第四話
第二次直上会戦


(・・・碇君、非常召集、先に行ってるから)
(え?)
(・・・言ってみたかったの)
(はは・・・)


「総員、第一種戦闘配置。迎撃用意」
冬月の号令が発令所内に響く。

現在ゲンドウは出張中である。
ユイ、ナオコ、リツコの三人はそれぞれ技術部の所属である。
因みにユイとナオコは顧問であり、リツコが技術部長を任されている。

「迎撃用意」
「第三新東京市、戦闘形態に入ります」
オペレータ達から復唱と報告が次々と成されていく。

天井の都市では、自動的にシャッターがおり、道路にバリケードが作られていく。

「中央ブロック、収容開始」

不要なビルは地下に収納され、高層ビルには防御壁が覆っていく。
逆にジオフロント天井へ姿を見せるビル群。天蓋を覆っていく装甲シャッター。
次々と天井から出続けるビル群。

「第6ブロック、閉鎖。全館収容完了」
「政府及び関係各省へ通達終了」 「第5から第7管区まで、迎撃システム、スタートします」

ホロディスプレイ上では道路から次々とミサイル・ランチャーが顔を出し、ミサイル群が偽装ビルへと装填されている。
続いて山林の山肌からもミサイル・ランチャーが現れ、来るべき目標へ向け方向修正に入っていく。


「司令の居ぬ間に、第4の使徒襲来。意外と早かったわね」
「前は15年のブランク。今回はたったの3週間ですからね」
「こっちの都合はおかまいなしか。女性に嫌われるタイプね」

未だ指揮権はUN軍にあった。
NERVとしての迎撃準備が整っている今、発令所の面々は中央のメインモニターに映し出されているUN軍の攻撃を歯牙にも掛けず侵攻している第四使徒の動向を伺う以外に術は無い。

ミサトの言葉も、緊張と苛立たしさを紛らわすための物だろうとマコト達は好意的に受け取めている。

どの様な原理で浮いているのか解らない、航空力学を全く無視したそれは、森の奥を進み、木々が次々に倒壊していく。
ATフィールドを利用して浮いているとも思えない。
何故ならATフィールドが検知されていないから。

やがて湖の側を通過し、湖面に波が起こった。

烏賊の様に見えるそれはATフィールドすら張らず、山間部からのUN軍の迎撃は足止めにすら成っていなかった。

「税金の無駄遣いだな」
冬月の辛辣な呟きが、固唾を飲んで動向を見守る発令所に響いた。


「レイ君は?」
「既にエントリープラグに搭乗済み。何時でも発進できます」
ミサトの問い掛けに自らのディスプレイにその状況を映しだしているマヤが答えた。

「・・・そう」

そして、なんら有効な事が出来ずに、UN軍は退散する事となった。


「委員会からエヴァンゲリオンの出撃要請が来ています!」
シゲルがたった今届いた要請を、今か今かと待ちわびているであろうミサトに告げる。

「煩いわね、言われなくても出すわよ!」
そう言ったミサトの顔は、僅かにニヤリとしている。

ミサトの方を向いて報告していたシゲルはその表情を見たが、マコトには知らせないでおこうと、そっと胸の中に仕舞い込んだ。

「レイ君、出撃、いいわね?」
指揮官の指示とは思えないが、普段からフレンドリーな会話術しか持たないミサトである。
言葉こそ疑問形だが、他の回答がないミサトの確認。

「発進準備完了しています」
レイ(シンジ)は端的に了承の意を伝えた。

今回は最初からエヴァの中でモニターを見ていたため、敵の状況も解っている。

NERV職員として従事しているレイ(シンジ)には装備されている武器や迎撃システムの事も理解できているので説明を求める必要もない。

特別な指示が無い以上、特別な作戦があるわけでは無いと判断し了承する。

「エヴァンゲリオン初号機発進!」
ミサトの号令により、地上へと射出される初号機。

レイ(シンジ)は強烈なGを受けながら、戦闘をイメージしていた。



「ちっ、まただ!」
「また文字だけなんか?」

シェルター内で自分の小型テレビのチャンネルを切り替えても切り替えてもお花畑の静止画像であったケンスケは思わず声を漏らし、その声にトウジが反応した。

シンジもその脇で膝を抱えて座っている。
未だトウジと和解とまで至ってないのだが、ケンスケも居る事だし、気まずいままも3人で行動していたのだ。

「報道管制って奴だよ。我々民間人には見せてくれないんだ。こんなビッグイベントだっていうのに」

ケンスケは天井を見上げる。
爆音のような音と共に、微震が連続している。
後ろからつまらなそうにトウジも天井を見上げていた。

「ねぇ、ちょっと三人で話があるんだけど」
「なんや?」
「ちょっと、なっ」
目配せするケンスケ。

「しゃーないな、委員長!」
「なに?」

雀斑にお下げの少女、洞木ヒカリが女友達とのお喋りから振り返って返事をした。

「わしら三人、便所や」
「もう、ちゃんと済ませときなさいよ!」

そして再び友達とのお喋りに復帰するヒカリ

「すまんな」
トウジがそう言うもヒカリは既に聞いていない。

「ほら、シンジも付き合えよ」
「えっ?僕も?」
ケンスケに促され訳が解らないままトウジとケンスケと共にトイレに向かった。

「で、何や?」
ジャージをトランクスと一緒に膝まで下げ、用をたしながらトウジは振り返りもせず切り出した。

「死ぬまでに一度だけでもみたいんだよ!」
「上のドンパチか?」

「今度また何時敵が来てくれるかどうかもわかんないし」
「ケンスケ、お前なぁ・・・」
呆れるトウジ。

「この時を逃しては、あるいは永久に・・・なっ、頼むよ。ロック外すの手伝ってくれ」
拳を握り締め軍人口調で言うケンスケ。
最後の方はトウジを拝んでいる。

「外に出たら死んでまうで」

「ここに居たって、解らないよ。どうせ死ぬなら見てからがいい」
「なんの為にネルフがおんねん。ネルフが守ってくれるわい」

「そのネルフの決戦兵器って何なんだよ?シンジの知り合いがパイロットをしているロボットだよ?この前もそのロボットが俺たちを守ったんだ。それなのにトウジは誹謗中傷してさ。それでシンジと喧嘩になったんだろ?」

そこでケンスケはトウジの反応を伺う。
トウジはバツが悪そうにシンジをチラチラと見ている。

もう一押しだとケンスケは考え、追い打ちを掛けた。

「トウジにはそのロボットの戦いを見守る義務があるんじゃないのか?」

トウジの解答を待つケンスケ。
シンジはオドオドとトウジが何と答えるのか見守っていた。

「しゃあないなぁ。お前ホンマ自分の欲望に素直なやっちゃな」

なんやかんやと良いながらも英雄に憧れる中学二年生である。
トウジはケンスケの言葉に乗った。

「だ、駄目だよ、そんなの戦闘の邪魔になっちゃうよ」
ここに来てシンジが異を唱える。

レイ(シンジ)からもシェルターからは絶対に出ないようにと常に言われていたのだ。

「大丈夫だって、ここは街から離れたところに出るんだ。シンジだって戦闘を見もせずに庇うのはおかしくないか?」
ケンスケは意地の悪いニヤリとした笑いを浮かべながらシンジに言った。


ケンスケとトウジによる同時解除と共に、バシュンと開く非常ドア。

「や、やっぱり止めようよ」
「ほならシンジはここに居ったらええ」

「そんな、皆に迷惑が掛かるよぉ」

「シンジはここに居ろよ、臆病者には用はないよ」
ケンスケの言葉にムッとするシンジ。

「どうなっても知らないよ!」
暫く考えていたが結局シンジも二人の後を追ってしまった。



「最終安全装置、解除!エヴァンゲリオン初号機、リフト・オフ!!」
ミサトの号令と共に初号機が固定台から解放される。

使徒は未だ街外れの山間部に見えていた。

レイは近くの兵装ビルの角にある棒を引き抜く。
これは、エヴァの為に装備されているカーボンファイバーで出来た棒であった。

エヴァの身長程もあるそれは、棒高跳び用の棒の短めの物にも見える。
余談だが、カーボンロッドと名付けられたそれは技術部では釣り竿と呼ばれている。

今回、パレットガンは装備されていない。
ミサトから作戦部の要望として技術部に提出されようとしたが、レイ(シンジ)に却下されたのである。

銃火器で攻撃するなら、エヴァはATフィールドの中和に専念し、兵装ビルから発射すればよい。
わざわざガンタイプの発射装置を作る必要は無いと言う事であった。

エヴァがわざわざそんな大型のガンを装備しても、行動に制限が掛かるだけで、有効ではない。
エヴァが何か投げる方がよっぽど威力があるのである。
更にエヴァしか使えない、そんな大型のガンは制作にも維持にも費用が掛かる。
それよりは、もっと安価で肉弾戦で役に立つ物をと言う事で、このカーボンロッドが採用された。

強度は必要ない。
ATフィールドでコーティングするためだ。
それより、この長さで折れない柔軟な弾力性のある素材が採用された。

プログナイフの様に高振動も必要ない。
ATフィールドで阻まれれば意味がないし、そのために硬度を増すと折れやすくなるからだ。

レイ(シンジ)はカーボンロッドを横に一振りすると使徒に向かって跳躍した。

「アンビリカブルケーブルパージ、内部電源に切り替わりました!」
「アンビリカブルケーブル接続!」
マヤの報告が続く。

レイ(シンジ)は一っ飛びで市街地から市街地外れへと跳躍し、アンビリカブルケーブルを接続仕直したのだ。
出来るだけ市街地での戦闘を避けたいと考えている。
地下にはシェルターがあるし、迎撃都市と言えども、壊せば修復に時間もお金も掛かるからだ。

カーボンロッドを槍の様に構え使徒と対峙する初号機。

先手は使徒が取った。
肩口から現れた二本の光の鞭を初号機に振う使徒。

それを初号機はATフィールドでコーティングしたカーボンロッドで薙払う。

様子見であったのか再び膠着状態が訪れた。
その時、発令所内にアラートが鳴り響く。

「何?!」
じっと戦況を見守っていたミサトが邪魔をするなとばかりに叫んだ。

「近くのシェルター入り口のロックが解除されました」
「映像出して!」

音声と映像が発令所に流れる。

「し、シンジ!」
声を上げたのはユイであった。

「急いで保安部を向かわせて!」
「了解!」

そこには、シンジとケンスケ達との遣り取りが映し出されている。
その様子をユイはハラハラとした表情で見ていた。


発令所の遣り取りはレイ(シンジ)にも聞こえていた。

「まずいな・・・」
レイ(シンジ)の背後は子供達が出ている場所であった。

その一瞬の隙を使徒に突かれる。

「くっ!」
なんとかカーボンロッドで避けるも初号機は山の中腹に背中から倒れ込んだ。

エントリープラグの中でエラー音がけたたましく鳴り響く。

そこに使徒の鞭が襲い掛かる。



「なんで戦わんのや?」
「僕らが邪魔で戦えないんだよ!」
呆然としているトウジにシンジが怒鳴った。

ケンスケは「凄い!凄い!」と言いながら写真を撮っている。

『シンジ!早くシェルターに戻れっ!』
外部スピーカから聞こえるレイ(シンジ)の声。

「兄さん!は、はいっ!ほら、トウジ、ケンスケ急いで!」

「お、おぅ」
「も、もうちょっと・・・うわぁっ!」

その時、初号機に使徒が覆い被さって来て、初号機は肘を地面に付ける形になった。
その振動に蹌踉めく3人。

『レイ君!エヴァを現行モードでホールド。3人をエントリープラグの中へ収容して!』
『越権行為よ、葛城一尉。許可の無い民間人をエントリープラグには入れられないわ』
『私が許可します』
ミサトの言葉を頭上からリツコが制するもミサトは聞く耳を持たない。

『認められません!却下します』
『ユイさん?!』
頭上からミサトの言を却下したのはユイであった。

ミサトは自らの子供を見捨てるのかと言う眼でユイを睨んだ。

『綾波二尉!使徒殲滅に専念して下さい』
そこには自らの子供の安全よりNERVの任務の遂行に唇を噛み締めた母の姿があった。

『作戦に関する現責任者は私です』
ミサトは技術部から却下される謂われはないとばかりに主張する。

『今はカーボンロッドをATフィールドでコーティングしているから、あの鞭を捉えていられるわ。エントリープラグを射出した時点でATフィールドが消え、初号機もろとも真っ二つね』
却下の理由を述べたのはナオコであった。

自らの行き当たりばったりな命令に青くなるミサト。

『葛城君、現責任者は私だよ』
追い打ちを掛けるように冬月が言い放った。

『くっ!保安部は何をしているの!』
自らの失言を理解し、理不尽な怒りを保安部へと向けた。



その頃、ミサトの言葉より早く駆付けた保安部員によりシンジ達は保護されていた。
全員がシェルターに入り、その入り口を閉めた事を確認したレイ(シンジ)は使徒に反撃を開始する。

「ふぅっ借りは返させて貰うよ」
そう言って使徒を蹴り上げる初号機。

吹き飛ばされた使徒だがフワフワと空中に浮いている。

足を上げ、腹筋を使いバッと起き上がる初号機。
そのまま一気に使徒の肩口をカーボンロッドで叩きつぶす。
ATフィールドでコーティングされているそれは、使徒の両肩をもいだ。

苦痛に打ち拉がれているのか、身悶えている使徒のコアを間髪入れず、カーボンロッドを槍の様に突き刺し粉砕する。

ミサトの怒声と共に使徒は活動を停止した。

『パターン青、消滅、使徒沈黙しました』

シゲルの声に一番安堵したのはユイであったであろう。



「さて、葛城君、今回の件について早急に報告書と始末書を纏めたまえ」
「し、始末書です・・・か」

「命令系統の混乱、上官命令無視、利敵行為、その始末書の内容によって懲罰の判断を行う。以上だ」
「り、利敵行為・・・」
ミサトは項垂れて発令所を後にした。

自分は人命尊重のつもりだったのだ。
しかしナオコの説明から、それを利敵行為と言われても仕方がないことは理解していた。

ミサトは作戦指揮の責任者である。
当然、作戦時の決定権は高い物がある。
しかし、だからと言って組織の命令系統を無視して良いと言う物ではない。

作戦時に組織の最高責任者になるわけではないのだから。

そして、ミサトが書類を蔑ろにしていたことが仇となっていた。

技術部は技術部として作戦指揮にも異議を唱える事ができるのである。
作戦課長であるミサトは技術部顧問であるナオコやユイを始め技術部長であるリツコも上官であるのだ。

更に冬月は他の意味も込めていたが、それを知るのは後にマコトに教えて貰ってからになる。

それは、情報の管理である。
シェルターは、たかが中学生に開放される様なセキュリティーシステムでは無いのだ。
それはケンスケが父親の端末から抜き出した情報に依るものだが、その情報の漏洩も問題なのである。
使徒が来る前は対使徒に関する作戦課としての仕事は無かった。
従って情報戦術による作戦責任も作戦課の仕事となっていたのである。

結果、マコトの助けもあり、今回の始末書により多分に反省しているとして司令の居ない今、冬月は訓告と減給処分に止めた。

「碇が居たらクビだったぞ」
と脅しを添えて。



シンジ達は保安部に連れられ、NERVの取調室に居た。

ケンスケが写真を撮っていたため、スパイ容疑が掛けられたのである。
相手が中学生と言う事もあり、保安部員は形式的に処理を済ませ少しお灸を据えて帰そうと考えていた。

「母さん・・・」
そこにユイがやって来て、唐突にシンジに平手を見舞った。

「シンジが二人を止めた事は監視カメラで見ていました。でも、結局シェルターを出てしまえば、それは皆を危険に晒し、戦闘の邪魔をする事以外の何物でもないのよ」
「ごめんなさい・・・」
シンジは俯いて謝るしか出来ない。

初めは入ってきた女性の美しさに見惚れ、それがシンジの母親だと知り、その若さに驚愕していたトウジとケンスケであったが、自分達を止めたシンジですら、怒られている。
その事実に、トウジとケンスケは自分達がどれくらい怒られるのかを想像して、震えていた。

ユイは本当は無事であったシンジを今すぐにでも抱締めたかった。
しかし、親として叱る事は叱っておかなければならない。
心を鬼にしてシンジを叱責していたのだ。

「バカッ!」
しかし、その決意も長く続かず、シンジを抱締めて泣き出してしまった。

「ごめんなさい・・・」
シンジも泣きながら謝っている。

それを影から見ていたレイ(シンジ)は良かったと安堵していた。

そこにリツコがやって来て着替えを済ましているレイ(シンジ)と共に中に入る。
レイ(シンジ)は、「後は僕達が」と言い、保安部員達は外に引き上げて行った。

「さて、貴方達には、どれ程危険な事をしたのかを私から説明させて貰うわ」
「兄さん!とリツコさん」
入ってきた二人を見てシンジが名前を呼ぶ。

「に、兄さんってこの人が、あんロボットのパイロット・・・さんでっか」
「そう、僕があのロボット、エヴァンゲリオン初号機のパイロット綾波レイだよ。鈴原トウジ君?」
横でリツコがロボットじゃないわよとか言っているが子供にそこまで知らせる必要はないだろう。

「え?わいの名前を?」
「あぁシンジから聞いているよ」
その言葉に顔を背けるトウジ。

一方、ケンスケはレイ(シンジ)に見惚れていた。
「恰好良い・・・」

レイ(シンジ)の容姿は銀髪に紅眼。
端正で中性的な顔立ちな上に筋肉質ではないが引き締まった体型をしている。
モデルと言っても信じられるぐらいである。

そして、リツコからシェルターを開けっ放しにするとどれ程危険であるのか。
最悪シェルター内の人間が全員死んでいた事。
戦闘区域に出る事の危険性。
そして3人が居た事により現実的に窮地に陥った事。
などを懇々と説明されたのである。

それはもう、時折、質問され、どれ程理解したかを確かめられながら。

「さて、最後になるけど、相田ケンスケ君?貴方はどうやってシェルターの開放方法を知ったのかしら?」
「そ、それは・・・」
流石のケンスケもここで親のパスワードを盗み出してハッキングしたとは言えなかった。

「貴方のお父様は広報部の方ね、シェルターの開放方法はNERVの管理職であるから知っているとは思うけど、お父様から聞いたの?」
「い、いえ違います・・・」

「そう、なら貴方が勝手に調べたと言うことね?」
「は、はい・・・」

「でも、これはNERV内では機密事項に属するわ。おいそれと調べられる物ではないのよ」
「え?」
ケンスケにはリツコの言わんとしている意味が理解できなかった。

「ケンスケ君?正直に言わないと君の親御さんにも迷惑が掛かる事になるよ?君はシェルターを抜け出すばかりか、機密事項であるエヴァの戦闘場面を写真に収めていた。これは立派なスパイ行為なんだよ。つまり、君が正直に言わないとその方法を誰かに教えられ写真を撮る事を目的としていたと取られるわけだ」

「そ、そんな・・・ち、違います。俺、いや僕はパパの、あっ父のパソコンからその入って・・・」
ケンスケはレイ(シンジ)の言葉に漸く自分に掛けられている容疑を理解し焦った。

「そう、解ったわ、残念だけど貴方のお父様にも機密管理義務違反として懲罰が及ぶ事になります」
「そ、そんな・・・正直に話したのに」

「ケンスケ君、残念だけど、これは君のお父さんの責任なんだよ。家族にさえ教える事は出来ない機密事項を漏洩させたね。そして君はそんなお父さんの立場を考えず行動した。その結果なんだよ」

ケンスケも俯くしか出来ない。

「シンジ?」
「は、はいっ!」

「シンジは止めようとしたんだよね?なんで最後まで止めなかった?」
「そ、それは・・・」

「シンジが止めていれば、誰も危険な眼に会わなかった。そうだろ?」
「・・・うん」

「中途半端だと結局、無駄骨になる。それよりも悪い結果になる事もある。シンジだって不本意だろ?折角止めたのに結局怖い思いをして、怒られて」
「・・・うん」

「正しいと思った事は遣り切るのも大事だぞ」
「はい」
シンジの返事を聞いてレイ(シンジ)はとても満足そうに優しく微笑んだ。

「さて、鈴原トウジ君?妹さんがこの前の戦闘時に怪我したそうだね?それで僕の邪魔をしに今回は戦場に出て来たのかな?」
「そ、そんな・・・わいは・・・」

ん?と首を傾げレイ(シンジ)はトウジの次ぎの言葉を待った。

「わいは、その・・・」

「僕を恨みたいなら恨めば良いよ。でもねここは迎撃都市なんだ。中学生の君にこんな事を言うのは酷かも知れないが、僕達はそれを前提に作戦を立てている。今日だって僕が危険なら君達を見捨てていたよ。それが戦闘だ。悪いけど僕は勝たなければいけない。負ける事は許されないんだよ。それが僕の仕事だからね」
心にもない事をレイ(シンジ)は言う。

「・・・・・」
トウジにはそんな理屈は理解できない。

「でも僕は負けたからと言ってそれを君達のせいにはしない。それは責任転嫁だからね。それで君達を責めたら八つ当たりだし、そんなの漢らしくないだろ?」
ハッと顔を上げるトウジ。

漢らしいと言う言葉はトウジに有効であった。
当然レイ(シンジ)は計算して言葉を選んでいる。

「じゃぁ後は親御さんが迎えに来たら帰っていいから」
そう言ってレイ(シンジ)とリツコは取調室を後にした。


「貴方、保父さんとか似合うかもね」
「う〜ん、それはマヤさんの方が適任なような・・・」

「それもそうね」
「NERVをクビになったら考えますよ」
そう話しながら二人は去っていった。


レイ(シンジ)は、トウジとケンスケの親に、こってりと絞っておいたので後は親としての愛情を注いであげて下さいと頼んでいた。
そして二人はその通り、たっぷりと拳骨と言う名の親の愛情を注がれる事となった。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。