第四話
新生NERV


エントリープラグ内、ゆっくりと息を吐き、口と鼻から気泡が出る。
トウジはうっすらと目を開けた。

『おはよう、トウジ君。調子はどう?』
「・・・ええと思いますわ」
ミサトがマイクを持って話しかけて来るのをトウジは受け答えする。

『そいつは結構。エヴァの出現位置、非常用電源、兵装ビルの配置、頭に入ってるわね』
「なんとか・・・」
トウジは自信なさ気に答える。

『ではもう一度おさらいするわね。通常、エヴァは有線からの電力供給で稼働しています、でも非常時に体内電池に切り替えると、蓄積容量の関係でフルで一分、ゲインを利用してもせいぜい五分しか稼働できないの。これが私達の科学の限界・・・てワケ。おわかりね』
「はい」

『では、昨日の続き、インダクションモードの練習、始めるわよ』

起動音が響き、体内電池の活動限界がゼロに向かってカウントされる。
ビル街の中、第参使徒を模した巨大生物が初号機の前に立ちはだかる。

『目標をセンターに入れて・・・・スイッチ・オン』
ミサトの指示通りインダクションレバーを引く。

大型ガトリング・レーザーの銃口から閃光が走り、目標に命中。
第参使徒を模した 巨大生物はものすごい轟音と共に爆破、地響きを上げ崩れ落ちる。
実際にはカチカチと何も放たれない銃の引き金を引く体内電池による作動状況の観測だ。

「・・・しかし、よく乗る気になってくれましたね、トウジ君」
マヤがオペレートしながら呟く。

「・・・・・」
リツコがバツの悪そうな顔をした。

『目標をセンターに入れて、スイッチ』
それだけを呟き、トウジはカチカチとボタンを押し続ける。

「トウジ君、今日はもう終わりでいいわよぉん」
ミサトがトウジに終了を告げる。



トウジが学校へ行くとヒカリとケンスケが何か揉めていた。

「鈴原・・・」
トウジを見つけたヒカリは顔をほんのり赤くして呟いた。

ケンスケはこれ幸いとトウジに声を掛ける。
「よう」
「やっぱ、えらい減っとるのう」
トウジは机に足を掛け、外の方を見ながら、そんなことを言った。

ケンスケは、呑気に言う。
「疎開だよ、疎開。今さら何を・・・みんな転校しちゃったよ、街中であれだけ派手な戦闘やられちゃあ・・・な」
「よろこんどんのはお前だけやろな。ナマのドンパチ見られるよってに」
「まぁね・・・トウジはなんで休んで居たんだよ」

「妹の奴がな・・・こないだのドンパチで怪我してしもうてん。うちはおとんもおじいも研究所勤めやさかい、わいが見てたらなあいつ一人になってしまうねん」
「そうだったのか・・・」

「せやけど、ちょっと事情があってな、妹の奴NERVの病院に移して貰えてん」
「それは良かったじゃないか、あそこの医療は世界一って聞くからな」
ケンスケは単純に喜んだ。

「そうらしいなぁ〜でもその為に面会謝絶になってもうてん」
「それも大変だな」

「あぁ・・・」
トウジは遠くを見つめていた。

「それよりトウジ知ってるか?」
「何がや?」

「あのロボットのパイロット、どうやら俺らと同じ年らしいぜ」
「さよか・・・」
この時初めてトウジは前の戦闘のパイロットはどうしたのか気になった。

「前の時のパイロットって誰やったんやろなぁ」
「俺は綾波じゃないかって睨んでるんだ」
ケンスケは眼鏡を光らせて言った。

「なんでや?」
「綾波って時々黒い服着た奴らと黒塗りの車に乗り込んで居るのを見た事があるんだ。それによく怪我してたし、休んだり早退しても先生も何も言わないし」
「なるほどのぉ流石よう見てるなぁ」
トウジは感心した。

「で?その綾波はどないしてん?」
「あれから出てきてないよ、益々怪しくないか?」
トウジは今度ミサトに聞いてみようと考えていた。

そして休み時間にNERVから与えられた携帯が鳴る。

「委員長、わしちょっと早引けや、先生に伝えといてんか」
そう言うとトウジは教室を出て行った。

「ちょ、ちょっとぉ鈴原ぁ〜・・・まったくぅ」
その時、警報が鳴り響いた。
ケンスケの眼鏡は、また妖しく輝いた。



発令所では使徒迎撃の準備が進められていた。

「司令も副司令も居ぬ間に、第4の使徒襲来。意外と早かったわね」
「前は15年のブランク。今回はたったの3週間ですからね」
「こっちの都合はおかまいなしか。女性に嫌われるタイプね」
ミサトと日向マコトの会話の間にもディスプレイ上では上陸済みの使徒が森の奥を進み、木々が次々に倒壊している。やがて湖の側を通過し、湖面に波が起こる。

山間部からの迎撃が行われているが、使徒はミサイルを難なく跳ね返して侵攻している。

「税金の無駄遣いね、もっと有効な攻撃してよ!」
ミサトが使徒が歯牙にも掛けていない事に歯噛みする。

「・・トウジ君は?」
「ケイジに到着しました。搭乗の準備をしています」
「・・・そう」
そして、なんら有効な事が出来ずに、戦自は退散する事になった。

「委員会からエヴァンゲリオンの出撃要請がきています」
「煩いわね、言われなくても出すわよ!トウジ君、出撃、いいわね」

「はい!」
気合いは入っているのだが緊張しているのはありありと解る。

「エヴァンゲリオン参号機発進!」
ミサトが参号機の発進を命令した。

強烈なGを受け地上へと射出される参号機。

「トウジ君、使徒のATフィールドを中和しつつ、パレットガンの一斉射。いいわね?」
『・・・了解』

「待って下さい葛城さん」
「なによぉ」
マコトの言葉にミサトが怪訝な顔をする。

「先程の戦自の使用していた弾とパレットガンの弾は同一の物です」
「だから何よ!こっちはATフィールドを中和できるのよ!」
ミサトは苛々してきた。

「先程、戦自が攻撃した時も使徒はATフィールドを張っていませんでした」
「だから何よ!」
マコトは頭痛がしてきた。
自分は、なぜこの人を敬っていたのだろうと。

「パレットガンの攻撃は使徒には効かないと言う事です。ATフィールドの中和は関係ありません」
「じゃぁどうしろって言うのよ!」
「それを考えるのが作戦部の仕事でしょ!」
たまりかねてリツコが助け船を出した。

「リ、リツコォ〜」
ミサトは親友に怒鳴られ怯んだ。

『あのぉ〜わしはどないしたらええんでっしゃろ?』
トウジが射出されたものの次ぎの指示で揉めているので聞いてきた。

「使徒を牽制しながらちょっと待っていてくれるかい、今有効な作戦を立てるから」
マコトが取り敢ずトウジに指示した。

「ちょっと何勝手に指示してるのよ!越権行為よ!」
「だったら貴方がさっさと有効な指示を出しなさい!」
リツコから再び叱責されるミサトだった。

「日向君、何か有効な作戦ある?」
リツコがマコトに尋ねる。

「基本的に兵装ビルも同様の弾を使用しています。なんとか接近戦に持ち込むしかないかと」

「そう・・・解った?ミサト!」
「解ったわよぉ」
ミサトは渋々了承した。

「トウジ君、プログレッシブナイフを装備、パレットガンで牽制しつつ使徒の懐に入り、ナイフで使徒のコア、あの胸に見える赤い玉を攻撃、よろし?」
『了解ですわ』

作戦と呼べるとは思えないが何とか殲滅できそうな指示をミサトが出した。

「葛城さん、牽制は兵装ビルからも行った方がよくありませんか?」
マコトが更にミサトに進言する。

「そ、そうね、そっちはお願いするわ」
ミサトも反論してもリツコに諫められるので、マコトの案を採用した。

「トウジ君、使徒を今の処からトウジ君から見て右に200メートル程おびき寄せてくれるかな」
『やってみますわ』
ミサトも突っかかるのを止めたようだ。



それを上空から見ているシンジとレイ。
シンジ達の戦闘機は強力なステルス機能が施されており、NERVのレーダには引っかからないのだ。
更に発令所の遣り取りもモニターしていた。

「ちょっとは進歩したようだね」
「・・・そうね」
「でも、あの鞭は厄介なんだよね、トウジ倒せるかな?」
「・・・無理」
レイの迷いのない辛辣な言葉にシンジは冷や汗を流した。

「僕らと強力して倒すって言う選択技はまだ浮かばないみたいだね」
「・・・一生浮かばないと思う」
「はは・・・」
シンジの冷や汗は大粒となった。

「カヲル君、どうだい使徒の強度は?」
間が持たずシンジはカヲルに解析結果を尋ねた。

『そうだねぇ特に進化はしてないようだねぇ持っていったタングステン弾でも効くと思われるよ』
「了解、じゃぁ今回もATフィールドは使わないで倒せるかな」
『それはやってみないと解らないねぇ、ATフィールドの同時展開ができるように進化している可能性はあるからねぇ』

「了解、例の武器は持ってきた?レイ」
「・・・えぇ2発だけ積んできたわ」

「最悪はそれだね」


そうこうしているうちに下では戦闘が行われていた。
結局、使徒の鞭に足を取られ、参号機は例の山間部に叩き付けられていた。


「あちゃ〜結局あぁなるのか、まさかケンスケ一人で出てるって事はないよな?」

出ていた。



発令所は慌ただしかった。
「エヴァ、アンビリカブルケーブル切断、内部電源に切り替わりました!」
「活動限界まで、あと4分53秒」

発令所内にエラーが鳴り響く。
山の斜面に叩きつけられたトウジが手元を見ると、そこにはケンスケが脅えていた。

「ケンスケ・・・こんなとこで何やっとんねん」

『なんでこんなところに民間人が!トウジ君のクラスメート?!』
参号機に使徒が迫ってきて、トウジは光の鞭を手で受け止めた。

「何で戦わないんだ?俺が邪魔で戦えないんだ!」

『トウジ君、EVAを現行モードでホールド。彼をエントリープラグの中へ収容して!』
『越権行為よ、葛城一慰。許可の無い民間人をエントリープラグには入れられないわ』
『私が許可します』

プラグが半分射出され、外部スピーカからミサトが叫ぶ。
『そこの彼、乗って』

「このダボがっ!こんなとこで何やっとんねん!」
「えっトウジ?わっ水?カメラ、カメラ」

『シンクロ率低下、パルス乱れてます』
『異物を入れたら当然ね』
リツコの言葉にもミサトは耳を貸さない。

『トウジ君。いまよ、後退して』
「後退ってミサトさんそんな殺生なぁ・・・」
トウジはぼやきつつ、使徒を蹴り飛ばし後退を始めた。

しかし、元々シンクロ率の低いトウジに異物を入れたためその動作はかなり緩慢だった。

『何やってるの?!トウジ君!急いで』
「そんな事言われても、動きませんねんって」

『シンクロ率が起動値ギリギリだもの当然ね』
『どういう事よ!』
『ミサト!貴方にも資料は渡してあるはずよ!シンクロ率が下がったらエヴァがどうなるかぐらい解るでしょ!』

『活動限界まで、あと10秒です』
『なんですって!』
ミサトが喚いた。
そして参号機は停止した。

『内部電源切れました。参号機活動停止』

『そんな・・・』
ミサトは自分の失態を漸く悟った。

参号機は歩こうとしていたため、そのまま大きな音を立てて倒れた。
幸いにして、使徒はそんな参号機に興味を無くした様子で街へ向かおうとしていた。

その時、発令所のメインモニターにシンジの顔が映る。

『NERVは戦闘能力を消失したと判断します。指揮権を委譲して頂けますか?』
「何言ってんのよ、まだよ!」
「ミサト!!」
リツコがミサトを諫めた。

「NERVは戦闘能力を消失しました。指揮権をSCSへ委譲します」
「ちょっとリツコ!何勝手な事やってるのよ!」
「葛城一尉!これ以上邪魔をするなら利敵行為とみなし営倉に入って貰います!」
リツコがきっぱりと言い切った。

『英断、感謝します。これより使徒殲滅に入ります』
そうシンジが言うとスクリーンから消えた。



「ミサトさんって何であんな熱くなるんだろう?」
「・・・牛だから」
辛辣である。

シンジとレイは第参使徒に対したのと同じ方法をまず試した。
ATフィールドは張られないまでも、使徒の背中にタングステン弾は突き刺さるだけで強烈なダメージは与えられない。

「うーーん、刺さりはするから物量で前からコアを狙おう」
「・・・了解」

そして同じ方法であっさり倒してしまった。



シンジはNERV発令所に繋いだ。

『ミッション終了、これより帰還します』
「ちょっと待って」
リツコが止めた。

『何でしょう?』
「今回の弾は何だったの?」
『タングステン弾ですよ、でも使徒は進化します。次ぎからはこれも有効かどうかは不明ですね』
「そ、そう、有り難う」
『いえ、それでは』

そしてシンジ達は飛び去って行った。

またしても通常兵器で倒されてしまった使徒。
ミサトだけは悔しがっているが、その他の発令所のメンバーは自分達の用意の未熟さを感じていた。



エヴァからトウジが降りると黒服達が待ちかまえていて、ケンスケを連れて行った。
「ケンスケはどないなりますん?」
トウジは友達のこの先が心配になり、そこに居たミサトに尋ねた。

「心配しなくてもきつぅ〜くお説教されるだけよん」
「そうでっか」
ホッと胸を撫で下ろすトウジだった。

「今日はお疲れ様、なかなか良かったわよ」
「そうでっか?有り難うございます」
ミサトに誉められちょっと良い気分になるトウジだった。

「ところでミサトはん?」
「ん?何かしら?」

「わいの事はフォースって皆呼んでますやん?そしたらサードまでって何処におりますん?」
ミサトは「まずっ」と言う顔をした。

「ファーストの綾波レイは行方不明、セカンドの総流=アスカ=ラングレーはドイツ、サードの碇シンジ君は少し変わってたけど・・・前回の戦闘で死亡したわ」
サードのと言った所でリツコはシンジの格好を思い出してしまい、言わなくて良い事まで言ってしまった。

「リツコ!」
ミサトはファーストやサードの事を言うとトウジが尻込みするのではないかと危惧していたのだ。

「隠してもしかたの無いことよ、葛城一尉、それに隠されて嫌な思いを貴方もしていたんじゃないの?」
「そ、そうね・・・」

「そうでっか、やっぱ綾波もパイロットやったんですか」
「そうよ、今、ここには貴方しかパイロットは居ないの、だから重荷かも知れないけど貴方に頑張って貰うしかないのよ、ごめんなさいね」
そう言ってリツコは頭を下げた。

「いや、そんな、頭上げてください、ほなわしはシャワー浴びてきますわ」
そう言ってトウジは走って行った。

頭を下げているリツコの眼には涙が流れていた。
「リツコ・・・」




「今回NERVはなかなか進歩したようだったねぇ」
帰るとカヲルが切り出して来た。
今は3人でティータイムを取っている。

「そうだね、でもミサトさんって何であんなに拘っているんだろう?なんか使徒を前にすると人格変わるみたいな、使徒が絡むとかな」
シンジは不思議に感じた事を述べた。

「・・・あの人はマインドコントロールを受けているわ」
「えっ?」
レイの言葉にシンジは驚いた。

「そうだねぇドイツ支部はそれぐらいやるだろうねぇ」
「そう言えばアスカも確かに、そう言うところがあったね」

「・・・弐号機パイロットは性格」
「あっそうなの?あは・・・あはは」
相変わらずの辛辣なレイの言葉に冷や汗をかくシンジだった。

「どういうマインドコントロールか調べられる?カヲル君」
「データが残っている保証はないけど、調べてみておくよ」
「うん、お願いするよ、序でにアスカもね」

「シンジ君は相変わらず優しいねぇ」
「・・・碇君は優しい、それは衆知の事実」
「あは、誉め殺しだよそれじゃ」
シンジはまたも冷や汗を流した。

「でも溶け合ってもマインドコントロールが掛かっているかなんて気がつかない物なんだね」
「・・・溶け合った時はマインドコントロールは解けていたから」
「あっ成る程、掛けた人間にでも溶け合わないとその情報は得られないって事か」
「・・・そう」

「そろそろ通常兵器じゃきつくなるかな?」
「戦闘機の方がラミエルの加粒子砲は避け易いとは思うけどねぇ」

「街中でN2って言う訳にも行かないしね」
「・・・でも日本中を停電にするのは遣り過ぎ」
「確かにね」

「投下型貫通兵器ってどうだろう?」
「それはどんな物だい?」

「それはね・・・・」
シンジ達の密談は続く。



翌日、シンジ達は碇シンジと綾波レイと共に居た。

「どうだい?そろそろ退屈になって来たんじゃないかい?」
「・・・問題ありません」
「退屈は感じてません、カヲルさん勉強しろって煩いし、他にも出来る事一杯あるし、綾波も居るから寂しくないし・・・」
「・・・な、何を言うのよ」
綾波レイが頬を赤く染めて俯いた。

そんな光景をまた3人は微笑ましく見ているのだった。

「もうNERVでは君達の事をどうこうしようとは考えないと思うんだけど、周りにはまだまだそういう輩がいるからね、申し訳ないけど、まだ暫くは我慢して貰う必要がありそうなんだ」
「そ、そんな畏まらないで下さい。僕達は助けて貰ってる身だし・・・」
碇シンジが慌てた。

「・・・私もそう思います」
綾波レイも自分の意見を言えるようになっている。

「そう言って貰えると助かるよ」
シンジはニッコリと微笑むのだった。

「そうだ、この船には室内プールもあるんだよ、知ってた?」
シンジが良いことを思い出したように言った。

「え、えぇ知ってましたけど・・・」
碇シンジがもじもじと言っている。

「シンジが泳げない事は知っているさ、だから綾波さんに泳ぎを教えて貰うといいよ」
「えっそんな・・・綾波に悪いし・・・」
「・・・構わないわ」

困っている碇シンジと淡々としている綾波レイを見て3人は微笑んでいる。
「よしっ決まりだ、泳ぎに行こう♪」
「な、何時決まったんですかぁ〜〜〜〜ぁ」
碇シンジはドップラー効果を残し綾波レイに連れて行かれた。

「じゃぁ僕達も行こうか」
「・・・ええ」
「賛成だよ」
そして一行は室内プールへ。


案の定、レイ二人とカヲルは裸で泳ごうとした。
カヲルはシンジ達と着替えていたため、プールまで裸で出てくる事はなかったのだが、レイ達は裸で出て来た。

「あ、綾波ぃ〜〜」
鼻血を出して倒れる碇シンジ。

「本当にシンジ君はガラスの様に繊細だねぇ」
ちょっと違う感想を抱いているカヲルだった。

取り敢ずシンジがレイを説得し、レイに綾波レイを説得して貰った。
と言うかレイが裸で出てきたのは確信犯である。

そして、漸く、綾波レイは白いワンピースの水着、レイは白いビキニで現れた。

「似合ってるよ二人とも」
シンジはフォローを忘れない。
この辺りはアスカに叩き込まれたのだろう。

肘で碇シンジをつつくシンジだった。
「あ、綾波、似合ってるよ・・・」
「・・・あ、ありがとう」
全く初々しい二人である。


綾波レイが碇シンジの手を掴み泳ぎを教えている。
碇シンジは
「絶対離さないでよ!」
とか言いながら、足をバタバタとさせている。

綾波レイは微笑みながら 「・・・問題ないわ」
とか言ってしっかり碇シンジの手を握っている。

レイは例によって水に漂う様に浮かんでいる。

シンジとカヲルはそんな光景を見て微笑んでいた。

「アダムの身体は手に入れておくかい?」
「そうだね、オーバーザレインボーで手に入れるのが楽なんだけど、髭があの状態だからどうなるかは解らないね」

「六分儀ゲンドウ氏ならシンジ君の言った通り、ゼーレの介入があって「誤解があった様だ」と言う事で無罪放免となったよ」

「そうか、じゃぁNERVに帰ったら一悶着あるかもね」
「そうなれば面白いねぇ」

「まぁNERVの人間もすぐどうこう出来る訳じゃないとは思うけど楽しみではあるね」
「赤木リツコと葛城ミサトの動きがキーだろうねぇ」

「前向きなオペレータ三人集も結構キーだよ」
競馬の予想をしているような二人の会話だった。

「・・・何を話しているの?」
レイが水から上がってきた。

水に濡れた蒼銀の髪が人工光と言えど反射してキラキラ輝いている。
ルビーのように紅い眼。
形の良い胸を隠しているだけのビキニのブラ。
どこに内蔵が入っているかと思うような細い引き締まったウェストを白いビキニが強調している。
少し膨らんだ腰周りから真っ直ぐ伸びる細い脚。
そしてキュッと締まった足首。
シンジが見取れていると、レイは少し頬を紅く染めて、シンジの横に腰掛けた。

なんとか現実世界に戻ったシンジがなんか聞かれた気がすると記憶を呼び戻し答えた。
「あっいや、髭が結局無罪放免になったらしいって話をしていたんだ」
「・・・そう」
レイは興味なさ気に言う。

「レ、レイ?」
「・・・何?」
「な、なんか怒ってる?」
「・・・怒ってないわ」
「そ、そう?見取れてたから怒っちゃったのかなって・・・」
「・・・な、何を言うのよ」
紅くなるレイ。
いつまで経ってもこの二人はこのままらしい。

カヲルは二対のシンジ&レイを見比べてあまり進歩がないなぁ等と思うのであった。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。