第参話
見知らぬ、天井


小鳥の囀りで眼が覚める。
頭が重い・・・身体も重い・・・

「・・・知らない天井だ」
眼を醒ましたレイ(シンジ)は、その見慣れない天井を見て呟いた。

徐々に覚醒してきた頭は、その頭痛を訴えている。

それは、まだ良いのだが身体が動かない。
寝惚けと頭痛に逆らいながら周りを確認するレイ(シンジ)。

何故か自分の手足、身体に至るまで枕としている5〜6人の女性の頭が見える。
どうやら酔って寝てしまった所で枕とされたらしい。

皆を起こさない様に手を抜き、足を抜き、なんとか身体を自由にした。
そこに寝ているのは、マヤを初めとするNERV職員の女性達。

周りを見回すと10数人が雑魚寝している。
そして、自分の居る場所を確認し苦笑する。
それはミサトの部屋の居間であったのだ。

そのゴミの量の壮絶さに思わず苦笑するが徐々に懐かしさが込み上げてくる。
色々な想い出が走馬燈の様に流れて行く。

「ただいま」「おかえりなさい」の儀式。
ダイニングキッチンにあるテーブルでビールを飲むミサト。
ユニゾン訓練。
なし崩しの同居。
ミサトの向かいには文句を言いながら食事を取るアスカ。
アコーディオンカーテンからバスタオル姿で出て来るアスカ。


戻らない時間。
壊した時間。


我知らず涙が流れている事にレイ(シンジ)は気が付いた。
勝手知ったる他人の家では無いが、レイ(シンジ)は躊躇なく洗面所に行き顔を洗う。
そこは、やはり懐かしいと言うか何と言うかミサトの下着が多量に干してある。

「クェ〜ッ」
苦笑いを浮かべている所にペンペンがやって来た。

「しぃ〜っ、皆が起きちゃうよ」
レイ(シンジ)はペンペンにそう言うと頭を撫でる。

「クェ〜ッ」
さっきより若干小さめの声で心地良さを表現するペンペン。

レイ(シンジ)は、そんなペンペンに微笑むとそぉっと洗面所を出た。

まだ誰も起きる気配は無い。

祝賀会の後、2次会3次会とレイ(シンジ)は連れ回され、最後にミサトの家で呑む事になったのだ。
と言うかミサトが強引に引っ張って行った。
そこまで着いてきた強者達がミサトの家で寝ていると言う訳である。

はっきり言ってレイ(シンジ)は酒に強い。
しかし、帰国後、休む間もなくの戦闘であり、流石のレイ(シンジ)も疲れて居たのだろう。
ミサトの家で1〜2杯呑んでから記憶が無い。
きっと安心して寝てしまったのだろうと自分で納得した。

皆を起こさない様に外に出るレイ(シンジ)
扉の音がしないように締めて漸く伸びをした。

「うっぅう〜〜〜っん」

日差しからして、まだ朝も早い。
時計を見ると6時を過ぎたぐらいであった。

「変ってないなぁ」
自分で言って吹き出してしまう。

変ってない所か、自分の記憶が今なのだ。
変っている方がおかしい。

トウジやケンスケやアスカやヒカリが歩いていた空間。
そしてレイ。

やはり涙が頬を伝う。

「僕って泣き虫だな」
当然だがシンジの中のレイは、そんな時、何も言わずにシンジの心を優しく包む。

ふわっとした暖かさがレイ(シンジ)の心を覆った、

(大丈夫だよ綾波、ちょっと懐かしかっただけだよ)
(・・・そう)

聞こえて来る言葉は相変わらず素っ気ないが、触れてる魂は慈愛に満ちている。

そしてレイ(シンジ)は、清々しい朝の道をNERVへと向かった。
彼の住居はNERV内の居住区だからだ。



この10年、色んな事があった。

まずレイ(シンジ)は、当初ゲヒルンに缶詰状態であった。
ユイは一緒に住まそうと言ったのだが、ゲンドウが身元を確認するまで表に出すのは危険だと言ったのである。

当然の事だが、ゲンドウ達はまず捜索願いが出されていないかを確認した。
しかし、その様な情報は流れて来なかったのだ。

次ぎに考えられたのが、ゼーレの回し者と言う線である。
こちらは、ゼーレもファーストチルドレンが初号機を起動した事に驚きを示しており、ファーストチルドレンの詳細を欲しがった。

ここで、逆にゼーレに拉致される可能性も出てきたのだ。

当時のゲヒルンでは、子供一人のために護衛を付ける程、人材が豊富ではなかったのである。
従ってレイ(シンジ)は中学、高校の同級生と言う者は存在しない。

ユイは毎週の様にシンジを連れてきた。
所謂、土日と呼ばれる休日にユイはシンジを伴いレイ(シンジ)の所に顔を出していたのだ。
それは外の世界から隔離された生活をしていたレイ(シンジ)に対するユイなりの配慮であった。
その時レイ(シンジ)は、子守となっていたのでシンジはレイ(シンジ)を慕っているのだ。

そして、ゲヒルンがNERVへと組織変更し、レイ(シンジ)が18歳となった時に正式にNERV職員として登録した。
レイ(シンジ)は通信教育で大学まで進み、卒業と同時に国連軍の軍事教練へ何度か参加し現在の階級を得ている。

そのうちの一つにドイツでの教練もあり、その時にミサトやアスカと会っている。
ミサトは周りに日本人が居なかった事から、容姿はとても日本人とは見えないが、日本語でコミュニケーションが取れるレイ(シンジ)を結構引っ張り出して飲みに行っていた。

年齢的には4〜5歳の差があるのだが、レイ(シンジ)は18歳で大学を卒業しており階級的には、余り変らなかったのである。

アスカはレイ(シンジ)がエヴァのパイロットと言う事で近付いて来たのだが、ドイツの職員とは違い、自分に対し一人の女性として扱ってくれるレイ(シンジ)が気に入り、纏わりついて居た。
レイ(シンジ)の優しさに触れれば加持の態度は自分を子供扱いして持ち上げているだけだと言う事が解ってしまったのだ。


この10年間で一番大きな事件はナオコとユイがエヴァに取り込まれた事とそのサルベージが成功した事である。

MAGIが完成し、リツコがNERVに入った頃、まずナオコが零号機に取り込まれた。
ドイツの実験失敗の報告を受けていたが、レイ(シンジ)以外にデータが無くキョウコと同じく自らを被験者としたのだ。

その時のリツコは大した者であった。
母親の状況にも喚き散らさず、ユイと共にサルベージ計画を着々と進めたのである。

そのサルベージには、やはり一月の時間が掛かったが、レイ(シンジ)が手伝い、コアから直接サルベージを行った。
勿論、シンジの中のレイの力である。

しかし、レイ(シンジ)は、まだ剥き出しであった零号機のコアに触れていただけだったので誰もレイ(シンジ)の力だとは思っていなかった。

この時、ナオコはブロンドと成ってサルベージされた。
容姿も10年ほど若返って。

当初はサルベージが成功した事に皆、喜び、あまり気にしていなかったがユイだけは、その時取れたデータを必死に解析していた。

それは、親友のキョウコをサルベージ出来るかも知れないと思ったからである。

そして、ユイはドイツのMAGIをナオコと共にハッキングし、弐号機のコアの状態を突止めた。
その結果、肉体ごと取り込まれたナオコの時とは若干違う事が発見され、同じ方法だけでは、サルベージは行えないと結論付けたのだった。

ユイはアスカがシンクロ出来る事で、キョウコ自身がエヴァに残っていると結論付けていたのだ。

そして、今度はユイが自分を被験者とした。
これはサルベージを前提とした物で、既にサルベージ計画は出来上がった上で行ったのである。
しかし、やはり完全な物ではなく、レイ(シンジ)の力を以て成功となった。

その結果にユイは落胆したものの、レイ(シンジ)が手伝った時のデータも取れる様に細工していたのは流石だ。

サルベージされたユイはやはりブロンドで若返っていた。
同じブロンドでもナオコは金髪、ユイは銀髪に近かった。

遺伝子を調べた結果はユイもナオコも人そのものであり、取り込まれる前と変わりが無い事も確認されている。

ここで収まらないのがリツコである。
なにせ、自分の母親と、自分より遙かに年上であるはずのユイが自分より若く見えるのである。
しかし、それを理由に自分も被験者となるとは言い出せない。

結果、リツコは金髪に黒眉と言う事になった。
ささやかな抵抗と本人は言っている。


「でも、サルベージが完璧になれば、これは究極の延命治療ね?」
「どうして?」

「だって若返るって事は、永遠の命と同じよ」
「それは解らないわ、私達だって寿命が延びたのかどうかは不明よ」

「それもそうね、見た目だけ若返っただけで、この先呆ける可能性も否めないわ」
「サルベージが完璧になれば若返るかどうかも疑問よ?」

「確かに、それは言えるわ」
「でも、女性にとっては、かなり生唾物である事は否めないわね」
そう言いながらナオコは何処からともなく取り出した手鏡で自分の顔を眺めた。

「使徒殲滅が終ったら、若返りの研究にしましょうか?」
「それは売れるわね」
怪しい密談をするユイとナオコであった。


現在、零号機はダミーシステム開発専属機として使用されている。
ダミーシステムとは機械的にシンクロ情報を流しエヴァを起動させるシステムだ。

二回取り込まれた事はNERVでは最高機密とされているが、このデータが大きく、レイ(シンジ)のデータと合わせてダミーシステムはかなり開発が進んでいた。

ATフィールドを張れないまでも、簡単な動作はオペレータの指示で行える様になっている。
ダミーシステムと言うより現在は、まだ遠隔操作システムと言う感じである。

従ってコード707、所謂チルドレン候補者は現時点では存在しない。



人類補完委員会、通信会議で行われる国連の実質的最高決定機関。

議長は、ドイツのキールローレンツ、他議員はアメリカ、フランス、イギリス、ロシアの代表である。
そして今、先の使徒戦報告のためゲンドウが出席していた。

『碇君、今回の使徒殲滅はご苦労であった』
『被害も予想以上に少ない。NERVとエヴァを上手く使っているようだな』

『まぁ、我々の先行投資が無駄にはならなかったとも言えるがね』
『だが、君の仕事はそれだけではないだろう』
『左様、人類補完計画、我々にとってこの計画こそがこの絶望的状況下における唯一の希望なのだ』

「承知しております」
ゲンドウは茶番に付合わされており、機嫌が悪いのだが、手を顔の前に組み、太々しい態度はいつもの事なので、老人達も気にも留めない。

『明らかになってしまった使徒とエヴァの存在、どうするつもりかね』

「その件に関してはお任せを、既に対処済みです」

『何れにせよ使徒再来による計画の遅延は認められない。予算に関しては一考しよう』

「はい」

『では、後は委員会の仕事だ』

一人を残し委員達の姿が消えた。

『碇、後戻りはできんぞ』

「解っております、全てはゼーレのシナリオ通りに」
ゲンドウはにやりと口元を歪ませた。

キールの姿が消える。

「・・・解っている。老人達に時間がない事は」
ゲンドウの呟きは暗闇に溶けていった。



街外れの戦闘後地に急遽建設されたプレハブ小屋。
その中でミサトはテレビを見ていた。
ツナギの作業服の上着をはだけ、黒いタンクトップ姿のミサトは団扇で仰いで暑さに対向していた。
その身体に浮き出ている汗から、かなり暑そうだ。

『昨夜の第3新東京市での爆弾テロに対して政府は』
ミサトはチャンネルを変えた。

『え〜ですから、その件につきましては、後日』
ミサトはチャンネルを変えた。

『正式な発表を以て』
ミサトはチャンネルを変えた。

『詳細を発表』
ミサトはチャンネルを変えた。

『したいの』
ミサトはテレビの電源を切りリモコンを放り投げる。

「シナリオはB−22か」
そう呟くとミサトは両手を頭の後ろで組み大きく仰け反った。

解ってはいたが、こうまで鮮やかにマスコミに圧力をかけるとは、ミサトは少し複雑な心境となっていた。

「作られた真実、事実と言うものね」
「解ってるわよ・・・でもね・・・」

ミサトが眼を向けた小屋の外では、大人数を投入しての探索作業が行われている。
ちょっと高いビルに登れば崩壊した山と作業員達が見える。

「広報部は喜んでいたわよ?初めて仕事ができたって皆、張り切っているわ」
「恐怖から逃れるために仕事に打ち込む・・・の間違いじゃないの?」

あの時、ミサト自身もそうで無かったとは否定できないから・・・

「言えるわね。貴女はどう?」
「決まってるでしょ?誰だって怖いわよ」
事務的なリツコの口調に対し、ミサトは奥歯に物が挟まった様な話し方であった。

ミサトは窓越しに使徒の残骸を探している作業員達を見る。
大きく空いたクレーター状の山腹。
使徒が叩き付けられた時に出来たのであろう。
そこで沢山の人が探索している。
爆破した使徒の欠片でもないかと探しているのである。

民間人に見つけられ、何かあると困るからであった。
その欠片が敵対組織に渡る事を恐れているのと、民間人にその存在の証拠を掴ませる訳には行かなかったからである。

「しかし、昨晩、あれだけ飲んだのによく飲めるわね」
クーラーボックスからビールを出して飲むミサトをリツコは呆れ顔で見ていた。

「迎酒よ」
仕事中なのよと言うリツコの視線を物ともせずミサトは一気に一缶空けた。



レイ(シンジ)がNERVのトレーニングルームに居るところにシンジがやって来た。

「おっ珍しいね、僕に用?」
「いえ、特に用って訳じゃないんですけど・・・」

シンジの歯切れの悪いオドオドした態度にレイ(シンジ)は少し苦笑しながらも屈んでシンジと目線を合わせてシンジの眼を覗き込んだ。

眼を逸らすシンジ。

(・・・碇君)
(うん、多分トウジだね)

よく見るとシンジの頬は腫れている。
殴り合いの喧嘩をしましたと言うのがありありと解った。

「丁度、切りが良くてね、ジュースでも奢るよ」
シンジはコクンと頷きレイ(シンジ)の後に付いて来る。

休憩所でシンジにジュースを自分はスポーツドリンクを自動販売機で買ってシンジに渡した。

ジュースを一口飲んで俯いているシンジ。

「友達と喧嘩でもした?」
「うん・・・」
備え付けの椅子に並んで座り、お互いの前を向いて話す。

「珍しいな、この間喧嘩したって聞いたのは、確か・・・3年前ぐらいだったかな」
「・・・・・」
沈黙しているシンジ。

レイ(シンジ)は言い出し辛いのかと、促す事にした。

「この間の戦闘で、兄弟でも怪我して、パイロットが悪いとか言われて、喧嘩になった?」
「どうして?!」
シンジは眼を見開いた。

正しくその通りだったのである。

学校でトウジが妹が怪我をしたと騒いでいた。
そして、ロボットのパイロットのせいだと言い出したのである。
シンジはレイ(シンジ)がパイロットであることを知っている。
自分の慕う兄を悪く言われて怒ったのであった。

「その怪我は酷いのかな?」
「ううん、シェルターの階段で転けて挫いただけだって。だから兄さんは何の関係もないのにトウジの奴が・・・」

シンジは苦笑した。
トウジは自分が護れなかった事に苛立ちを覚え、他の物に八つ当たりをしただけなのである。

「そっか、僕を庇ってくれたんだね、ありがとう」
「そんな・・・だって本当にトウジは八つ当たりで中傷してるだけだったから」

「トウジ君て言うの?その彼も今頃は後悔しているよ。シンジも彼とは仲が良かったんだろ?」
「うん、だから余計に腹が立って・・・」
シンジはそう言いながら、ジュースの缶を握り締めている。

「彼も今頃は頭が冷めているよ。明日、学校に行ったら殴って悪かったぐらい言えばきっと仲直りできるよ」
「そうかな?」

「もしかしたら2〜3日掛かるかも知れないけど、それならそれで待てば良いんじゃない?シンジだってそのトウジ君の事は嫌いじゃないんだろ?」
「うん・・・」
レイ(シンジ)はそう言うとシンジの頭をクシャッと撫でた。

シンジは赤くなっているが少し嬉しそうにしている。

このシンジは素直で人の話も聞くのだが内罰的なのは、どうやら性格だったようだ。
自分の取った行動に常に自信が持てないで居るのだ。

そんな時、レイ(シンジ)に話をしに来る。
今回はレイ(シンジ)が絡んでいたので尚更、話をしたかったのだろう。


「あら、シンジ君。今日はどうしたの?」
そこにマヤがやって来た。

「あっちょっと兄さんと話がしたくて・・・」
「そう、じゃぁ私邪魔かな?」
マヤが腰を屈めてシンジに話しかける。

こう言う仕草が妙に似合うマヤである。
技術者としての資質もさることながら、レイ(シンジ)はマヤ達と友達付き合いをするうちにマヤ等は保母さんか学校の先生の方が似合ってるのになどと最近は思っていた。

童顔のマヤの顔が眼の前に来てシンジは赤くなる。

「いえ、もう終りましたから、じゃぁ兄さんまた」
「うん、あんまり思い詰めないで明日会ったらな?」

シンジはその言葉に頷くとマヤに一礼して走って行った。

「あら、本当に悪いことしちゃったかな?」
「いや、本当に話は丁度終ったところでしたから」

「そう?ウフ、じゃぁ今度は私の話を聞いて貰おうかな」
マヤは何故か嬉しそうに自分のジュースを買うとレイ(シンジ)の隣に座った。

「マ、マヤさん?席は一杯空いてますよ?」
「私が隣に座ると嫌なの?」

「い、嫌じゃないですよ。勿論」
「じゃぁいいわね」
積極的にアプローチしているマヤだが、鈍感王のレイ(シンジ)はそんな事は気付かない。

(こんな所、シゲルさんに見つかったら後で何言われるか・・・)
等と冷や汗を流しているだけであった。



「なぁレイ?マヤちゃんって俺の事どう思ってると思う?」
「どうって言われても、僕はマヤさんじゃないから解りませんよ」
レイ(シンジ)は、この前の祝賀会に参加できなかったからとシゲルに付きあわされていた。

「俺も祝ってやりたいんだよぉ〜」
と言われればレイ(シンジ)としては断れなかったのだ。

「そんなに気になるなら僕なんかじゃなくってマヤさんを誘えば良かったのに」
「勿論、誘ったさ、でもこの間祝賀会で飲みすぎたからって断られたんだよ!」

「はぁ・・・僕はマヤさんの代わりだったんですね?」
「ちっがぁぅう!俺の愚痴に付き合うのはレイしか居ない!」

「それってもっと酷くないです?」
「あはは、冗談だよ冗談、はぁ・・・でも今度、愛の歌でも歌ってみるかなぁ」

そう言えばシゲルは発令所にギターを持ち込んでいる。
それは逆効果だとレイ(シンジ)ですら冷や汗を流した。

「それより、レイはそんなにモテるのに何で彼女作らないんだ?」
「えっ?僕はモテてませんよ。気が弱いから皆、からかい易いだけですよ」

「はぁ・・・そう言う鈍感なところが良いのかねぇ」
シゲルもレイ(シンジ)の鈍感さに匙を投げるのであった。

「じゃぁさ、意中の人とか居ないわけ?」
「大事に思っている人は居ますよ」

(・・・誰?)

「へぇ?誰?誰?」
「シゲルさんの知らない人ですよ」

(勿論、綾波だよ)

「何それ?NERVの人間じゃないって事か?これはニュースだぞ!」
「何がニュースなんですか。僕が誰を好きでも誰も気にしませんよ」

(・・・な、何を言うのよ)

「解ってないなぁ、で、どこで知り合ったんだ?もう付き合ってるのか?」
「いえ、彼女はずっと僕の心の中に居ます」

(嫌だった?)

「それって、まさか・・・死んじゃったとか?」
「う〜んどうなんだろう?」
シゲルは拙い事を言ったか?と言う顔をしたがレイ(シンジ)の様子は違っていた。

(・・・嫌じゃない)

「何、それ?憧れてるってだけ?」
「いや、そうでも無いんですけどねぇ」

「まさか、アイドルとか?」
「違いますよ」

「でも、あれだよな、NERVも公開されてればレイも一躍アイドルだったのにな」
「僕なんかがアイドルになれるわけ無いじゃないですか」

既にNERV内ではアイドル以上の存在なのだが、そんな事は気が付いていない。

「馬っ鹿だなぁ?人類を護る決戦兵器のパイロットてだけでアイドル以上だって」
「そんなもんですかねぇ?」

「そんなもんだよ」

その後はシゲルお得意の音楽の話を延々と聞かされる事になった。

前は話もしなかったから、シゲルやマコトやマヤの事はあまり知らなかった。
しかし、いざ友達付き合いすると、色々な悩みを持っていたり、現状に不安を抱いていた りでレイ(シンジ)も驚いたのである。

ここに来て漸く人との付き合いが出来る様になったのだ。

そう言う意味では、中学、高校と同級生に触れなかったのは幸いだったかも知れない。
周りに無意味に傷付ける存在が居なかった為、穏やかに生活出来たのだ。

元々周りの事など見ず、どうせ裏切られるだけだと自ら閉じこもっていたシンジである。
他人に構って欲しい癖に、その努力をせず、勝手に思い込んで、思い通りにならなかったら裏切ったと言う。
それは方法こそ違えアスカと全く同じ行動であったことだと考えられるだけの環境となっていたのだ。

そして翌日、レイ(シンジ)はシゲルの部屋で眼を醒ました。

「・・・また、知らない天井だ」



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。