第拾四話
反旗は翻る


NERV司令室にはリツコが呼ばれていた。

「・・・コアの状況はどうだ」
ゲンドウが重い口を開く。

無駄に広い司令室で明かりも薄暗いなかゲンドウの声は更なる憂鬱感を誘う。

「現状、芳しくありません。復元の見込みは絶望的と思われます」
リツコもこれ以上先延ばしにできないと思い、カードを切った。

「・・・そうか」
ゲンドウからの答えは予想に反して驚きの声ではなかった。

しかし、退室を言い渡されない事にリツコは一抹の不安を抱く。
それは、見事的中した。

「・・・零号機のコアを元に戻し、サルベージを行え」
「「!!」」

「六分儀、それはどう言う事だ?」
これには冬月も驚いた。

「・・・レイの魂は受け継がれる、現状考えられるのは零号機だ」
「しかし、初号機のコアは復元不可能なんだぞ!」

「・・・復元されずとも、あれにユイが居る事に変わりはない」

(居なくなったとは思えないのか・・・)

冬月はゲンドウの執念の深さを再認識させられた。

「それに零号機をサルベージして出てくるのは・・・」
冬月は言い及む。

「・・・サルベージには周りでの人物像が影響する」
「レイが戻ると言う事か」
「・・・そうだ」

「初号機のコアはどうするのだ?」
「・・・サルベージが終了した後、零号機に乗せる」

(そう言う事か・・・)

ゲンドウの起死回生の案だった。
零号機には元々一人目のレイがインストールされている。
サルベージされて出てくるのは一人目のレイのはずだ。
しかも、サルベージ時に使用するデータを今までのレイにする事によりレイに程近い一人目がサルベージされるとゲンドウは考えたのだ。

そしてその後、零号機に初号機のコアを乗せ、約束の日にはレイと零号機で元の計画を遂行しようと考えたのだ。

「赤木君、準備にどれぐらいかかるかね?」
「サルベージの準備と平行してコアの乗せ替え作業を行いますと一月程と予測されます」

「・・・かかれ」
「はい」
ゲンドウの短い命令にリツコは返事をすると退室した。


司令室を出たリツコは悩んで居た。
リツコはコアの復元が絶望的と告げる事でゲンドウは壊れないまでも目的を見失うと考えていたのだ。
しかし、予想を翻し、新たな案を提示してきた。

(あの人が私に縋る事はないと言うことね・・・)

独り自嘲しながらリツコは執務室へ向かった。



カタカタカタカタ

素早いキーボード操作でマヤがチェックルーチンを入力している。
マヤの後ろの方ではリツコが優雅に足を組み、コーヒーを片手に書類のチェックをしていた。

「マヤ、速いわね」
リツコは時折マヤの操作を見守りながら誉める。

「それはもう先輩の直伝ですから!」
マヤは手を止めずに3次元ホログラフィモニターを見ながら答える。

「あっ、待って!そこA−8の方が速いわ。ちょっと貸して」
先ほどの3倍もの速度で画面が次々とスクロールしていった。

あきらかにマヤとは次元の異なる速度である。

「は、速い!」
あらためてリツコの実力を思い知るマヤだった。

ビーッ

ブザーと共にスピーカーから金属質の音声が流れる。

『MAGI・SYSTEM、3機とも自己診断モードに入りました』

ディスプレイには「MELCHIOR-1」「BALTHASAR-2」「CASPER-3」の3機のMAGIの状態が表示されている。
暫くして『第127次定期検診、異常なし』という報告とともに作業は終了した。


ジョボジョボジョボ、キュッ

リツコは洗面所で顔を拭いていた。

フェイスタオルを右手に持ち鏡を見つめるリツコ。

「異常なしか・・・。母さんは今日も元気なのに・・・。私はただ歳をとるだけね。」

リツコはフッと苦笑した。



リツコの執務室では、冬月、リツコ、ミサト、加持、マヤ、マコト、シゲルそれにアスカが集まっていた。

「これは、司令を除くトップ会談ってとこ?」
アスカが最後に呼ばれて入って来た時に戯けて言った。

「当らずとも遠からずというとこだな」
加持がウィンクする。

「集まったようだな」
冬月が切り出した。

「六分儀が新たな計画を考え出した」
「「「「「!!」」」」」
殆どの者が眼を見開いた。

「これによりSCSと早急に会談を行い我々の今後の方針を決めたいと思う」
「まず、その計画とやらを聞かせて貰えませんか?」
加持が持ち前の好奇心プラス能力から核心をまず突いた。

「そうだな、六分儀は零号機コアからレイをサルベージ、その後、零号機に初号機のコアを乗せ、後は同じだ」
「成る程、考えましたな」
加持は感心している。

(無理だとは思うけど、シンジに聞いてみないと解らないわね・・・)

アスカも驚いていた。

「そこで、アスカ君、SCSとセッティングして貰いたいのだが、無理かね?」
「なんであたし何ですか?普通にNERVとして要請すれば良いじゃないですか?」
アスカは自分がそんな事を頼まれる筋合いはないと思っていた。

「正規のルートを通したくないのよ」
リツコが理由を述べる。

「はん、成る程ねぇ、それで、ここに来て貰うの?それだと正規のルートを通さなくても同じだと思うけど」
「いや、こちらから出向かせて貰うよ、今のところ私と赤木君と葛城君、加持君を考えている」
冬月が意向を述べた。

「ミサトって、あいつ達と会って平静で居られるの?」
「努力するわ」
ミサトは端的に言う。

「それはどう言う事かね?」
「だって、この間の使徒戦だって協力を頼めないぐらい嫌っているじゃない」
アスカは「使徒を感じる」と言う言葉を敢えて避けた。

「大丈夫かね?葛城君、辛いなら外れて貰ってかまわんのだよ」
「いえ、引き返すつもりはありませんから」
いつもの戯けた所を少しも見せないミサトだった。

「それで会談の日時は何時を?」
「今からでも良いんだが、それは向こうも困るだろう、取り敢ず向こうの都合を優先して貰ってかまわないよ」

「じゃぁ聞いてみるわ、4人ね」
アスカはそう言うと、携帯からメールを打った。

「そ、そんな簡単に連絡が取れるのかね?」
「これで向こうからのアクセス待ちよ」
冬月は眼を見開いて尋ねたが、アスカは淡々と答えた。

暫し一同が沈黙しているとアスカの携帯にメールの着信音が鳴る。
注目する一同。
息を飲む冬月。

「15分後にNERVゲートで待ってるって」
アスカの余りの軽さに一同、大粒の冷や汗を流した。



15分後NERVゲートに出た一同は、そこに3機のハリヤー型戦闘機が既に待機していつ事を確認した。

傍らに立っていたのは、カヲルだった。

「それでは4人の方はそちらの戦闘機に乗って下さい、操縦は自動で行われますので心配しないで結構です」
カヲルはそう言うと2機の戦闘機を指した。

4人は怖ず怖ずと乗り込んで行く。

「あんたの後ろ空いてるわね」
アスカがニヤリとした。

「その為に僕は独りで来たんだよ」
カヲルはアスカの魂胆を見透かしたように言うと微笑んだ。

「ふん!お見通しって顔ね、じゃぁ遠慮無く乗るわ」
アスカはそう言って、カヲルの後ろに乗り込んだ。

『準備は宜しいですか?』
無線でカヲルの声が流れる。

『あぁ大丈夫だと思う』
『大丈夫よ』
『ああ良いよ』
『いいわ』
4人が返事をすると戦闘機のエンジンが唸り上昇を始めた。

それを見送るオペレータ3人。



艇は海上にその姿を現わしていた。
戦闘機に見えるのに海に潜れる事と、これが潜水艇と言う事を公にしたくなかったのだろう。
戦闘機が着艦すると、シンジとレイが迎えた。
白い制服に身を包んだ銀髪と蒼銀の髪に紅い眼の2人は神々しい美しささえあった。

「ようこそSCSへ」
「お招き頂いて光栄です」
シンジの言葉に冬月が社交辞令の様に返した。

「では、こちらにどうぞ」
シンジは先だって皆を先導した。
レイもそれに続く。

ミサトは2人を睨んでいる。

「そんな眼で見るのは止めなさいミサト、邪魔するならここに居て」
リツコは小さい声で、しかしきつくミサトに言った。

「解ってるわよ」
ミサトはそう言った物の、眼には憎悪が浮かんでいた。


シンジが案内したのは艇の入り口からすぐの会議室のような所だった。
当たり前だが、深部に近づけないための配慮だろう。

かなり広いその部屋に8人では、少々話が遠くなりそうに感じたが、それでもSCS側とNERV側は離れて座った。
NERV側が奥でSCS側が入り口に近いところだ。
アスカはSCS側に座った。
ゲルマン系の白い肌もこの3人の横に並ぶと、かなり色濃い感じがする。

「さて、今日のお話はなんでしょうか?」
シンジが切り出した。

「我々は君達の目的を知りたいんだよ」
冬月が回りくどい言い方を始める。

「我々の目的は、契約している所の保護ですが?」
周りくどい言い方にはシンジも真面目に取り合う気はない。

「それは、使徒殲滅は目的では無いと言う事かね?」
「使徒が契約している者に被害を与えるなら、それも仕事になります」
上辺で話をするならシンジも上辺の回答しかしない。

「お話は以上ですか?」
シンジは下らない話で終るなら草々に切り上げようとした。

「いや、待ってくれたまえ、我々は君が発令所で話した事によって立場が危ういのだよ。それに付け加え六分儀が新たな計画を立てたのだ」
冬月は上辺の遣り取りでは、らちが明かないと見てカードを切った。

「それで?」
あくまでシンジは相手から話を切り出させようとする。

「我々としては、君達の目的によっては、君達と協力したいと考えているのだよ」
「その割には、先の使徒戦でも協力要請はありませんでしたが?」
ミサトが苦虫を噛み潰した様な顔をした。

「それはエヴァだけで倒せると踏んだだけで、非協力的と言う訳ではないんだよ」
冬月が取り繕う。

「それで六分儀司令の計画とは?」
「それは、君達が我々と協力してくると言ってくれないと話す訳には行かない」

「内容も知らず協力する等と言える訳ないでしょう?」
「グダグダ言ってないで、あんたらは協力するって言えばいいのよ!」
「ミサト!」
ミサトが怒鳴ったがリツコが諫めた。

「それがNERVの総意と受け取って宜しいですか?」
シンジは冷ややかな眼を向け言う。

「いや、失礼した、彼女は今、少し興奮していてね。大目に見てくれないかね」
「腹の探り合いは、時間の浪費ですよ、あなた方の要請に速やかに応えたのに、これではらちが明きませんね」

冬月はやっぱりミサトは連れて来るべきではなかったと冷や汗を流した。

「我々は君達が使徒殲滅とサードインパクト阻止を目標としているなら、それに追従したいと考えているんだよ」
加持が、このままでは不味いと思い流れを変えようと口を挟んだ。

「サードインパクトはどうやれば阻止できると考えておられますか?」
「使徒の殲滅とゼーレの計画の阻止ではないのかね?」
冬月がシンジの言葉の意味を理解できずに尋ねる。

「その計画の阻止の具体的方法の事です。それに六分儀司令の計画は阻止せずとも良いと?」
「嫌、六分儀の計画は我々だけでも阻止できると考えている」

「六分儀司令の計画は零号機からレイをサルベージする事による元の計画の復活よ」
「ちょっリツコ?」
ミサトがリツコの言葉に慌てた。

「隠し立てしても話は進まないわ」
リツコも話の進展の遅さにヤキモキしていたのだ。

「加持一尉の言われた事が主旨、赤木博士が言われた事が今回の会談に踏み切られた元ですね。ではこちらからお尋ねします。あなた方はNERVを捨てられますか?」
「「「「!!」」」」
NERVの人間は眼を見開いた。

「それは、どう言う意味かね?」
冬月が言葉の意味を正しく汲み取ろうと尋ねる。

「NERVは人類補完委員会の下位組織です。人類補完委員会はサードインパクトを計画している。それを阻止するために懐を分かつにはNERVを捨てる気概が必要と言う事です」
「確かにそうだが・・・」

「NERVを残してサードインパクトを阻止するのは不可能ですよ」
「何故だね?」
「NERVの存在意義はエヴァにあるからです」
「「「「・・・・・」」」」
暫く沈黙が続いた。

「エヴァを破棄しなければサードインパクトは防げないと言う事かね?」
「エヴァが有る限りサードインパクトを起こせると言う事です」

「それでも使徒は倒さなければ行けないのよ!」
「貴方が?」
ミサトの怒声に対しシンジは静かに言った。

その言葉にミサトは固まってしまった。
ミサト自信はそう思っている。
しかし、それをこの場で言う事は滑稽以外の何者でも無い事ぐらいはミサトにも理解できた。
エヴァでしか使徒は倒せないと言うのも、ここでは通らない事もミサトは理解できていた。

「・・・貴方達は何を望むの?」
レイが初めて口を開いた。

「どう言う意味かね?」
冬月が、やはりレイの言葉の意味を計りかね尋ねる。

「・・・碇ユイの望んだ結果を見たかった冬月副司令、碇司令に必要とされたかった赤木博士、父の仇を取ると思いこんでいた葛城三佐、真実を知りたかった加持一尉。貴方達はこの先の人生に何を望むの?」
4人は眼を見開いた。

そしてレイが「碇司令」と言った事に疑問を持つ事を忘れていた。

「「「「何故それを?」」」」
声の大小はあれ、同時に4人が言った。
それと共に顔を見合わせる4人。

「・・・何を望むの?」
もう一度レイが尋ねる。

「あ、あんた達、一体何者なのよ!」
ミサトが喚いた。

「SCS司令、シンジ=アンガー」
「・・・副司令、レイ=アンガー」
「参謀、カヲル=アンガー」

「そ、そんな事は解ってるわよ!あんたら・・・使徒じゃないの!?」
「貴方も第壱拾八使徒、リリンですが?」
「ぐっ!」
シンジの言葉にミサトも詰まってしまった。

しかし、シンジのそれは自分達は暗にリリンでは無いと仄めかしているようにも聞こえた。

「聞きたいのは貴方達の名前よ。何故ファーストチルドレンとサードチルドレンと同じなのかしら?しかも副司令はレイを大人にした様な容姿」
リツコがミサトの喚きに便乗して自分の疑問をぶつけてきた。

「貴方が導き出した答えは?」
シンジは面白そうに微笑むとリツコに向かって尋ねた。

「使徒の細胞に2人の魂を入れた者か、2人に使徒の細胞を移植した者、でも有り得ない。だから聞いているの」

「では、貴方は自分がどうやって産まれたかご存じですか?」
「え?」

「人は自分の産まれを知る事はできない、後で聞いて知るだけだ、名前も基本的には他人に付けられる物でしょう?」
「そ、そうね・・・」
リツコは、はぐらかされたと感じた。
これ以上の追求は不可能だろう。

「話が逸れたようですね、それで貴方達は何を望むのですか?」
シンジがレイの質問を持ち上げる。

「私は、もうユイ君の望んだ物は見れないと諦めている。だから集団自殺の様なサードインパクトは止めたいだけだよ」
「私は自分の人生を歩きたくなっただけだわ」
冬月とリツコが言った。
ミサトと加持は黙っている。

「葛城三佐、仮に貴方の手で全ての使徒が倒されたとしましょう。その後、貴方はどうされるおつもりなんですか?」
シンジが譲歩してミサトの意見を促す。

「考えた事もないわ、それが私の人生だったから」

「加持一尉は、今度は僕達の事でも調べるつもりですか?」
「いや、君達の事は随分昔に調べて、何も出てこなかったから諦めていたよ。そうだな、俺は静かにスイカでも作りたいな」

「今でも作って居られるようですが?」
「そんな事までばれてるのか、参ったな」
加持は頭をポリポリと掻いた。

「今日はこんな所ですね」
「えっまだ何も決まってないじゃないかね?」
シンジの言葉に冬月は戸惑った。

「あなた方にも同士が居られるでしょう?その方達とも相談すべきではないですか?何を望むのかを。それに仮にあなた方がNERVを捨てるとしても他の職員はどうされるのですか?」
「それが決まらないと先へは進めないと言う事かね」

「冬月副司令と赤木博士は、決まっているようですが、ただ単にここで決めて、それを持ち帰ってと言うわけには行かないのではないですか?」
「君達は友好的だと思っていいのかね?」
冬月は何かの言質が欲しい様子だ。

「そうですね、我々は、人類を滅亡させる気はない。と言う事は確約して構いません」
「ありがとう、それを聞けただけでも今日はよかったよ」
冬月は安心した顔つきに変った。

「戦闘機は自動操縦でNERVゲートまで送り届けます」
カヲルが説明する。
「助かるよ」
冬月が代表して答えた。

そして、冬月、リツコ、ミサト、加持の4人は戦闘機に乗り込んだ。
アスカは残るようだ。

戦闘機はオペレータルームでカヲルが操作している。
戻って来た戦闘機も何か仕掛けられていないか調査するためカヲルは暫くシンジ達の所には顔を出さなかった。

アスカはシンジ達に聞きたい事があったのだ。

いつもの様にケーキと紅茶をしこたま用意し、体勢が整うとアスカは切り出した。

「ところで零号機のサルベージって成功するの?」
「しないよ」
シンジが事も無げに言い放った。

「何で言い切れるのよ?!」
「だって、レイが魂を解放してきてるから」
怒ってるように聞こえたシンジは怖々答えた。

「へ?そうだったの?」
「・・・零号機のコアに魂はないわ(モグッ)」
レイもしっかりケーキを食べている。

なんでこの2人は太らないのだろうと不思議なシンジだった。

「司令の遣ることを読んでいたって言うの?」
「・・・いいえ、あの子も私の一部」
「あっそう言う事ね」

「しっかし、名前の事、言われた時どう答えるのかと思ったけど、上手くはぐらかしたわね」
「本当の事を話すとアスカの事も話さなければいけなくなるからね」
「それは嫌ね」
アスカは3つ目のケーキに取りかかっている。

「しっかりと色々、お土産を置いて言ってくれたねぇ」
カヲルが入って来た。

「加持さんだね?」
「葛城三佐もかな」

「全く、本当に協力したいのかしら」
アスカが呟いた。



NERVに付いてリツコの執務室に4人が戻るとオペレータ達が待っていた。

「あら?貴方達、帰らなかったの?」
リツコが驚いて聞いた。

「はい、結果を早く知りたくて、帰るに帰れなかったんですぅ」
マヤが皆の意見を代弁した。

「丁度良い、皆聞いてくれたまえ」
冬月は、早い方が良いだろうと考え話始めた。


「と言う事だったんだ。彼らは人類を滅ぼす気は無いと言ってくれた。これはサードインパクトは阻止するつもりだと思う。それで我々の姿勢を確立するために君達にも考えて貰いたい。何を望むのかを」
「それって、NERVを捨てられるかって事ですよね」
マヤが本質を突いた。

結局NERVを捨てて生きていく気にならなければサードインパクトを阻止する行動は起こせないと言う事なのだ。

NERVを存続させるならエヴァを破壊しても、また作る事ができる。
結局はNERV自体も壊滅させなければ、阻止とはならないと言う事であった。

「結果的にはそうなるわね」
リツコが肯定する。

「私は先輩に付いて行きます!」
断言するマヤだった。

「僕も葛城さんに付いて行きます」
「な、何言ってんのよ!」
マコトのどさくさ紛れの言葉にミサトが焦った。

「俺もマヤちゃんに付いて行くかな」
「そんな大事な事、自分で考えて決めて下さい!」
自分の事は棚に上げシゲルを責めるマヤだった。

「他の職員をどうするかですね、諜報部にこの情報を流す訳には行かないでしょう」
「簡単には結論は出せんな」
加持の言葉に、冬月は今更ながら、ここまでで話を打ち切られた理由が解った。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。