第弐拾伍話
終局の開始


NERV内には警報が鳴り響いている。
それをシンジの部屋で、シンジ、レイ、アスカが聞いていた。

「カヲル君はやっぱり死を選んだのか・・・」
シンジは残念そうに呟いた。

「使徒に和平を交渉するなんて、あんた何考えてるの!」
アスカが憤っている。
「希望なんだよ」

「・・・希望?」
レイが小首を傾げてシンジの方を向き尋ねた。
「『好き』と言う言葉と共に解り合える希望・・・」

「行ってくるよ」
「はいはい、あたしの弐号機使われちゃったからね、頼んだわよ!」
「・・・碇君」

「大丈夫だよ、綾波、心配しないで」
そう言って微笑んでシンジは出て行った。

「ファースト!あんた後を追うつもりなら、あたしも連れて行きなさいよ!」
「・・・解ったわ」


発令所は喧噪としていた。

「装甲隔壁がエヴァ弐号機により突破されています」
「目標は第二コキュートスを通過」

「エヴァ初号機に追撃させろ」
ゲンドウが指示する。

「はい」
ミサトが答える。

「如何なる方法を持ってしても目標のターミナルドグマ進入を阻止しろ」
ゲンドウは悲痛な面持ちで命令を下す。

(しかし、使徒は何故弐号機を・・・)
ミサトは不思議に感じた。


冬月とゲンドウが小声で話しをしている。

「もしや弐号機との融合を果たすつもりなのか?」
「・・・或いは破滅を導くためかな」


「シンジ君、いい?」
ミサトがシンジに確認を取る。

「・・・はい」
シンジは小さく返事をした。


「リリンにとって、忌むべき存在のエヴァ。それを利用してまで生き延びようとするリリン。僕には理解できないよ」
ターミナルドグマへ下降しながらカヲルは呟いた。

「シンジ君、遅いなぁ」
カヲルは上を見上げシンジの到着を待っていた。


「エヴァ弐号機ルート2を降下、目標を追撃中」

「初号機、第四層に到達、目標と接触します」


「待っていたよ、シンジ君」
「カヲル君・・・」

(アスカ、ごめんよ・・・)
弐号機を止めようと振るったプログナイフがカヲルの前に流れる。
その時、カヲルの前にオレンジの壁ができプログナイフを止めた。

「ATフィールド・・・」
「そう君達リリンはそう呼んでいるね。何人にも犯されない絶対領域。君達リリンも気が付いているんだろ?ATフィールドは誰もが持っている心の壁だと言う事を」

「そうだね」
シンジは頷いた。


『エヴァ両機、最下層に到達』
『目標ターミナルドグマまで後20』

「初号機の信号が消えて、もう一度変化があった時は・・・」
「解ってます、その時はここを自爆させるんですね、サードインパクトが起されるよりましですから」

「済まないわね」
「いいですよ、貴方と一緒なら」
「ありがと」
ミサトはもしもの時を考え、マコトと決断を下していた。


「人の定めか、人の希望は悲しみに綴られている」
カヲルが呟くと、今までにない金属音が響いた。

キーーーーーーーーーン

「どういう事?」
「これまでにない、強力なATフィールドです」

「光波、電磁波、粒子も遮断しています。何もモニタできません」
「まさに結界か・・・」
ミサトは最後の手段、本部施設の爆破を行うしかないことを決意した。

「目標、エヴァ弐号機、初号機、共にロスト、パイロットとの連絡も取れません」
マヤが叫ぶ。

「最終安全装置解除」
「ヘブンズドアが開いて行きます」

「遂に辿り着いたのね、使徒が・・・日向君」
合図を送るミサト。

頷く日向。

その時、衝撃が本部施設を襲う。

「状況は?」
「ATフィールドです」
「ターミナルドグマの結界周辺にさっきと同等のATフィールドが発生」
「結界の中へ進入していきます」
シゲルとマコトが交互に報告を行う。

「まさか、新たな使徒!」
ミサトが驚愕の叫びを発する。

「駄目です、確認できません、あっいえ消失しました」
シゲルが報告する。

「消えた?使徒が?」
理解不能の事態の続出に為す術がないミサトだった。
ミサトはレイがATフィールドを生身で使えるとは思っていなかった。


リリスの前に対峙するカヲル。
「アダムより産まれし物はアダムに帰る・・・違う!これはリリス。そうかそう言う事かリリン」

その時、シンジが弐号機の活動を停止させ、カヲルの前に現れた。

「ありがとう、シンジ君、彼女は君に止めておいてもらいたかったんだ。でなければ彼女と共に生き続けていたかもしれないからね」

シンジはエントリープラグから出て、カヲルの元へ行った。
「カヲル君、君は何故アダムではなくリリスの元へ来たんだい?」

シンジの問いかけにカヲルは困惑した。

「どうやら僕はリリスの波動をアダムの波動と間違えて来たみたいだよ」
カヲルは苦笑いした。

「ここにアダムが無ければそれも解る。でもアダムは父さんの右手にある。君はアダムを 素通りしてここに来たんだよ?」
「何が言いたいんだい?シンジ君」

「アンタが鈍感だって言ってるのよ!」
声のする方にはアスカとレイが居た。

「アスカ?」
シンジは驚いた。

「シンジがどうするか見届けに来たのよ!カヲル!あんたに言ったわよね?シンジを傷付けたら許さないって!」
「覚えているよ」
カヲルは、またも苦笑した。

「カヲル君、アダムに帰る事が宿命なら君は間違わなかったと僕は思うんだ」
「シンジ君は僕がリリンと共存出来ると言いたいのかい?」

「僕は何があっても綾波と一緒に居るつもりだよ。それならカヲル君だって一緒に居たって大丈夫じゃないか」
レイはそれを聞きながら頬を紅く上気させていた。

「そうか、そう言う事か・・・」
カヲルは俯いて笑っている。


「僕はどうすれば良いんだい?」
カヲルは顔を上げるとシンジに尋ねた。

「カヲル君は跡形も無くなる様に殲滅したと報告するから、事が起るまで隠れていて欲しいんだ」
「どこかに隠れる場所があるのかい?」

「・・・こっち」
レイが指さした方向はリリスの後ろ側にある祠であった。

3人がレイに着いて行くと、そこには通路のような穴があった。
そこを抜けると少し広い空洞に出た。

そこには、まだ先へ続く通路のような穴が複数存在した。

「・・・ここは、まだ探索されていない通路が沢山ある、監視カメラも届いていないわ」
「なる程、じゃぁ僕は時が来るまで、ここで探索しているよ」
そう言ってカヲルは微笑んだ。


そしてシンジはエントリープラグへ戻り、カヲルがATフィールドを解いた。

『シンジ君?!聞こえる?!』
ミサトから通信が入った。

「・・・はい」

『とうなったの?説明して頂戴』

「使徒は・・・殲滅しました。弐号機を回収します」

『そう、解ったわ』


そして、シンジ達はそれから本部施設で過ごす事となった。
第一種警戒態勢が解かれないままであったからである。

シンジ、レイ、アスカは殆どシンジの部屋に居た。
しかし、余計な事を喋らないようにしているため、殆ど会話はない。
レイはアスカが居る事で少し不満そうにしている。


発令所でマヤ、シゲル、マコトの三人が話している。

「本部施設の出入りは全面禁止?」
マヤがひそひそ声で聞く。

「第一種警戒態勢のままか」

「何故?最後の使徒だったんでしょ?あの少年が」
「ああ、全ての使徒は消えたはずだ」

「今より平和になったって事じゃないのか?」
「じゃぁここは?エヴァはどうなるの?先輩もどこに行ったのか解らないし・・・」

「NERVは組織解体されると思う、俺達がどうなるのかは見当も付かないな」
「補完計画の発動まで自分たちで粘るしかないか」
マコトが呟いた。


ミサトはアスカの荷物を取りに行ったため、車の中に居た。

(出来損ないの群体として既に行き詰まった人類は、完全な単体への生物へと人工進化させる補完計画、まさに理想の世界ね、そのためにまだ委員会は使うつもりなのね、アダムやNERVではなく、あのエヴァを・・・シンジ君の言った通りにね)

「加持君、何してるのよ・・・」
ミサトは加持と連絡が取れない事に苛ついていた。


機械の並ぶ保守用の通路で端末を操作しハッキングするミサト。
「そぉう、これがセカンドインパクトの真意だったのね」

いきなり端末の画面が変わりDELETEの文字で一杯になる。
「気付かれた?!」

「いえ、違うか、始まるわね・・・」


「第六ネット音信不通」
「左は青の非常通信に切り替えろ、衛星を開いても構わん、そうだ、敵の状況は?」
冬月が慌ただしく指令を出している。

「外部との全ネット、情報回線が一方的に遮断されています」
「目的はMAGIか・・・」

「全ての外部端末からデータ進入、MAGIへのハッキングを目指しています」
シゲルが状況報告を行う。

「やはりな、侵入者は松代のMAGI二号か?」
「いえ、少なくともMAGIタイプ5、ドイツと中国、アメリカからの進入が確認できます」

「ゼーレは総力をあげているな。兵力差は1:5・・・分が悪いぞ」

『第四防壁、突破されました』
「主データベース閉鎖、駄目です!進行をカットできません!」
マコトが叫ぶ。

「更に外殻部進行、予備回路も阻止不能です」
マヤも叫ぶ。

「まずいな、MAGIの占拠は本部のそれと同義だからな」

『状況は?』
ミサトが電話で確認してきた。

「おはようございます、先程、第二東京からA−801が出ました」
「A−801?]

「特務機関NERVの特例による法的保護の破棄、及び指揮権の日本国政府への委譲、最後通告ですよ、えぇそうです、現在MAGIがハッキングを受けています。かなり押されています」

「伊吹です、今赤木博士がプロテクトの作業に入りました」

ブザーと共にミサトが上って来た。
「リツコが?!」

カスパーの内部に入りキーボードを操作するリツコ。
「私、馬鹿な事をしているわね、ロジックじゃないものね、男と女は。そうでしょ?・・・母さん」
カスパーの本体に触れ呟くリツコ。

『強羅地上回線、復旧率0.2%に上昇』

「後どれくらい?」
ミサトがコーヒーを飲みながら日向に話しかける。

「間に合いそうです、流石赤木博士です」
「そう、戦闘員、非戦闘員の区別なく第4層以下まで下がらせておいて。プロテクト終了と共に第3層まで破棄、803区間までの全通路とパイプににベークライトを注入」
ミサトが小声でマコトに指示を出した。

「えぇ了解です」


「MAGIは前哨戦に過ぎん、奴らの狙いは本部施設及び、残っているエヴァ2体の直接占拠だな」
冬月がゲンドウに呟く。

「・・・あぁリリスそしてアダムさえ我らにある」
「老人達が焦るわけだ」


「MAGIへのハッキングが停止しました、Bダナン防壁を展開、以後62時間は外部進行不能です」
マヤが状況報告を行う。

「母さん、また後でね」
リツコがカスパーに呟いていた。


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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。