第1話 旅立ち



赤い海・・・・

白い砂浜・・・・

たった二人しか存在しない世界・・・・・

一人の少女と一人の少年しかいない世界・・・・

「気持ち悪い・・・」

少女 惣流・アスカ・ラングレーは少年 碇シンジにそう呟いた後、LCLへと溶けていった。

「うあああああああああああああああああああああああああ」

「アスカ・・・アスカー!」

シンジはアスカのプラグスーツを抱きしめた。

どれくらいの時間がたっただろうか、シンジはいつのまにか寝てしまっていた。

そして、自分を呼ぶ声がして、目を覚ました。

「・・・・・・・く・ん・・・・碇・・・・君・・・・碇君・・・・」

「綾波!」

突如目の前に現れた白と紅が印象的な少女。感極まったシンジは抱きつこうとした。
・・・が、手が触れることなく通り抜けてしまった・・・・。

「・・・・綾波・・・・なぜ?・・・・」

「・・・私はもう思念体でしかないの・・・だから、もう碇君に触れることはできないの・・・・」

「でも、ずっと一緒だよね?」

綾波は悲しそうに首を横に振った・・・

「体がなくなってしまったから、どんなにしても無理なの・・・。

 だから、碇君に伝えなければならないことがあるから、だから・・・・。」

「・・・綾波・・・伝えたいことって?」

悲しかったが、涙をぬぐい綾波の話に耳を傾けた。

「碇君、碇君は今、第1使徒〜第18使徒全ての能力(ちから)をもっているの。それはすべてを破壊も創造も出来るの・・・」

「僕は使徒なったの?」

「違うわ、人間自体第18使徒 リリンなのだから・・・その全ての使徒を作ることのできる。使徒達の頂点に立つ存在・・・すなわち、神・・・・」

「僕が・・・神様!?」

シンジは唖然としていた。当たり前の反応だ。いきなり神と言われて順応できうるのは単なるバカか、とてつもなく頭の回転が速いかのどちらかであろう。

「碇君はサード・インパクトによって選ばれたの。だから碇君は今なんでもできるの。空間を操作したり、魂を造ることも。あと、意識しなくても危険だと感じたときなんかに自己防衛でA.Tフィールドが張られるの。神を簡単に殺されるわけにはいかないから」

「・・・・・・・・」

シンジは驚きのあまり言葉を失っていた。だが、ることがあり、何とか正気にもどった。

「綾波、思念体って魂のようなものだよね。」

「・・・おそらくそうだと思うわ。」

「そっか、なら・・・・」

シンジは手を前にだし、綾波の体を思い出していた。綾波の匂い、すけるように白い肌、蒼い髪、そしてなにより紅い瞳・・・・手が光り始め目の前に綾波の体が出現した。

「碇君・・・これは・・・」

「体があれば大丈夫なんだろ。前と同じかは、分からないけど。」

綾波はシンジの作った体に入り、とても嬉しそうに涙を流しシンジに抱きついていた。

「な、綾波!!!?」

「ありがとう、碇君。」

その時の笑顔は、ヤシマ作戦の時に見せた笑顔と同じものだった。

「・・・綾波苦しいよ・・・少しはなして」

紅い顔して言われても説得力ないきがするが・・・

「・・・いや・・・」

まさかレイがそんなことをいうとは思いもしなかったので、シンジは今日何回したか分からない‘えっ’という表情で固まっている。

「もう碇君に触れることなんてできないと思っていたの。でも、また触れることができるんですもの。」

綾波は、いっそう強く抱きしめてきた。しかしこのままのわけにはいかず、シンジが切り出した。

「・・・でもこれからのことも決めないといけないしさ。ね、綾波」

そう言われるとその通りなので、綾波は名残惜しそうにシンジを解放した。

「でもどうするの?碇君の能力ならどんなことでも苦労しないわ。」

「僕何でもできるって聞いて、過去に戻りたいんだけど。できればサキエル襲来くらいまで。」

「!!!」

「僕の能力を使えば確かに僕達は幸せかもしれない、でも・・・傲慢かもしれないけど、僕は、みんなに幸せになってほしいんだ。それになぜ使徒が第三東京だけに着たのかも分からなかった。最初はアダムとリリスがあるからだと思っていたけれど。何か別の目的もありそうなんだ。・・・でも、碇ゲンドウ アイツだけは許さない!!
綾波を自分のささやかな願いのために造り、利用した。それに14歳の子供の命をまるで道具のように使ったんだ」

「確かに可能だけれど・・・本当に戻るの?つらいことを思い出すことになる・・・つらい碇君を見ているのは、わたしもつらい・・・」

「・・・うん。神になったのを聞いてでた僕なりの結論だから・・・それにいったろ、戻るのはみんなを幸せにするためなんだ。だからトウジのことも、カヲル君の事もなんとかするさ。でも、能力を自由に使えるようにしなくちゃ。どれくらいかかるかな?」

「・・・二年間あれば大丈夫だと思うわ。」

「に、二年間!?そんなにかかるの?」

「能力の制御が難しいと思うから、たぶんそれくらい。」

「できる限り速く終わらせるよ。レイをずっと待たせるわけにはいかないからね。」

その時レイはとても綺麗に微笑んでいた。



一年後、シンジは想像以上の速さで覚えていったため、二年かかるとおもわれたのが一年ですんだ。能力の制御も、もともとひかえめということもあり、簡単におえてしまったのだ。能力だけでも充分に強いのだが、一般人には能力を使うわけにはいかないという理由で、シンジの作り出した道場でLCLの海で得た知識を元に零式格闘技を始めとするさまざまな格闘技も異常な速さでマスターした。

「過去に戻る前に、いくつか便利なものを造っておかないと。」

「なぜ?」

「向こうに行って下手に能力を使ったりしたら、何されるかわからないし。」

「・・・そうね」

二人は、少し難しそうな顔をしてどんなものを作ったらいいか考えていた。結局二人で考えあいいくつかとんでもないものを作り出した。

「あとは・・・そうだ。」

何か思い出したように言うと、空に手をかざした。すると、どこからともなく槍のようなものが飛んできてシンジの体にあわせ小さくなり、手に収まった。

「それって、ロンギヌスの槍!?」

「そうだよ。・・・『複製』」

シンジはそういうとロンギヌスの槍を二つにし、その後紅い小さなペンダントへと変えた。

「レイはこれを持っていてよ。自分で自分の身くらい守れるだろうけど、いざっていう時に使って。形を思い出すか、声に出せば変わるから。」

レイに差し出すと、お互い首につけ眺めていた。

「・・・綺麗」

「じゃあ、行こうか。」

シンジはニつの黒い渦のようなものを作り出し、レイに言った。

「綾波はこっち、向こうに行くと病院のベットだと思う。傷ができちゃうかも知れないけど、すぐに行って治してあげるから。」

「・・・ありがとう(ポッ)」

その後、しばらくキスをして、レイは渦え入っていった。

この時レイが少し残念そうに見えたのは気のせいだったのだろうか?神になっても鈍感さは変わらない。ここらへんがまだシンジのままである。

「・・・さて、ココともお別れかな。さようなら・・・・」

「・・・・・・シ・・・ンジ・・・・・君・・・・・」

「!!!」

黒い渦に入ろうとしたシンジに生命のなくなった世界のLCLから、かつて第17使徒 タブリス 又の名を渚カヲルの声が響いていた。

「・・・カヲル君?」

「そうだよ、半ばLCLに溶けかかっているけどね・・・一つだけお願いがあってきたんだ。」

「願いって?僕にできることなら何でもするよ。」

「ホントに君は好意に値するね。お願いだから僕も一緒に連れて行ってくれないかい?」

「でもいいの?後悔するかもしれないよ?」

「いいんだ。君のいない世界にいる方が後悔すると思うからね。」

シンジはしばらく考えた後、なら一緒にいこうと告げた。

その時のカヲルは本当に嬉しそうな顔をしていた。

「シンジ君、行こうか」

「・・・そうだね。じゃあ今度こそ‘さようなら’」

そういい残すとシンジも渦の中に消えていった。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。