第八話
ヒトの造りしモノ


普段NERV職員は使わないエレベータの最下段。
そのボタンを押すためにも最高の機密レベルを持ったカードが必要だ。

今、レイ(シンジ)はユイに連れられ、そのエレベータに乗っている。
重々しい雰囲気。

髪の色こそ違えレイと二人っきりで乗ったエレベータを思い出させる。

(綾波は主婦になれなかったね)
(・・・問題ないわ)

人工進化研究所第三分室。
エレベータから降りたユイは真っ直ぐとそこへ向かった。

レイ(シンジ)の中に疑問が浮かぶ。
ユイが初号機に取り込まれていない今、ここが使われる事は無いはずである。
レイ(シンジ)はリリスでも見せるつもりかと考えていた。

十数分前、ユイはレイ(シンジ)の元へやってくると、「見せたい物がある」とレイ(シンジ)を連れ出したのだ。

コツコツと二人の足音だけが響く。
嘗てのレイの育った部屋とリツコに説明された部屋。
そこには煩雑に機材が積まれている。
さながら廃棄物集積所と言う感じである。

そして、その部屋を通り過ぎると真っ暗な空間。
パチッと言う音と共に灯りが灯る。

「なっ!まさか・・・」

そこはオレンジの灯りに照らされるダミープラント。
中央にカプセル型の筒があり、そこに漂うのは一糸纏わぬ蒼銀の髪をした少女であった。

流石に周りに無数の同じ形をした物は漂っていなかった。

「こっちよ」
ユイは更に先へ足を進める。

行き着いた先は、ターミナルドグマ。
その目の前には7つ目の仮面を被せられたリリスが未だ十字架に張付けられていた。

「あれが、この黒き月で発見されたリリス。第二使徒よ」
「・・・・・」

ユイは、踵を返し今来た通路を戻る。
付いていくレイ(シンジ)。
そして、先程の蒼銀の髪の少女の前でユイは立ち止まった。

「貴方が現れる3年程前、シンジが産まれた10ヶ月ぐらい後ね。私は自分の卵子と先程のリリスの細胞を掛け合わせたの。そして育ったのがこの娘」
レイ(シンジ)は驚愕した。

リツコから聞いた話と違う。
つまり、リツコも事実を知らされていなかったのだ。
よくよく考えれば、突然シンジと同い年の女の子がサルベージされるなど不可解だ。

(本当の妹だったんだ・・・もしかして近親相姦?)
(・・・私はリリス。問題ないわ)

少し場違いな話をしているレイ(シンジ)の心の中。

「どうして、こんな事を・・・」
「エヴァにシンクロ出来る可能性。その一つの模索。貴方が現れて確信したのだけれど、この娘には魂が宿らなかった。産まれてからずっとLCLの中よ」

その少女は、嘗て見た無数の綾波レイの様にこちらを見る事もなく眼を瞑り、ただLCLの中に存在している。
確かに魂が宿っていないと言われれば、その様にも取れた。

本来宿るはずのリリスの魂はレイ(シンジ)の中にある。
つまり、あの日、レイ(シンジ)がリリスの元に来た為に彼女に魂が宿らなかったとも言える。

「死んでるんですか?」
「いいえ、この状態を生きていると言えるかは疑問だけど、心臓も動いているし成長もしているわ」

「どうして僕に?」
「貴方なら、彼女に魂を宿せるのじゃないかと思って」

「へ?」
「私がサルベージされた時、外部からの干渉があったわ。ナオコさんの時は計測する準備をしていなかったけど、きっとナオコさんの時もでしょ?」
そう言いながらレイ(シンジ)の方を向いて微笑むユイ。

ユイは確信していた。
あれから、色々とデータを解析し、結局レイ(シンジ)が何かしたのだと結論付けたのだ。

「言ってる意味が解りませんが?」
「うふふ、ここには監視カメラもマイクもないわ。零号機に溶けた時に私はあるイメージを見たわ」

「イメージ?」
「そう、イメージとしか言い様がないわね。辛く哀しい少年の人生、その結末は赤い世界だった」

レイ(シンジ)は眼を見開く。

「ナオコさんも同じ物を?」
「いいえ、ナオコさんはリッちゃんの人生。ゲンドウさんに撃たれるリッちゃんを見たそうよ」

(どういう事?)
(・・・零号機はリリスのコピー。その深層意識は繋がっているわ)
(綾波の記憶が流れ込んだと言う事?)
(・・・自分達に近しい人物のイメージが流れ込んだのかも知れない)

「家のシンちゃんはそんな人生を歩んでいないわ。この娘も」
そう言ったユイの瞳には泪が溢れている。

「えぇっと・・・何を何処まで見たんでしょうか?」
レイ(シンジ)はユイにハンカチを差し出しながら間抜けな質問をする。

「うふっ、優しいのね。私が初号機に溶け、貴方がゲンドウさんに捨てられて、呼び出されて使徒と戦い、赤い世界で朽ち果て、レイちゃんが慌てて重なるまでよ」

その言葉に何故かシンジの中のレイが紅くなっているのが解る。

(ど、どうしたの?綾波)
(・・・な、なんでもないわ)

(さて、どうしようか?)
(・・・碇君の好きにすれば良い)

(綾波はどうしたいの?)
(・・・身体があるなら、碇君と抱き合える)

(あ、綾波ぃ・・・)
(・・・でも碇君を護れなくなる)

(僕は大丈夫だよ。綾波が傍に居てくれるなら)
(・・・傍に・・・問題ないわ)

(じゃぁ、あの身体に移る?)
(・・・今の私だけじゃ魂が足りないわ)

(リリスを取り込む?)
(・・・そうね、強力に成りすぎるけど)

(名前はどうする?)
(・・・綾波シンジ)

(それは、どうかと・・・)
冷や汗を流すレイ(シンジ)

(・・・綾波レイカ)
(了解)

(・・・碇君の事は何と呼べば良いの?)
(勿論!お兄ちゃん!)

(・・・おにい・・・も、問題ないわ)

何か考え込んでいる様に見えるレイ(シンジ)の様子をユイは、静かに見ていた。
ユイは、自分の言葉をレイ(シンジ)が整理しているのだろうと考えている。

「まさか、彼女を零号機パイロットにしようとか?」
「それは考えてないわ」

「そうですか。えと、多分、リリスと融合させれば大丈夫かと思うんですけど、それで良いですか?」
「あら?それじゃぁ使徒が、その娘を目指して来ちゃうわね」
「あっ多分それは大丈夫ですよ。基本的に僕を目指しているはずだから」

「えっ?それって?」
「ドイツに行った時にアダムは取り込みました。だから、使徒は僕を目指しているはずです」

「じゃぁ貴方と使徒が接触したらサードインパクトが・・・」
「それも無いですね。僕にその意志がないですから」

「どこまでも貴方に背負わせて・・・本当にごめんなさい」
「ユイさんはシンジの優しいお母さんであって、僕の母ではないですよ。気にしないで下さい」

「レイ君・・・」
「えと、名前は綾波レイカで僕の妹って事で良いですか?」

「えぇ勿論よ」
「じゃぁ始めますね」

そう言うとレイ(シンジ)は水槽から蒼銀の髪の少女を出すと御姫様抱っこのまま軽く口吻する。
うっすらと眼を開く少女。

少女は軽くレイ(シンジ)の首に腕を回した。

「あらあら、まるで眠り姫が王子様のキスで目覚めたみたいだわ」
ユイはその様子を見て微笑んでいた。

レイ(シンジ)は紅くなりながらも、そのままリリスの下へと向かう。
蒼銀の少女は自力で歩く事は不可能だからだ。
産まれてからこのカプセルを出ていない。
つまり筋肉を使った事がないからである。

「リリス、お願いするよ」
レイ(シンジ)がそう言うと、蒼銀の髪の少女はそのまま浮かんでいきリリスの中へと吸収される。

光り輝くリリス。
十字架に拘束されているその手がずるりとすり抜け、7つ目の仮面もずり落ちる。

徐々に収縮していき人の形を象っていくリリス。
6対12枚の羽を持った、白く光り輝く人型の物体がレイ(シンジ)の下へと降りてくる。

徐々に光が和らいでいき、その光が無くなった時、そこには先程の蒼銀の髪に紅い瞳を湛えた少女が立っていた。

「綾波・・・」
「・・・碇君」

二人は暫し抱き合う。

「僕の事はお兄ちゃんだよ」
「・・・私の事はレイでいいわ。お兄様♪」

「お、おにいさ・ま?」
「・・・駄目?」
上目遣いで見上げるレイカ。

「ま、まぁいいか」

そしてレイ(シンジ)は、自分の上着をレイに掛けユイの方へと移動した。
ユイは二人が抱き合った時点で、元のプラントへと移動していたのだ。
科学者として経過には興味があったが、二人の逢瀬を覗き見る様な趣味はユイには無かったのである。



その頃、司令室ではゲンドウが怪しげな電話の応対を行っていた。

「また君に借りが出来たな」

『返すつもりもないんでしょ。で、どうです?例のものは。こっちで手、打ちましょうか?』

「いや。君の資料を見る限り、問題はなかろう」

『では、シナリオ通りに』

「気をつけたまえ」

『あなたこそ、気をつけた方がよろしいのでは?最近はまた、うるさ方もいらっしゃるようで』

「フッ・・・問題ない」

『そうですか・・・では』

電話を切るゲンドウ。

「民間企業に被害が出るな」
「・・・利権に眼が眩んだ亡者共です。遠慮は要りませんよ」

「所詮、人の敵は人と言う事か」
「・・・我々の遣らなければ行けない事をこんな瑣末な事で妨害される訳には行きません」

「そうだったな」



騒音が煩いヘリにミサトとリツコ、それにレイ(シンジ)乗っていた。
眼下には荒涼とした景色が広がっていた。

放置されたままのインテリジェントビル群。
下には海面がドス黒く、一部は七色に輝いている。 所々、傾いたビルが顔を出している広大な埋め立て地。

「ここがかつて、花の都と呼ばれていた大都会とはね・・・」
「眠らない街、とも言われていたみたいですよ」
何気なく呟いたミサトの言葉にパイロットの一人が答える。

「眠らない街、か、悪いわね、こんな事まで頼んじゃって」
「いえ、これも仕事ですから」

パイロット席の男は笑って答える。

「見えたわよ」
リツコが目標を発見したらしい。

その声に促されミサトが前を見ると、そこには巨大な箱状の建物が見えた。

「何もこんなところでやらなくてもいいのに・・・で、その計画、戦自はからんでるの?」
「戦略自衛隊?いいえ、介入は認められず、よ」
「どうりで好きにやってるわけね」

NERVの士官制服に身を包むミサトとレイ(シンジ)。
リツコは・・・流石に白衣ではなく濃紺のスーツ姿であった。



記念パーティー会場では、先程から延々とJA(ジェットアローン)に関する説明が行われていた。

会場真ん中に置かれたNERVの招待席、他の席と違い料理は無く、真ん中にビールが数本置かれているだけだった。

「質問を宜しいですか?」
質問タイムになりリツコが真っ先に手を挙げる。

「これは、これは、御高名な赤木リツコ博士、どうぞ」
「先程の説明ですと、内燃機関を内蔵とありますが」

「ええ、本機の大きな特徴です。連続150日間の作戦行動が保証されております」
「しかし、格闘戦を前提とした陸戦兵器にリアクターを内蔵することは、安全性の点から見てもリスクが大きすぎると思われますが?」

「5分も動けない決戦兵器よりは、より役に立つと思いますよ」
ここで会場から小さな失笑がわく。

毅然とした態度で続けるリツコ。
「遠隔操縦では、緊急対処に問題を残します」
「パイロットに負荷をかけ、精神汚染を起こすよりは、より人道的と思います」

リツコの傍らで、つまらなそうにミサトはストローを口で遊んでいる。
「よしなさいよ、大人げない」

だがリツコは耳を貸さず質問を続けた。

「人的制御の問題もあります」
「制御不能に陥り、暴走を許す危険極まりない決戦兵器よりは、より安全だと思いますよ。制御できない兵器など、ヒステリーを起こした女性と同じですよ。手に負えません」
先程よりもやや大きめな冷笑が会場にわいた。

「その為のパイロットとテクノロジーです」
「まさか、科学と人の心があの化け物を抑えるとでも・・・本気ですか?」

「ええ、勿論ですわ」

なかば嘲るような男の問いに、リツコは大真面目に答えた。

「人の心などと言う、曖昧なモノに頼っているから、ネルフは先のような暴走を許すのですよ。その結果、国連は莫大な追加予算を迫られ、某国で二万の餓死者を出そうとしているのです。よかったですね、ネルフが超法規にて保護されていて。あなた方はその責任をとらずに済みますから」

「何とおっしゃられようと、NERVの主力兵器以外、あの敵性体は倒せません」
「ATフィールドですか。それも今では、時間の問題に過ぎません。いつまでもNERVの時代ではありませんよ」
今度こそあからさまに、ホールに響く笑い声。

真っ赤になりながらも、その場で耐えているリツコ。
手に持っているパンフが震えている。

ストローを口にくわえたまま、取り澄ましているミサト。

「質問を宜しいですか?」
そこでレイ(シンジ)が手を挙げた。

「貴方は?」
「その危険極まりない決戦兵器のパイロット。綾波レイです」

「ほぅ貴方が?これは是非パイロットとしてのご質問を承りたいですな」
「そうですか、では遠慮なく」
そこでレイ(シンジ)は一息付きコホンと咳払いをすると言葉を続けた。

「我々の席には何故、料理が無いのでしょうか?」
「「「は?」」」
壇上に居る男と、ミサト、リツコが呆然とした声を上げる。

「招待したくせに、この様な持て成しを行う。確かに貴方がたには人の心などと言う物は理解出来ない様ですね」
「そ、それは手違いで料理が遅れているだけだ!」
思いも掛けない言葉に、壇上の男もJAの発表会と言う主旨を忘れ狼狽した。

「後、暴走の結果追加予算と仰いましたが、戦闘時に暴走した事は御座いません。一体どの情報を以て暴走と仰っていらっしゃるのですか?」
「な!」

「曖昧な情報で誹謗中傷、招待しておいてこの待遇。この事は国連に報告させて頂きます。NERVが国連の下位組織である事はご存じですよね?これは国連に対する貴方がたの態度と見なさせて頂きます」
「ちょ、ちょっと待ってくれたまえ」
壇上の男は、子供の様な対応をしたこのパーティの主催者を心の中で詰りながら場を取り繕うとする。

「我々は何時、放射能汚染に犯されるか解らない物の近くにこれ以上居たくありませんので、これで失礼させて頂きます」
そう言ってレイ(シンジ)はミサトとリツコを促し会場を後にした。

後には青ざめる出資者達と忌々しそうにレイ(シンジ)達の後ろ姿を睨付ける戦自の高官達が残された。



「見なくていいの?」
「無駄ですよ。対使徒戦じゃなく対人兵器としてなら有効でしょうけど」

「あらどうして?」
「皆、放射能汚染が恐くて攻撃できないじゃないですか」

「「あぁ〜なるほどぉ」」
レイ(シンジ)の言葉に納得するミサトとリツコ。

ヘリから眺めるJAは、例によって暴走している。

「あらあら、造った人と同じで礼儀知らずなロボットね」
「このヘリにロケット弾は積んでますか?」

「非常用に4機搭載されています」
レイ(シンジ)の言葉にパイロットが答えた。

「じゃぁミサトさん、足留めだけでもしておきますか。あの方向に進むと厚木まで行っちゃいますよ」
「そうね、ツケは自分達で払って貰わないとね。あのロボットの脚を撃ち抜いてあげて」

「ラジャー」
パイロットの了解の声と共に発射されるロケット弾。

何故かパイロットが舌舐めずりをしていたのは見なかった事にしよう。

それは見事にJAの脚を粉砕し、JAはその場で手を蠢かせている壊れた人形と成り果てた。
その場に居た来賓者や制作者達は放射能汚染の驚異をJAが停止するまで味わう事となる。



花束と果物の詰まったバスケットを持ち、病院の廊下を歩くレイ(シンジ)。
擦れ違う看護士達は溜息を吐く。

「生き別れだった妹さんが見つかったそうよ」
「妹さんも美人なのよねぇ」
「妹さんの面倒を優しく看る看護婦と愛が芽生え・・・私やるわ!」

「えぇえぇ?でもライバル多すぎるわよ?」
「障害が大きければ大きい程、二人の愛は燃え上がるのよ!」
「障害が大きいのは貴女だけよ」
怪しい会話が看護士達の間で交わされていた。

コンコン
「・・・どうぞ」
鈴の鳴る様な声が中から聞こえる。

「具合はどうだい?」
「・・・問題ないわ」
レイ(シンジ)がJA発表会を早々に切り上げてきたのは、レイカ(レイ)のお見舞いの為であった。

レイカ(レイ)は読んでいた本を膝の上に置くと入って来たレイ(シンジ)に微笑む。
レイ(シンジ)は入室した時から笑顔だ。

「どの位で退院できそう?」
「・・・1週間ぐらいと言っていたわ」

筋肉が使われていなかったのでリハビリのために入院となったのだ。
それで1週間と言うのも短いのだが、本人がそれで良いと言っているのでユイも強引には勧めなかった。

「じゃぁそれまでに住む場所と転入手続きをしておくね」
「・・・転入手続き?」

「そう、一応14歳ってことで学校に行かなければいけないんだよ。義務教育って奴さ」
「・・・そんな物もあったわね、失敗したわ」

「え?」
「・・・もう少し身体を成長させておけば良かった」
そう言いながら何故か自分の胸元を見るレイカ(レイ)。

話しながら、持ってきた果物をレイ(シンジ)は剥いていた。
差し出された林檎を咀嚼するレイカ(レイ)。

ベッドに腰掛けレイカ(レイ)の頭を撫でるレイ(シンジ)。
レイカ(レイ)はレイ(シンジ)に凭れ掛かり、眼を細めている。

その時、ドアをノックする音が聞こえた。
誰だろうと首を傾げる二人。

「こんにちはぁ〜」
「こんちわ」
「こんにちわ」
入ってきたのはオペレータ3人衆であった。

「ほら、レイ君、ここに居たでしょ?」
マヤが自慢気に胸を張って言う。

「おぉ〜これは聞きしに勝る美女だなぁ。俺は青葉シゲル。レイとは同僚なんだ」
「僕は、日向マコト。同じく同僚だよ」
「私は、伊吹マヤ。レイ君の彼女よ」

「ま、マヤさん、何て事を言うんですか」
マヤの言葉に焦るレイ(シンジ)

その様子を見てレイカ(レイ)は微笑んでいた。

「・・・フフフ、お兄様が何時もお世話になっております。綾波レイカです。レイと呼んで下さい。そう呼ばれてましたから」
そしてニッコリと微笑んだレイカ(レイ)に男性陣二人は直撃を喰らい、マヤは侮れないわねと警鐘を鳴らしていた。

何か異様な雰囲気を感じるレイ(シンジ)。

「あら貴方達、どうしてここに居るの?」
ノックもせず乱入してきたのはミサトである。

「僕達は午後から有給を取ったんです。ミサトさんこそ、どうしてここに?」
「わ、私は・・・その・・・レ、レイ君を捜していたのよ」

「ふっ無様ね」
その後ろからリツコが直撃弾を放った。

「リツコォ〜」
「随分、JAの発表会を早々に切り上げると思ったらこういう訳だったのねレイ君」
ジト目でレイ(シンジ)を見るリツコ。

「い、いや、あの、それよりミサトさんとリツコさんはどうして?」
「勿論、レイ君の妹さんに挨拶をしに来たのよ」
リツコはミサトと違い平然と言ってのけた。

「私は技術一課E計画担当博士の赤木リツコ・・・よろしく・・・リツコと呼んでもらって良いわよ」
「・・・綾波レイカ。レイと呼んで下さい」
そう言ってレイカ(レイ)はリツコの差し出した手を握り替えした。

「ウフ、レイ君は弟みたいに思っているの。今度は妹が出来たみたいで嬉しいわ」

「わ、私は作戦課長の葛城ミサト。ミサトでいいわよ」
「・・・宜しく」
レイカ(レイ)はミサトの握手も応対する。

「しっかし、美人ねぇ。レイ君、妹に手出しちゃ駄目よ」
「・・・時代は妹萌え。問題ないわ」

レイカ(レイ)の言葉に一瞬固まる一同。
いや、暫く固まっていた。

「あは、あはは、レイも冗談がきついなぁ・・・」
なんとか言葉を発したレイ(シンジ)であったが全員の白い眼が突き刺さる。

(誰か、僕に優しくしてよ)

懐かしい言葉を心の中で叫んでいるレイ(シンジ)であった。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。