ショウはいつものように退屈な授業を受けていた。
先生の言っていることはショウにとってはあまりにも簡単すぎてつまらないほどだ。
無理もないだろう、ショウはもう二億年ほど長い歳月で幾度も学生になった経験があるので、先生の言っていることはもうすでに聞いたことのあるものばかりで何度も聞いているとうんざりする。
だから普段は先生の言うことなどそっちのけでいつも居眠りをしている。
寝ようとしようとした矢先にある生徒と生徒のひそひそ話が聞こえた。
「なぁなぁ。聞いた?何でもA組に転校生が来てよ、しかも美人だとよ。」
「あ〜聞いた聞いた。しかも、ドイツ人のハーフなんだろ?」
おそらく、アスカのことだろう。話の内容からして、だいだい理解できた。
ガキエル戦の翌日のことだ。つい七日前にアスカがこの第一中学校に転校して来たのだ。もちろん、隣のクラスのA組ではあるが。
転校して早々でもう学校はアスカの話で持ちきりであった。
まぁ、ショウにとってはどうでもいいことなのだが。
あっちにもこっちにもアスカの話だらけでショウもいい加減うんざりしていた。
「なぁ、やっぱその子ってさぁ彼氏とかいんの?」
「ばっかだなぁ。きっと向こうで悲しい恋をして別れたに決まってんだよ。」
「お〜。じゃ、俺にもチャンスありってこと?」
無理だな。あいつには加持って男に惚れているし。
性格は人それぞれだけどあれだけ素直じゃない上にがさつな性格じゃよっぽど打たれ強い心の持ち人じゃないと無理だな。
それにあいつは俺と何処となく似ている境遇がいくつかある。
あいつは一人だ。
子供の時から父親が去って、母からも愛情も満足に貰えずに育ったが故に他人を蔑むような性格になった。他人を信用していないのだ。
心のどこかで自分を理解してくれる人を求めている。
自分にもそんな時期があった。
だからなのだろう彼女の心を少なからず理解していた。
「無理、無理。絶対振られるって。」
「そんなのやってみなきゃわかんねぇだろ?」
無理と言われたことに腹が立ったのか反論をした。
その時にチョークが飛んできて二人の男子生徒の頭に当たった。
「お前らなぁ。授業をやっているってときに楽しそうに話をするたぁいい身分だな?ええ、おい?」
数学教師は三角定規とコンパスを両手に掲げながら言った。
「「すんませ〜ん。」」
男子生徒は冗談交じりに謝る。
あたりが笑いで包まれる。
ショウはそんな平和な日常を噛み締めていた。
ま、ガキエルもこないだ襲来してきたばかりだから暫くは来るまい。次の使徒は確かイスラフェルだっけ?まぁ、問題はないだろう。
ショウは欠伸をしながら、眠りについた。











EVANGERION
Another Story
漆黒の騎士と白衣の天使

―第十一話―
---Would you dance with me?---
---私とダンスをしていただけませんか---












ここ、NERV本部・赤木リツコ・技術部主任執務室。
部屋の中は殺伐としていて、書類と紙の束で部屋の大半が埋もれていた。
そんな部屋の中で一人パソコンに食い入るようにデータを打ち続けている白衣の女、赤木リツコがいた。
「………ふぅ。」
仕事の手を一旦休ませてデスクの上に置かれている猫のイラストが入ったマグカップを手にとってコーヒーをすする。
一息入れて、またパソコンを見る。
ディスプレイに表示されているのは第六使徒ガキエルとエヴァシャドウの戦闘記録をまとめていた。
リツコはここで今後に現れるであろう使徒に対しての戦力の予想とエヴァシャドウの解析の記録をとっていた。
コーヒーをまた一飲みしたところ、マグカップにはもうすでになくなっていることに気が付いて、コーヒーサーバーのもとへ歩んだ。
すると突然後ろから何者かに抱きとめられた。
「少し……痩せたかな?」
加持だった。
「そう?」
「ああ、悲しい恋をしているからだ。」
「そうしてそんなことがわかるのかしら?」
「それは君の瞳の下にあるホクロは一生泣き続ける運命にあるからさ。」
「フフフ…口説くつもりかしら?加持クン。」
微笑むリツコに加持は少し抱く力を強める。
「でもそろそろやめにしたほうがいいわよ?」
「ん?」
「加持君♪すいぶんと仲のよろしいことで♪」
加持は聞き覚えのある声に少し怯むが落ち着かせてからゆっくりと振り向いた。
振り向いた先にはNERVの赤ジャケットを羽織ったミサトが立ってこちらを見ていた。肩にボストンバックをぶら下げている様子からして、こっちに戻ってきたのだろう。
「か、葛城…お前戦自に居てたはずじゃ?」
「ふふふ、ちょうど研修を終えてこっちに戻ってきたのよ。」
「そ、そうか。お疲れだったな。」
「うふふふふふふ♪………死ね!」
一瞬の如くにして光速の拳を加持の頬にかました。
戦自で鍛えられた為か研修に行く前よりたくましくなっていた。
「が…ぐぅ…強くなっていないか?葛城。」
「あら?そ〜ぉ?いつもどおりの力を出しただけなんだけどぉ?」
ミサトの目には見下すような冷たい目をしていた。
やはりさっきの加持のやっていたことが気に入らなかったのだろう。
もちろん、あのリツコへの抱擁である。
加持とミサトはかつて昔恋人関係であったが、今ではもう別れているのだがミサトにもまだ加持に対して未練があるのか加持がミサトの以外の女とべったりしているのが気に入らなく嫉妬するときがある。
「どうだったかしら?戦自の研修は?」
「も〜参考になるものばかりだったわ。疲れたけどこれからはちゃんとした指揮ができそうよ!もうあんなことはごめんだもの。」
と言うミサトにリツコは少し感心していた。
「ふうん?少しは頼もしそうに見えるわよ。」
「何それ?まるで前のあたしは全然駄目って感じに聞こえるじゃない?」
「あら?よく理解しているじゃない。」
「ふ〜んだ!次の使徒が来たら今度こそ完璧に倒してみせるわ!」
とその時に警報アラームがNERV本部に鳴り響いた。
第七使徒イスラフェルの襲来だ。
警報のアラーム音とともに三人の顔は険しくなっていた。
「来たわね!今度こそ倒してみせるわ!」
ミサトの瞳には決意の炎が燃えていた。
「て、言うか貴女は三尉に降格されているの忘れているでしょ?」
「あ。」

ところ変わって第一中学校。
ちょうど昼食の時間であった。
ショウはシンジと綾波と三人で食っていた。
いつの間にか三人は仲良くなっていていつも昼食は三人で食べているのだ。
最も、いつもってわけではない。たまにクラスの授業の都合で三人揃わない時もあったりする。
綾波はカロリーメイトと牛乳だけ。
シンジは自作の弁当だろうか、バランスのいいおかずがあってそれを食べている。
ショウは購買部で買ってきた人気No、1のエビカツパンとNo、2の明太子パンを食べていた。
「ねぇ、綾波?」
「………何?」
「いつも昼食ってそれなの?」
「ええ。」
「それだけでお腹空かないの?」
「必要な栄養はとってあるから問題ないわ。」
「「……………。」」
ショウとシンジは黙り込んでしまった。
確かにカロリーメイトには栄養はあるけど…流石になんか不健康っぽく思えてしまうなぁ。
もくもくとカロリーメイトを食べる綾波の姿がどこか不憫に見えた。
まぁ、無駄に食事をしない分それだけいい体型を保っていられるから女の子にとってはうらやましい限りだろうな。
などとショウは思っていたりする。
「ねぇ、綾波。余計なお世話かもしれないけど弁当作ってきてあげようか?」
「………いい。」
返ってきた返事にシンジは頭をガックリうなだれる。
「なぁ、レイ。カロリーメイトだけで十分栄養は確かに摂れるかもしれないが、野菜とか肉とか食べてみたらどうだ?」
「………肉嫌い。」
「え?肉嫌いなの?」
「初耳だな。(そういえば、肉嫌いだったっけ。)」
綾波の肉嫌い発言に少し驚く。
「ん〜。ま、肉嫌いはともかくとして、なんなら弁当俺が作ってきてやろうか?」ショウの"弁当を作る"発言に綾波の耳がピクリと反応した。
「いい。ショウに手間掛けさせたくないもの。」
がやはりショウに手を煩わせたくないのか断りを申し込む。
「っていうかショウって料理は作れるの?」
「お?何時になく挑発的な感じだな?」
シンジは料理の経験はかなりのものだ。しかも、料理の大会で優勝の経験もあるほどだ。(第四話参照)
ショウの"弁当を作る"発言に少し対抗意識を燃やしたのか少しショウに挑発的な態度をとる。
「自慢ではないが家庭料理から懐石料理までジャンル問わず作ることができるぜ?」
「ふっ。僕なんか全国の料理大会で優勝経験ありだよ?しかも高校生の部で。」
シンジもさらに対抗意識を燃やし、言葉を返す。
「へぇ?それはまた初耳だな?しかし、勝負したらどっちが勝つんだろうな?」
「なんならやる?いつでもいいよ。」
いつの間にかシンジとショウ、綾波の周りにギャラリーが増えていた。
ショウとシンジにいたっては火花を散らしていた。
まさに龍と虎が睨み合う感じだ。
「おお?なんかシンジが燃えているぞ?」
「ほんまや。ってあれって隣のクラスのもんちゃうか?」
「ああ、確か牧野ってやつだろ?いつの間にか知り合いになっていたんだな。」
「おお〜ってことは何や、ライバル対決っちゅうことか?」
「これは面白いことになりそうだな。」
などと火花を散らしているショウとシンジをよそに勝手なことを言い合うトウジとケンスケであった。しかも、ケンスケの手にはハンディカメラを手にしていた。
ギャラリーが喧騒としている中でシンジが言った。
「じゃあ、明日弁当を作ってそれを綾波に食してもらってそれを綾波に判定してもらうってのはどう?」
「面白い。いいだろう。じゃあ、明日に弁当を作り綾波に判定してもらおう。」
ショウもシンジの案に賛成して言った。
「ってことでレイ。弁当を明日作ってくるけどいいよな?」
「………いいの?」
「問題ない。だろ?ショウ。」
「ああ。」
「わかったわ。」
「よし!明日弁当を持ってきてどっちが美味しいか勝負だ!」
シンジが言った。
とその時。
ウウウウウウウウ!!
『………緊急事態発生!緊急避難体制が発令されました!各自整列し、教師の指揮に従い緊急避難シェルターに向かってください!』
と放送が流れてきたのだった。
これにシンジとショウは。
「……………。」
「……………。」
「……延期だな。」
「……そうだね。」
ショウとシンジの間になんとも言えないような空気が流れていた。
「碇君。非常収集。行きましょう。」
綾波が冷静に言った。

再びところ変わってここはNERV本部・発令所。
『警戒中の巡洋艦"はるな"より入電!我、紀伊半島沖にて巨大な潜航物体を発見!データを送る!』
発令所にアナウンスが流れる。
普段どおりオペレーターは既に配置しており、冬月をはじめ、ミサトとリツコも同じくして発令所にいた。
「あっ!?葛城さん!いつ復帰されたんですか?」
発令所にミサトが現れたことに辺りが驚愕する。
「今しがたよ。そんなことを言っている暇はないわ。でどうなの?使徒なの?」
「受信データを照合しました。波長とパターンを確認!青!使徒です。」
「そう。やっぱり使徒なのね。…で何か作戦はあるの?」
「え?葛城さんが考えるんではないんですか?」
「残念ながら違うわ。私は三佐から三尉に降格させられたのよ。だから二尉の日向君が指揮することになるのよ。」
「あ、はい。わかりました。…サードチルドレン!セカンドチルドレン!準備は整っている?」
マコトはマイクを通じてチルドレンに連絡をとる。
「いつでもオッケーよ!」
「初号機も同じくスタンバイ完了です。…あの綾波は?」
「ああ、零号機はラミエル戦の時に大破していて、未だに調整中だから出撃できないんだ。だから今回は君達二人に使徒を殲滅してもらうよ。」
「了解。(綾波は出撃しないんだ。)」
シンジは綾波が出撃しないことに少し安堵していた。
彼女も居てくれれば安心できると思っていたが、居ないとなると少し程不安もあったりするが、それは決して口にはしなかった。
「エヴァ初号機・弐号機。運搬用リニアレール準備完了しました!目的エリアはK−6!いつでもどうぞ!」
「OK!作戦要項は移動する際に伝えるよ。」
「「はい。」」
「エヴァ初号機・弐号機!発進!」
マコトの気合の入った合図と同時にエヴァ初号機と弐号機が発進した。
向かうは第七使徒イスラフェルの出現したエリアだ。
新たなパイロット・アスカとシンジの共同戦が始まろうとしていた。

一方ショウはもう既にイスラフェルのいる地に待機していた。
イスラフェルはさっきから暴れまくるような様子は全くなく、ただ何かを楽しむように踊っているようにも見えた。
「さすがは音楽を司る使徒だな。どうみても暴れるような気配はないな。……っていうか予定ではあと一週間後に襲来するはずだったのにやっぱり俺のせいで歴史が歪んでいるなぁ。」
ショウは冷静に先ほどからおどるイスラフェルを観察していた。
そのなか、イスラフェルが予定よりも早く来てしまったことに驚きもあり、全ての原因が自分にあるのだとため息を吐いていった。 相変わらず、暑い日差しの中で漆黒のコートを着ていた。
ショウは汗をかく様子すら見せず、全く動じないで居た。
暫く、イスラフェルを見ていたところに辺りが騒がしくなって来た。
見えるのはイスラフェルから少し離れた道路から大勢のNERVの大型車が押し寄せるようにやってきた。
多くは電源用ソケットを運ぶトラックや発電用の大型車だった。
もう直にエヴァが来るのだろうと見てわかった。

「あ〜あ、せっかくの初デビューだってのに何で、一人でやらせてくれないのかな。やだな、二人掛りは趣味じゃないな。」
横側に表示されて居るぶつぶつと愚痴を吐くアスカの言葉にうっとおしく感じてシンジはうんざりとしたようにいった。
「そんなもんなんかに形振り構ってなんかいられないよ。殲滅するならなにをやってでも食い止めければならないんだ。」
「はん!あんたなんかに説教される言われなんかないわ!あんたこそ私の足を引っ張るような真似なんかしないでよね!」
「よく言うよ。こないだの使徒のときに気絶していたんじゃ世話ないよ。」
「なんですって!あんたがパイロットだなんて何かの間違いよ!」
「なんとでも言えば?こないだみたいに気絶しないように祈っているよ。」
「キィーーーーー!!ムカツク!見ていなさい!あたしの実力ってヤツを見せてあげるわ!」
「綾波とコンビなら喜んで組むけど。セカンドじゃ頼りないなぁ。」
「セカンド言うなってんでしょーーーー!!」
作戦実行まで二人はギャーギャー喚きながらいがみ合っていた。
とそこにイスラフェルがエヴァの前に現れた。
ミッションスタートだ。
二人の表情は使徒を見るや否な、引き締まって、戦士の目へと変わった。
アスカの搭乗するエヴァ二号機の手には薙刀の形をしたソニックグレイヴを、シンジの搭乗するエヴァ初号機はパレットライフルを構えていた。
「レディファーストよ!あんたは援護していなさい!」
アスカは我先にとソニックグレイヴを構えてイスラフェルへと突進していった。
イスラフェルは攻撃する気配を見せる様子は全く感じられず、エヴァ弐号機が迫ってきているにも関わらず、ただじっとしていた。
間合いに入ったアスカはソニックグレイヴを大きく振り被って、真っ直ぐに振り下ろす。
振り下ろされるとイスラフェルは真っ二つに割れた。
これにアスカは勝ったと確信した。
「どう!?戦いは常に無駄なく華麗に戦うことよ!」
アスカがあっという間に使徒を殲滅していたことに驚きを感じていたが、どこか嫌な予感を心のどこかで思っていた。
いくらなんでも早すぎる。
今までの使徒なら何かしら抵抗をすれば攻撃もしていたし、今回の使徒は攻撃する様子すら全くなかったのだ。
これに嫌な予感を感じられずには居られないシンジだった。

これを観戦していたショウは落ち着きながら言った。
「……あっさりとやられすぎだ。しかも、勝ったと確信していて気が抜けていやがる。あのイスラフェルはまだやられていない……。油断が命取りになるぞ。自称エリートパイロットさんよ。」
そう、イスラフェルはまだ死んでいない。
その証拠にコアも破壊していないし、切断面からなにかしらもぞもぞと蠢いていた。まだ生きている証拠だった。
「さぁ、シンジは気がついているかな?アスカは経験が足りなすぎた。これに気がつくことができるのはお前しかしない。どうする?」
エヴァ弐号機が使徒に背中を見せている様子をショウは見ていた。
自分ならコアも破壊し、心臓部に止めを刺すだろう。ショウは今まで培ってきた経験が彼を冷静にさせた。
いつまた反撃されるかわからない過酷な状況の中を切り抜いてきたからこそその考えができた。幾度も戦場の中、硝煙と血の海、骸の道を歩み、多くの命を奪ったショウには冷酷にもいとも容易くもなぎ倒してきた。
しかし、それは自分の身を守るためには止むも無しであった。
それが戦場での戦いだ。
自分の命を守るためならいかなる敵でも容赦なく倒さなければならない、殺さなければ、自分が殺されるのだ。そんな状況を幾度も経験した。
ショウは未だ生きているイスラフェルに目を移した。

「アスカ!そこをどけ!」
シンジはインダクジョンレバーを咄嗟に引いた。
エヴァ弐号機の後ろの使徒がまだ生きていることに嫌な予感を察知して、エヴァ初号機がもつパレットライフルを目標に定めた。
そして、トリガーを引くと同時にパレットライフルから数発の弾が目標に向かって放たれた。
アスカもこっちに銃口を定めていることに慌ててエヴァ弐号機を跳躍させてエヴァ初号機からの銃弾の雨を回避した。
自分が敵を殲滅したのにせっかくの有終の美を台無しにさせられたことに憤りを感じてシンジに毒づいた。
「ちょっと!せっかく勝ったのにあたしの決まり場を台無しするなんてどういう神経よ!?」
「まだくたばっていない!!あいつは生きている!」
「えっ?」
シンジは未だに使徒に対して、弾が尽きるまで打ち続けていた。
銃弾の雨がイスラフェルに向けられている中で真っ二つにされたイスラフェルの身体に変化が起こった。
やがて、イスラフェルは身体が二つに分かれて、コアも二つに分かれたのだ。
「なにこれーーー!?」
「くっ!アスカ!コアを狙うんだ!そうすれば、確実に仕留められる!」
シンジは片割れのイスラフェルのコアを狙うがなかなか決まらず、無駄に弾を消費していくだけだった。
アスカももう一度倒してやろうと特攻しようとしたときにそれは突然に起こった。
二対のイスラフェルが同時に光線を放ったのだ。
二人は反応しきれず、呆然としていてそれをモロに喰らってしまったのだった。
そして、二対のエヴァは共に遠く飛ばされてしまった。
敵情偵察をしていたショウは呆れていた。
「はぁ…あっさりやられたんじゃ駄目だな。さて、俺も行くとしようか。」
二人がやられたのを見届けるとショウの影が蠢き始め、それは黒の炎となって彼の身体を包みこんでは消えた。
次にはイスラフェルから少し離れた上空から霧が晴れるようにエヴァシャドウが姿を現して、降り立った。
「戦闘開始だ。」
インダクジョンレバーを握り締め、目の前の使徒に集中する。
エヴァシャドウの腰に下げているナイフケースより二本のジャックナイフを連想させたナイフを両手に構える。
イスラフェルは一向に攻撃を仕掛けるような気配は全く見られない。
いつ攻撃を仕掛けてくるかわからない相手にショウは一瞬たりとも集中を乱さなかった。臆病ともいえるほどに慎重に少しでも隙を見せたら仕掛けるつもりでいた。
時が止まったように両者の動きが止まる。
とそこに銀翼の戦闘機が空を横切った。
UN軍の戦闘機だ。
両者も空から何かしらの異変に気づき上を見上げる。
突如、UN機から一基のN2爆弾が投下された。
「(…!俺を使徒諸共吹き飛ばすつもりか?!まずい!)」
すぐさまナイフを腰下げのナイフケースに戻し、右ウェポンラックよりエヴァ専用のデザートイーグル50AEを取り出し、目標を定める。
この間にも空よりN2爆弾と目標地点の距離は縮まりつつある。
ショウはコアを狙い打つ。
放たれた銃弾は見事コアを貫通した。
しかし、いつまで経っても活動を停止する様子は全く見られない。
これを変に思ったショウは様子を見る。
「(?…確かにコアは貫通したはず………。なのに未だに活動を止めない…。どういうことだ?……………!復元されていく!?)」
そう、確かにコアを貫通したはずだったのにも関わらず、コアは見る見るうちに再生されていく。
「(どういうことだ!?…まずい!間に合わない!)ちっ、一時戦闘離脱だ!」
上を見上げるとそこには地上から約2百メートル上空にまでN2爆弾が迫ってきた。
このままでは自分までも喰らってしまう。
止むを得ず、ショウは一時先頭離脱を図った。
エヴァシャドウは一歩下がり、スゥと姿を消して去った。
姿を消すと同時に眩い閃光がりを包み、次には轟音と爆風が大地を大きく削り、吹き飛んだ。
暫くの間、辺りは爆煙に包まれ何も見えない。
風がそれを払うとそこにいたのは未だ原型を留めている分離されたイスラフェルの姿がそこにあった。
N2爆弾のダメージが効いているのかイスラフェルは動かない。

―NERV本部・第三会議室―
ここ、第三会議室では先ほどのイスラフェルとの使徒戦が録画されたものを再生し、反省会が開かれていた。
モニターに映るのはイスラフェルの攻撃を喰らって犬神家みたいに無様に頭から地面に突っ込んでいた。
これにシンジとアスカは顔をしかめた。
アスカにいたってはこれほどにない屈辱であっただろう。
日本でのデビュー戦であっさりとやられてしまったのだから。
「無様だな。」
これに日向はブルーになる。
「……申し訳ありません。」
更にスクリーンにはエヴァシャドウが出現するシーンへと変わった。
エヴァシャドウも善戦はしたものの、結局傷一つすら付けることなく戦闘離脱に終えてしまった。
「まさか、エヴァシャドウですら倒せないとはな。」
「所詮、ヤツもまたただ人間に過ぎないと言うことだ。」
次の瞬間にスクリーンが眩い閃光でハレーションされた。
次第にスクリーンからの眩い光は落ち着きを取り戻し、爆煙の下から原型を留め、全く動かない二体のイスラフェルが映った。
サブディスプレイに表示される人工衛星からの使徒の出現されたエリアには大きい円形の吹き飛ばされた地形がそこにあった。
「また、地図を書き直さなければいかんな。」
吹き飛ばされたところには旧東京が沈められた海水が溢れ出て、湖を造った。
そして、戦闘記録の映像は終了し、ゲンドウが口を開いた。
「セカンドチルドレン、サードチルドレン、お前達の役目は何だ?」
ゲンドウは二人を試すような口調で質問して来た。
これにアスカが口を開く。
「え…エヴァの操縦?」
「違う…使徒の殲滅だよ。そうだろう?父さん。」
「そのとおりだ!我々は無様な戦いを見せるために存在しているのではない!使徒を殲滅するために在るのだ!」
激しい口調で吐き捨てて会議室を後にしたのだった。
これに続いて、冬月とリツコとマヤも会議室を去った。
残ったのは日向とシンジとアスカだけだった。
アスカは悔しそうに拳を思いっきり握り締めながらうつむいていた。
シンジは上の空といったような表情であった。
日向はというとかなり落ち込んでいた。

再び所変わって、同時刻、牧野の自宅。
ショウは一人でパソコンに向かってなにかのデータを閲覧していた。
「そういうことか…一人で倒すには無理があるな。誰かの力を借りようにも自分には味方はいないし…。どうしたものか。」
先ほど閲覧していたデータはイスラフェルに関するものだった。
倒す条件はコアの同時破壊。
しかもそれはコンマ一秒も許さないほどのシンクロが必要とされる。
一人では無理がある。
「う〜む。どうしよう……。………!待てよ。レイとならできないか?」
ショウの頭に一人の女の子が思い浮かんだ。
綾波レイだ。
この世界で一番親密な人はレイぐらいであった。
次にはシンジだけで、他にはあまりいない。
自分を知るものは少ないほうであった。
「レイとやるのはいいが…どうやって誘うべきか…。」
ショウはまたしても悩み始めた。
本来ならアスカとシンジが五日間の間にシンクロの訓練と言うことで二人がイスラフェルを撃破するのだが、自分が世界に影響を与えていることもあるので、イスラフェルは違った形で攻撃するかもしれないし、進化し強固な防御を兼ね備えている可能性もあるのだ。だからこそ、イスラフェルは別の意味で未知数な存在だ。
そういえば。とショウは何かしら考え付いた。
これからアスカとシンジが暫くシンクロ訓練と言うことで、二人で生活を始めるんだよな。となるとレイはノーマークになる。
そこを衝いて、レイと一緒にシンクロ訓練を行うか…?
とはいえレイにも監視がついているはずだし、あまり彼女にばかりくっついていると自分がエヴァシャドウのパイロットであるという可能性に感づかれる。
しかし、他に方法はない。
「やってみるか…。用心するに越したことはないが、"念には念を"だな。」
やっと考えがまとまったところでレイに会いに行こうと決意したのだった。
イスラフェルを先に制するのはシンジ&アスカ組かショウ&レイ組のどちらかはまだ知る由もなかった。





                                          ……………To be continued