第六話
レイ、心の向こうに


ゲンドウ、ユイ、シンジは一緒に住んでいるが、ジオフロントの中であった。
当初はNERVの外に家を構えていたのだが、ゲンドウは殆ど帰る事ができず、ユイがサルベージされてからは、それを隠すのが面倒になったからである。

従ってユイがサルベージされてからユイ自身は家に帰る事なくジオフロント内に住居を構えたのだ。
穴蔵と思いがちだが、そこはジオフロント、外よりも環境は良かった。
人工とは言え、緑があり、物静かな佇まいである。

シンジは友達を連れて来るわけには行かないが、それ程聞き分けの無い子供では無かった。
と言うより、良い子でいようとシンジ自身は努力していたのである。

それに兄と慕ってるレイがNERVに居る。
それはシンジに取って、魅力的な物であった。

実はシンジはユイがエヴァに取り込まれた事は知らなかった。
暫く両親が帰って来ないなと思っているところにゲンドウからジオフロント内に引っ越すと連絡が入ったのだ。

そして、ユイを見たシンジは驚愕する事になる。
ほんの1週間程前までは普通の少し若くて綺麗な母親だったのが、かなり若くて綺麗な母親になってしまったのだ。

「染めたの?」
シンジがユイを見た第一声はそれだった。

明らかに10歳程若返っているのだが、小学生であるシンジに母親の若さはそれ程重要では無かったのだ。
元々若く見えていたからと言うのが大きな要因ではあるが。

なんと説明しようか悩んでいたゲンドウとユイは拍子抜けし、結局「実験でこうなった」としか説明していない。
シンジも深く追求してこなかった。

何かあったら頼むとレイ(シンジ)にまで保険を掛けていたのにとユイは複雑な気持ちであった。



シンジが小学生の頃、シンジはよくレイ(シンジ)と話をする様になっていた。

新緑の中、ベンチに腰掛けるシンジとレイ(シンジ)。
ジオフロント内の遊歩道に面するベンチは静かで話をするのに最適であった。
外からの日差しは無い物のそれなりに日光が注がれる様に工夫されている。

「シンジ、お父さんとは仲良くやってるの?」
「うん、口を開くと【問題ない】とか【お前には失望した】とかしか言わないけどね」

レイ(シンジ)は混乱した。
それじゃぁ自分の時と何も変わってないでは無いか。
しかし、このシンジは仲良くやっていると言う。
どう言う事なのか?

「そ、それで仲良くやってるの?」
「まぁね、それが父さんのコミュニケーションだから」

(もしかして僕がイジケてただけで、父さんは変わってないって事?)
(・・・司令は碇君を大事に思っていたわ)
(はぁぁ・・・やっぱり僕が全て悪かったのか・・・)
(・・・環境が良くなかっただけだわ。このシンジ君も碇君よ)
(そっか、じゃぁ僕の遣ってる事も無駄では無いって事?)
(・・・そうね)

「お父さんの事がよく解っているんだね」
「親子だもん」
そう言って微笑むシンジの笑顔は眩しかった。


(「あなた、碇司令の子供でしょ?」「信じられないの?お父さんの仕事が」)
レイの言葉が思い出される。

(だから叩かれたのか)
(・・・なに?)

(ちょっと昔を思い出したんだ)
(・・・そう)

レイ(シンジ)が一つ成長した時であった。
シンジの中のレイはそう言う時も優しくシンジを包み込んでいた。



「これより起動実験を始める」
ゲンドウの声で実験が始まった。

作業員達はそれ程緊張していない。
今日初めてとは言え、既に初号機では何の問題も発生していない起動実験である。
淡々と作業は進められていた。

そして、暫くして事件は起こる。

「パルス逆流!!」
「中枢神経素子にも拒絶が始まっています!」
「コンタクト停止!」
ユイの指示で各職員が必死に現状を打開しようとする。

作業員達の努力を嘲笑うかのように零号機が拘束具を引き千切った。

「実験中止!」
「電源を落とせ!!」

ナオコが緊急用のカバーを素手で殴り割り、緊急停止レバーを引く。

「零号機内部電源に切り替わりました!」
リツコが状況を報告した。

黒い髪のリツコはまだ幼さを感じさせる。

零号機は壁を殴り付けている。
特殊装甲の壁がいとも簡単にへこみ、破壊されていく。

「完全停止まで30秒」
「恐れていた事態が起こってしまったの!」
ユイは誰にともなく呟いていた。

そして更に追い討ちを掛けるような事態へと発展する。

「オートイジェクション作動!!」
「いかん!!」
オペレータの報告に叫びをあげるゲンドウ。

「硬化ベークライトを!」
ユイの指示で硬化ベークライトが零号機に吹き付けられた。

それと同時に零号機の頚部から後方にプラグが射出される。

硬化ベークライトが凝固を始め、零号機の動きが鈍くなり始めた。

プラグは何度か壁や天井にぶつかり、尚も噴射し続けている。

「レイ!!」
叫びと共にゲンドウが実験室に飛び出して行く。

プラグはロケットの燃料が切れるまで天井にへばりつき、燃料が切れると共に落下し、床に叩きつけられた。

ゲンドウは直ぐに駆け寄り、ハッチを開けようとする。
ゲンドウは実験場内にある鉄棒を滑り降りて、救護班より早く駆付けたのである。
さながら消防士の様な動きであった。

「ぐおっ!」
余りの熱さに手を離し、同時に眼鏡が落ちる。

「救護班急いで!」
ユイは予め用意されていた救護班に救出を要請する。

漸く零号機の動きが止まった。
零号機は苦悩を感じているかの如く両手で頭を抑えている。

「くそっ!」
手が焼けるのも厭わずゲンドウは、無理やりハッチを抉じ開けた。

掌は焼け爛れ、感覚は殆ど無い。

「レイ!!」
ゲンドウは、プラグの中のシートに横たわるレイ(シンジ)に叫ぶ。

レイ(シンジ)はうっすらと目を開け美しく透き通る赤い瞳が見えた。
「・・・とうさん
レイ(シンジ)が我知らず呟いた言葉は小さな呟きとなって音としては認識出来なかった。

「大丈夫か!?レイ!」

ゆっくりと頷くレイ(シンジ)。

「そうか・・・」
僅かな笑みを浮かべるゲンドウ。
高温のLCLによって眼鏡のレンズが割れフレームが歪む。

レイ(シンジ)は、シンジの中のレイによりATフィールドによって護られており、怪我は大した事はなかった。

レイ(シンジ)が18歳、NERVの正式な職員となった当初の出来事であった。


暴走の原因はシンジの中のレイである。
レイ(シンジ)が(綾波は助けて貰ったんだよね)と言ったところ(・・・試してみれば)と言い、レイ(シンジ)がシンクロ開始と共に暴走させたのだ。

従ってユイ達に取っては原因は全く不明。
以後はダミーシステム開発用の専属機とされる事となる。



外は暗くなり、ジオフロント内の遊歩道も街灯に照らされている。
知らない者が見たらデートでもしている様に見える二人が歩いていた。

その二人の行き着く先には、ジオフロント内に存在する一軒家。
アメリカのホワイトハウスの様な物である。

その外観は、何故か瓦葺きの二階建て。
少し大きめではあるが、普通の一軒家であった。

「「こんばんはぁ〜」」
レイ(シンジ)とミサトが碇家の玄関を潜る。

「いらっしゃい」
「遅いわよ、またミサトがぐずぐずしてたんでしょ?」
既に先に来ていたリツコがレイ(シンジ)も一緒に来たのにミサトのせいと決めつけている。

「ちょっち、書類整理に手間取っちって・・・タハハ」
その通りだったらしい。

「さぁ、そんな所で立ち話してないで上がって頂戴な」
ユイが中へと勧める。
ユイはジオフロント内に住居を構えてからは、こうしてよく皆を食事に招待していた。

冬月、ナオコ、リツコ、マヤ、レイ(シンジ)は、よく碇家に食事を誘われていたのだが、第三使徒襲来前に着任したミサトは、今回が始めてであった。
ギリギリまでミサトはドイツで訓練を受けていたのだ。

本部着任から使徒襲来までは1週間程しかなかったのである。

レイ(シンジ)を空港まで迎えに行ったのは、本部にはリツコしか知り合いが居なく、唯一面識があったのと、恩を売っておこうという打算もあったのだ。

玄関から一歩中に入ると良い匂いが漂ってくる。
その匂いにミサトはとろけそうな顔をしていた。

ミサトに取って家庭料理など、セカンドインパクト以後、口にしたことが無かったのだ。
14歳で失語症となり、両親も居なかったミサトに家庭料理まで求めるのは酷と言う物であろう。
自分一人で生きていくために、そんな事に力を注いで居られなかったのだ。

努力の甲斐あってミサトは日本の最高学府を出る事が出来た。
そして、戦自に入りNERVへ出向、この若さで作戦課長まで上り詰めたのだ。
家事全般が苦手なのを責めるのは可哀想と言う物であろう。

その事をレイ(シンジ)はドイツ時代にミサトと呑みに付合っていて知る事となった。
しかし、現在の歳では一緒に住むには少し問題がある。
ミサトは今もペンペンと二人?暮らしであった。

その惨状は・・・察して知るべしである。

「碇、お前が居るから皆、緊張しているのではないか?」
「ム・・・問題ない」
ゲンドウと冬月は晩酌を酌み交わしている。

ここはゲンドウの家なのでそんな事を言われる筋合いは無いのだが、冬月はそんなゲンドウの反応を楽しんで居るのだ。

「シンジ君は彼女出来たぁ?」
「ま、マヤさん、何を言っているんですか」

「うふっ可愛いぃ」
マヤはシンジを玩具にして遊んでいる。

ゲンドウの目の前で恐い物を知らないのであろうか。

「マヤちゃんはどうなのかしら?」
「わ、私ですかぁ?私はレイ君一筋ですからぁ」
ユイの突っ込みにレイ(シンジ)の方をチラチラと見ながら答えるマヤ。

「あら、積極的ねぇ」
「もぅ、マヤさんからかわないで下さいよぉ」
鈍感3乗のレイ(シンジ)には通じない攻撃であった様だ。

マヤがよく碇家に居るのはユイからリツコと共にエヴァについて指導を受けており、ユイのお気に入りの一人であったのだ。
ナオコからもリツコと共にMAGIの指導を受けている。
NERV内外でリツコに次ぐ実力者として既にかなり有名な存在となっていた。

一部、和気藹々と和んでいるが、初めてのミサトはそれどころでは無い。
グビグビとビールを飲みながらも緊張している。

「・・・新郎の親族代表は任せておけ」

「「「「「ブッ!!」」」」」
いきなりのゲンドウの発言に場に居たユイを除く全員が吹き出した。

「し、司令・・・」
「フッ・・・問題ない」
ゲンドウは笑いを取れた事が嬉しいのか不気味に唇を吊上げてニヤリとしている。

「シンちゃんが女の子だったらレイ君に貰って貰ったんだけどねぇ」
「か、母さん!何訳の解らない事言ってるのさ!」

ゲンドウの発言で固まった場であったがユイの訳の解らない発言で場が和んだ。

大笑いする一同。
ミサトも漸く、笑う事が出来た様である。

「ミサトちゃん?葛城博士には私達とてもお世話になったの。ご恩返しと言うわけでは無いけどミサトちゃんも気兼ねなく家に遊びに来てね」
「あっは、はい、有り難う御座います」

ユイはミサトについても危惧していたのだ。
セカンドインパクトで唯一生き残ったと聞いた時、引き取ると言い出していた。

それを拒んだのはゼーレであった。
まだ、その時はゼーレに抗う力は持って居らず、逆らう事はできなかったのだ。
いや、今でもまだ表だってゼーレと対立するわけには行かない。

そこはゲンドウの手腕で隠されており、ゼーレからは相変わらず資金供給を受けているのだ。
国連の最高決議機関を敵に回せる者も居ないだろうが、そう言う意味ではゲンドウの手腕は優れていると言わざるを得ない。

はっきり言ってユイは傲慢である。
人類の存在した証をとエヴァを造り出した女である。
その追随を許さない才能は、自分の周り全てを幸せにしたいと言う思いを隠す事はない。

「それより、シンジ、後一月ぐらいでシンジと同い年の可愛い女の子が来るぞ」
「えっ?どうして?」
何のことだと言う顔をしながらもシンジの眼は輝いている。

正常に育った年頃の男の子と言う事であろう。

「惣流=アスカ=ラングレー、エヴァ弐号機のパイロットさ」
「ちょっちょっとそれって極秘事項じゃないの?!」
レイ(シンジ)の発言にミサトが焦る。

「来る事は極秘事項じゃないですよ、航路とかは極秘ですけど。ね?司令」
「ウム・・・問題ない」

「そんな僕と同い年でエヴァのパイロットなんてエリート、僕を相手してくれる訳ないじゃない」
「シンジ・・・お前には失望した」

「訳解んないって父さん」
「シンジ、彼女は確かに努力家だけど、14歳の女の子には違いないんだよ。少なくとも最初から自分と違うなんて距離を取ってたら相手のしようもないだろ?」

「うっゴメンなさい」
シンジの態度にレイ(シンジ)はニッコリと微笑む。

この時ユイの中である一つの計画が芽を吹いた事はレイ(シンジ)ですら知る由も無かった。

「ねっミサトさん。アスカは可愛い娘ですよね?」
「えっ?えぇそうねクォータでスタイルも良いし・・・」
ミサトはそう言いつつも(可愛いのはレイ君の前だけよ)と思って冷や汗を流していた。

「あっそうだ忘れてたわレイ君、これ新しいIDカード」
そう言いながら顔を真っ赤にしたリツコがシンジに鞄から取り出したIDカードを渡す。

(もう、そんな時期かぁ・・・)

「何レイ君、自分のカード見詰めちゃって?もしかしてナルシスト?」
「何言ってるんですか、ミサトさん。ただ・・・」

「ただ?」
「僕って写真写り悪いなぁって」
ポリポリと頭を掻いて誤魔化すレイ(シンジ)。

「どれどれ、見せて見せて」
そう言いながらレイ(シンジ)の手からIDカードを奪い取るマヤ。

「えぇぇ?良く撮れてると思うけどなぁ?前のは?」
「えっ?前のはこんなですけど?」
マヤの誘導に引っ掛かり、前のIDカードを見せるシンジ。

「ふぅ〜ん、じゃぁこの古い方は私が破棄しておいてあげるね。ハイッ」
そう言いながら新しいIDカードだけをレイ(シンジ)に渡すマヤ。

知能犯であった。
リツコもそれに気付いたが、ここで騒ぐとレイ(シンジ)に取り上げられかねない。
酔った頭でも的確に利益を考えるリツコ。

その後、まんまとレイ(シンジ)のIDカードをせしめ取ったマヤとリツコの間で色々な取引が成されたらしい。
主に、黙っていてあげるからとマヤが色々な作業を押しつけられただけであるが。



ジオフロントの遊歩道をリツコ、ミサト、マヤの3人が歩いていた。
レイ(シンジ)は本部内の居住区であるため道が違うのだ。

誰か一人なら送って行くところだが、3人も居れば送っていく必要も無いと早々に自分の部屋に退散したのである。

「どうしたの?ミサト」
「うぅんなんか幸せそうな家庭だなって当てられちゃった。あの司令がねぇって感じ?」

「そうね、私も初めての時は結構恐かったわ」
「えぇ〜?先輩でも恐かったんですかぁ?」

「でもってどう言う意味かしら?」
「あっいぇ、先輩って何時も毅然としてるから・・・」
あからさまにしまったと言う顔で舌を出すマヤ。

「貴女こそ、最初っからシンジ君をからかって、恐い物知らずって感じだったわよ」
「そんなぁ、もぅおっかなびっくりでしたよぉ」

((嘘付け!))
ミサトとリツコがユニゾンした瞬間であった。

「あぁぁでもレイ君ってなんであんなに鈍感なんだろ?」
「鈍感って言うより、なんか眼中に無いって感じよね」

「ふぇ〜っそれって私に魅力が無いって事ですかぁ?」
「まぁアイツの鈍感は今に始まった事じゃないわよ。ドイツ時代だって結構言い寄られて居たんだけどねぇ。まぁ悉くアスカに邪魔されてたけど」

「えっアスカちゃんってレイ君のファンなんですかぁ?」
「ファンなんて物じゃないわねあれは。もぅ暇があればベッタリ引っ付いていたわ」

「むぅ〜強敵かぁ」
「アイツもまさか14歳の子供に手を出すとは思えないけどね。何せ鈍感の3乗だし」

「そうなんですよねぇ・・・はぁ」
マヤの苦悩はまだまだ続く。

「マヤもとっとと諦めて青葉君と付合えば?熱烈なラブコールを送っているじゃない」
「えぇ〜青葉さんですかぁ?うぅ〜んやっぱりレイ君と比べると見劣りするんですよねぇ」

「あら?随分とはっきり言うのね」
「あは、少し酔ってるかもですぅ」

「それよりミサト?弐号機パイロットの護衛は誰だか知ってるわよね?」
「ぐっ思い出したくない事を・・・」

「えっえっ?何ですかぁ?」
「ミサトに熱烈なラブコールを送り続けている男よ」

「あの馬鹿はからかってるだけよ」
「へぇ〜葛城さんにもそんな人が居たんですねぇ〜」

「それってどう言う意味?」
「えっいやその、日向君も葛城さんに気があるみたいだし、葛城さんってモテるんですねって言う意味ですぅ」
冷や汗をかきながらも誤魔化すマヤ。

「本当かしら?」
そう言いながらミサトは頭上を見上げた。

星空では無く兵装ビルが天井からぶら下がるのが見える。
かなり高いので、その光の点滅は星に見えない事もない。

ミサトは本当に久しぶりに家庭と言う物を実感していたのだった。
そしてリツコの言葉を思い出す。

「リツコ!まさか加持もアスカと一緒に来るって事?」
「解らないわ、でも充分考えられる事よ」

「ぐぅっ悪夢だわ、今のうちに手を打っておかなきゃ」

(貴女の権限ではどうにもならないわよ)
リツコは心の中でほくそ笑んでいた。



(本当に家族が欲しかったのはミサトさんだったのかもね)
(・・・そうね)
レイ(シンジ)は早々に自宅に帰りシャワーを浴びていた。

頭からシャワーを浴びながらシンジの中のレイと話をしている。

(生きる事が不器用か・・・)
(・・・何?)

(零号機の起動実験の前の日にリツコさんがミサトさんの部屋で食事をしに来て、綾波のカードを僕に持って行ってくれって言った時に言っていたんだよ)
(・・・誰の事?)

(その時は綾波の事だったよ。父さんに似て不器用だって言っていた)
(・・・そう)

(でも、本当はリツコさんも、ミサトさんも僕も皆、不器用に生きていた)
(・・・・・)

(僕って本当子供だったんだなぁ)
(・・・そうね)

(あ、綾波ぃ・・・ちょっとは否定してよぉ)
(・・・碇君は私を押し倒して胸を揉んだわ)

(あ、あれは事故で、そんな揉んだなんて・・・)
(・・・事実よ、認めなさい)

(は、はい・・・)
(・・・碇君は大人になったわ)

(そ、そうかな?)
(・・・えぇ一皮剥けたわ)

丁度シャワーから出て身体を拭いている所だったのでレイ(シンジ)は顔を赤くしてそそくさと下着を履いた。


(ねぇ綾波?)
(・・・何?)

(加持さんってどうすれば良いと思う?)
(・・・どうしたいの?)

(う〜ん、放っておくとまた、真実とかを追い求めて死んじゃうんじゃないかなぁって)
(・・・あの人は信用できないわ)

(まぁねぇ自分の知りたい事の為には利用出来る物は全て利用するって感じだからね)
(・・・そうね)

(でも、ミサトさんが泣くんだよなぁ・・・多分アスカも)
(・・・弐号機パイロットは多分もう泣かない)

(どうして?)
(・・・鈍感)

(何だよそれ?)
(・・・以前はあの男に縋ってたけど、今は碇君に縋ってるわ)

(あぁそっかぁ。それって僕は加持さんより頼りになるって事?じゃないよなぁ歳が近いからかなぁ?)
(・・・碇君の方がちゃんと見てあげているから)

(あぁ、なんやかんやと言っても加持さんは自分の好奇心が先だからか)
(・・・・・)
シンジの中のレイもこの鈍感さには少し疲れる様だ。

(アスカも壊れない様に見ててあげないとな。僕には解らない事もあると思うから宜しくね綾波)
(・・・努力するわ)

(はぁ・・・でも加持さんは頭痛いなぁ・・・)
(・・・・・)
鈍感さに疲れるもシンジの中のレイはこんな所が優しいシンジ故だと思うのであった。

そしてレイ(シンジ)の魂を優しく包み込む。

(・・・碇君の思う通りにすればいい)
(ありがとう、綾波)

レイ(シンジ)は女神に包まれ穏やかな眠りに落ちて行った。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。