第拾参話
忘れられたラーメン


「調子はどうだい?アスカ」
シンジ達の艇でアスカは寛いでいた。

「調子はいいわよ、でもねえ・・・」
アスカにしては歯切れが悪い。

幅のゆったりとある3〜4人掛けのソファーが向かい会わせで間にテーブルがある。
シンジとレイは当然ながら引っ付いて座っている。
カヲルは独り掛けのソファーに腰掛け、アスカは広いソファーに独りで座っていた。

「シンジとレイは?」
「今日はもう寝たんじゃないかな?もしかしたら2人でなんかしてるかもしれないけど」
「随分と放任主義なのね」
「まぁ狭い艇内だし、できるだけ自由にして貰ってるよ」
シンジはそう言うと微笑んだ。

テーブルの上にはアスカが持ってきたケーキが4〜5個。
レイが持って来たケーキが3個。

シンジとカヲルは紅茶を飲んでいる。
テーブルにはティーポットもあり、お代わりも用意されているようだ。

ケーキをパク付きながらアスカは言う。
「まずジャージの馬鹿さ加減に疲れる、ミサトはリツコが頑張っているみたいだけど、未だ暴走気味、次ぎの使徒にエヴァ2機で向かうのに不安を感じる。当面こんなとこね」

流石と言うか自己分析も正確なアスカだった。

「そうだね、トウジも自分で考えて貰いたいんだけど、あの調子じゃ誰かが話すまで気付きそうにないね」
「次ぎの使徒って空からくるじゃない?あんたらでパッパとやっつけちゃえないの?」
アスカがトウジの事は考えたくないとでも言うように次ぎの使徒の話を切り出した。

「多分、大丈夫だと思うけど衛星軌道上までは、あの戦闘機では行けないからね。落ちてくる所を狙い打ちかな」
「そう、それでもあんたらが居るなら少しは安心できるわ」

「そうだね、僕らは削れるだけ削るから、残りを処理して貰うってのが理想だけどね」
「ミサトがそれを良しとはしなわね」
アスカはそう言うと、次ぎのケーキに取りかかる。

レイは無言でモグモグケーキを食べている。
時折首を傾げているのは、思った味ではなかったらしい。

「まあミサトさんの作戦を聞いてから考えても大丈夫だと思うよ」

カヲルは何故か鼻歌を口ずさみながら紅茶を飲んでいた。
曲はなぜか「ボレロ」。
最近レパートリーに増えたらしい。

「・・・それよりアスカはどうするか決めたの?」
レイがケーキを頬張りながら尋ねる。

「何を?」
「・・・NERVとどうするか」
レイがいきなり核心を突いてきた。

「それなんだけどね、もうちょっと待ってくれる?何かリツコ達が動いてるみたいなのよ。そこにあたしがどう関わるのか確認してから決めようと思ってるわ」
アスカもアスカ成りにNERVの動向を観察していたらしい。

「・・・解ったわ」
レイもそれ以上追求しなかった。

「でも、ここ不便なのよね、簡単に来れないし、あんた達と連絡取るのも仰々しいし」
「はぁ」とアスカは溜息混じりに言った。

「カヲル君、何かいい手あるかな?」
「そうだねぇ僕らの通信機を渡しても良いんだけど、NERVに調べられたりするのは芳しくないしねぇ」
「あたしがそんな事させる訳ないでしょ!それ貸しなさいよ!」

「いや、アスカはどうしてもエヴァに乗る時には、それを手放さなければいけないじゃない?カヲル君はその時の事を心配しているんだよ」
「そ、そうね、確かにその時には置いていかなければいけないわね」
アスカもそんな時までは、確保しておくことが出来ない事は理解できた。

「・・・狼煙でもあげる?」
「あんた馬鹿ぁ?どこでそんな物焚くのよ!」

「・・・冗談も通じない、余裕がないのね」
「キィーッ!あんたに冗談が言えるなんて思わなかったわよ!」

「レイもあんまりからかわないで」
シンジがオロオロして取りなしている。

しかし、2人はそれ程険悪になっている訳ではなかった。
「・・・碇君も通じないのね」
レイは碇シンジが居なくて、尚かつ部外者が居なければシンジの事を「碇君」と呼ぶ事が多い。
かなり安心している時の癖だ。

「全く何時まで経っても馬鹿シンジのまんまなんだから」
アスカに鼻で笑われるシンジだった。

「じゃぁメールアドレスを教えておくよ、用が有るときにはここに「連絡寄こせ」って送ってくれる?」
そう言ってシンジはメモに書いたメールアドレスを渡した。

「ここに直接、用を書いちゃいけないの?」
「アスカからだと結局MAGIを通るからね、内容を見られても良いなら良いよ」
「それは嫌ね、ところでこれは何のアドレス?」
あまり見慣れないアドレスにアスカが疑問を持った。

「国連が僕達に依頼を出す時のアドレスさ」
「じゃぁあたしの用事は国連の要請並ってことね」
アスカは気分が良いのかケタケタ笑っていた。



紅い海。
白い巨大な結晶体の柱。
無数に天に踊る、でたらめな形のオーロラ群。
生命の息吹を感じない完全な静寂がそこにあった。

南極・・・セカンドインパクトと呼んでいる人類が完全に瓦解の憂き目にあった史上最初の災厄が実存した証。

「いかなる生命の存在も許さない死の世界、南極。いや、地獄と呼ぶべきかな」
数隻の艦隊の、扇状の陣形の中心に位置する大型巡洋艦、その甲板に設置されているガラス張りの観測室。
冬月はそこから目の前に広がる巨大な「死」を見つめ、後ろにいるゲンドウへと振り返らずに言った。

「だが、我々人類はこうしてここに立っている。生物として、生きたままな」
後ろ手に手を組んで、やはり窓外の光景を見つめているゲンドウ。

「科学の力で守られているからな」
「科学は人の力だよ」

「その傲慢が、15年前の悲劇を生み出したと言う事を忘れたのか?その結果がこれだ、与えられた罰にしては余りにも大き過ぎる」
「ここは、世界で最も浄化された世界だよ。唯一人間の原罪から解放された世界なのだ」

「俺は、罪に塗れていたとしても、人が生きている世界を望むよ」
そして冬月は初めて後ろを振り返る。

ただし、後ろにいるゲンドウではなく、その遙か後方に位置する空母の甲板上にあるロンギヌスの槍と呼ばれたものを透かし見るかのように。

「「・・・・・」」

静寂が観測室の二人に、再び訪れる。
言外の思いが、積み上げてきた過去が、みっしりとつめられた沈黙が。

『報告します。ネルフ本部より入電。インド洋上空衛星軌道上に使徒、発見』



発令所では使徒発見の情報に慌ただしく動いていた。

「インド洋上空、衛生軌道上に使徒発見!」
「2分前に突然現われました」
「目標を映像で捕捉」

画面に映し出された使徒の大きさとその前衛的な容姿に発令所内に驚きの声が上がる。

「こりゃ凄い・・・」
「常識を疑うわね」

突然使徒の映像を送っていた衛星が破壊され、画面はノイズだけになった。

「ATフィールド?」
「新しい使い方ね」

リツコは落ちついてミサトの質問に答える。

「で、どうするの?今の責任者はあなたよ」

「MAGIの判断は?」
「MAGI・SYSTEMは全会一致で撤退を推奨しています」
そう報告するマヤの表情も、心なしか曇っている。

「日本政府各省に通達、ネルフ権限における特別宣言D17、半径50Km以内の全市民はただちに避難。松代にはマギーのバックアップを頼んで」

「ここを放棄するんですか?」
「いいえ、ただ皆で危ない橋を渡る事はないわ」


リツコとミサトは女子洗面所に居た。
全開にされた蛇口から一杯に注がれ、洗面台に満ちあふれる水。飛沫さえ飛び、あたりを水に濡らしている。

鏡に映る自分を凛と見つめ、これから戦いに挑む将のように、ミサトは気合いを入れていた。

「やるの?本気で?」
使徒をエヴァの手で受けとめると言うミサトの作戦を聞いて、リツコは眉をしかめた。

「ええ、そうよ」
「あなたの勝手な判断でエヴァを2体とも捨てる気?勝算は0.00001%、万に一つも無いのよ」

「ゼロでは無いわ。エヴァに賭けるだけよ」
「エヴァに?奇跡にでしょ?」

「使徒殲滅は私の仕事ですもの」
「仕事?笑わせるわね。自分のためでしょ?あなたの使徒への復讐は」

「・・・」
「ミサト!副司令の言葉を忘れたの?!SCSに協力要請しなさい!」
リツコのその言葉にも答えずミサトは洗面所を後にした。


「えーっ!手で受け止める!?」
作戦を聞いてアスカが声を上げた。
内心では「やっぱりね」と思いつつも、初めて聞いた振りをした。

「そう、落下予測値点にエヴァを配置、ATフィールド最大であなた達が直接、使徒を受けとめるのよ」

「使徒がコースを大きく外れたり、エヴァが衝撃に耐えられなかったら?」
「その時はアウトね」

「勝算は?」
「神のみぞ知る、と言ったところかしら・・・」

「上手く行ったら奇跡やなぁ」
「奇跡ってのは起こしてこそ初めて価値が出るのよ」

「つまりなんとかして見せろって事?」
アスカはミサトの方に向き直った。

「すまないけど、他に方法が無いの、この作戦は」
「作戦と言えるの?これが!」

「ほんと、言えないわね?・・・だから嫌なら辞退できるわ」

「ミサト、あんた本当に勝つ気あんの?」
「どう言う意味かしら?」
ミサトは次ぎに来る言葉を予測して眉間に皺を寄せた。

「なんでSCSと協力しないのか?って言ってるのよ!」
「・・・・・」
ミサトは回答しない。

「惣流、お前は仲ええかも知れんけど、別な組織やろ?簡単に協力できんのとちゃうか?」
「あんた馬鹿ぁ?失敗したら人類が滅亡するのよ?!体裁に拘ってどうすんのよ!」
「馬鹿とは何やねん!我儘ばっか言いくさって、出来んもんは出来ん事ぐらい解れアホンダラ!」

「アホンダラって何よ!あんたなんかシンクロについてだって知ろうとしてないくせに!」
「それとこれとは話がちゃうやろ!」
「何処が違うってのよ!何も知らないで意固地になってるだけじゃじゃない!」

「もう、いいわ」
「ミサトはん・・・」

「エヴァ1機だと、落下予測地点を網羅できないの、2機でも端の方は漏れるわ、アスカが出ないなら、この作戦は中止ね」

「ねぇ何でそこまで意固地になるのよ?」 「・・・あいつらに・・・」
ミサトが俯きながら何か言った。

「え?」
「あいつ達らに使徒を感じるのよ!敵だって私の何かが警告するのよ!」
ミサトが叫んだ。

「そう言う事・・・あんたファーストも使徒だって思ってるんじゃない?」
「?!」
ミサトが眼を見開いた。

「解ったわ、今回は乗ってあげるわ」
「いいの?」

「ちょぉ待てや、綾波が使徒ってどういうこっちゃねん?」
「あぁもう煩い!自分でそれぐらい調べろ!」
アスカのトウジで自分で何も調べない姿勢に憤慨した。

「一応規則だと遺書を書く事になってるけど、どうする?」

「別にいいわ、そんなつもりないもの」
「わしも要りまへんわ」

「すまないわね、終わったらステーキ奢るから」
「ほんまでっか!?」
トウジは嬉しそうに声を上げる。



アスカはメールするために、トウジとは別々にケイジへ向かった。
メールの内容は「協力の意志無し」の一言だった。

シンジ達はそれを受け使徒の落下経路に向かった。
どの道、この使徒はジャミングが強い。
上手くすればNERVに気付かれずに援護できるかも知れないと考えていた。



射出口から出た2機のエヴァはスタンディングスタートの体勢を取っている。

『目標、最大望遠で確認!距離およそ2万5千』

『目標は光学観測による弾道計算しかできないわ。よって、MAGIが距離一万までは誘導します。その後は各自の判断で行動して!あなた達に全てを任せるわ』

『使徒接近、距離およそ2万、なんか小さくなってませんか?』
『流石に大気圏外からの落下の影響で削れたのかもしれないわね』
リツコはSCSだろうと思っていたがミサトが居るので敢えてそう言った。

シンジの予想通り使徒のジャミングでシンジ達の機影は捉えられていなかった。
また光学で見ている映像には使徒の大きさに対しシンジ達の戦闘機は小さすぎて使徒に隠れていた。
映像的には落下と共に周りが砕けて行くように見えていたのだ。

『では、作戦開始』
ミサトが告げる。

「行くわよ」
アスカの声にトウジが頷き、アンビリカルケーブルを切り離す。

「スタート!」
アスカの掛け声と同時に2体のエヴァが一斉に使徒の落下予測地点へと走り出した。

2体とも途中の丘や送電線を飛び越えてかわしながらグングンと加速する。

『距離1万2千!』

ぐんぐん走る2機のエヴァ。
アスカが目標落下地点に到達した。

「フィールド全開!!」
アスカの展開したフィールドが周辺の建物を吹き飛ばす。

「ジャージ!まだなの?!」
「今、行くわい!」
トウジはアスカのATフィールドをなかなか中和できずに近付くのに時間が掛かった。
「どりゃ〜っ!」
トウジが使徒へプログナイフを突き立て、使徒は爆発した。

「なんや思たより小さかったなぁ」
トウジが何も知らず呟いた。

(余計な事言わないでいいのよ!この馬鹿!・・・)

アスカは心の中でトウジを詰っていた。



作戦が終了し、2人が発令所に戻ると、南極との通信が回復いていた。

「電波システム回復、南極の碇司令から通信が入っています」
「繋げて」
シゲルの報告にミサトが指示を出す

「申し訳ありません、私の独断でエヴァ2体を危険な目に遭わせてしまいました」

『使徒殲滅は我々の使命だ。よくやってくれた葛城三佐』
ゲンドウの声だけが響く。

「ありがとうございます」

『ところで弐号機のパイロットはいるか?』

「はい」
アスカが返事をする。

『話は聞いた、良くやってくれた。では葛城三佐、あとの処理は任せよう』

「はい」
ミサトが答えると通信が切れた。



アスカは、シャワーを浴びて自室に帰るとシンジにメールを打った。
そして「15分後」と返って来たのだった。

「早すぎるわよ!」
アスカはそう叫ぶと慌てて着替えて、ゲートまで走って行った。



シンジ達の戦闘機に乗り、いつものようにシンジ達の艇に行くアスカ。
今回は神妙な顔をしている。

しかし、食堂に着くとまた、ケーキをごっそりと確保するのだった。

「で、随分急だったけど、どうしたの?」
シンジは漸く落ち着いてケーキを食べ始めたアスカに尋ねた。

「ミサトがあんた達を毛嫌いしている理由が解ったわよ」
「何だったの?」

「あんた達に使徒を感じるんだって、ミサトの中の何かが敵だって言うらしいわ」

「それは、また感が良いと言うか困った問題だねぇ」
カヲルが内容とは裏腹にのほほんと言う。

「多分ね、レイの事が引き金だと思うのよ」
「成る程ねぇ」
カヲルは頷いた。

「・・・私?」
レイはケーキをパクッと口に入れ、フォークをくわえたまま言った。

「シンジがレイの出生の事を話したでしょ?あれでだと思うのよね」
「でも、あのレイとこのレイは同一人物だとは思っていないんじゃないの?」
シンジがそれが何故、自分達に使徒を感じるのか解らないと言う感じで聞いた。

「あんた馬鹿ぁ?あんた達の名前ってあからさまに怪しいじゃない、何か関係があるって思うのが普通でしょ!」
アスカがケーキを突いて生クリームが付いてるフォークをシンジに向かって突き刺し言う。

「そしてレイをそのまま大人にした銀レイの容姿よ。ミサトの感覚が受け付けないんでしょうね」
「もしかしてミサトさんには僕らも殲滅対象?!」
シンジは腕を頭の後ろに組み、仰け反る様にして言った。

「どうしよう?参号機が使徒化するまでは、エヴァに乗ってなければいけないかなって思ってたんだけど、あのジャージも馬鹿通り超してるし」
「通り越してるってどう言う事だい?」
カヲルがアスカの余りの言いように興味を抱いて尋ねた。

「自分で何にも調べないでミサトを盲信してるって事よ!」
本当に気分悪そうにアスカが怒鳴った。

「そう言う事かい」
「あぁあ、あたしも次ぎの使徒ぐらいで、やられちゃおうかなぁ」
アスカはケーキも食べ終わり、ソファーに仰け反って言った。

「次ぎの使徒はMAGIを乗っ取ろうとする奴だよ」
「げっあれかぁ、また裸になんのぉ〜いやぁ〜!」
アスカが裸のままプラグを射出され数時間放置された事を思い出して叫んだ。

「ジャージと一緒なんて最悪だわ」
胸を両手で抱え込む様に抑え、膝も曲げてソファーの上に縮こまる。

「もうダミープラグの開発は頓挫してるから、あの試験はやらないと思うよ、何より弐号機、参号機じゃ意味ないし」
「そ、そう?それは嬉しいわね。じゃぁその次ぎは・・・あの虚数空間って奴だっけ?」
なんとか体勢を元に戻し、平然を取り戻そうとしているアスカ。

「そうだね」
「あれって弐号機で戻ってこれるの?」
「・・・無理」
レイが冷たく言い放つ。

「やっぱりねぇ・・・」
アスカもNERVでデータを見て初号機は根本的に違う事を理解していた。

「取り敢ずこの間アスカが言ってたリツコさん達の動きってのが気になるね」
「あぁあれね、小耳に挟んだだけど、そうやら副司令があんたらと会談しようとしているらしいわよ」
アスカはお茶を注ぎ足そうとしたが、もう無かった。

レイがティーカップを持って、入れ直しに行く。

「あっありがとう」
アスカは自然に礼を言った。

「・・・問題ないわ」
レイである。

「副司令か、どうやら父さん、完全に孤立してるのかもしれないね」
「あんだけあからさまに話ちゃえば、末端は兎も角、機密に近い人間程、危機感持つんじゃない?」

「それは期待するところだったんだけどね」
シンジは溜息をついた。

レイが新しいお茶を皆に入れる。
そしてピトッとシンジの横に座るのだった。

「何よ、思い通りに進んでるじゃない」
「ミサトさんが思いの外、強固だなって思って」

「あぁ、でも、それもリツコに任せたんでしょ?」
「まぁそうなんだけど・・・」
シンジはもう一度溜息をついた。

「そう言えばシンジ君、ロンギヌスの槍はいいのかい?」
「うん、あれは何処にあっても必要なら自分でその場所に行くから」
「成る程、じゃぁあの槍でレリエルを倒すのはどうだろう?」
カヲルがこれは良い方法じゃないかと自信有り気に言った。

「父さんが出さないだろうね」
「・・・ゼーレと懐を分つまでは無理」
「あぁ委員会の許可がいるんだね」
カヲルは、少しがっかりした。


「そう言えば、今回、ミサトの昇進祝いやってないのよ」
アスカが場の雰囲気を変えようと思ったのか、急に話題を振った。

「ケンスケが近付いてないから、言い出す人が居ないんだね」
「あれって眼鏡が言い出したの?」
「確かそうだったと思ったけど・・・」

「今回、使徒も殲滅できたし、あたしが企画してやるかな」
アスカが仕方なしにと言う言い方をしたが、実はパーティ好きであった。

「誰が料理作るの?」
「そんなのデリバリーでも、どっかお店でやってもいいじゃない」

「そうだったの?」
「あの時は、眼鏡とジャージ主催だったから家になっただけでしょ?」

「そうだったんだ」
「あんた、本当、そう言う所、抜けてるわね」
アスカは、相変わらずねぇと言うジト眼でシンジを見詰めた。

「それより、ラーメンは食べに行かなかったの?」
「あぁぁ!忘れてた!!」
アスカが勢いよく立ち上がった。

「もう、帰っちゃってるわね・・・ハハ」
アスカが再びドカッとソファーに座り込む。

「・・・たまにはニンニクラーメン食べたいわ」
「今日はパス!ケーキでお腹一杯!」
「・・・そう」
レイは少し残念そうだった。

アスカと一緒にケーキを食べていたはずのレイなのにと大粒の冷や汗を流すシンジとカヲルだった。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。