第拾伍話
決断
「で、どうかな?レイちゃん」
「…碇君に聞けば良い」
「レイちゃんはOKって受け取って良い?」
「…私は、アンタレスの風習も知っている」
マナは、律儀にレイに交渉していた。
アンタレスでは、男は奴隷みたいなものなので、持ち主に交渉するのが当たり前なのだ。
子供が欲しいからと言うだけで、他の人の男を借りるのなど、当たり前で、性風俗のように男を売りにしている店も多々ある程であった。
「そっか、有難うね」
「…問題ないわ」
「あっ!それはマユミにも有効?」
「…碇君次第」
「ところで、やっぱり良い気は、しない?」
「…そうね、一緒の時間を削られる事には変わらないから」
「そっかぁ、じゃぁ3人で一緒にとかどうかな?」
「…興味ない」
口とは、裏腹にポッと紅くなる蒼銀の妖精を見て、マナは良いモノが見れたと思った。
マナは、シンジとマユミを伴い第三新東京市内のホテルで食事を取っていた。
職権乱用と言う程でもないが、待機シフトを操作し、三人に丁度非番が重なるようにしたのである。
と言うか、レイとシンジを分けた不自然なシフトであった。
「で、一体どう言う魂胆ですか?」
シンジは、食後のワインを飲みながらマナを問い質す。
「あは、ばれちゃってた?」
「僕と、綾波が別々の勤務枠になるのは、あまりにも不自然過ぎますよ」
「うんとね、レイちゃんに相談したら、二人で居る時間を削られるのが不満だって言ってたから…」
「そんなシナを作って誤魔化さないでください」
マナは、真っ赤なナイトドレスを着ており、胸元は大きく露出していて胸の谷間がくっきりと浮かび出ている。
誰かが、彼女の事を貧乳と言ったが、決してそんな事は、ない。
マユミは、白い、やはりナイトドレスを着ていた。
こちらは、そもそも豊満な胸であり、長い髪が背中を隠しているが、実は、大きく背中が開いていた。
マナのドレスは、裾が斜めとなっており、ロングなのだが、短いところは下着が見えるのではないかと言うところまで短くなっている。
マユミの方は、スリットが前にあるタイプで、座ればテーブルでなければ下着が完全に見えてしまうものであった。
「端的に、言うと、今日は、私とマユミを抱いて欲しいの」
「帰らせて頂きます」
立ち上がろうとしたシンジをマナは、止めようとはしなかった。
しかし、次の言葉がシンジを制止させる。
「レイちゃんは、了承済みよ」
「綾波が?」
「シンジさん、申し訳ありません。地球の風土と言うものを調べさせて頂きましたが、私の生まれたベガ星域では、一人の男性体に複数の女性がお願いするのは、当たり前なのです」
「アンタレスも別な意味で、同じだわ」
「綾波は、それを許容していると?」
「彼女は、その辺りの事情は、理解していると言ってくれたわ」
星々による風土の違いを出されるとシンジも弱い。
確かにここは、地球で日本ではあるが、例えば重婚を許容している国の女性達を否定出来るものでは無い。
ましてや、銀河連邦に所属するシンジが星々の風土を否定することなど出来るはずもなかった。
「お話は、解りました。しかし、それは職務に差し支えませんか?」
「私達は、大丈夫よ。そう言う社会に育ってきたのだから」
「で、その理由と言うのも尋ねて構いませんか?まさか、僕に好意を抱いてなんてことは、ありませんよね?」
「あら、シンジ君って以外と鈍感なのね。マユミは貴方にぞっこんよ。多分、士官学校の頃からね」
「な、何を言ってるんですか、マナさん」
「あら?本当のことでしょ?」
マユミは、マナの言葉に顔から火が吹き出る程、真っ赤となっていた。
「私も、シンジ君が好きよ」
「いや、そんな恥ずかしい言葉をよく平気で口に出来ますね。それは、兎も角まさか、3人一緒にですか?」
「そのまさかよ。あんまり時間もないし、待ってるのも性に合わないしね」
「マユミさんも?」
「え?わ、私は、その初めてですし、その…何が普通なのかも解らないので…」
「大丈夫、大丈夫、私も初めてだから」
「「えぇ〜〜〜っ!」」
「ちょ、ちょっと何よぉ、そのリアクション。マナちゃん傷つくなぁ」
と、なんだかんだとシンジは、懐柔され、3人は、その夜を共にすることとなった。
翌日、シンジは、何か決心が付いたのか、一目散に宝石店へと向かった。
そして、給料の3か月分の買い物を行ったのであった。
「綾波!」
シンジは、朝一番で夜勤明けのレイの元へと駆け付けた。
「…何?」
「あ、あの、その…」
徹夜明けのレイの視線は、レイには全くそのつもりはなかったのだが、シンジに取って責められているように感じられた。
しかし、ここで怯むわけには、行かない。
(逃げちゃ駄目だ…逃げちゃ駄目だ…逃げちゃ駄目だ…逃げちゃ駄目だ…)
シンジは、今はあまり使わなくなった若かりし日の呪文を唱えていた。
レイは、そんなシンジの次の言葉をじっと待っている。
「あ、綾波!ぼ、僕と結婚して下さい!」
その言葉にレイは、キョトンと紅い眼を見開いた。
「…け、結婚?」
「う、うん、だ、駄目かな?」
「…か、構わないわ」
「ほ、本当!じゃ、じゃぁ、これを」
何時になく、レイの顔は紅潮し、言葉も呂律が回っていない。
リツコ辺りが見ていたらさぞ吃驚していたことだろう。
「…これは何?」
「こ、婚約指輪だよ。僕の給料じゃ、そんな安物しか買えないけど」
「…値段は関係ないと思う。あ、ありがとう」
「ぼ、僕のほうこそありがとう。綾波」
「…でも、私で良いの?」
「あ、綾波じゃないと駄目なんだ」
「…そう、でも私は人じゃない」
「そんなの、今は問題じゃないよ。違う星の人達だって今は一緒になってる時代なんだよ?そりゃ地球はまだそんな風潮は少ないけど、それだって今に当たり前になるよ」
「…あの人達はどうするの?」
「そ、それは、これからどうすれば良いのか確認するけど、でも、その為にもまず綾波との関係をはっきりさせておきたいんだ」
「…解ったわ」
「有難う、綾波」
暫しの抱擁の後、レイは自宅へと帰って行った。
シンジは、レイが見えなくなるまで見送ると次の行動へと動き出した。
「碇、シンジ君が面会を希望しているぞ」
「…私は忙しい、いちいち子供の我侭に付き合ってはいられない」
「碇、私は彼がここに赴任してきてから、初めての面会希望だと記憶しているがな」
「…5分だ、それで良いならと伝えろ」
「全く、素直じゃないな。シンジ君を通してくれたまえ」
冬月は、苦笑しながらインターフォンで受付に連絡を行った。
「失礼します」
「…用件は、何だ早く言え」
「碇…」
まったくこの男はと冬月は思ったが、その言葉が発せられる事は、なかった。
「父さん、僕、結婚することにしたよ」
「…そうか」
「うん、今日は、その報告だけだから」
「…式は、何時だ」
「これから皆と相談して決めるよ」
「…皆?」
「あ、う、うん、シフトの事もあるからマナさん達と」
「…そうか、決まったら教えろ」
「うん、解ったよ。忙しいのに時間取らせて悪かったね」
「…問題ない」
「それじゃぁ、失礼します」
「シンジ君」
退出しようとしたシンジを引き止めたのは、冬月だった。
「何でしょう?」
「いや、おめでとう。私も式には呼んでくれたまえ」
「勿論です。それじゃぁ失礼します」
「あぁお幸せにな」
有難う御座いますと去っていくシンジの視線を受けている冬月をゲンドウは横目で睨んでいた。
「碇、何か言いたいのか」
「…いえ、なんでもありませんよ。冬月先生」
その言葉を聞いて冬月は、勝ち誇ったように微笑んでいた。
(碇も、もう少し素直になれば良いのにな…)
「それより良いのか?」
「…何のことでしょう?」
「シンジ君に真実を話すのでは、なかったのか?」
「…既にレイが話したそうです」
「何!何時の事だ?」
「…一緒に住み始めた頃だそうですよ」
「それでもシンジ君は、何も言ってこなかったのか」
「…子供はいつの間にか成長しているものです」
「お前は、避けていただけだろう」
「…放任主義と言って下さい」
「相変わらず口だけは、達者だな」
「…フッ…今更ですよ冬月先生」
「良い息子を持ったな」
「…あれはユイの子です」
リツコの執務室には、朝からマナが来訪していた。
「呆れた、本当にシンジ君と?」
「まぁね。で、早速実験の予定を立てようと赤木博士の予定を聞きに来たわけ」
「貴女、そのためだけに?」
「まさかぁ!こんな公然と理由をつけて可愛い部下と出来るのよ?これを逃さない手は、無い!」
力強く拳を握り締めるマヤに、こいつはミサト以上に性質が悪いのではないかとリツコは眩暈を覚えるのだった。
「まぁ良いわ。司令の許可を取れたら私は何時でも良いわよ」
「ラジャー。では、いざ司令を落とさん!」
あのゲンドウに挑もうと考えるのは、こいつぐらいだろうとリツコは、更に頭痛と胃痛まで誘発してしまった。
「あっ!リツコもシンジ君に頼んでみたら?レイちゃんのOKが出たら多分大丈夫だよ?」
「バカッ!」
扉を出かけたところで振り返りマナが言い放った言葉は、リツコの顔を真っ赤にするのに充分であった。
「せ、先輩」
「何かしら?」
リツコは、マヤの呼び掛けに自分の動揺が見透かされたようで、マヤの方を向かずに返事をした。
「シンジ君って…」
「マヤ?貴女も銀河連邦軍の一員なのだから星々の慣習ぐらいは認識しておきなさい」
「でも、ここは地球ですし」
「貴女も他の星に転属する可能性が無いわけじゃないわよ?」
「そ、そうですね」
「潔癖症は辛いわよ」
リツコの忠告は少し的を外していた。
マヤは、リツコもシンジに?と言う意味であり、あわよくば自分もと言う意識があったのだ。
つまり、リツコが行くならその方法とか自分も乗っかるとか、そう言う意味での問いかけであった。
一方マユミはと言うと、控え室でクネクネしていた。
「はぁ〜っ」と溜息を吐いたかと思えば、両頬を手で押さえて顔を真っ赤にしたり、なにをやっても上の空と言う感じである。
「あれは、やっぱり」
「だろうな」
ケイタとムサシは、触らぬ神に祟りなしを決め込んでいる。
「それより、この間の娘、なんて言ったっけ?カエデちゃんだっけ?どうだったんだ?」
「僕は、ムサシ程、手が早いわけじゃないよ」
「おっ!その口調は、結構良い線行ってるって事だな?」
「まぁ、今度一緒に街に行く約束ぐらいわね」
「まぁったく、あんまり女の子を待たせるもんじゃないぜ?」
「ムサシは欲望に忠実過ぎるんだよ」
「女の子だって、結構忠実だぜ?」
そう言ってマユミの方をちらっと見る。
「まぁシンジの甲斐性ってのもあるけどな」
「僕にはそんな甲斐性は無いよ」
「俺にも無いな、蒼銀の妖精にマナにマユミってどんだけだよ」
「え?マナもなの?」
「お前、マナが最初っからシンジだけには、今までの誰とも違う接し方をしてたと気付かなかったのか?」
「いや、何時になく猫被ってるとは思ってたけど」
「じゃぁ、マナがシンジに命令口調で話したのを見たことあるか?」
「ないねぇ」
「そして、昨夜は3人がオフ、妖精さんは何故か夜勤。そしてマユミがあれだ。マナが絡んでないはずないだろ?」
「それって職権乱用じゃん。下手したらパワハラじゃない?」
「お前、マナがアンタレス出身だって忘れてるだろ?」
「あっ!」
この時、初めてケイタにもムサシの確信が理解出来た。
そう、アンタレスの女、特に有能は女は、男を落とすのに手段を選ばない。
断られるような事があれば、それは誇りを著しく汚された事になるからだ。
実際マナは、そこまで傲慢では無いし、星々の風習と言うものも理解しているし大事にしている。
しかし、人格形成に培われた本来の価値観と言うものは、中々抜けないのも事実であった。
「山岸さん、ちょっと良い?」
「は、はいっ」
その時、シンジが執務室に入って来てマユミを呼び出した。
態々呼び出す必要は無いのだが、ムサシとケイタもそんな事に鹹かったりしない。
チラッとムサシ達の方をシンジが見た時には、二人揃って親指を立てていた。
「なんでしょう?」
「うん、あのね…」
二人とも真っ赤になっており、マユミなど俯いてる。
まるで学生の告白のような雰囲気だ。
「山岸さんとしては、これから僕とどう言う付き合いを望んでいるのかな?って聞きたくて」
「これからですか?私は特に…でも偶にお誘い頂ければ嬉しいですけど…」
「僕は、綾波と結婚する事にしたんだ。それでベガ星域の風土についても調べてみたのだけど、山岸さんの詳細な出身が解らなくて…僕は出来る限り山岸さんの望む形にしたいと思って」
「それはおめでとう御座います。私は、先程も申し上げました通り、偶にお誘い頂ければそれで満足です」
ニッコリと微笑むマユミに、シンジはどうしたものかと思案した。
それでも用意してきたものを無駄にするわけにはいかないとポケットから小さな箱を取り出した。
「じゃぁ、よかったらこれを受け取って貰えるかな?」
「こ、これは?」
それはエメラルドが鏤められた派手ではないマユミに似合いそうなあネックレスであった。
「ベガ星域では、好きな女の子にはネックレスを贈るものだって」
「確かにそういう風習もありますが、これは妾契約と受け取って宜しいのでしょうか?」
「え?そんな意味があるの?そう言う意味じゃないんだけど…」
「うふっ、冗談です。有りがたく頂いておきます」
「もう、脅かさないでよ」
「碇さん」
何?とシンジがマユミの方を向いた時には、マユミに抱きつかれ唇を奪われていた。
「有難う御座います、とても嬉しいです」
マユミは、そう言ってペコリとお辞儀をすると、スタスタと執務室に入って行ってしまう。
残されたシンジは、暫くポカーンとしていた。
マナは、簡単に実験の許可を得ていた。
今は、自らの執務室で別件を思案中である。
エヴァについては、4号機にエントリーする際、自分とマユミのタンデムを一つの選択肢とした。
また、シンジとマユミのタンデムも、例えばレイが居ない時などは、選択肢として有りだと考えている。
次なる課題は、エヴァ以外であった。
単なる特殊戦艦にもタンデムの可能性を考えていたのである。
戦力増強となるなら使わない手は無い。
ただ、やはりエヴァだけが特殊と言う事もかなりな確率で有り得た。
「試すしかないか…しかし、誰と誰、と言う問題だな」
二号機にアスカと誰かで試してみたいが、今のアスカが誰かとタンデムなど許容しないだろう。
上官命令で強行しても良いが、それで、更に人間関係が悪化してしまうなら本末転倒だし、その可能性が高かった。
ムサシとケイタでのタンデムと言うのも、あまり考えたくないし、本人達も拒否するだろう。
「となると、試せるのは、私…と言うことになるが、それでは意味がないな」
以前なら考えたくなかったが、一度シンジと肌を重ねたので、マナとしては、ダブルエントリーぐらいならと言うのと、あの二人に自分がシンクロ率を超えられるはずが無いとの考えからだ。
「う〜ん、ちょっと策謀してみるか」
ここに誰かが居たなら、背筋に悪寒を感じて逃げ出していただろう。
マナは、チシャ猫のような笑みを浮かべていた。
そこに来訪を告げるベルが鳴った。
「はぁ〜い。今開けるわ」
扉を開けて入って来たのは、シンジであった。
「あら?珍しい、さては、マナちゃんの体が恋しくなったのかなぁ〜」
「な、何を言ってるんですか!」
マナは、そう言ってシンジの方を向くと態と足を組み替えた。
「あははは、照れない照れない」
「まったく…、からかわないで下さい」
と、いいつつもシンジは昨夜の事を思い出し、顔を赤くしていた。
「悪い悪い、で?何の用?」
「えっと、僕、綾波と結婚する事にしました」
「おぉ、それはおめでとう」
「で、僕は、これからマナさんとどのように付き合って行けば良いのかと」
「う〜ん、特に気にしなくて良いよ?」
「一回きりの遊びだったと?」
「遊びじゃないけどね。縛り付ける気もないし、出来れば偶に…ね?」
「山岸さんと同じ事を言うのですね?アンタレス星団は、風潮が違うと思ってましたが」
「あぁ、私は、あんまり男に興味なかったからなぁ」
「そうなんですか?」
「なかなか、シンジ君みたいに良い男って居ないのよ」
「な、何を言ってるのですか」
「シンジ君は、もっと自信を持って良いと思うよ?」
「僕なんて特殊戦艦に乗る以外、何の取得もない男ですよ」
「一芸に秀でていると言うのも魅力のうちよ。それに可愛いんだから」
「か、可愛いって」
「まぁ、心配しなくても大丈夫よ」
「じゃぁ、これを受け取って貰えますか?」
シンジが渡したのは、マユミと同じネックレスだ。
ただ、こちらは真っ赤なルビーで彩られている。
「これは、ツバメ契約か?」
「や、やっぱりそう言う意味があるのですか?」
「冗談よ。マユミにも渡したの?」
「はい、エメラルドですが」
「まぁ、星々によって色々とあるけど、どこも形骸化したものだし、気にする必要は無いわよ」
「そうですか」
ほっと胸を撫で下ろすシンジを見て、マナは微笑んでいた。
「これは、有り難く頂いておくわ」
「はい、有難う御座います」
「変なの。お礼を言うのはこっちよ」
「いや、それでも受け取って貰えて嬉しいので」
そして、やはり突然マナに抱きつかれ唇を奪われるシンジだった。
「凄いね、蒼銀の妖精さんと結婚を決めて、妾を二人も同時に作るなんて」
「な、何を言ってるのですか」
「ふふ、このイ・ロ・オ・ト・コ」
「もう、からかわないで下さいって」
「綾波、僕は最低だ」
「…碇君は、優しいわ」
レイは、シンジの胸に頭を乗せている。
二人とも全裸で、ベッドの上に居た。
うっすらと汗を浮かべている事から、情事の後のピロートークと言ったところである。
「本当だったら、ちゃんとあの二人と清算するべきなんだろうけど、僕には出来なかった」
「…彼女達に地球の論理を押し付けるのは、傲慢」
「そうだけど、綾波は、怒ってないの?」
「…怒る理由は、無いわ」
「でも…」
「…碇君が、そんなに気にしているとあの二人も困ると思う」
「そうだね。本当に僕って馬鹿だなぁ」
「・・・・・」
レイは、返事をする代わりに、シンジに口付けをした。
シンジは、レイの頭を優しく撫でながら、それを受け入れる。
「…同居も考えた方が良いわ」
「え?」
「…一緒に住んだ方が、削られる時間が減るから」
「いいの?」
「…構わないわ」
「解った、聞いてみておくよ」
シンジの家は、結構広い。
欧米風で、客間が幾つか空いているのだ。
そして、マユミはシンジ達と同居する事となった。
マナは、断ってきた。
マナとしても吝かでは無い申し入れであったが、本来、逆であるのだ。
どちらかと言えば男を自分の住居に住まわせるのがアンタレスの形であるからだ。
上官である事もマナの同居を断念した大きな理由であった。
もし、同居しようものなら、ムサシとケイタは、まだ良いとしてもアスカはいじけるであろう事が簡単に予測されたからである。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。