白日夢    Daydream Believer


(IX) Tell Her No


(1)


 ヘリポートでミサトたちを見送ったリツコは自室でできる仕事を片づけると第壱発令所に移動して仕事を始めた。中央作戦司令室の職員はまだ出勤してこないがMAGIの定期チェックのある日なので退屈することは無い。
( 仕事を喜ぶなんてちょっとワーカホリック気味かしら )
リツコは自分が担当しなければいけない作業を終えると手を休め珈琲を淹れた。
( マヤの分の仕事を残しておかないと悲しがるものね )
 ホログラフィックディスプレイを見るとMAGIは市議会の決議に従って西部再開発地区の工事細目を決めている。レイとシンジの住む区画を除いて第7期工事終了時に合わせ完成予定である。単純な決定なので対立モードになることなく瞬時に決定していく。
 今回は点検以外にもMAGIの設定を変える予定だ。
 主な変更点は二つ。
 重要事項の決定に三人のオペレーターのキー入力と掌紋・静脈認証が必要になる。次席は二人まで決められており、欠員の場合、要するに皆が死ぬような非常事態時にはリツコ一人で良い。
 戦闘時など非常事態では対立モードはキャンセルされる。一刻を争うときには多数決で可とする。
 マヤが書いた意見書は優れた内容でリツコも同意して今回の変更になった。リツコが見ても母の赤木ナオコが作ったシステムは素晴らしいものであるが、あくまでも平時の場合である。さすがのナオコも最期の時点では使徒戦を前提とした所まで考えていなかった公算が大きい。
 今回二人のパイロットが機体の相互互換試験に成功したこととシンジが慣れない零号機で実戦に出る可能性があることから仮想使徒戦のシミュレーションの試行回数は増え徹底的な分析がなされた。マヤの意見はその時出てきた矛盾を克服するためのものだ。

 珈琲を飲み終わったリツコが化粧を直し終わった時、いつも一番のマヤが出勤してきた。
「あ、おはようございます、先輩。今日はお早いですね」
「おはようマヤ。珈琲、淹れてあるわよ」
「あ、はい。あれ? もう今日の作業終わられたんですか?」
「ええ、私のところは少ないの。手伝おうか?」
「とんでもありません。すぐに片づけますから見ててください」
「じゃあ、お願いね」
 マヤが元気いっぱいで自分の仕事を始めたので、リツコは零号機と初号機の相互互換試験のデータをチェックすることにした。試験結果は各回ごとに詳細に検討されいたが全体の共通項がないかを確認したかった。MAGIは使えないが、たまには原始的なCPUでやるのも面白いだろうとリツコは思った。
 マヤの作業が半分ほど終わった頃、リツコは一通り検討を終えていた。

 やはり数値だけを見る限り特筆事項はない。リツコはレイとシンジが実験中に受けたイメージや感想を書いた部分に注目してもう一度全体を調べ始めた。
 これはもともと実験後パイロットに課せられる心理テストを評価していたマヤがレイとシンジの会話を何気なく聞いているうちに記録することを決めたものだ。レイとシンジを応援するマヤが二人の成長の記録でもつけたいのかとリツコは最初思っていたが、今では意義を認めている。
 調べるうちにリツコは面白いことに気づいた。

 二人がエヴァの中に何かの存在を感じるのは不思議ではなく当たり前のことだわ。シンジ君は知らないけどエヴァには他人ひとの人格のコピー、または本物が入っているんだから。でもそれだけではパイロットの最大の危険の一つとされている精神汚染は説明がつかなかった。だってエヴァには心や魂がないと言われていたんですもの。でも二人の受けた印象を見ると零号機も単なるコピー人格だけとは思えない。それにコピー人格だけで暴走するとも思えない )
リツコには一つの仮説が浮かんできた。
 私たちには理解できない異質な精神がエヴァの中にあるのではないかしら。もちろんまだ本格的に活動せずに眠っている。私たち……私が用意してコアに込める人工人格は人とエヴァをつなぐわけだけど、その結合のもう一方の先が空虚であれば暴走や精神汚染など起こらないのではないかな。まあ初号機ならユイさん自体が中にいる可能性があるから中が空虚でも暴走も可能だろうけど。
 そうするとパイロットが搭乗したエヴァは例えは悪いけど多重人格障害いえ解離性同一性障害のようなものいえるかもしれない。エヴァに眠る基本人格、いわゆるコアやユイさんのような保護者人格、そして実際エヴァを動かすはずのパイロットが主人格というわけだ。しかし、だとすれば……。
 いつの間にか中央司令室のスタッフは揃っていた。マヤも手際よく……。

「マヤ」
「はい、先輩?」
「今日は変更部分に重点を置くから、そこのところはA-5でやったほうが簡単で早いわ。本来ならA-8だけどね。ちょっと貸して」
「うわぁ〜。すごい!」
うふふ。ちょっと良い気分。
「後は良いわね?」
「はい!」
「がんばって」
「もちろんです」

 リツコは気になることを思い出していた。第3使徒の際シンジの到着がぎりぎりだったのは偶然としても、レイが怪我せず無事でもシンジを呼ぶ予定があったのかという問題だ。シンジは自分自身が完全な予備だと判断しているが、リツコはシンジのあまりにも母親から切り離されていた過去の記録を見てその環境を碇ゲンドウが与えたのではと未だに疑っている。初号機の保護者人格である碇ユイの人格を覚醒させるには、レイよりシンジが向いて……。
 しかし、本当にそうなのだろうか? 今の碇ユイに事故前の五感や理性があるとは思えない。シンジと良く似た思考パターンを持ちユイに良く似た外見のレイでも充分代わりが勤まるのではないか? いやむしろシンジがシンクロすることでレイを偽者と拒否する危険さえある。シンジとレイの外見は親子のように似てはいるが遺伝子上は赤の他人と言ってよい。パイロットの遺伝子情報はオペレーターたちのセキュリティレベルでも確認できる。
 ではゲンドウがシンジを大切に思っていたとして10年前に取った処置が説明できるのか? 母親の記録を消したのは、結局失敗したが新しい家族にシンジが溶け込みやすくするためと言えなくもない。会わなかったのも同様だ。
 止むを得ず呼び寄せてからも他人行儀のままなのは娘の代役のレイのためか今更親の面もできないと思っているのかもしれない。
 あのゲンドウの本心を知るのは副司令くらいだろうから真相は不明だが、あそこまでシンジを拒否するのはかえっておかしい。養父母のもとに追い返したいというのはうがちすぎかな。

「先輩?」
「どう?」
「終わりました」
「じゃあ、今日の変更点をチェックしましょう。スタッフに指示をして」
「はい。先輩」


(2)


 ヘリは空母オーバーザレインボウに着艦した。ネルフからは護衛も入れて5名派遣されている。シンジはすぐに気分不快をミサトに告げて護衛の一人と下士官の案内でアイランド手前の入り口から下層に降りた。ミサトには早く戻りように何度も念を押されている。二人は船首方向にある居住区格の小さな休憩室に案内された。案内が必要なら内線で連絡するようにいうと下士官はヴィジター用のIDを渡し退出した。ドッグタグではなくICチップ入りの名札だ。この船からどこかへ万引きされる危険は減ったらしい。
 飲み物を用意してくれた護衛に礼を言ってシンジは椅子に深く腰掛けた。実の所本当に酔ったのだ。
 弐号機とアスカの来日をミサトから聞いたときシンジのごく一部は 『夢』 から現実が大きく離れていないことに安堵したが、どちらかと言うと大きく条件を変えたのにほぼ同じタイミングで歴史が流れていることにショックを受けた。ただ考えてみれば弐号機がピンチのネルフ本部を救援に来るというのはあの時点で皆が信じやすい理由で採用されただけかもしれない。なぜなら結局ドイツにエヴァンゲリオンは必要なく、アメリカや中国のものでさえ目的は違ったが最終的には日本で運用されたからだ。
 シンジは夢の記憶のアスカを何度も思い返した。あのシンジとアスカは好きあっていたのか反発のみだったのかそれとも愛憎半ばだろうか。アスカのシンクロ率の低下は自信喪失、使徒の攻撃、早熟型で早く大人になったということなのだろうか……。弐号機はなぜ覚醒しなかったのか、疑問が多すぎる。
 初号機と弐号機の違いはその起源やコアである。しかし弐号機とアスカそれにシンジにはもう一つかかわりがある。第6使徒と一緒に戦ったことだ。あのとき確かシンクロなどはかなり良い数値だった。しかしその後2名搭乗のテストは行われることはなかった。アスカのシンクロ率が落ちて初号機が凍結されているときも提案されることさえなかったのだ。提案されてもアスカが拒否した可能性が大きいがそれは別問題だ。
 2名搭乗を繰り返すのは試験的にさえ危険があったのではないかと言うのがシンジの推論である。このことはレイには話した。レイは数値が良くなるのは考えられないと感想を述べた。普通ならシンジの思考がノイズになり必ずシンクロ率などは落ちると言う。どちらにしても2名搭乗は避けるべきだと言うのが二人の結論になった。
 気分が落ち着いたシンジは護衛と相談してブリッジに向かうことにした。場所は護衛が分かると言うのでIDを胸につけ二人は通路へ出た。

「おぉ〜、懐かしきかな日本人顔。おや、君が碇シンジ君かな?」
会ったらどんな顔をしようかといろいろ考えていたシンジだが心底驚いたので芝居の必要はなかった。
「おっと、護衛君。俺はけっして怪しいものじゃない。まあ人相風体に自信はないがな」
そう言いながら加持が出した身分証明書を護衛は視線を外さず受け取った。シンジとレイにつく護衛は男女とも霧島が選び抜いており優秀なのだ。護衛は確認を終わると一歩退いた。
「お許しが出たようなので……。俺は加持リョウジ、いわゆるセカンドチルドレンの護衛としてドイツ支部から派遣されたんだ」
「始めまして。僕は確かに碇シンジです。良くご存知ですね」
「なに言ってる。君はいまや英雄なのさ」
「そんなことありません。それよりミサトさん、葛城一尉に呼ばれているので」
「おや、シンジ君。美女のお迎えだぞ」
シンジはアスカかと思い少し身を硬くしたが来たのはレイと護衛だった。
「碇君、大丈夫? 葛城一尉が呼んでいるわ」
「うん」
「おっと、良ければ俺もお供しよう」
「綾波。こちら加持さんといって惣流さんの護衛の人だって」
「以後お見知りおきを」
大げさにお辞儀をした加持に対し、レイは視線も向けずに 「そう」 と答えた。レイの護衛は笑いをこらえている。
姫の機嫌を損ねたかな


(3)


 艦隊提督のセクト主義のため弐号機の正式な引渡しは停泊後に決定した。規則には則っているもののミサトは日本周辺に敵性生命体 『使徒』 がこれまで3体出現したことと通常兵器、いやN2兵器でも打倒が困難なことそして使徒殲滅にはエヴァが不可欠なことを訴え、その運用はネルフでなくては不可能と告げた。
「そのために電源ケーブルわざわざ運んで来たってのに、わかってんの!」
いや、叫んだが正解かもしれない。久しぶりに見るミサトの勇姿をアスカは呆れながら見ていた。ドイツにいたときより凄いのだ。

「よぉ! 相変わらず凛々しいな」
「げ! 加持。何であんたがここにいるのよ」
「アスカの随伴でドイツから出張さ」
「ちっ! 予想すべきだったわ」
「まあ、ブリッジにいつまでも迷惑かけるのは拙い。士官食堂にでも行こうぜ」
少し落ち着いたミサトにはブリッジスタッフの視線が痛かった。
「え? ええ」
 アスカはレイが連れて来たシンジに注目している。
 写真で見た印象ほど弱々しい感じはなかった。使徒3体と戦って勝ち抜いたのだ印象も変って当然だろう。それにチルドレン二人のチームワークは良いらしい。二人の距離や雰囲気でアスカにははっきりわかる。
( 二人に一人前と認めさせないと輪に入り難いわ。できれば私一人で使徒退治する機会があれば良いんだけど…… )
 一同は食堂に着き、本部の三人の向かいにアスカと加持が座った。護衛二人は少し離れており着座していない。
「葛城ぃ、いま付き合ってる奴いるの?」
「それがあなたに関係あるわけ?」
「あれ? つれないなぁ」
どうやらミサトは加持が求める“ a heart of gold ”やさしい心ではないらしいとアスカは考えた。ミサトの性格を知るアスカはもちろん最初から赤木博士を本命と考えている。
「ところでシンジ君とレイちゃんは本部はもちろんアパートも隣同士なんだって?」
「え?」
「そうなのよぉ〜ん、アスカ。日本の中学生も進んでいるでしょう?」
「どうしてお隣さん同士ってだけで進んでるのよ?」
「それはな、アスカ。二人とも一人暮らしだからさ」
「なんですってぇ〜。本当なの、ファーストチルドレンさん」
「ええ」
「ミサト、まさか私もそこに住まわせるつもり? 乙女の純潔をどうしてくれるのよ」
「おいおい、アスカ。シンジ君は」
「アスカの保護者代理は私なのよ。部屋は空いているから私のアパートに来れば良い」
「え?」 シンジの表情に気をつけていたアスカは即答をためらった。
「碇君はそんな人じゃない。あなたは来なくてよい」
「なによ」
「アスカ。本部では護衛がしっかりつく決まりのようだから、シンジ君が狼でも心配ないぞ、きっと」
自分自身の話題にも無関心なシンジを不審に思ってアスカは聞いてみた。
「あなたはどう思うのよ」
「なにが?」
「なにがって、私の住居よ」
「エヴァパイロットとして忙しいときは本部内が便利だ。本部内がいやなら地下居住区が便利だよ。本部までモノレールが使いやすいからね。僕たちのアパートは学校に通うためなんだ」
「ふぅーん。私は日本の学校なんか……」
「だめよん。アスカも明日から中学生なの」
「えぇ!」


(4)


 ドイツでの話を始めたアスカたち三人とわかれシンジとレイは艦内の案内を請い承認された。
「当艦、オーバーザレインボウCVN-75は合衆国海軍空母ニミッツ級8番艦として1998年に就航しました。以前の艦名はハリー=S=トルーマンと言います。飛行甲板の全長は1096フィート……」
シンジは時間つぶしと思って選択したが内部の様子を見るのは結構面白かった。女性クルーが多いことや歯科部門に20名のスタッフがいるのには驚いた。
「今いる層がメインデッキになっており、ちょうどこの下に当艦の心臓部2機の核リアクターがあります。ご心配なく。当然ですが何重にも安全策は施されていますのよ」
原子力空母なのは知ってはいたが心配が面に出たらしい。
「は、はい」
「ここより船尾は航空部隊関係の施設が多くなります。航空部隊は約600名が所属して……」
 護衛はともかくレイも黙ったままついてくる。シンジはレイに初期の使徒のことは詳しく説明しているがシンジとレイ、シンジとアスカのことなどは、ほとんど話していない。ただ弐号機への2名搭乗については詳しく相談して、それを避けることで意見は一致している。
 シンジたちが最後尾のジェットエンジン整備の作業場に来た時それが来た。インカムで確認した護衛がミサトの指示を伝える。
「お二人とも使徒が来たようですので速やかにブリッジにお戻りください。場合によっては脱出できるよう回転翼機も用意されました」
 いくら広いと言ってもブリッジまでは100mほどである。ゆれて混乱した船内でも2−3分で到着した。
「ミサトさん?」
「二人とも応援してよ。アスカが出るわ」
加持がアスカと輸送艦に向かったのを知りシンジは少し意外だったが、まず第一に心配だったアスカの戦闘前の不安を加持なら取り除けるだろうと思った。シンジは使徒の動きを追った。確かにミサトのつぶやきのように何かを探している……いや迷っている感じにも見える。しかし弐号機の起動と共に動きに迷いは消えた。大声援をするミサトにレイは初めての戦闘にはアドバイスが必要と弐号機との交信を希望した。ミサトは不審に思うこともなく、レイも応援してあげてと許可を出した。
 借りた双眼鏡で見ていたシンジの目の前で、海面から飛び出した使徒が偶然大口を開けて第二の心配も無事解決した。
「綾波、口の中」
「了解。弐号機パイロット! 使徒の弱点の光球は口腔内よ」
『ふん。わかってるわよ、ファースト! まあ、でも確認を感謝するわ』
「口がどうしたの?」
「光球が見えたんですよ、ミサトさん」
「やるわね、シンちゃん。これでアスカも大感謝よん!」
弐号機は空母に『着艦』してケーブルをつないだ。
『ミサト、それでどうするの?』
「ATF中和して光球を叩き潰すのよ」
「ミサトさん、海中に引き込まれたらアウトです」
「え? ああ。ケーブルの固定をお願いします」
対潜水艦兵器も砲撃も無効なことを確認した艦隊提督は指示にしたがうのにためらいを見せない。
「了解した」
『中和して口をあけさせたらナイフはもてないわよ。まあ口に飛び込めばいけるかも知れないけどさ』
「だめ! ケーブルを噛み切られる恐れがある」
『そんなこと分かってるわよ、ファースト!』
シンジは目立ちたくなかったが時間がない。
「先ほど艦内を案内していただきましたが、あの位置ならRAMが使えませんか?」
「可能だがあれは威力も誘導も……」
「ミサトさん、光球のデータは?」
「そんなのリツコにでも聞かないと」
「ネルフの赤木博士のことか? 回線を開いて待機してみえるぞ」
「さすがリツコ! って、ちょっとシンジ君」
「リツコさん、赤外線誘導装置で光球を狙いたいんですが?」
『シンジ君ね。可能よ。温度と形状のデータを送るわ』
「提督?」
「後は任せなさい。Captain!」
「Roger!」
 経過を逐一レイが伝えていたのでアスカも準備ができており、使徒が大きくジャンプして弐号機を飲み込もうとしたとき全ては一気に終った。待ちきれなくなったアスカがナイフを抜いて突撃し殲滅と共に使徒の口中に一時的に閉じ込められたのは計算外だった。


(5)


 使徒から這い出てきた弐号機はケーブルが切れて電池切れのため停止した。また、その時の体勢が悪くプラグの排出が不可能になっている。空母のクレーンでは動かせないため予備ケーブルが必要になった。
 艦隊は沈没した艦船の乗員の救助に時間がかかりそうなので、レイとシンジは先に本部にもどることになった。弐号機とアスカのために入れ替わりにリツコがケーブルと共にヘリで艦隊に向かう。弐号機の輸送艦は沈没したが加持は無事で脱出した救命ボートに名前があった。
 レイはヘリに乗るとすぐ寝てしまった隣席のシンジの汗をぬぐってやってから自分の考えを追い始めた。二人の様子を楽しげに見ている護衛の視線には気づかない。

 レイは時間があればシンジの『夢』の話を聞いているが、いくつかどうしても聞き出せない所がある。使徒戦の最後の部分とシンジとレイあるいは弐号機パイロットとの関係だ。使徒戦の最終部分は記憶が曖昧なこと、人間関係については『夢』が事実でどこかの世界で起こったことだとしても今の自分達とは関係がないというのが理由である。
 でも、『夢』の世界のレイとシンジのこの時点での関係は、レイに対するシンジの態度を見ていれば想像がつく。やさしくするシンジにレイは戸惑うばかりだったのだろう。今のレイには分かる。どうして『夢』と違うのだろう。シンジの言うように違う世界だからか。
 でも、あの弐号機のパイロットは……。二人で弐号機に乗った世界で何が起こったのだろう? 乗らなかったこの世界で何が起こるのだろう?
 アスカの姿を脳裏に浮かべたレイは少し不安になった。

And if she should tell you “come closer”
And if she tempts you with her charms
Tell her no no no no no no no no



(注) RAM : 艦対空ミサイル。 Rolling Airframe Missile










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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。