回しておいて」
「畏まりました」
ちゃっかりと仕事を回す口実を無駄にしないミサトであった。



真っ暗な空間に只一つ存在するパイプ椅子に冬月が縛り付けられていた。

「お久しぶりです、キール議長、全く手荒な歓迎ですな」
どこへとも無く冬月が呼びかけた次の瞬間、冬月の正面にモノリスが浮かび上がった。

『非礼を詫びる必要はない、君とゆっくり話をする為には当然の処置だ』

「相変わらずですねぇ、私の都合はお構い無しですか」

『議題としている問題は急務なんでね、やむなくの処置だ』
『解ってくれたまえ』

次々とモノリスが浮かび上がりそれと同時に謝罪ではなく同意を求める恫喝。
自分達の行動を全て正当化する傲慢な輩達。
顔さえも見せない通信だけの会話。

(委員会ではなくゼーレのお出ましとは・・・)

冬月も内心、驚いていた。
思いの外、老人達は焦っていると言う事だ。

『我々は新たな神を作るつもりはないのだ』
『御協力願いますよ。冬月先生』

(先生か・・・)

冬月にはその敬称が、まだ自分が真っ当であった頃を思い出す切っ掛けとなり、苦笑を浮かべる。

『先の零号機の戦闘は一体なんだったのかね?』
『よもや使徒を取り込むとはな』
『あれは彼女の力かね?それともエヴァの力かね?』

矢継ぎ早に繰り出される質問。
冬月にもその答えは無い。
いや、ユイ達から聞き及んでいる話から推察するなら彼女の力なのだろう。
しかし、確認したわけでは無い。
そもそも、事後処理も終らぬうちに拉致されたのだ。

『何れにしても我々に具象化された神は不要なんだよ』
『神を作ってはいかん』
『ましてやあの男に神を手渡すわけにはいかんよ』

『碇ゲンドウ・・・信用にたる人物かな?』

(信用?確かに碇を信用している訳ではないな・・・しかしあの男があれ程子煩悩だとは思いも寄らなかったな)

ふとゲンドウ宅でよく集まるようになった最近を思い浮かべ、顔が綻ぶ冬月。
未だ伴侶を得ていない冬月にとってもシンジ達は孫のような存在であった。
本人は、”自分の子供のよう”だと言って譲らないが。



「さて、行きますか・・・」
ポツリと呟くと加持は、扉を開ける。
その傍らには、黒服の男達が倒れていた。

「君か」

そこには、尋問の後、放置されている冬月が未だパイプ椅子に縛り付けられている。

「ご無沙汰です。外の見張りには暫く眠ってもらいました」
「この行動は君の命取りになるぞ」
「真実に近づきたいだけです。僕の中のね」

そう言って加持は冬月を連れ出す。

「今更、何を知ると言うのだね?君には既に全てを渡しているはずだが?」
「レイですよ」

「綾波二尉の事かね?」
「えぇ、彼は謎に包まれている」

「それなら本人に聞くのが一番早いのじゃないのかね?」
「彼は記憶喪失ですよ」
お忘れですか?と言う顔で加持は冬月に顔を向けた。

「だとしても命を賭ける程の事だとは、私は思えないがね」
「綾波レイ。綾波レイカ。そしてゼーレから送り込まれた渚カヲル。彼らは何故エヴァに乗れるのでしょう?何故アルビノなのでしょう?」

「一般人から見れば遺伝子障害。我々から見れば使徒と同じ遺伝子配列。そう言う事だろう」
「なんですって?!何時からそれを?」

「レイ君が発見された時からだよ。だから適格者だと我々は考えた」
「なんて事だ・・・じゃぁマルドゥック機関と言うのは・・・」

「我々が選抜したなら、その理由を何れ明確にしなければならなくなる。その理由を隠すための隠れ蓑だよ。そんな下らない事を調べていたのかね?」
「・・・・・」

冬月は、存外にそんな事に命を賭けたのかと言っている。
加持も返す言葉が無くなったようだ。
無言のまま加持が運転する車が走る。



「ご協力ありがとうございました」
「もういいの?」

独房で蹲っていたミサトを黒服が解放しに来た。
あまりにも早い解放だとミサトは感じる。

「はい、問題は解決致しました」
「そう、彼は」

「・・・存じません」

少しの間を置いて、事務的な回答が黒服からもたらされる。
死んだかも知れない。
ミサトは直感的にそう感じていた。



「ただいまぁ」
マンションに戻ったミサト、なんとなく疲れてテーブルに突っ伏している。

ふと顔を上げると留守電のランプが点滅している。

「葛城、俺だ、多分この話を聞いている時は君に多大な迷惑を掛けた後だと思う。すまない。りっちゃんにもすまないと謝っておいてくれ。後、迷惑ついでに俺の育てていた花がある、俺の代りに水をやってくれると嬉しい。場所はシンジ君とアスカが知っている。葛城、真実は君と共にある。迷わず進んでくれ。もし、もう一度逢える事があったら8年前に言えなかった言葉を言うよ、じゃぁ」

『午後零時2分です』

留守番電話の無機質な音声が流れる。

「馬鹿、あんた本当に馬鹿よ!」

ミサトは、既に加持が死を覚悟していた事を知り、泣き崩れた。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。