第拾九話
心の形、人の形
第一中学校では、トウジがふて腐れていた。
「トウジ、参号機壊れたんだって?」
嬉しそうに聞いてくるのはケンスケである。
「あぁ使徒に乗っ取られてもうてな」
「よく無事で居られたな」
「あぁ丁度乗ってない時に、使徒が覚醒しよってん、まぁラッキーやったんやろうな」
トウジは遠くを見詰めてそう言った。
元気のないトウジを心配そうに見ている少女。
「ほらっさっさと渡してきなさいって!あの馬鹿、食べる事にしか楽しみが無いんだがら受け取るわよ」
「そ、そうかな?で、でも恥ずかしいな」
アスカに背中を押され居るのはヒカリであった。
トウジが元気が無くなったお陰でヒカリまで元気がなくってしまったので、アスカがトウジに弁当を作ってやれば良いと提案したのだった。
「もぅ、しょうがないなぁ」
アスカはそう言うと立ち上がり、大声を上げた。
「ジャージッ!委員長が用事があるってさ!」
「あ、アスカァ〜」
「ん?なんや?委員長、なんぞ用か?」
寝ぼけた様な眼をしてヒカリに近づくトウジ。
「あ、あの鈴原、今日、私お弁当作りすぎちゃって、そ、そのもし、迷惑でなかったら、も貰ってくれない・・・かな?」
俯いてドモリながらも一気に言うと、最後のところで顔を上げトウジの顔色を伺うヒカリ。
「おぉほんま余りもんか?ほな遠慮のう貰うわ、ありがとうな委員長」
トウジは軽くそう言うと、弁当箱を受け取りさっさと行ってしまった。
「ふぅ〜」
溜息を付きながらも満足そうなヒカリ。
「よかったわね」
「うん」
そう返事をしたヒカリは、ほんのり紅く微笑んでいた。
シンジは悩んでいた。
ここに来てゼルエルに弐号機1機では確実に荷が重い。
「今回は結構きつい戦いになるかもね・・・」
シンジは一人呟いていた。
シンジの話通り、第壱拾四使徒がやって来た。
「第壱拾四使徒を光学で捕らえました」
メインモニターに使徒が映し出される。
「1撃で第17装甲板まで貫通!!」
マコトが驚くべき報告をした。
「17枚もの装甲を一瞬にして・・・第伍使徒の加粒子砲並の破壊力ね」
リツコが呟く。
「エヴァの地上迎撃は間に合わないわ、零号機を射出、囮にして、弐号機を本部の防御に回して!」
ミサトが指示を出した。
「いかん、零号機の射出は認められん」
ゲンドウが叫んだ。
「しかし、弐号機1機で、あの強力な使徒に太刀打ちできるとは思えません」
ミサトが引き下がらず食い下がった。
ミサトはこれを機に零号機を破壊できれば良いと考えていた。
まだ、使徒は来るので、ここでなくとも構わない。
しかし、今回の使徒は強力だ。
弐号機の援護のためにも使える物は使いたいと言う思いもあった。
「・・・許可できん」
ゲンドウはもう一度、今度は静かに言った。
「くっ・・・了解」
今は時間がない。
押し問答している余裕は無いとミサトは引き下がる。
「弐号機ジオフロントに射出!」
ミサトは仕方なく弐号機のみを出撃させた。
「ジオフロント天井部破壊されました!!」
ジオフロントの天井が爆発して、そこから使徒が姿を現した。
『おいでなすったわねえ!』
アスカは舌なめずりをしていた。
ありったけの重火器をそこら中にばらまくアスカ。
使徒に向かって周り込みながら突っ込んで行く。
そして使徒に零距離射撃。
打ち終わるとすぐさま離れ、次ぎの武器を装備する。
『ちっ流石に硬いわね』
それでも使徒は僅かに身体を崩しただけだった。
その時、発令所ではメインモニターの半分にシンジが映っていた。
『なかなか苦戦を強いられているようですが、援護は必要ありませんか?』
危なくなったら飛び込もうと考えているシンジだが、一応、手順を踏む。
「・・・必要ない」
ゲンドウが拒否していた。
「六分儀、分が悪いぞ、援護を求めるべきではないのか?」
冬月がゲンドウを説得する。
冬月もシンジが進言している以上危険な戦いである事を感じ取っていた。
「司令!弐号機が敗退すると後がありません。ここは援護を要請すべきです」
ミサトが言った。
リツコもゲンドウも驚いていた。
リツコはここまで回復している事に。
ゲンドウは何故固執しないのかと。
「六分儀、弐号機が敗退するとNERVには後がないぞ、零号機を破壊されてもいいのか?」
最後の言葉はゲンドウを動かすのに充分だった。
「・・・援護を要請しろ」
自分で言うのは抵抗があったようだ。
「援護を要請する」
冬月がシンジに向かって言った。
『了解』
その言葉と共に、使徒が開けた穴から戦闘機が3機、ジオフロントに侵入して来る。
2機は巨大な槍状の物を運んでいた。
「あれは・・・」
リツコが呟く。
それは第伍使徒戦で突き刺さっていた巨大な槍であった。
使徒の上空から投下される槍。
しかし、今回のそれは、使徒の左肩から腕を削り落としただけだった。
『やっぱり、高度がないと、威力も落ちるし狙いも定まらないね』
『・・・そうね』
シンジとレイが残念そうに話していた。
そして使徒が光線を乱れ打ちする。
難なくかわす3機の戦闘機。
そこに弐号機が突っ込んで来て、使徒のコアに零距離射撃をする。
弾がなくなりすかさず離れる弐号機。
弐号機の居た辺りに使徒の光線が放たれていた。
『ッキャ〜〜〜ッ!!』
避け損なった弐号機は、使徒の放つ光線に左腕を持って行かれた。
すかさず援護射撃を行い、追撃を阻止するシンジ達。
『アスカ!』
「アスカ!」
シンジと、ミサトが同時に叫んでいた。
「左腕のシンクロカット」
リツコが指示を行ったが、マヤは既にキーボードを素早く操作していた。
『ふぅ〜やってくれたわねえ!』
アスカはエントリープラグ内で左肩を押さえながら使徒を睨付けていた。
「アスカ、大丈夫?」
『えぇまだジンジンするけど、行けるわ』
戦意は喪失していなかった。
『アスカ君も無茶するねぇ』
カヲルが驚愕している。
『この隙に一気に行くよ』
『・・・了解』
『了解だよ』
そしてシンジ達3機は使徒のコア目掛けてロケット弾を撃つ。
流石にコアは粉砕できなかったが使徒の顔らしき所は粉砕した。
『クッ!』
しかし、伸びて来た使徒の右腕がレイの機体を掠める。
なんとか急旋回で尾翼を少し掠められただけで無事避けたレイ。
シンジとカヲルは冷や汗を流す。
そこに弐号機が突っ込み使徒のコアにプログナイフを突き刺した。
火花を飛ばす使徒のコアとプログナイフ。
弐号機は使徒を倒すと、全体重をプログナイフに掛け押し込む。
パキンッと言う音と共に使徒のコアが割れた。
「パターン青消滅、使徒沈黙しました」
シゲルの報告に発令所は安堵の息に包まれた。
その報告と共に弐号機が崩れ落ちた。
「アスカ!」
ミサトがその様子に叫ぶ。
『大丈夫、ちょっと疲れただけよ』
アスカから無事を知らせる声が届いた。
「弐号機、中破、パイロット異常ありません」
マヤがモニターに映される情報からパイロットの無事を確認した。
『それでは、帰還します』
シンジからの通信は一方的にそれだけを告げると切れた。
使徒の開けた穴から出て行く3機の戦闘機がメインモニターには映し出されていた。
「これは、どこまで修理できるかしら・・・」
リツコはジオフロントの壊滅状況を見て呟く。
使徒がまき散らした光線は、至る所にその被害を及ぼしていたのだ。
「弐号機は損傷軽微なんじゃないの?」
ミサトは、弐号機の修理の事だと思って聞き直した。
「NERV本部のことよ」
リツコは「何言ってるのよ」と言う眼でミサトを見て、そう言った。
「あ、アハハ・・・」
冷や汗をかきながら笑って誤魔化すミサトだった。
「さて、どこから話ましょうか・・・」
シンジはそう言ってリツコにコーヒーを差し出した。
シンジの所に約束通りリツコが来ていた。
マヤとアスカも同伴している。
マヤは申し訳なさそうに俯きながら時々チラチラとシンジの方を上目遣いで見ていた。
ここは、いつもの会議室ではなく食堂だ。
ソファーにゆったりと座り、シンジ、レイ、リツコ、マヤ、アスカが居る。
アスカとレイはいつも通りケーキを用意していた。
マヤは今日は控えめに、それでも2つ持って来ていた。
「そうね、まず、どうやってレイを連れ出したのかかしら」
リツコはレイが居なくなった事にも疑問を持っていた。
セントラルドグマの人工進化研究所第三分室、そこでレイの映像記録は途絶えていたのだ。
連れ出したとしてもセントラルドグマに侵入した可能性が高い。
それを、何の痕跡も残さず行った事について知りたかったのだ。
「まず、綾波レイさんは、表に出た時、つまり中学校に通い出したときにレイと入れ替わっていました」
「何ですって?!、そ、そんなどう見ても年齢が違うじゃない?!」
リツコはシンジの常識外れな言葉に驚愕した。
いや、どちらかと言うと憤慨している。
「じょ、冗談も休み休みにして下さい!」
既にからかわれていると思っているようだ。
マヤも信じられないと言う顔でケーキを口に運ぶ途中の大きな口を開けたまま固まっていた。
アスカとレイは平然とケーキを食べている。
「はっきり言って、これを話すのは時期早々とは思うのですが、僕達は、貴方が呼ぶ使徒と、粗、同等の性質を持っています。つまり粒子と波の中間のような性質を持つ構成物質で、その固有波形パターンは人間の遺伝子と、99.89%一致」
「それは・・・」
それは第四使徒を解析してリツコが導き出した結果だった。
「エヴァと同じ、そして元の綾波もそうでしたね」
「・・・・・」
シンジの言葉にリツコは黙ってしまった。
マヤは頬っぺたに生クリームを付けて固まっている。
「心の形が人の形を作ります。僕達はある程度なら見た目を変える事が可能です」
「心の形が・・・」
リツコはその言葉に戸惑った。
「ATフィールドは心の壁です。使徒は貴方達の呼ぶS2機関でその壁を強力にしているだけです。貴方達もATフィールドで自我を保っています」
「なっ私達にATフィールドがあるって言うの?!」
リツコがあまりの事に声を荒げた。
「赤木博士、貴方は知っているはずです。ゼーレやNERV司令が行おうとしていたサードインパクト。それはアンチATフィールドによる生物の融合だったはず」
「そう、そう言う事だったのね。溶け合って一つになると言うのは・・・」
リツコもその実現方法については具体的には知らされていなかったのだった。
カチャカチャと音を立てコーヒーを飲むリツコ。
シンジはリツコが落ち着きを取り戻すのを見計らって話しを続けた。
「従って、零号機の起動実験で怪我をしていたのはレイです。勿論、損傷は見た目ほどではなく軽微な物で済んでいました。そして綾波レイの素体を破壊し、NERVを抜け出した」
「そ、そうだったの、貴方なら苦もなくそれぐらいやってしまいそうね」
リツコはレイの方を見ながらそう言った。
レイはその視線を受け、ケーキを頬張りながらニッコリと微笑んだ。
「じゃぁレイのリリスの因子を取り除いたって言うのは?」
「もうお解りなんじゃないんですか?レイが引き取ってます」
「そう、貴方はもしかしてリリスそのものなの?」
「・・・そうよ」
レイの方を向かい尋ねたリツコの言葉に、レイはあさっりと肯定した。
「そう、私達は神と張り合っていたのね」
「・・・私は神ではないわ」
確かにケーキを頬張る神なんぞ聞いた事もない。
「でも神と同等の力を持っているんじゃなくて?」
「・・・貴方は神を誤解しているわ、神とは無から有を作れる物よ」
リツコは今ひとつレイの言葉が理解できなかった。
しかし、ここでレイとレイが神であるかどうかを言い争うのは不毛だと感じ、その事については打ち切った。
そして今、浮かび上がったもう一つの疑問をぶつける事としたのだ。
「じゃぁもしかして第参使徒戦で初号機に乗ったのは、貴方だったの?」
これはリツコに確信があるわけではなかった。
しかし、報告書とあまりに違う、容姿(服装だが)に性格だった事にシンジも入れ替わっていたなら話が解ると思ったのだ。
「流石、赤木博士、そこまでバレてしまいましたか」
シンジは笑いながら肯定した。
それに驚いたのはマヤだった。
「そんな、なんであの中で生き残って居るんです?それより、あの時の戦闘機に乗っていたんじゃないんですか?」
尤もな疑問だ。
「あの時は、丁度、ビルに背中が突っ込んだ形になったので、その時に抜け出しました。後は本当に初号機だけで暴走していたと言う事でしょう」
これは嘘だった。
抜け出したタイミングはその通りだが、初号機はシンジが操っていたのだ。
「そんな、パイロットが居ない状態で暴走なんて、有り得ないわ」
リツコが声を荒げて否定する。
「でもケージでも、エントリープラグ挿入してないのに動いたじゃないですか」
「・・・・・」
そうであった。
確かにあの時、エントリープラグも挿入していないのに初号機は動きシンジを庇ったのだ。
「良かった・・・シンジ君・・・本当に生きていたのね」
マヤはまた涙ぐんでいる。
「じゃぁ何でシンクロしたの?零号機は暴走したけど、初号機はシンクロして起動したわ。貴方やっぱりシンジ君なの?」
リツコは次ぎなる疑念を尋ねた。
「その話をする前に食事にしませんか?今日は構わないんでしょう?」
「え、ええ構わないわ」
そのリツコの対応に微笑みながらシンジは食堂のシステムの説明を始めた。
基本的にこの艇はシンジ、レイ、カヲルの3人だ。
今は碇シンジと綾波レイが居るので5人だが、それでも艇の広さに比べれば無人の場所の方が多い。
そしてこの食堂も普段は無人である。
調理ができる厨房は完備されているが、殆ど使われる事はない。
艇が料理を作ってくれるのだ。
トレイを持って、自分の食べたい物を口頭で伝えると機械的な声が反応して、暫くすると出してくれる。
それは、地上にある大抵の食べ物は網羅されていた。
「これは凄いわねぇ、ミサトが泣いて喜びそうなシステムだわ」
リツコが眼を見開いて驚いている。
リツコは「何でも良い」と言われたので、悪戯のつもりでフランス料理やイタリア料理等を織り交ぜて頼んだのだ。
しかし、全て対応して出てきた。
しかもソースの種類や焼き方まで相手から聞いて来たのだった。
マヤもケーキしか食べた事がなかったので驚いている。
しかし、さっきまでケーキを食べていたはずなのだが、女の人のお腹は謎だらけである。
「これは、美味しい!」
リツコはシステムの凄さは驚愕したが、味は付いてこないだろうと思っていたのだ。
「お口に合って良かったです」
シンジが微笑んで言った。
因みにシンジは刺身にみそ汁、御飯になすびの揚げ出し等と和風な品揃えだ。
アスカは例によってハンバーグ3点盛り。
レイは、茸のパスタにサラダだった。
相変わらず肉は嫌いらしい。
マヤはリツコに習って同じものを頼んだようだ。
「本当!美味しいですぅ」
一口一口に感動しながらマヤは食べていた。
そこにカヲルが綾波レイと碇シンジを連れてやって来た。
「やぁ皆さんお食事中だね、僕らも仲間に入れて貰うよ」
カヲルはそう言ったのだがリツコは固まっていた。
「あ、あ、貴方は、碇シンジ・・・く・・ん?」
リツコにそう言われた碇シンジはリツコの方を向く。
「はい、そうですけど貴方は?」
あまりにあっさり答える碇シンジにリツコは、口をパクパクさせている。
「・・・NERVの赤木博士」
綾波レイが碇シンジに知らせた。
「NERVの方でしたか、碇シンジです。父がいつもお世話になっております」
そう言って碇シンジはペコリと頭を下げた。
「い、いえ、こちらこそ・・・」
リツコは未だ立ち直れないでいた。
食事も終り、リツコも落ち着きを取り戻した。
「碇シンジ君は、予想しておられると思いますが、NERVには一度も行っていません」
「そ、そうね・・・」
シンジは話だした。
あわよくばシンクロの話はうやむやにしてしまおうと考えていたのだ。
「ATフィールドが人の形を作る事をお話しましたね?そして僕達はある程度それを操作する事ができる」
「ええ、そうね先程聞いたわ」
「つまりATフィールドを伸ばして行くとエヴァも操れるんですよ」
「まさか?!」
これは、リツコがどう受け取ったかは、解らないがある程度正しかった。
エヴァと同化する、それはATフィールドを緩めエヴァを感じる事だからだ。
そしてエヴァを感じ動かす事は、そこに自分のATフィールドが伸びていると言えるのだった。
「私の理解の範疇を超えているわねATフィールドって言う物は」
「ATフィールドではなく、心の在り方ですよ」
「そう、要は心なのね・・・」
だからリツコは理解に苦しむのだった。
心理学等でいくら心が科学されていても、それは眼に見える物としては存在しないのだ。
数字で出てくる物も統計以外のなにものでもない。
この数値がこうだから心はこうだ、と言い切れる物はないのだ。
あくまで、この数値がこうだとこう言う傾向があると言うだけなのだ。
「もう一ついいかしら?」
「何でしょう?」
「貴方、アダムなの?」
「ぷっ・・ハ・・アハ・・アハハハハ・・・こ、これは失礼しました」
リツコの質問にシンジは笑い出した。
それに対しリツコは怪訝な顔をする。
「まぁそう思うのも無理は無いかも知れませんが、では貴方達は何故使徒が成長して現れると思いますか?」
「使徒が成長してるって言うの?!」
リツコは、成長しているとは思っていなかったのだ。
確かに強くなっているとは思っていたのだが、それを成長とは考えられなかった。
「アスカには話したんですが、貴方達が使徒と呼んでいるのはアダムです」
「何ですって?!」
もうリツコは今日何度目か解らない絶叫を上げた。
「第一使徒と呼ばれるアダム、それを卵まで還元する事によって起ったセカンドインパクト。その時にアダムの因子も拡散しました。それらの因子が時を掛け形を持ったものが使徒。だから使徒はアダムに帰ろうとします」
「そ、そうだったの・・・」
「アダムは魂が受け継がれ次ぎの身体へと渡ります。その時に前の情報を持って行くわけです。貴方達の作った綾波レイもそうじゃありませんでしたか?」
「えぇそう聞いていたけど、実際を私は見ていないわ」
「そうでしたね」
シンジはそこで一息ついて、お茶を飲む。
「まぁ成長と言うより、前の弱点をカバーする程度でしかないのですが、そして、第壱拾七使徒が倒されると魂は、元のアダムの本体へと帰るわけです」
「じゃぁ今はまだアダムは成長途中と言う事なのね」
「そうですね、それにアダムの実体と言う意味では、カヲル君ですね」
「え?」
「オーバーザレインボーでアダムの身体はこちらで頂きました。NERVにあるのはフェイクです」
「そんな、じゃぁ司令の計画は何も上手く運んでいなかったと言うの?」
リツコは驚愕した。
NERVはSCSに手玉に取られていたではないか、私は何をしていたのだと。
「何故、司令にその事を伝えないのかしら?」
リツコはゲンドウにサッサと計画が瓦解している事を伝えればいいのではないかと思ったのだ。
「良くも悪くもあの男は頭が良いんです。今回の零号機のサルベージだって、そんな事を考えるとは思いませんでしたよ」
「そう、無駄に頭を使って貰わないと危険であると言う事ね」
「そうですね、あの男が退いたとしたら、本当にゼーレの計画実行だけを考える司令が着任する事も考えられます。それはそれで厄介ですので」
「どうして?」
「そうなれば貴方達も洗脳、改造されるかもしれませんよ」
「そ、そうね、ゼーレならそれぐらいやりそうね」
リツコは、それは予想できる範疇だと背筋に寒い物を感じた。
「そう言えばゼーレの老人達は醜いですよ。心の形が人の形を作る典型かもしれませんね」
シンジはそう言って笑うのだった。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。