碇君へ 貴方がこれを読んでいると言う事は、私は三人目になったのだと思います。 碇君はきっと自分のせいだと思っている。 でも自分を責めないで下さい。 私は何時かこうなる事は解っていました。 でも恐くて碇君には聞けなかった。 だから碇君は何も悪くないの。 私は碇君に謝らなければなりません。 碇君の言葉を勘違いした事。 碇君が私を道具として見ていない事は始めから解っていました。 でも、あの時は、碇君の言葉を疑ってしまい、ついそう思ってしまいました。 本当にごめんなさい。 そしてありがとう。 碇君に逢えて私は産まれてきて良かったと思う事が出来ました。 無に帰る事だけを考えていた私に幸せを教えてくれたのは碇君。 笑う事を教えてくれたのは碇君。 泣く事を教えてくれたのは碇君。 美味しい食事を教えてくれたのは碇君。 楽しいと言う事を教えてくれたのは碇君。 暖かい物を教えてくれたのは碇君。 葛城一尉、いえミサトさんから碇君が「私が碇君の全てだ」と言ったと言う話を聞いた事があります。 でも、碇君こそ私の全て、私に色々な事を教えてくれた碇君。 私は、弐号機パイロットが羨ましかった。 自分の気持ちを素直に表現できる彼女が。 私は自分の気持ちすら解らなかった。 でも今なら解ります。 碇君が教えてくれたから。 碇君の笑顔をいつまでも見ていたかった。 碇君。 碇君、私は碇君に逢えて幸せでした。 三人目の私を宜しくお願いします。 |
綾波レイ |
三人目へ 貴方がこれを読んでいると言う事は、私は死んだのだと思います。 こう言うのを遺書と言うのね。 私は貴方に伝えたい事があって、この手紙を書いています。 それは碇君のこと。 私は、今まで無に帰りたいと思っていました。 でも彼に逢って、私は生きたいと思ったのです。 彼に初めて逢ったのは、病院でした。 そこに立っている彼は私を見て泣いていました。 私は彼が何故泣いているのか解らず、聞いたら「嬉しいからだ」と彼は言いました。 私が元気そうなのが嬉しいと、でも私にはそれが解りませんでした。 次に彼が泣いていたのも、私の病室でした。 今度は私が彼を見ていないから悲しいからだと言いました。 この時、私はその悲しみが解った気がしました。 そして、退院すると同時に葛城一尉、碇君と同居することになりました。 彼と食べる食事は美味しかった。 彼は私を見てよく微笑んでいました。 私も何時しか微笑むと言う事が出来るようになったようでした。 第四使徒が倒された後、彼が秘密を打ち明けてくれました。 でも、それを聞いた私は彼が私を道具として見ていると思ったのです。 そして私は葛城一尉の家を出ました。 第伍使徒の加粒子砲を受けて彼が病室に居た時、私が病室を出た後、碇君は泣いて私の名前を呼んでいました。 碇君が泣く時は何時も私の事でした。 この時はまだ私は、碇君が見ているのは私の知らない綾波レイだと思っていました。 でも第伍使徒を倒す時、彼は盾となって私を護ってくれました。 私には代わりが居る事を知っているはずなのに。 そして彼は言ってくれたのです。 私も、水槽の中の私も、そしてリリスさえも彼の中では綾波だと。 私の全てを見て受け入れてくれていると私は感じました。 でも、私は素直になれず、彼の前に出れませんでした。 毎日、彼の病室の前まで行っては、帰る日々を続けていると葛城一尉に連れていかれて、やっと彼の病室に入る事ができました。 私はそこで初めて、あの人にも言った事の無い言葉「ありがとう」を言う事ができました。 それからの私は自分の気持ちが何かわからなく戸惑っていました。 一人で考えたくって、葛城一尉の家への再度の誘いも断りました。 そして、弐号機パイロットがやってきた時、碇君に素直に話しをする弐号機パイロットを見て胸が痛くなりました。 これをきっと嫉妬と言うのだと思いました。 第七使徒が倒された夜、私は偶然、公園で碇君と逢う事ができました。 本当に聞きたかった事、私はどうなるのか、それは聞けませんでした。 碇君はあの第伍使徒の時、確かに言ったのです。 「水槽の中の私」と、それはきっと今の私が居なくなるから知った事だと思いました。 でも恐くて聞けませんでした。 その代わり、碇君がここで何をしたのかを聞く事ができました。 それは私に関する事か使徒の倒し方だけでした。 その夜、碇君が作ってくれた料理を二人で食べた時、とても美味しかった。 碇君が帰る時、止めたかった。 碇君が帰った後、泪が出ました。 私は自分が戸惑っていた気持ちの正体を知りました。 私は貴方にこの大事な物を必ず渡します。 碇君は貴方にもきっと私と同じ様に接してくれるはずです。 私は何時居なくなるのか恐くて聞けません。 だから、これから毎日、この手紙を足して行きます。 だから、碇君をお願いします。 私が居なくなったことで悲しまないように。 そして私が渡した大事な物を貴方が遂げてください。 |