第壱話
巡り逢い


少年は小鳥たちの囀りで眼を醒ました。
目覚めた時に真っ先に眼に飛び込んで来たのは真っ青な空だった。
草木の青い匂いの中、少年は周りを見渡す。

澄み渡る青い空は、遥か彼方に見える山の方まで続いている。
目線から自分が居る所もかなり高い所に位置している事が伺えた。

周りは草原とも言える程、草花が生い茂っている。
少年は、しばし、その匂いに浸っていた。
降り注ぐ太陽の日差しとそよぐ風が心地よい。

大きく深呼吸をすると漸く覚醒してきた頭で自分の事を考え出す少年。

(どうしてここに居るんだっけ?)

そして、ここに来る前の事を思い出そうとするが、少年の脳裏に浮かぶ事は辛い出来事と紅い世界であった。

(僕は何故ここに居るんだ?)
(世界は滅んだはずじゃ・・・)
(あれは夢だったのか?)

そして自分の容姿を確認する。
黒いズボンに白い半そでのカッターシャツ。
どこかの中学校の制服のようだ。
自らの体も記憶にある物、14歳の碇シンジで間違いないと思われた。
鏡がなかったので顔までは確認できなかったが、問題ないだろう。

(ここは一体どこなんだろう?)

自分の記憶にない地形。
眼下には、街並みが見えた。
第三新東京市ではない。
少なくとも自分の記憶にある街並みではない。

先進的なビル群はそこには存在せず、穏やかな軒並みに幾らかの小さなビル。
それは第三新東京市と比較してであり、ビルはビルである。

少年はまず眼下に見える街に行ってみようと、その場を歩き始めた。



辿りついたのは池のほとり。
木々が生い茂り、池には澄んだ水が静かに波紋を広げている。
よくは見えないが水鳥でも居るのだろう。
どうやら公園内の小高い丘で寝ていたようだ。

そこに、ベビーカーに子供を乗せた女性と壮年の男性が佇んでいた。

(家族で散歩かな?平和なんだなぁ・・・)

その後ろを通り過ぎようとして、耳に入って来た言葉に少年は衝撃を受けた。

「ユイ君、何も君がエヴァに乗る必要は無いのじゃないかね?」

(ユイ?エヴァ?まさか・・・まさか・・・)

そして振り返った少年の目に飛び込んで来たのは、綾波レイを大人にした様な20代中盤と思われる女性が男の子を抱いている姿。
更には、その傍らにNERV副司令を若くした男性。

「全ては流れのままにですわ」
そう言った女性に抱えられているのは、紛れも無く幼い自分。

「母さん?」

我知らず発した声に、その男性と女性は振り返った。

鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をしている少年を怪訝そうに見つめる若かりし冬月コウゾウ。
そして、一瞬何を言われたのか解らなかったため無防備な顔をしていたが、すぐさま微笑みを称える碇ユイ。

「そ、そんな・・・そんな馬鹿な・・・」
少年は目の前が真っ暗になり、ふらふらと二三歩後退り、そして・・・倒れた。

「ちょっと貴方!大丈夫?!」
「君!どうしたんだね?!」
二人の叫び声が段々と遠くなっていき、シンジは意識を失った。



「銀の髪に紅い眼、抜ける様に白い肌・・・アルビノでしょうか?」
「・・・あぁ多分な。セカンドインパクトの後、人々の遺伝子情報にも色んな影響を与えている」
ベッドに横たわる少年の横で白衣を着た先ほどの女性と、どこか胡散臭い眼鏡をかけた、やはり白衣の男性が話をしている。

「・・・気が付いたら、帰してやれ」
「えぇ、そのつもりですけど、気になる事がありますの」

「・・・なんだ?」
「この子、私を見て『母さん』って言ったように聞こえたんです」

「・・・まさかユイ?」
「もう、何を勘違いしているんですかゲンドウさん。この子はどう見ても14〜5歳ですわよ。私が10歳で子供を産んだとでも?」

「・・・こ、ここに部外者を何時までも置いておくわけにはいかん」
「存じておりますわよゲンドウさん」
胡散臭い男が発する威圧感をものともせず微笑み返す女性。

「・・・好きにしろ」
そう言って男性は部屋を後にした。

「でも似ているわね、私にもゲンドウさんにも。シンジが大きくなったらこうなりそう」
ユイは未だ眠り続けている少年の顔を見ながら呟いていた。



「ここは・・・」
少年は病室で目覚めた。

「知らない天井だ・・・」
「漸くお目覚めね」
頭の方から声を掛けられる。

そこに人が居る事に気が付いていなかった少年はハッとして起き上がった。

「まだ寝てなさい。多分、アルビノ体質なのに日光に当たり過ぎたのだと思うわ」
「アルビノ?」
少年は、そこで初めて窓に映る自分の容姿を確認した。

容姿に変わりは見えない。
短い頭髪に、気弱そうな顔。
しかし、髪の毛が幾らか輝いているように見える。

眼を凝らして見て少年は驚愕した。

鏡ではなく窓ガラスに映っているので、はっきりとはしない。
しかし、紛れも無く銀髪に紅眼と解った。
鏡でなかったのは幸いであったのだろう。
鏡で自分の容姿を見ていたら、少年は自分だと気が付かなかったかも知れない。

「貴方の様な容姿の人を言うのよ。先天的に色素を持たない人たち。気を悪くしないでね」
「いえ、そんな・・・」
その女性の言葉になんとか返事をするも少年は戸惑っていた。

(何故こんな容姿に・・・まさか使徒になってしまったの?)

「うふ、私は碇ユイ、貴方の名前は?」
「僕は・・・」
そこまで言って少年は言葉を呑んだ。

(碇シンジと言うわけには行かない・・・)

「?」
少年がなかなか名前を言わないので首を傾げているユイ。

「綾波・・・」
「綾波?」

「綾波レイ・・・それしか思い出せません」
「それしかって・・・記憶がないの?」
少年は記憶喪失を装う事にした。

何故、綾波レイを名乗ってしまったのか?
それは少年にも解らなかった。
他の名前が思い浮かばなかったのだ。

少なくとも今現在は存在しない名前だと思った。

「何も・・・何故あそこに居たのかも・・・どこに住んでいたのか・・・」
「それは、一大事ね」
ユイは大きく溜息を吐いた。

「まぁ、今日はゆっくり休みなさい。明日になれば思い出してるかもしれないわ。食事を取りたくなったらナースコールを押せば持って来る様に言っておくわ」
「はい・・・ありがとうございます」

「あんまり落ち込まないで、今はゆっくりと休みなさい。レイ君」
「あ、ありがとうございます」

そして、ユイはその場を後にした。

(綾波・・・ごめん、名前を借りるよ)

少年は唯一自分を見ていてくれた少女に謝罪する。
自分のために零号機を自爆させ使徒を倒した少女。
計画のために作られ、自分は何もないと思っていた少女。
最後に、自らの創造主を捨て自分のところに来てくれた少女。

少年は、声を漏らさない様に枕に自らの顔押し付け、そして泣いた。
愛しい少女が居ない所に自分が居る事に。
未だ翻弄される数奇な自分の運命に。
そして、どうなるのか全く予想のつかない明日に。



一頻り泣いた後、少年はふと気づいた。
ここはもしかしたらNERVではないのかと。

リツコに連れて行かれた『人工進化研究所、第三分室』。
あれがNERVの前身であった事は間違いない。

少年は病室を抜け出すと辺りを見回した。
なんとなく覚えのある地形。
そう、ジオフロントである。

では、自分の居た所は第三新東京市なのか?
少年はそう結論付けた。

きっとこれから始まるのだ。
碇ユイの初号機起動実験の失敗。
きっとそれが全ての発端だったのだ。

(そう言うことなんだね、綾波)

少年は、あの忌まわしい未来を起こさせないために少女が自分をここに寄越したのだと考えたのだ。
そして、少年は記憶を頼りに進んで行く。
諸悪の根源の一つを確認するために。

記憶とは違うが、何故か確信がある。
この方向で間違いはない。
少年は躊躇せず足を進めた。

(あった・・・)

まだ、真新しい文字で扉に書かれている文字『人工進化研究所 第三分室』。

(この先にあれがある)

何故か鍵の掛かっていない扉をそぉっと開け、先へ進んだ。
ここまで人と逢わなかったのは、現在初号機の起動実験準備のために全員駆り出されており、少年が通ったルートには人が居なかっただけである。
必然、この研究室も鍵も掛けずに全員出払っていたのだ。

そこは、研究所と言われるに相応しい機材が揃っている。
自分の記憶の荒廃とした場所ではなかった。

そして奥へと足を進める。
レイの育った部屋もダミープラントもまだなく、そこにも沢山の機材が並んでいる。

少年は更に奥へと進んで行った。
この先にヘブンズドアがあるはずだ。

遂に少年は目的の場所へ辿り着いた。
真っ赤な世界。
向こうに見える十字架に白い巨体が貼り付けられている。
その胸から下は何もない。

エヴァ初号機のブラックボックスと言われている部分は全てこのリリスから取られた物だったのだ。
その姿を見て何故か涙が流れ出す少年。

例えそれが使徒と呼ばれる生命体であろうが、命を弄ばれていると感じ、悲しくなったのだ。
巨人と呼べるか解らないその白い張付けられた物の前に佇み、浮かび上がったかと思うと少年は吸い込まれてしまった。



(ただいま)
(おかえりなさい)

少年にはそんな遣り取りが聞こえた様な気がした。

少年の目の前には白くぼやけた人物が佇んでいる。
その人物がゆっくりと流れる様に自分に近づいてくる。

自らの身体から青白い発光物が出て行き、その白くぼやけた人物と重なった。
徐々に鮮明になってくる人影。
その人物が誰であるかを認知した時、少年は涙を流して叫んだ。

「綾波!」
「・・・碇君」
蒼銀の髪に真紅の瞳を湛えた少女は、はにかんだ様な笑みを浮かべ静かに言葉を紡ぐ。

少年の愛しい少女、綾波レイがそこにいた。

「綾波!綾波っ!」
少年はレイに抱き付き、きつく抱締めて嗚咽する。

「・・・痛いわ、碇君」
レイはそう言った物の、特に抗う姿勢は見せない。

「ご、ごめん、つい嬉しくって」
少年は泪は流しているものの、笑顔でそう言った。

少年の笑顔にレイも少し顔を紅くしている。

「・・・ぃぃ」
小さく呟く少女。

「僕は、僕は一体どうしてしまったの?」
その言葉を聞いて少し辛そうな表情をする少女。

暫く、沈黙が続いた後、少女が口を開いた。


「・・・碇君、貴方は死んだの」


レイの言葉にシンジは唖然とした。

「・・・あの世界で、貴方は絶望を感じ、自ら活動を停止してしまったの」
「じゃあ、今の僕は?」

レイらしくもなく少年の言葉に顔を紅くして、モジモジしている。

「・・・碇君が消えてしまうと思った時、私達は一つになったの」
それは、少年が消えてしまうと思った時に咄嗟にレイが取った行動であった。

魂を消滅させてしまっては、もう何処にも居なくなってしまう。
それはレイに取って看過出来る物ではなかった。
レイは少年を自らと一つになる事で少年の魂を保護しようと考えたのだ。

「・・・碇君と私が一つになることでサードインパクト以上のインパクトが起こってしまったの。それで私達は時空を飛ばされたわ」
「なっ!じゃぁ僕の魂は綾波の魂と一つになっているの?」

「・・・フォースインパクトとでも言えばいいのかしら、それで私の魂は殆ど消滅しかかったの、でも碇君がリリスと融合してくれたから私の魂もこうやって元に戻ったわ」
実は、レイがシンジの魂を必死で保護していたためレイの魂は殆ど消滅しかかったのだが、レイはそんな事は言わない。

「そうだったのか・・・っじゃぁこの時代に来たのは・・・」
「・・・単なる偶然」


暫く沈黙が続いた。


「あっ僕、綾波の名前を語ってしまったんだ・・・」
「・・・構わないわ」
何故か頬を染めて答えるレイ。

「それだと綾波はどうするの?」
「・・・私の肉体はここにはまだ無いわ。私はまだ碇君の中に居る」

「そう、これは僕の心の中なんだね」
「・・・そうよ」

「僕は、これからどうすれば良いんだろう?」
「・・・碇君の好きにすれば良いわ」

「好きにって言われてもなぁ・・・あっ僕って今の初号機にシンクロできるかな?」
「・・・今なら碇君は初号機にシンクロできるわ」

「僕も使徒って事?」
「・・・人も使徒よ。依り代になった碇君は聖痕が刻まれその力を得たの。容姿は私と一つになったから・・・だと思う」
また少し紅くなり俯くレイ。

「そっか、じゃぁ母さんを乗せる必要はなくなるんだ」
「・・・そうね」
レイは少し寂しそうな顔をした。

ユイを初号機に乗せない。
それは、綾波レイの身体が産まれない事を意味するのだ。

「綾波は身体を作れないの?」
「・・・私は元々精神体だったの、今はリリスと融合しているからその力で作る事もできるわ。でも・・・」
そこまで言って顔を紅くするレイ。

「でも?」
「・・・私は碇君と一つで居たい」
少し顔を紅くする物のレイの言葉はストレートである。

「ぼ、僕も、綾波と一つで居たいよ」
「・・・ありがとう」
軽い抱擁をする二人。
レイは幸せそうな笑みを浮かべていた。



病室へ戻り、少年は安らかな眠りについた。
愛しい少女が自分の中に居て、自分に微笑みかけてくれるのだ。
魂を優しく包み込んでくれるそれは、至高の安らぎをもたらしていた。

翌朝、清々しい目覚めを迎えた少年。
昨日の事を思い起こし、心の中に話し掛ける。

(おはよう綾波)
(・・・おはよう碇君)

はっきりと返ってくるその反応に少年は微笑んでいた。
ぐぅっと音をたてる少年のお腹。

「そう言えば・・・」
少年はユイに言われた事を思い出しナースコールを押した。

暫くしてワゴンを押して入ってくる女性を見て少年は驚愕する。

「あら?私の顔に何か付いているかしら?」
「い、いや、てっきり看護婦さんが来ると思っていたので・・・」
食事を持ってきてくれたのは、女子大生と言う恰好をした若い女性。

その髪は金髪では無いものの、記憶に違わないショートカット。
そして、眼の下にある泣き黒子。
20歳の赤木リツコであった。

「ここは残念ながら病院じゃないのよ。いずれ病院にする予定らしいけど、まだ医師や看護婦は揃ってないわ」
「じゃぁこれは?」
少年はリツコが持ってきてくれた食事を指して尋ねる。

「それは、ここの職員の食堂から適当な物を頼んで持ってきたのよ」
「そうだったんですか・・・何か迷惑ばっかり掛けているみたいですね」
その時、再び少年のお腹が音をたてる。

顔を紅くする少年。

「うふっ気にしなくて良いわ。遠慮せず食べなさい」
リツコは優しい微笑みを湛えて少年に食事を勧める。

「あっはい、頂きます」
恥ずかしさのせいか、リツコの方を見ず、食事を掻き込む少年。

そんな少年をリツコは微笑みながら眺めている。

「名前しか思い出せないんだって?」
「ふぇ?ふぁ、ふぁい」

「いいわよ、そんな急いで返事しなくても」
リツコは慌てて返事をする少年に微笑みながらそう言った。

そこに扉が開いてユイが入って来た。

「あらりっちゃん、そう、食事をするほどには回復したようね」
そう言って微笑むユイ。

「レイ君?何か思い出したかしら?」
「・・・いえ、何も・・・それより僕、お金持ってないんですけど・・・」

「うふっ気にしなくて良いわ、それよりお願いしたい事があるの。食事が終ったら付いてきてくれるかしら?」
「は、はい・・・僕にできる事でしたら・・・」

「多分、貴方にしか出来ない事よ」
そう言ってユイはニッコリと微笑んだ。



前の夜、ゲンドウとユイが言い争っていた。

「・・・あれは使徒なのか?」
「そんなはずありません!」
少年の遺伝子を調べた結果、人と99.89%同じだが残りが人の物と違ったのである。

「・・・セカンドインパクトの影響か」
「そう考えるのが妥当だと思いますわ。それにもしかしたら天啓かもしれません」

「・・・君がそんな事を言うとはな」
「探し求めていた適格者、彼がそれの可能性は高いですわ」

「・・・確かにな、エヴァと同じか」
エヴァは使徒のコピー。

そして、エヴァの遺伝子らしき物の配列は粒子と波の中間のような性質を持つ未知の構成単位だけれども、配列そのものは人間と99.89%一致。

そして残りの配列が、少年の物と一致したのだ。
つまり配列そのものはエヴァと少年は100%一致したと言うことである。
それ故のゲンドウの言葉であった。
しかし、構成要素は人そのものであることからユイはそれを否定したのだ。

「・・・彼をファーストチルドレンとして登録する」
「それは実験が終ってからで宜しいのでは?」

「・・・実験を行うための理由だ」
「解りました、明日、彼を説得してみますわ」

「・・・頼む」

この時点では、過剰シンクロでエヴァに取り込まれる等とは懸念されても居なかった。
懸念されていたのはA10神経を使ったシンクロである事での精神汚染である。

しかし、それすらもデータのない現在、可能性としてでしかなかったのである。

エヴァと同じ遺伝子配列。
それはユイ達に天啓と思わせるに充分な要素だったのであった。



「あら彼ね?綾波レイ君だっけ?確かに神秘的な容姿ね。私は赤木ナオコ。よろしくね」
「あっ、は、はい、宜しくお願いします」
少年は初めて見るその人物に頭を下げた。

ユイに連れられて来たところは、MAGIの開発が行われている場所であった。
少年の記憶にある【発令所】である。

今はまだメインモニターも存在せず、オペレータ席にある端末も旧式の物であった。

赤木ナオコも伴い3人は、更に違う場所へと進んだ。
そして3人が辿り着いた場所は初号機起動実験準備が行われている場所である。
少年の記憶と違わない紫の巨人の顔が、そこからは見えていた。

そこは、少年が3歳の時に母親が溶ける所を見ていた場所。
今の光景に忘れていたその光景が蘇る。

(そうだ、僕は見ていた・・・)
(・・・碇君)
一瞬、悲しくなった心をすかさずレイが包み込む。

(大丈夫、ありがとう綾波)

「これがエヴァンゲリオン初号機、人類の希望よ」
ユイが誇らしげに説明した。

この時点でユイはそう信じていたのだろう。
赤木ナオコと名乗った女性も微笑んでいる。

今の時点では未来に希望を持った人達なのだと少年は感じた。

「貴方にこれに乗って貰いたいの」
「はい?」
それは、少年がどうやって話を持って行こうかと悩んでいた事であった。

「驚くのも無理はないと思うわ。悪いけど遺伝子を調べさせて貰ったの。それで貴方がこれに乗れる可能性が高い事が解ったのよ」
ユイは済まなさそうに言う。

「これで何をするんですか?」
「今はまだ詳細は言えないの。ここまで来ただけでも結構機密に触れているんだけどね」
そう言ってユイは少年に向けてウィンクをする。

少年は、それを見て頬を染めた。

「初ね」
そんな少年を見てナオコは微笑んでいる。

「貴方が引き受けてくれれば、全て話すわ。それに生活の保障もする。記憶が戻るまでのアルバイトとでも受け取って引き受けて貰えると助かるんだけど」
「・・・それは助かります。僕もこれからどうすれば良いのか解りませんでしたから」
少年は暫く考え、そう返事を返した。

「そう、ありがとう。じゃぁ説明するわね」
ユイはパァッと表情を明るくし、嬉々として説明を始めた。

ナオコもそれを見て嬉しそうにしている。

数日後、少年は見事エヴァンゲリオン初号機を起動させ、ファーストチルドレン綾波レイ(byシンジ)が誕生した。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。