第弐拾壱話
束の間の日常


ブォンと言う音とともに黒い石版のようなモノリスが薄暗い空間に浮かび上がる。
各々のモノリスには番号が煌々と浮かび上がり、サウンドオンリーの文字も同様に浮かび上がっていた。

「エヴァのあの強さ。些か尋常では無いな」
「さよう。今回の使徒は、力を司る最強のゼルエル。それをああも簡単に葬り去るとは」
物静かに口火を切った言葉に対し、甲高い声が追従する。

「我らゼーレのシナリオとは大きく違った出来事だよ」
「この修正容易なのか?」

「碇ゲンドウ、碇ユイ。あの夫婦にネルフを与えたのがそもそもの間違いではないのかね」
「だが、あの男でなければ、全ての計画の遂行はできなかった・・・碇、何を考えている」

「だが、事態はエヴァの問題だけではない」
「さよう、SS機関搭載実験による第二支部消滅。弐号機の使徒戦による消滅。被害は甚大だよ]

「我々がどの程度の時と金を失ったか見当もつかん」
「これも碇の首に鈴をつけておかないからだ」

「鈴はついている。ただ鳴らなかっただけだ」
「鳴らない鈴に意味はない。今度は鈴に動いて貰う」

「ファーストチルドレンたる綾波レイ。彼では依り代とする事は期待出来んぞ」
「ドイツで洗脳したセカンドについても専用機の無い今、依り代とする事は出来ん」

「サードを依り代にする」
「しかし、精神誘導は行われていないぞ」

「その為のフォースだ」
「奴もファースト、サードと同居していると聞く。順調に任務を遂行しているようだな」
「しかし、どうやって壊すつもりだ?」
「身寄りはファーストしか居ないと聞く」

「成る程。その為のフォースか」

開会の言葉も閉会の言葉もなくブォンと言う音のみでモノリス達は消えていった。



朝靄の掛る頃、カヲルは湖畔に浮かぶ石の上に立って居た。
常人であれば、簡単には辿り着けない位置にそれはあった。
浮かぶと言っても、水の上に浮かんでいる訳ではなく、大きな石の一部が湖面に顔を出し浮かんでいるように見えるだけである。

しかし、そのために小舟で近付く事もできず、そこに立つ為には泳いで行くしかない。
歩いていくには、少し奥にあり過ぎるのである。

「珍しいねぇ、貴方達が自ら言い出した事を反故にして連絡を取って来るなんて」

カヲルの周りには、黒い石版のような12枚のモノリスがカヲルを包囲する形で浮かんでいる。

『少し伝達事項が出来た。やむを得ない事情だ』

ゼーレはカヲルを送り出した後、カヲルが使徒として覚醒するまでは連絡を行わないし、連絡を取るなと言っていたのだ。

カヲルの言った事は明らかに相手を侮蔑した嫌味であった。
ゼーレは自ら言い出した事など簡単に反故にする。
自分達の都合の良いように契約や約定さえ違える。
しかし、相手がそれをする事は、決して許さない。
そんな傲慢で自分勝手な盲信者達。それがゼーレだ。

「やむを得ない事情ねぇ。それで一体なんなのだい?」

『綾波レイを抹殺しろ』

「それは無理な相談と言う物だよ。僕はまだタブリスとして覚醒しては居ないのだからね」

『奴は使徒の力を以てでなければ倒せないと言うのか?』

「使徒の力の無い僕が非力だって言う事さ。彼は一応優秀な軍人なんだよ?」

『何も直接手を下す必要は無い』

「使徒戦の最中にでも後ろから撃てと言う事かい?」

『少し戦いを不利にしてやれば良いのだ』

「お言葉だけど、エヴァに乗った彼は強いよ?」

『君は、我らの望みを知っていれば良いのだ』
『最終的にタブリスとして殲滅しても構わん』
『結果的に約束の時までに、抹殺していれば良いと言うことだよ』

「そう言う事かい。ならば貴方達の望みは知った訳だけだから、これで話は終りかい?」

『そうだ。それまで自由に動いていれば良い』

ヴォンと言う音と共にモノリスは消え去った。

「自由にか。当然だよ。僕は自由を司るタブリスなのだから」
カヲルはポケットに両手を突っ込みアルカイックスマイルを浮かべると、大きく息を吸い込んだ。



「・・・何処に行っていたの?」

カヲルが部屋に戻るとレイが、朝食の用意をしているところだった。

「老人達のお呼び出しさ。それより君が朝食の用意とは珍しいねぇ」
「・・・老人達は?」

「シンジ君の抹殺命令だったよ」
「・・・そう。それでどうするの?」

「無知とは恐ろしいと思っただけさ。老人達は未だ自分達がイニシアティブを持っていると思っている。既にシンジ君と君に踊らされているとも知らずにね」
「・・・私達は、踊らしてないわ」

「同じ事だよ。イニシアティブは君達にある」
「・・・貴方もその一人よ」

「おはよう。何の話?」
そこにシンジがシャワーから出てきた。

「老人達のお呼び出しについてさ。それよりシンジ君が朝からシャワーなんて珍しいね」

何故かカヲルの言葉に顔を紅くするレイとシンジ。

「もしかして、僕が居ない間に抜け駆けしたのかい?」
「・・・人聞きが悪い」
「そ、そうだよ。気が付いたらカヲル君が居なかっただけじゃないか」

「はぁ・・・老人達が憎らしくなってきたよ。これが憎悪と言う感情なんだね」
カヲルは根本的原因を老人達に擦り付けた。

実は、カヲルが居なくなった事に気が付いたレイが、早速シンジとリリン式結合を行ったのである。
意味がないと言いつつ、実はレイは、結構気に入っているのだ。
しかし、カヲルが居るところで行うのは流石に憚られるらしい。

つまり、カヲルが来てから暫くご無沙汰していた行為を、ここぞとばかりに行ったのである。
だからシンジが朝からシャワーを浴びており、レイが食事の準備を行っていたのだ。

これは先にレイがシャワーを浴びたからである。

真っ赤になっているレイとシンジに、少し膨れっ面をしているカヲル。
黙々と朝食を取っている3人は、ここでは珍しい風景であった。



シンジ達は、ターミナルドグマに居た。
安置されている、紅い螺旋状に見える二股の槍を眺めている。

建築現場のように足場を組まれ、そこにヘルメットを被った作業員達が忙しそうに動いている。
シンジ達もヘルメットを被って、その場に見学に来ていたのだ。
レイは、サイズが無かったのか、大き目のヘルメットが可愛い。

「これがロンギヌスの槍」
「・・・神殺しの槍」

シンジの言葉にレイが続ける。
一説には、張付けにされたキリストを貫いた槍とも言われているロンギヌスの槍。

「その構成要素はエヴァに酷似しているわ」
「まるで生きている槍ね」

血のように紅いそれを、ユイ、キョウコ、ナオコらが、色んな装置を取り付け解析していた。
前回の使徒戦では、エヴァに関する被害は皆無と言って良い程であった。
都市としての被害は尋常ではないのだが、それはユイ達の仕事ではない。
従って、エヴァについては通常の整備程度で済んでおり、今は槍の解析に力を注いでいたのである。

「・・・ATフィールドさえ、切り裂く事が出来ると言われている」
「一度、エヴァで実験してみるかね?」

「危険ですわ」
「目標と認めたら、持っている者でさえ制する事は困難だからねぇ」

ゲンドウと冬月の会話を制したユイの言葉を、更に遮ってカヲルの言葉が挟まれる。

「それは一体どう言う事かしら?」

カヲルの言葉に反応したのはリツコである。
その瞳は、興味津々、知っている事は全て話しなさいと雄弁に物語っている。

「な、なにか身の危険を感じるのだけど、気のせいかい?」
「いや、ここは納得の行く説明をしないと、僕でさえ止める事が出来るかどうか・・・」

助けを求めるカヲルの視線を、コメカミを抑えてシンジは無理だと意思表示した。

「ロ、ロンギヌスの槍は意志を持っているのさ」
「意志ですって?自我があるとでも言うの?」

「いや、自我と呼べるような感情は無いよ。ただ、主を認める意志と、敵を殲滅する意志だね。それは自動的な物に近い」
「予めプログラムされた行動と言うところかしら?」

「その表現は、的を射ているねぇ」
「今は誰を主と思っているのかしら?」

「それは僕にも解らないよ。でもきっと綾波二尉なら主になれるんじゃないかな?」
「ぼ、僕が?」

「ちょっと近付いてみてごらん?」

カヲルの言葉に槍に近付くシンジ。
シンジが槍に触れると、オペレータ達が叫声を上げ始めた。

「メータが振り切れてます!」
「何ですか?これは!測定値が定まりません!」

その喧噪に慌ててシンジは手を離した。

「あっ!元に戻りました」
「こっちもです。波形が正常に戻りました」

「レイ君。近付くの禁止」
「ぼ、僕のせいですか?」

「「「そうよ!」」」

三賢者にユニゾンされ、すごすごと引き上げるシンジ。

「興味深いわ」
「り、リツコさん、眼が恐いですよ」

「エヴァの生体部品から、同じ物が造れるかも知れないわ」
「形の模倣にしか過ぎないけれどね」
「それでもATフィールドを破れるなら、御の字よ」

三賢者達は嬉々としてデータを取っている。
既にターミナルドグマも、隠す物が無いため、オペレータ達も解析作業を手伝っている。

「諸刃の剣になりそうですね」
「エヴァを脅威に感じている連中に取っては、涎物の情報ね」

シンジの言葉に答えたユイは、オペレータ達を動員したのは早計だったかと後悔していた。
NERVのオペレータと言えど、全幅の信頼を寄せる事は出来ないのだ。
それでも、リツコが細心の注意を払って人選を行っていた。

それ以前にゼーレには何らかの報告を上げなければならない。
下手に隠し立てしても、無意味である。
かと言って全てを正直に報告する気は更々無い。
こちらの方が面倒ではあったのだが、ユイはゲンドウに任せておこうとその事を頭から追いやった。



今日も今日とて、シンジ達は居酒屋に居た。
シンジは兎も角、レイとカヲルは良いのかと言うところだが、すっかりカヲルは顔馴染みになっている。
黙ってシンジの後ろに居るレイと違い、カヲルはお調子者なのだ。

「やぁマスター。今日は何か良い物入っているかい?」
「おぉ銀髪少年。今日はオホーツクの海から空輸でタラバガニが入ってるぜ」

「それは楽しみだねぇ」
「坊主みたいな食通に食べて貰えれば蟹も幸せってもんでぃ」

はっきり言ってタラバガニは高い。
セカンドインパクト前ですら高級品だったのだから、今では一体幾らするのか。
しかし、高給取りであるチルドレンとしては、気にする所では無かった。
店としても高級な料理を、多く頼むお得意様なのだ。
何より払うのはシンジである。

「・・・遠慮と言う物を知らないの?」
「何がだい?」

「・・・ここの支払いは兄様よ」
「それは気が付かなかった。じゃぁ今日は僕が奢らせて貰うよ」

「いいよ食費ぐらい。NERVから扶養手当も貰ってるしね」
「そうなのかい?じゃぁ遠慮なくご馳走になるよ」

しかし、一食でタラバガニを一杯も食べてしまう程の扶養手当は貰って居ないだろう。
いや、このタラバガニだけで扶養手当など飛んでしまうかも知れない。

あまり贅沢をしないシンジは、今は使い切れない程の貯金があるため、お金に無頓着になっている。
そのくせ、倹約家という矛盾した性質を持っていた。

「おぉ居た居た」
当然だが、ご相伴に預かろうとシゲル達も良く訪れるようになっている。

シンジの所へ行くと言えばマヤも付いてくるためシゲルとしては、一石二鳥なのである。

「やぁカヲル君、この間は凄かったなぁ?とても初陣とは思えない連携だったよ」
「そうかい?僕は綾波二尉の指示に従っただけだよ」

「それにしたって、指示通りに動けるって事が凄いよ」
「うわぁ〜今日はタラバガニ?それもこんなに沢山!」

褒めちぎるシゲルに、水を差すマヤ。
テーブルの上には焼きタラバが一杯丸ごと乗せられていたのだ。

「よかったら食べて下さい。頼み過ぎちゃってどうしようか困っていたんです」
「おっ!じゃぁ遠慮なく」

「おや?日向さんは夜勤ですか?」
「いや、何か調べ物が有るって。これたら後から来るって言ってた」

「「「「「・・・・・」」」」」

急に沈黙が続く。
実は蟹を食べ始めると得てして会話が無くなるのだ。
皆、一所懸命に蟹を穿る為である。

「「「「「・・・・・」」」」」

黙々と食べている。

「「「「「・・・・・」」」」」

まだ食べている。

「タラバってやっぱり大味だと思うのは気のせいか?」
漸く一息吐いたのか、シゲルが口を開いた。

「大きさにもよるらしいですよ。毛蟹サイズだとそれなりに濃厚な味らしいです」
「おや、そうなのかい?それは美味しいのかい?」
美味しい物には目が無くなってしまったカヲル。

「後、タラバって蟹じゃないんだよな」
「えぇ足が八本しか無いですからね。ヤドカリとか蜘蛛に近いらしいですよ」

「えっえぇ〜私、沢山食べちゃったぁ」
「・・・問題ないわ」

レイも幾分、顔色が悪くなっている。
本当に問題なかったのだろうか?

「そうだよ、そんな事言ったらシャコだって虫だぜ?マヤちゃん」
「あぁ〜ん、そんな事聞いたら食べられなくなっちゃうじゃないですかぁ〜」
頬を膨らましながら、訴えるマヤ。
何気に好きだったのかも知れない。

「シャコとは何だい?」
「海老みたいな奴でね、寿司屋ぐらいじゃないと普段は置いてないかな」

「今度、寿司屋と言う物にも行ってみたいねぇ。寿司バーとは違うんだろ?」
「多分、置いてある物が違うと思うよ。日本の寿司屋は回転寿司でも無い限りあんまり創作物は置いてないからね」

「創作物って何だい?」
「アボガドとか、ローストビーフとかを寿司にしている物だよ」

「あれは創作物だったのかい?」
「そうだね、本来は刺身物が主体だからね。でも干瓢とか胡瓜巻きとかもあるよ」

「明日の晩御飯はそれで決まりだね」
「えぇ〜っ!狡いですぅ」

何が狡いのか解らないが、マヤが盛大に頬を膨らませて拗ねている。

「マヤさんも一緒に来ますか?」
「いいの?!」

「お、俺も良いか?」
「えぇ勿論、構いませんよ」

こうしてシンジのエンゲル係数は止め処なく上がっていくのであった。



シンジは結構暇なのだが、週末は例の温泉旅行で埋まっているため、シンジ達が3人出掛けると言う事は出来なかった。
最近では温泉旅行にカヲルが加わったため、一部のショタなお姉さん達の中に悔しがっている人達が結構居るらしい。

カヲルはカヲルで浴衣が結構気に入ったらしく、温泉旅館毎、一着拝借してくるのが趣味に成っているようだ。

「・・・家でまで浴衣着ないで」
「どうしてだい?風呂上がりは、とても気持ちが良いんだけどねぇ」

「・・・醜い物が見える」
「それは心外だねぇ」

「・・・下着ぐらい付けなさい」
「着物に下着は無粋だと聞いたんだけどねぇ。シンジ君もどうだい?」

カヲルは家ではシンジの事をシンジと呼ぶ。
よく間違えない物だと、シンジとレイは感心していた。
レイは間違えないように、極力名前を呼ばないようにしていたのだ。

「僕は遠慮しておくよ。どうもスースーして苦手なんだ」
「それは残念だねぇ」

因みにカヲルも学校には行っていない。
学校に行っても3年生だし、何よりシンジが居ないのでレイと同じ処置にして貰ったらしい。

カヲルはNERV職員との交流を楽しんでいるようなのだが、シンジは元々人付き合いが得意では無い。
今ではそれなりに社交辞令ぐらいは行えるようになっているが、楽しんでいるのと、気を遣っているのでは疲れ方が違う。
従って、週末にシンジはとても疲れるのであった。
気疲れであるため、体力とは関係ない。

それを詰らなさそうに見ているカヲル。
強行にシンジと何かしようとすると、流石にレイの怒りが恐かった。

従って、カヲルとしては、平日、シンジの執務室で穏やかに過ごしている時の方が充実していたかも知れない。
そして、それはレイも同じであった。



「レイ君、ちょっと良いかしら?」
「どうしました?」

その日、シンジの執務室にやって来たのはユイであった。
ユイが態々やって来る時は、得てしてシンジに助言を求める時か、厄介な相談を持って来る時である。
必然、レイとカヲルの耳もシンジ達の会話に傾けられる。

「SS機関の事なんだけど、もしかして参号機にSS機関が取り込まれている?」
「SS機関の本質は、その構成要素の配列にあります」

シンジは椅子をユイに勧めながら話を始める。

「え?」
「コアはその制御部、文字通り魂の器ですね。でも人はそんな物は持っていない。使徒もこれからコアがあるとは限りませんよ」

「それは確かなの?」

コクンと頷くシンジ。

「私は、なんて考え違いをしていたのかしら」
「当らずとも遠からずって奴だと思いますよ。コアがあればSS機関の制御に重要である事には変わりありませんから」

話をしながら、目でレイに飲み物を催促するシンジ。
レイも、心得た物で、すっとコーヒーを淹れに行く。

「じゃぁ、もしかして零号機や初号機にもSS機関は既にあると?」
「元々コピーでしたから不完全ではあったのですけどね」

「今は?」
「何時でも動かせますよ。でも屋内で起動実験は無理ですよ」

「どうして?」
「起動させると最初に爆発のような物が起こるんです。ネバダもそれで制御系が壊れたんでしょうね。もしかしたらセカンドインパクトも原因はそれだったのかも知れません」

「何て事・・・でもどうしてそんな事を知っているの?」
「サハクィエル、空から落ちて来た奴ですけど、あの時、飛んで帰ってくるために、動いちゃったみたいなんですよね。使徒の爆発で記録は掻き消されてますけど」

そこで、レイが2人のコーヒーを淹れて持って来た。

「あっありがとう」

お礼を言うユイに軽く会釈するレイ。
今までの話の内容が強烈だったのか、ユイはそのコーヒーをゆっくりと飲み、頭を整理している様子であった。
それを、黙って待つシンジ。

「はぁ〜っ、全くぅ・・・もっと早く教えてくれれば良いのに・・・」
「でも気付かれる訳に行かないでしょ?どうせ暫く動かせないですから」

誰にとは言わない。
そんな事は解りきっているからである。

「それはそうだけど、研究ぐらいは出来ると思うわよ」
「無理ですよ。下手に有る事を前提に何かしたら起動しちゃいますよ」

「そしてネバダの二の舞と言う訳ね」
「そう言う事です」

シンジはSS機関については、ばれたら話そうと思っていたのだ。
そして、ばれなくてもそろそろ話す時期だとも考えていた。
ユイの相談は渡りに船であったのだ。

「それよりさっき、気になる事を言っていたわね。使徒からコアが無くなるとか」
「えぇ、そろそろ使徒もコアが弱点になると気付いているはずですし、何より、既にコアの無い使徒も襲来してますよね?」

「あの細菌型の奴ね」
「参号機に取憑いていた奴もです」

「これからどうやって殲滅するの?」
「使徒そのものを消滅させるしか無いですね」

「出来るの?」
「それで、実は、次辺りから槍の使用許可を貰おうとは考えていました」

これは、その時でも構わないと考えていた。
使徒を見てから、槍で殲滅する事を提言すれば良いと思っていたのだ。
しかし、序でなので話しておく。
ユイからゲンドウに話が行くと通り易いと言うのもあるからだった。

「ロンギヌスの槍、あれなら倒せるの?」
「いや、次はあれじゃ無いと倒せないと思います」

「そう、ゲンドウさんには言っておくわ」
「宜しくお願いします」

「ねぇレイ君?」
「はい?」

「他に隠している事は無い?」
「いや、特になにも無いと思いますけど・・・」
詰め寄ってくるユイにシンジは後退りする。

「本当に?」
「は、はい・・・多分」

「まぁ今は信用しておいてあげるわ。今日は有り難う。喉の骨が取れた気分よ」
「お役に立てて光栄です」

ユイが部屋を去ってシンジは、ホッと胸を撫で下ろした。

「やっぱり、かなり鋭いようだねぇ」
「うん、だから余計な事は喋らないようにしていたんだけど、返って不信感を抱かせちゃったかな」

「・・・問題ないわ」
少し辛そうな顔をしているシンジをレイは抱締める。

身長差があるので、抱付いているようにしか見えないが、シンジも優しく抱き返した。

「ありがとう」
「・・・構わないわ」

「人の定めか、人の希望は悲しみに綴られている」
「そうだね」

3人は遠い目をする。
3人が見ている物。
それを今知る者は、誰も居なかった。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。