第拾七話
増える課題


突如、第3新東京市上空に直径60メートルの球体が現れた。

『目標は微速進行中、毎時2.5キロ』

「どうなってるの?富士の電波観測所は!」
「探知していません。直上にいきなり現われました」
「パターンはオレンジ、ATフィールドは反応無し」

「新種の使徒?」
「MAGIは判断を保留しています」

突然空中に現われた物体に対して、ミサトは慌ててエヴァのパイロット2人を呼び出すと、とりあえず待機させた。

「あんな使徒、パッパッとやっつけまっさかい、サッサと出撃させてください」
トウジはやる気満々で言う。

トウジとしては、最近、皆が自分の知らないところで何かしているらしい事が気に入らず自分の存在をアピールしたかったのだ。
気に入らない理由は、そこにアスカが入っているらしき事だった。

トウジは自分とアスカは同じパイロットだと言う意識があった。
知識や能力で劣っている事は認める。
しかし、男女偏見を持っているトウジは、自分こそ戦闘に率先して出るべきだと思っているのだ。

「まぁいいわ、目標のデータは送った通り、今はそれしか判らないわ。慎重に接近して反応を窺い、可能であれば市街地上空外への誘導を行う。先行する一機をもう一機が援護。よろし?」

『『はい』』
2人が返事したのを見計らってミサトが発進を決意した。

「エヴァンゲリオン弐号機、参号機発進!」

地上に射出され、使徒に慎重に近付く2機のエヴァ。

『なんや、フワフワ浮いとるだけやのう・・・』
トウジが風船のようにゆらゆらと移動する使徒を見て言う。

アスカは焦れていた。
攻撃すれば、自分の下にきっと影が来る。
迂闊に攻撃できないが、放っておくとトウジが攻撃しそうだ。

ならばとトウジが遠くに居るうちにアスカは動いた。

『足止めだけでもしておくわっ!』

バシュッ、バシュッ、バシュッ

アスカが使徒にパレット・ライフルを撃ち込むと上空の使徒が消える。
アスカは、同時に近くのビルに飛び上った。

「パターン青!弐号機の直下です!」

『惣流!』
トウジが弐号機に駆寄ろうとする。

『来ちゃ駄目!ジャージ!』
アスカはそう言うとビルの上を飛びながら、影の外へ飛び出した。

アスカの居たあたりから半径300m程は黒い影に飲み込まれている。

『な、なんやあれは?!』
トウジは自分が攻撃していたら逃げられただろうかと冷や汗を流した。

『さて、ミサトどうする?』

「アスカ、トウジ君、一時撤退よ」
ミサトは解析と戦略を練る事にした。

『まだ、やれまっせ?』
トウジが何もせずに撤退するのは不満とばかりに言う。

「トウジ君、これは戦略的撤退と行って作戦なのよ」

『・・・解りました』
渋々従うトウジ。

アスカは撤退命令と共に撤退していて既に、弐号機の姿はなかった。
「ちっ」と舌打ちするトウジ。



会議室ではリツコ分析結果を説明していた。

「使徒の本体は、影のように見える地面の黒いシミです。」
「では、上空の球体は?」

「あれこそが使徒の影のようなものです」
「どうしてそんな常識では考えられない現象が起こるのですか?」

「まだ仮説の域を出ませんが、地面のシミのように見える直径680メートル、厚さ3ナノメートルの影、その極薄の空間を内向きのATフィールドで支えている。結果として内部はディラックの海と呼ばれる虚数空間が形成されていると思われます」

「それはどういうことなんですか?」
「つまり異次元か別の宇宙かわからないけど、こちらとは別の法則の世界と繋がっている可能性が高いわ」

「そんなばかな!」

リツコの説明に対し、色々な質問が飛び交う。
それに対しリツコはいちいち説明するのだが、結局は正体不明である事は変らない。

「現状での対応策として、992個、現存するすべてのN2爆雷を使徒に投下、タイミングを合わせて残存するEVAのATフィールドで使徒の虚数回路に千分の1秒だけ干渉するわ。その瞬間に爆発を集中させて、使徒をディラックの海ごと破壊します」

「危険ね、それで倒せる保証は無いんでしょ?」
「ええ」
ミサトの質問にリツコは正直に答えた。

「SCSへ指揮権を委譲します」
「「「「「!!!」」」」」

それは誰もが望んで居た事だが誰も言い出さなかった事。
まさか、それをミサトが言い出すとは、誰も予想できなかった。

「ちょっと待って下さい、ミサトはん。あいつ達やったら倒せるっ言うんでっか?」
「解らないわ、でも現存するN2爆雷を今使う申請をするよりは、先にするべき事だわ」
ミサトに気負いがなくなっている。
作戦指揮者として正しい判断ができるようになって来ているようだ。

「司令、構いませんね?」
「・・・問題ない」
ゲンドウも策無しな様子だ。
エヴァの被害なくSCSが使徒を倒すならそれも良いと考えているのだろう。

「青葉君、SCSにコンタクトを取って」
「はい」
シゲルは返事をするとミサトと共に発令所に向かった。



発令所ではメインモニターにカヲルが映し出されていた。

「現在NERVには使徒迎撃の策がありません。よってSCSに指揮権を委譲致します」
ミサトがカヲルに向かい指揮権の委譲を告げた。

『了解したよ。それでは、これより使徒殲滅に当ります』
カヲルがそう言うとメインモニターには使徒が映し出された。

「お手並み拝見と行きますか」
マコトがミサトに言う。

「ええ」
ミサトは沈痛な面持ちでそう答え眼はメインモニターから動かされていなかった。

上空から戦闘機が近付いてくる。
いつも見ているので、それがシンジ達の機影だと言う事は解った。

NERVのレーダ等には反応せず、光学で確認する以外の術はないのだ。

「今日は1機のようですね」
マヤがいつもは2機なのにと首を傾げた。

(さぁどうするつもりだ?)
と発令所の全員が状況を見守っている。

アスカとトウジも発令所で見ていた。

「「「「「えっ!!」」」」」

発令所の全員が眼を疑った。
シンジ達の戦闘機は速度を落とす事なく、地表に突っ込んで行ったのだ。



その頃、虚数空間ではシンジとレイが揉めていた。

「どうしてこっちに来るのさ」
「・・・ここなら誰も邪魔しないわ」
レイは副座から移動してシンジの膝の上に乗っているのだ。

「これじゃ、操縦できないよ」
「・・・落ちる訳じゃないから操縦する必要はないわ」
「レイィ〜〜〜」
レイは二人っきりと言うシチュエーションを思う存分楽しみたいようだ。

「ここは、普通の虚数空間じゃなくてレリエルの中だよ?」
「・・・あの子も興味深く見ているわ」
シンジは慌てて周りを見回す。

「本当?」
「・・・そんな気がしただけ」
ニコニコ微笑んでレイはシンジに抱きついている。

「さっさとATフィールド中和して外に出よう」
「・・・もういいの?」

「帰ってからゆっくりとね」
「・・・解ったわ」
レイは渋々副座に戻った。

レリエルの殲滅方法は簡単だ。
内向きのATフィールドで虚数空間を支えているので、そのATフィールドを中和してやれば自滅するのだ。

そして、真っ暗な空間に光りが差し込まれる。

「あそこから出るよ」
「・・・了解」



「SCSと繋いで!」
「はい」
ミサトの指示にシゲルが応え回線を繋げた。

『何でしょうか?』
出たのは、やはりカヲルだった。

「あんた達の戦闘機が使徒の影に入って行ったけど、戻ってこれるの?」
ミサトが説明しろとばかりに問う。

『多分、大丈夫だと思いますよ。虚数空間にあるコアを破壊すれば出てくるでしょう』
カヲルも殲滅方法を知っていたが、ATフィールドが張れるとは言えないので敢えてこういう言い方をした。

「コアが虚数空間にあると言うの?」
今度はリツコが尋ねた。

『多分ですけどね。まぁ司令と副司令が行ってるから大丈夫ですよ』
カヲルは全く心配した様子もなく答えた。

その時、オペレータから連絡が入った。

「使徒に変化!!」
「何っ!?何が起こってるの!?」
リツコが叫んだ。

「すべてのメーターは振り切られています!」
マヤが叫ぶ。

使徒の影に亀裂が走り、血のように赤い液体が飛び散った。
地割れの様にひび割れる地面にある使徒の影。
それと同時に空中に浮かぶ球体も震えだし、やがて割れ始めた。

バカッと空中に浮かぶ球体が割れ、辺り一面に血をまき散らす。
その割れた所からシンジ達の戦闘機が飛び出して来た。

『使徒殲滅、ミッション終了、帰還します』
シンジから通信が入った。

「ああ、ご苦労さま」
冬月も端的に答えて通信を切る。


「あれやったらエヴァでも倒せたんちゃいまっか?」
トウジがあまりにあっさりSCSが倒したため指揮権の委譲は早計だったのでは無いかと詰めよった。

「無理ね」
リツコはあっさりと否定する。

「なんででっか?」
トウジは納得できない。

「彼らは飛べる。これは大きな違いだわ。それにいつも2機だったのに今日は単機で来た。これもきっと理由があるはずね。私達には解らないなにかを持っているわ」
「・・・・・」
トウジは何も言わず、バッと発令所を後にした。

実はシンジが一人で行くと言ったのにレイが無理矢理付いて来ただけだったのだが。

リツコの元にアスカが寄ってくる。

「あいつらが話があるから、出来るだけ早く調整してくれって」
アスカの元に今、メールが届いていたのだった。

リツコは無言で頷いた。

使徒殲滅直後でリツコが冬月がNERVを離れるのは難しい。
それを見越しての連絡だったのだろう。



使徒の処理の手配を済ませ、リツコ達は翌々日にシンジ達の元に来ていた。
今回は急だったため、時間の取れた人間だけだった。
加持、リツコ、マヤ、アスカの4人である。

マヤは今回、戦闘機に乗れると解ってご機嫌だったのだが、その乗り心地の悪さに酔っていた。
そんなマヤを見てアスカは「エヴァに比べれば良い方よ」と言って笑っていた。

「ごめんなさいね、今回は急だったからこれだけしかメンバーを揃えられなかったわ」
「いえ、こちらが急に言った事ですから、お気になさらず」
リツコが開口一番に謝罪したが、シンジもそれは気にしていない様だった。

「それで、何かしら?」
「実は、この間、の話の時に気付くべきだったのですが、次ぎの使徒が少々問題なんです」
リツコの問い掛けにシンジが答える。

「あら、じゃぁミサトを連れて来た方がよかったわね」
「それもそうですが、根本的に問題があって・・・」
シンジにいつもの歯切れの良さがなかった。

「・・・バルディエルは既に参号機に寄生しているの」
「なんですって?!」
レイが代りに述べ、リツコがその内容に叫んだ。

「多分、覚醒する時に爆発が起ります。だから何か理由をつけて外に出す必要があります」
「それって何を契機に覚醒するのかしら?」
リツコが焦りながら尋ねる。

僅かにお茶を飲む手も震えているようだ。

「多分、時期とATフィールドかと思われます」
「ATフィールドを発生させなければ良いの?」
「いえ、ATフィールドは検知されなくてもエヴァを起動したら発生してます」
「まさか?!」
リツコは最初の頃、ATフィールドを張る事に苦労していたのだ。
それが実は起動しただけで発生していたとは信じられなかった。

「ふぅ厄介ね、何か良い案あるかしら?」
「帰って葛城と相談だな」

「そうね、話はそれだけ?」
リツコは、これだけの為に呼んだとは思えなかったのだ。

「実は近々、第二支部でS2機関の搭載実験が行われようとしています」
「それを止めろと?」
加持がそれは無理だろうと顔を顰めた。

「止めるのは無理だと思います。ただ、失敗する確率が高いので、もし第二支部に知り合いが居るなら引き上げさせた方が無難かと思いまして」
「たかが搭載実験の失敗で、引き上げる必要があるのかい?」
言ってる事が納得できない加持だった。

「最悪、第二支部が消滅しますねぇ」
カヲルが大した事なさそうに言った。

「君達が失敗させるつもりじゃないのかい?」
加持が暗にSCSが工作するつもりかと問う。

「いえ、そんな事をするつもりはありませんが、第二支部は何を焦っているのか、かなり確認をおざなりにして工期を早めているようなんです」
「そう、解ったわ、一応忠告しておくわ。聞きはしないとは思うけど・・・」

「後は、第壱拾参使徒の後、すぐ第壱拾四使徒が来る様です」
「解ったわ、結構、情報盛り沢山だわね」

「今回は以上です」

リツコは考える事が増え、レリエルをどうやって倒したのか聞くのを失念していた。
そしてリツコ達は戻って行った。

しかしマヤが残っている。
アスカが残ると言った時に、マヤが理由を聞いたのだ。
すると理由は「ケーキ」の一言だった。

マヤが「いいなぁ」と言う顔をしていると、アスカが「食べたいなら残れば?」と言ったのだ。

「どうせ、あたしが帰る時に戦闘機飛ばすんだから、一緒に帰ればいいでしょ?」
「そう?じゃぁそうさせて貰おうかしら?」
家主の意見を全く聞かず2人で決めてしまったのだ。



食堂にシンジが居るとマヤとアスカが入ってきた。
カヲルは戦闘機の遠隔操縦があり、レイは着替えに行くと言うので一人で待っていたのだ。

眼を見開くシンジ。
悪戯が成功したように笑っているアスカ。

そこにスピーカからカヲルの声が響いた。
『シンジ君、1機は加持さんとリツコさんが乗って戻って行ったんだけど1機は誰も乗らない様なんだけど、何かあったのかい?』
「あ、あぁここに伊吹一尉とアスカが居るよ」
『そうかい、じゃぁアスカと一緒に帰ると言う事だね、一端格納してしまうよ』
「あ、あぁそうしてくれて構わないよ」
実はカヲルもシンジも気を使って話して居たのだ。

まさか本人の前で「何で居るんだ」とも言えずに。
カヲルもカメラでそこにマヤが居る事は知っていたのだ。

そしてシンジは「ちょっと待ってて下さい」とマヤに言って、アスカを引っ張って行った。

「なによう?!」
アスカが何か悪い事したかと言う顔でシンジを睨んでる。

「どういうつもりだい?アスカ。これじゃシンジ達に部屋から出るなって言わなきゃいけないじゃないか」
「あっ!」
アスカは忘れていたようだ。

「でも良いんじゃない?いっその事、言っちゃえば?」
「なんて?」
「え?碇シンジ君と綾波レイさんですって紹介するんじゃ駄目?」

「はぁ〜」っと大きくシンジは溜息をついた。

「じゃぁさ、綾波は良いとしても碇シンジ君は何時ここに来た事にするんだい?」
「うっそれは不味いわね」
なんとなくミサトに反応が似てきているアスカだった。

「解ったわ、ケーキ食べたらさっさと帰るわよ」
「そうして貰えると助かるよ」
シンジとアスカは食堂に戻った。

「あ、あの・・・私、迷惑でした?」
マヤが心配そうに聞く。

「いや、そんな事ないですよ、ケーキなら好きなだけ食べて行ってください」
シンジは何事も無かったように、そう答えるのだった。

そして、2人がケーキを取りに行っている時に、カヲルにこっそりその事を伝えようとインターフォンに向かった隙にそれは起った。

レイが2人を連れて食堂に入って来たのだ。
それを見て固まるアスカとマヤ。

レイがソファーに腰掛け様とした時、固まってるアスカとマヤを見て固まった。

そして、シンジがインターフォンに向かってこっそりと
「シンジ達に部屋から出ないように伝えてくれる?」
とカヲルに言うと

「もう遅いみたいだねぇ」
と帰って来た。

ゆっくりと振り向くシンジ。

そこにはケーキを持って固まってるアスカとマヤ。
腰掛け様と中腰で固まってるレイ。
アスカの方に向かっている碇シンジと綾波レイが居た。

シンジの頭は猛烈に回転している。

(全くの別人として紹介するか?・・・)
(しかし、綾波は似ているで片付けられるられるのか?・・・)
(いっそレイの妹とするか?・・・)
(じゃぁシンジは?・・・)
(弟?・・・)
(こんな事なら名前を変えておけばよかった・・・)

等と考えている間に綾波レイと碇シンジはマヤ達と話出してしまった。

「あ、アスカ、来てたんだ」
とシンジは普通だったが、綾波レイが固まった。

「・・・伊吹三尉」
言ってしまった。

「あ、あなた、レイちゃん?」
「・・・あっ」
そう問われて慌てて周囲を見渡すが碇シンジ以外は固まっている。

ここまでは一瞬の出来事だった。

「綾波、知り合い?」
碇シンジが聞く。

(この馬鹿シンジィ・・・)

自分の事を棚に上げ心の中で詰るアスカだった。

「・・・え?えぇNERVのオペレータの伊吹三尉」
「はじめまして、碇シンジです」

(((・・・・・)))

アスカ、レイ、シンジは真っ白になった。

「えっ?え?え?い、碇シンジ・・・君?」
マヤが困惑しながら尋ねた。

「はい」
にっこり微笑んで明るく答える碇シンジだった。


碇シンジ、綾波レイ、アスカがソファー座っている。
横の一人掛けのソファーにマヤ、その真向かいの一人掛けにカヲル。
アスカ達と反対側のソファーにレイとシンジだ。

白くなって固まってる3人と困惑してるマヤと綾波レイ、そして状況が解ってない普通の状態の碇シンジが居る所にカヲルはやって来て、兎に角座らせたのだ。

「ごめん、悪かったわ」
アスカが珍しくしおらしく謝った。

「いや、いずれ話す事になっただろうから、ちょっと時期が早まっただけだよ」
シンジは自分に言い聞かせるように言った。

「あ、あの、一体どう言う事なんでしょうか?」
マヤは未だ困惑している。

「これは、まだ皆さんには話さないでくれると約束してください」
シンジの言はお願いではなく強制だった。

「あ、は、はい、解りました」
そのシンジの態度にマヤは少し怯える。

「彼は、碇シンジ君、正真正銘、碇ゲンドウの息子さんです。そしてこちらは綾波レイさん。こちらは良くご存じだと思います」
シンジの紹介にペコリと2人は頭を下げた。

無表情で他人を拒絶していた様な綾波レイしか知らないマヤは更に困惑した。

「で、でも碇シンジ君は、その、もっと女性っぽかったし、レイちゃんは髪の毛と瞳の色が・・・」
マヤは言い辛そうに、しかし自分の疑問を言った。

「綾波レイさんからはリリスの因子を取り除きました。そのため色素が出て来たようです。碇シンジ君については、一度もNERVに行ってないのです」
「えっ?!」
マヤが眼を見開く。

マヤもあの日、発令所でシンジの話を聞いていた。
勿論レイの出生についても、覚えていた。
それに碇シンジが一度もNERVに行っていないとはどういう事か?

「初号機に乗ったのは別人です。それが誰だったのかは、また後日と言う事で宜しいでしょうか?」
「やはり、彼は死んでしまったのですね」
元来優しいマヤは、それを未だに罪悪感として持っていたのだ。
暗く俯いてしまったマヤ。

「いえ、彼も生きてます」
「本当ですか?!」
「ええ」
その言葉にマヤの顔は急に明るくなった。

「良かった・・・良かった・・・レイちゃんも、シンジ君も・・・」
そう言いながらマヤはボロボロ泣き出した。

そんなマヤを見てシンジは別な罪悪感を感じるのだった。

それから、7人はケーキを食べながら歓談した。
見違える程、年相応の反応をするようになった綾波レイに、マヤは感激しっぱなしであった。

そして、中世的な碇シンジに女装しないのかと持ちかけていた。

カヲルが「僕も見てみたいねぇ」等と煽るものだから、シンジは苦笑するしかなかった。

マヤが帰る時にシンジは
「近いうちに話す事にはなると思いますが、それまでは絶対他言しないでください」
と念を押し、マヤも頷いて帰って行った。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。