第弐話
第一次直上会戦
海中を進む、異様な生物。
その大きさは全長40mほどもある。
ゆっくりと進んで居たその生物は、今は廃墟と化した旧熱海近辺の海岸に上陸した。
戦略自衛隊は慌てていた。
セカンドインパクトの混乱に乗じて作られた国連配下の軍隊である。
専守防衛の自衛隊では、混乱の時期を乗り切れないと作られた軍隊組織だ。
「対地レーダーに正体不明の反応、あと2分で旧熱海に上陸します」
「なんだと?!NERVの言っていた事が起こったと言うのか?!」
「いかん!なんとしても食い止めろ!」
スクリーンに映ったその姿に今まで騒いでいた高官達が息を飲んだ。
「怪獣?」
「これが使徒だと言うのか?」
「統幕会議を至急!政府にも意見を仰いでおけ!」
そこで一番偉そうな人物が怒鳴った。
その頃、第三新東京市へ向かう高速道路を一台の青いアルピーヌ・ルノーがとんでもない速度で走っていた。
「ミ、ミサトさん!もう少しお手柔らかに」
「使徒が上陸したのよ!悠長な事は言ってられないわ!」
「事故ったら本末転倒ですよっ?!」
「あんたの飛行機が遅れなければこんなに飛ばしてないわよっ!」
「それは僕のせいじゃ無いですよぉ〜」
「あぁ〜煩い!黙ってなさい!舌噛むわよ!」
(・・・碇君は私が護る)
(あ、ありがとう綾波)
運転している女性は赤いジャケットにキュロットと言う制服だかなんだか解らない恰好をしている髪の長い、結構美人で胸が大きい女性。
助手席でひぃひぃ言っているのは銀髪に紅眼の中世的な顔立ちをした青年であった。
女性の名は葛城ミサト。
NERVの作戦課長で階級は一尉である。
青年の名前は綾波レイ。
サードインパクトを経験し、本来の綾波レイの所業により時空を飛ばされた碇シンジである。
世界初のファーストチルドレンとして登録され、その後、数々の軍事教練を経て現在NERVのエヴァンゲリオン隊隊長。
階級は二尉であり最年長のエヴァンゲリオンパイロットである。
エヴァンゲリオンとはNERVの対使徒決戦兵器であり、現在稼働可能な物は零号機と初号機と弐号機の三機しかない。
建造に莫大な費用が掛かる事とパイロットを選ぶのがその理由である。
そして、零号機と初号機が第三新東京市にあり、弐号機は現在ドイツにある。
パイロットは過去にファーストチルドレンと言われたこの綾波レイとドイツのセカンドチルドレンしか現在は居ない。
ドイツのセカンドチルドレンは14歳の少女である。
当時、NERVが立ち上がったばかりの頃、ドイツ支部長は日本に本部があることが許せなかった。
そして日本にファーストチルドレンと言うエヴァンゲリオンパイロットが誕生している事によりドイツ支部長は焦ったのである。
その結果、ドイツ支部エヴァンゲリオン開発担当責任者であった、惣流=キョウコ=ツェッペリン博士が被験者となってしまった。
責任者の責任として、実験の被験者を選ぶ事ができず自ら志願したのだ。
その結果、キョウコはエヴァに魂と言うべき自我を取り込まれ残った肉体は精神崩壊と言う状況になり自殺してしまった。
それを止められなかったユイは泣き喚いていた。
ファーストチルドレンであるレイが見つからなければ自分がそうなっていたと。
ユイとキョウコは親友だったのだ。
その後、その娘である惣流=アスカ=ツェッペリンがセカンドチルドレンとして選出された。
非人道的な実験により、弐号機はもう人を取り込まない事が解ったのである。
その後、シンクロ実験を繰り返し、娘であるアスカのシンクロ率が高かったため選抜されたのだ。
アスカの父はその後再婚し、元々養子であったため、アスカは惣流=アスカ=ラングレーと父の元の名前となったのである。
余談ではあるが、ミサトがドイツに居た頃、レイ(シンジ)も軍事教練を受けにドイツに渡った。
そこでアスカと再会(シンジ主観)したのだが、アスカがレイ(シンジ)に一目惚れしてしまい「綾波せんぱぁい」と常に引っ付いていたのは、また別な話である。
10年前の当初、シンジは何も変っていなかった。
元の内罰的思考に陥り、自分が何かしてもまた誰かを傷付けるだけでは無いのかと。
何かにつけてシンジは落ち込んでいた。
しかし、シンジの中にはレイが居る。
レイの言葉は辛辣だった。
(・・・そうね、碇君が何もしなかったから人類は滅んだわ)
(綾波・・・)
(・・・また何もしないのね?)
(だって僕が何かしても傷付けるだけなんだ。アスカだってトウジだって・・・)
(・・・そう?参号機は碇君が殲滅してればジャージは助かったわ)
(そんな・・・)
(・・・碇君がパイロットを辞めて出て行かなければ弐号機パイロットがゼルエルに倒される事もなかった。碇君がさっさと初号機に乗っていれば量産機に陵辱される事もなかったわ)
(だって、僕は、僕が何かしても駄目だったじゃないか!)
(・・・中途半端だったから)
シンジの中のレイは敢えてシンジを叱責した。
彼はこれから人生を歩まなければならないから。
ここには彼の身内は居ないから。
彼を強くしないと彼がまた壊れてしまうから。
(・・・大丈夫、碇君は私が護る)
レイは、最後にいつもシンジの魂を優しく包んだ。
そして、常に挫けそうな時にシンジの中のレイに叱責されながらシンジはここまでやって来たのである。
「ミ、ミサトさん!UN軍が引き上げます!」
「げっ!飛ばすわよ!」
「ひぃ〜っ!」
NERV発令所では一段高い雛壇にUN軍の高官らしきむさ苦しい3人が叫び声を上げていた。
「構わん!出し惜しみは無しだ!入間も厚木も全部上げろ!」
「直撃のはずだぞ!!」
「バカな!!」
高官の一人が拳を握り締め、その力に持っていたペンがへし折れる。
「くそっ!何故だ!」
その高官達の居る所から少し横にある本来の司令席で黒い士官服とグレーの士官服に身を包んだ二人の男が小声で話しをしている。
「15年ぶりだな」
グレーの士官服を着込んだ副司令冬月コウゾウが少し遠い目をして呟いた。
「・・・ああ、間違いない。使徒だ」
黒い士官服に身を包んだNERV司令碇ゲンドウが机に肘を付き、手を顔の前で組んだ姿勢で呟く。
「やはりATフィールドかね」
「・・・あぁ使徒に通常兵器は効かんよ」
メインモニターはNN爆雷により砂の嵐と化していた。
「見たかね? これが我々の切り札、NN地雷の威力だよ!」
「これで君の新兵器の出番は二度と無い」
NN地雷が爆発した直後の発令所では、壮年の高官達がゲンドウに高笑いを浴びせていた。
「電波障害のため、目標確認まで暫くお待ち下さい!!」
NERVのオペレータである青葉シゲルがモニターの回復に遂力している。
「あの爆発だ、ケリは付いている!」
無駄な事をと言わんばかりに高官の一人が吐き捨てる様に言った。
「ば、爆心地付近に高エネルギー反応!!」
「映像、出ます!!」
映し出された映像はUN軍高官達の自信とプライドを打ち砕いた。
表層部に多少の被害は負っているものの、その存在は全く揺らいでもいない。
「我々の切り札が!!」
「馬鹿な!? 街を一つ犠牲にしたんだぞ!?」
「なんて奴だ!!」
「化け物め!!」
口々に呪詛を唱える事しか為す術を失った高官達の机の電話が突然鳴り響いた。
「はっ、わかっております。しかし・・・はっ、了解しました」
忌々しげに切った電話を睨みつけながら、電話を切った高官はゲンドウに告げた。
「・・・碇君、総司令部からの通達だよ。只今より本作戦の指揮権は君に移った。お手並み拝見させてもらおう」
「我々国連軍の所有兵器が目標に対し無効であった事は認めよう。だが碇君!君なら勝てるのかね?」
「そのためのNERVです」
右手で直したサングラスの奥の目は、不敵な自信に満ち溢れていた。
忌々しげに睨付ける高官達の席は自動で下に下がっていく。
そして再度、その雛壇が上がってきた時には、むさ苦しい男達ではなく白衣を着た美しい女神達がそこに腰掛けていた。
「やっと私達の席を取り戻せたわね」
「なんか匂いませんか?」
「もう、りっちゃんたら」
そこに座っているのは向かって左から赤木ナオコ、碇ユイ、赤木リツコであった。
今ではこの3人は世界の頭脳とまで言われている。
人格移植OSを開発し第七世代コンピュータの基礎を築いた赤木ナオコ。
その娘であり、現在第七世代コンピュータの第一人者でありエヴァの生体理論にも精通している赤木リツコ。
そして稀代の天才と言われ、生物工学からあらゆる分野に名を轟かせている碇ユイ。
その、公開されていない実績は数知れない。
「ゲンドウさん?そのサングラスはあまり似合ってませんわ」
「・・・むっこれは奴らを威嚇するためだ」
「はぁ、普段は外してくださいね」
「・・・問題ない」
そう言いながらもサングラスから眼鏡に掛け替えるゲンドウ。
(こういうところが可愛いのかね?ユイ君・・・)
冬月は苦笑しながらゲンドウを見ていた。
「UNもご退散か・・・どうする?碇」
「初号機を起動させる」
「パイロットが居ないぞ?」
「問題ない・・・たった今、綾波二尉が到着した」
「そうか、ならば安心だな」
「・・・あぁ」
「副司令、目標が再び移動を開始しました」
副司令直属である青葉シゲルは、まず副司令に伝達した。
「・・・総員第一種戦闘配置」
ゲンドウが静かに命令を下す。
『繰り返す。総員第一種戦闘配置。対地迎撃戦用意』
NERV本部、職員通路を歩いているミサトとレイ(シンジ)の元に放送が流れてきた。
「ミサトさん!発令所に急いで下さい。僕は着替えてケイジに行きます!」
「えっ?そ、そうね解ったわ」
ミサトは冷や汗を流していた。
一人で発令所に辿り着く自信がまだ無いのである。
「そこのエレベータで降りて真っ直ぐ行けば着きますよ」
「そ、そんな事解ってるわよ!早く行きなさい!」
見透かされたミサトは照れ隠しにレイ(シンジ)を怒鳴りつけていた。
プシュッと言う音と共にミサトが発令所に入ってくる。
「状況は?!」
「葛城一尉、その前に君の報告が先ではないのかね?」
発令所に入るなりオペレータに駆寄っているミサトに冬月が呆れ顔で叱責する。
「はっ!申し訳ありません、葛城一尉、無事綾波二尉を引率。現在、綾波二尉はプラグスーツに着替えケイジに向かっております」
職分を思い出し、司令並びに副司令に向かい報告するミサト。
『起動シーケンスをお願いします』
その時、モニターにレイ(シンジ)が映り起動シーケンスの開始を促した。
その姿にNERVオペレータの女子職員達は熱い吐息を漏らす。
レイ(シンジ)はNERV女子職員達のアイドルなのだ。
しかし、レイ(シンジ)はそんなことに気が付いては居ないが・・・
「了解、マヤ!初めて」
雛壇に座っているリツコが起動シーケンスの開始を眼下にいる後輩オペレータ伊吹マヤに促した。
壇上を見、頷くとコンソールに向かい、キーボードを操作するマヤ。
「エントリープラグ挿入」
「プラグ固定終了」
「第一次接触開始」
「LCL注入」
状況を逐次報告しながら着実に起動シーケンスを進めていく。
モニターではレイ(シンジ)がLCLを吸い込み肺の空気を押し出す気泡が映っていた。
「主電源接続」
「全回路動力伝達」
「第二次コンタクト開始」
「思考形態は日本語を基礎原則としてフィックス!」
「A10神経接続異常なし」
「初期コンタクト全て異常なし」
「双方向回線開きます」
この時点でミサトのするべき事は現状の把握と、咄嗟の作戦立案であるはずだが、何故かミサトはモニターを凝視しているだけである。
着々と起動シーケンスをこなすオペレータ達とは別に雛壇の3人もしきりにキーボードを叩いていた。
この段階では何も情報が無いに等しい。
3人はそれぞれのやり方でレイ(シンジ)に有利となる様データを収集していたのだ。
「シンクロ率、86.29%ハーモニクス、全て正常位置。暴走、ありません!」
「旅の疲れかしら?少し低いわね」
「3ヶ月のブランクで微調整が合ってないのかも知れないわ」
充分高いシンクロ率ではあるが壇上の人間は気に入らないらしい。
3ヶ月のブランクとは、レイ(シンジ)は、とある作戦に参加していたため3ヶ月ぶりの帰国であったのだ。
帰国後、すぐと言う過酷なスケジュールであるのだから、多少の疲れは致し方ないところである。
「時差呆けね」
ユイの一言に残りの二人は納得した。
「エヴァンゲリオン初号機!発進準備!!」
ミサトの号令が響く。
つまりミサトはこの号令を発するタイミングを見計らっていただけであったのだ。
何度も訓練された発進準備。
技術部の準備が完了と共に指揮は作戦部に移行される。
そのタイミングを間違えない様にと緊張していたのだ。
初舞台で自分の科白を間違えない様にと、そのタイミングを待っていたような物だ。
『第一ロックボルト解除!』
『解除確認!アンビリカルブリッジ移動開始!』
『第ニロックボルト解除!』
『第一拘束具を除去!』
『同じく第ニ拘束具を除去!』
『1番から15番までの安全装置を解除!』
『内部電源充電完了!』
『外部電源用コンセント異常なし!』
ミサトの号令を受けスムーズに進む発進準備。
「エヴァ初号機射出口へ!」
ミサトは二つ目の号令を発した。
射出口へ移動していく初号機。
『5番ゲートスタンバイ!』
「進路クリア!オールグリーン!」
「発進準備完了!」
マヤが発進準備完了を声高らかに報告する。
「了解!」
ミサトはそれを聞いてNERV総司令であるゲンドウの方を向いた。
「かまいませんね?」
「勿論だ。使徒を倒さぬ限り我々に未来は無い」
「エヴァンゲリオン初号機発『待って下さいミサトさん!!』進!!」
ミサトの号令が終るかと言う時にレイ(シンジ)の通信が入る。
その声に、もう発進のコマンドを押そうとしていた作戦部オペレータの日向マコトがつんのめった。
「な、何かしら綾波二尉」
『敵の状況とか、作戦とか、用意してある武器とか教えて下さいよ!』
「ナマ言ってんじゃないわよ!」とはミサトも言えなかった。
レイ(シンジ)にはドイツ時代にかなりやり込められたのである。
「悪かったわ、日向君、説明して」
「あっはい。綾波二尉、敵は今、強羅防衛線方面からこちらに向かっています。今回は武器は間に合わなかったので肉弾戦となります。都市の迎撃システムも未だ稼働率は20%台でまともな支援は出来ないと思って下さい」
ミサトに促されマコトが簡潔に状況を説明した。
『了解!射出口と敵との距離は?』
「およそ300mです」
『了解!』
「じゃぁ良いかしら?」
『どうぞ』
「エヴァンゲリオン初号機発進!!」
ミサトの声と共に射出口固定台ごと地上に打ち上げられる初号機。
「綾波二尉。準備はいいわね?」
『OKです』
『目標は、最終防衛ラインに侵入しました』
その時、第三新東京市街へと侵入する使徒の姿がモニターに映る。
「最終安全装置、解除!エヴァンゲリオン初号機、リフト・オフ!!」
ミサトの号令と共に解き放たれるエヴァンゲリオン初号機。
紫の巨人はゆっくりと固定台から解き放たれると、屈伸を始めた。
「流石、乗りこなしてるわね」
「10年間も乗ってるベテランですもの」
壇上の会話は安心し切った物であった。
そう、ミサトが突っ掛らない理由はここにある。
ドイツでやり込められた事もあるが、エヴァの操縦に限ってはレイ(シンジ)はベテランなのである。
そして戦術指揮に関して自分より成績が良い上に実績を残しているのだ。
『では、綾波二尉、使徒殲滅の任に着きます』
その言葉と共に跳躍し、使徒に飛びかかる初号機。
あまりの速さに使徒もATフィールドを張る暇もなく第三新東京市郊外まで吹き飛んだ。
「アンビリカブルケーブル切断。内部電源に切り替わりました!」
「あっアンビリカブルケーブル接続」
初号機はアンビリカブルケーブルを切り離すと一気に跳躍し、使徒に一番近い電源ビルからケーブルを接続仕直したのである。
そして使徒に再度攻撃を仕掛けた時にオレンジの壁に阻まれた。
「「「ATフィールド!!」」」
『くっ!』
レイ(シンジ)は、ATフィールドの中和に入る。
「初号機からATフィールド発生!」
「使徒のATフィールドを中和してるの?」
マヤの報告にミサトが尋ねた。
その答えは後ろの雛壇から発せられる。
「いいえ侵食しているのよ」
リツコであった。
この10年間でレイ(シンジ)のデータは取り尽くしている。
ATフィールドの展開から、そのデータもかなりあるのだ。
リツコは自分のコンソールに映る情報から初号機の勝利を確信していた。
他の二人も同様である。
既に余裕の笑みを浮かべていた。
「勝ったな」
「・・・あぁ」
冬月の言葉にゲンドウも満足気に頷く。
使徒がもがくのを止めたと思ったら、いきなりエヴァを包み込んだ。
「自爆する気!?」
ミサトは叫んだがその後の光景に唖然とする。
エヴァを包み込んだ使徒がエヴァの頭上に持ち上げられたのだ。
「こんなATフィールドの使い方もできるとはね」
「まだまだ研究の余地ありだわ」
ユイとリツコである。
そして初号機の頭上で爆発した使徒。
その余波はATフィールドにより頭上へと逃がされ、第三新東京市は殆ど無傷で第一次直上会戦は終了した。
その夜は初勝利祝賀会となっていた。
冬月のはからいである。
発令所のオペレータは涙を流して残っているシゲルだけだった。
最上段オペレータのうち一人が残れば良いと冬月が言ったためだ。
ウルウルと眼を潤ますマヤを止める事は出来ない。
マコトとシゲルの激烈なジャンケンの結果マコトが勝利を勝ち取ったのである。
そして祝賀会は凄い人数となっていた。
まず、出席できる女子職員は全員参加したのである。
そして、その女子職員目当てに男子職員も出席できる人間は参加したからである。
全ては鈍感王レイ(シンジ)のせいであった。
銀髪に紅い眼と言う神秘的な上に端正な中性的な顔立ちをしているシンジは、決戦兵器のパイロットと言う事もありNERV女子職員からは羨望の眼差しを受けている。
加えて元が気弱なシンジのため、誰にでも優しいのだ。
祝賀会にはゲンドウと冬月も参加している。
ユイが居る今、ゲンドウはゼーレの人類補完計画を阻止し、使徒によるサードインパクトを防ぐためにNERVに居る。
と言うよりユイの尻に敷かれていると言うのが現状である。
「兄さん、おめでとう」
「ぁぁシンジ、ありがとう」
ニッコリと微笑むレイ(シンジ)
ここにいる碇シンジは幼い時からレイ(シンジ)の事を「兄さん」と呼んで慕っていた。
シンジはユイが居るため、ここ第三新東京市で普通の中学生として存在する。
かの2−Aではトウジ、ケンスケと共に既に委員長である洞木ヒカリに3バカトリオと命名されていた。
(ごめんよシンジ、君は天使に逢えない)
(・・・な、何を言うのよ)
レイ(シンジ)の心の言葉にシンジの中のレイは思いっきり顔を紅くしていた。
「よっレイ、今日はお疲れ」
「あっマコトさん、こちらこそ的確な情報、助かりました」
レイ(シンジ)は現在、シゲル、マコトと友達付き合いであった。
「あらレイ君、私は?」
「マヤさんの御陰で僕は安心して戦闘できたんです。有り難う御座います」
「そんな、そこまで言ってないわよぉ。でもお疲れさま」
マヤの頬も何故か赤い。
当然マヤとも友達付き合いだ。
オペレータの3人はレイ(シンジ)よりは少し年上であるが、レイ(シンジ)の方が先にNERVで働いていたため結構仲良く付合っているのである。
そんな3人の遣り取りを羨ましそうに見つめる女子職員達は、次々とレイ(シンジ)にお酒を注ぎに来るのであった。
それを嫌がりもせず、ニコニコと受けるレイ(シンジ)
「もぅレイ君ったら」
「レイがモテるのは今に始まった事じゃないよ」
膨れているマヤをマコトが慰めていた。
そしてミサトの元へと行くマコト。
ミサトは料理を手当たり次第に食べ、ビールをがぶ飲みしている。
「プッハー人生やっぱりこの時のためにあるのよねぇ」
只酒、只飯と言う事でミサトは上機嫌であった。
それらの様子を不気味に微笑みながら見ているゲンドウ。
「しかし、これ程集まるとはな。会費制にすべきだったな」
「・・・問題ない」
「500人は居るぞ?」
「・・・も、問題ない」
一人1万としても500万である。
「流石ゲンドウさん、太っ腹ですわ」
そう言うユイが片手に持っているのはロマネ・コンテ・・・
セカンドインパクト前のヴィンテージ物である。
ゲンドウは更に冷や汗を流した。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。