「おはようございまーす!」

 元気な声を上げながら、赤みを帯びた金髪で碧眼の少女が玄関の扉を勢いよく開け放ちながら入ってきた。

 「あら、アスカちゃんおはよう。今日はいつもより早いわね?」

 落ち着いた雰囲気のショートの女性──碇ユイは少女に向かってさも当然のように挨拶を返した。
 少女──惣流アスカはこの家の隣に住んでいて、ユイの一人息子と幼馴染である。
 無論、その母親でもあるユイとも仲が良い。その為か毎朝のようにこうしてやって来るのである。




 しかし!




 ユイが「いつもより早い」と言ったのは五分、十分のことではない。

 アスカは……普段来る時間より二時間も早く来ていたのである!

 にも拘らず……

 「あ、お早う御座いますおば様、おじ様」

 「うむ」

 妻同様にいつもと変わらない挨拶を返す夫──碇ゲンドウ。

 その様は無愛想極まりない。

 そして、ゲンドウはハッキリ言って……顔が怖い!

 とっても怖い!

 ただでさえ強面の顔に顎鬚とサングラスを掛けているものだから……その効果は抜群である。

 尤も、性格は至って穏やかである為に慣れればそれ程怖くはない。

 あくまで、慣れれば……であるが。

 某婦人に云わせればその辺のギャップも『カワイイ』らしいが……






 「シンジなら部屋よ。まだ寝てるんじゃないかしら………… たぶん

 「じゃあ、ちょっとお邪魔します」

 ユイの声が最後のほうだけ小さくなっていたことに……揚々としていたアスカは気付かなかった。

 そしてそれが彼女の本日最大のミスであったが、この時の彼女が知る由もない。


 「…………(ニヤリ)」

 ゆっくりと忍び足でとある部屋の前まで来ると、アスカは不気味に笑った。

 「(うふふ……今日こそはこの私の勝ちね……シンジ!)」

 音を立てないように部屋の扉をそ〜っと開け、大きく膨らんでいるベッドを確認すると彼女は心の中でガッツポーズを決めた。


 ────次の瞬間



 「どぉぉりゃぁぁぁーーーー!!!」

 気合の篭った声と共に(美)少女が宙を舞った。



 地球上に存在するものに等しく与えられるもの───重力──によって少女の身体には下向きのベクトルが加わった。

 ───結果

 少女はベッドの膨らみの中間辺りに落下した。

 ただし、肘を思い切り突きたてながらであったが。

 ……そう、少女はベッドの所有者たる者に向かって、フライング・エルボーを仕掛けたのであった。

 少女の体重(ピー)kgプラス少女の気合が上乗せされた一撃は本来ならばその攻撃対象の眼を覚まさせるどころか、
 永遠の眠りへと誘うはずであった……

 本来であれば……



  ばふっ!!



 「ばふっ? ……まさか!?」

 明らかに違う手ごたえにアスカが困惑したが、今までの経験から目標がダミーにすり替わっていたことに気付いた。

 が、時既に遅く……



  ぷしゅ〜!



 という音と共に無味・無臭・白色のガスがアスカの視界を覆った。


 「ちょ、ま……た………(なの!?)」

 徐々に意識を失っていく中でアスカは……マスクのようなものを被った者が部屋の隅に立っているのを見たのを最後に……意識を失った。





 「(フフフ……この僕を出し抜こうだなんて157683時間46分29秒程早いよ、アスカ。フフフフフ…………)」

 完全防毒・防塵マスク伍号改『べーだーくん』(設計・製作 国際裏科学者連合共同開発株式会社)
 を装着した少年がゆっくりと少女に向かって歩み寄っていった。

 その口元は楽しそうに歪んでいたのは誰も見ることは無かった。



 尤もマスクの為に誰かそこに居ても見ることはできなかったが……










!


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 「……か……」

 「(……ん……だれ?)」

 「……すか……ったら」

 「(全く……人が気持ちよく寝てるっていうのに…………もうちょっと寝かせてよ)」

 「ちょっとアスカったら! もうすぐHRが始まるわよ!」

 「……ふぇ!? あ、ヒカリ。おはよう」

 アスカを揺り起こしたのは彼女の親友でもあり、このクラスの学級委員長を務める少女──洞木ヒカリである。

 ヒカリに対してやや間の抜けた挨拶を返すアスカに、ヒカリは呆れたような顔をしていた。

 「おはよう、じゃないわよ。いい加減に眼を覚ましなさいってば!」
 
 「え〜と……ここは教室?」

 「ようやく解ってもらえた?」

 よく見るとクラスの皆が二人に注目していた。

 「……あれ? 何で私はここにいるの?」

 「覚えてないの? 私が来たときにはもう教室にいたわよ。しかも寝てたし」

 「え……まじ!?」

 「ご丁寧に私の机の上に『HRが始まる前に起こしてね(はぁと) byアスカ』ってメモが置いてあったし」

 「そうだっけ?」

 う〜んと唸りながら考え込むアスカ。
 ふと視線を窓際に遣ると彼女の幼馴染の少年──碇シンジと視線がぶつかった。

 碇シンジはやや中性的な顔立ちをしており格好いい、というより可愛いと言われることのほうが多い。

 その為か、上級生の女子には密かに人気があったりもする。


 シンジの性格(本性)を知らない人に限るが……



























 アスカが自分を見ていると気付いた瞬間───




 (ニヤリ)





 少年は楽しそうに口元を歪めた。

 シンジが笑みを浮かべた時……アスカは今朝の出来事を思い出した。

 つまり、自分はシンジの策に嵌りまんまと眠らされたことを……


 髪の色のようにその顔が赤で染まった。

 「こんのぶぁ「は〜いHR始めるわよ〜」……ちぃ!」

 アスカはシンジに眠らされた後のことを問いただそうとしたが、担任の出現によって断念せざるをえなかった。
 
 「HRの前に皆に知らせることがあるわ」

 2年A組の担任、葛城ミサト。
 この教師が朝から連絡があるということは通常ではありえない。

 なぜなら………………ずぼらだからだ。

 授業には遅刻しないものの限りなくギリギリにしかこなかったり……
 プリントなんかも提出日の前日に配られたり(本来なら二週間前に貰うはずのものである)……
 三度の飯よりビールが好きで、生徒をからかうのが趣味だと言い張るあたり普通ではない。

 ただ、その親しみやすい態度や物腰から生徒(特に男子)からの人気(人望ではない)は高い。

 同僚であり親友でもある女性から言わせると『同レベルだから、馬が合うんでしょう』……だそうであるが。

 「転校生がこのクラスに来たわ」

 「「「「「「「おおーーーー!!!」」」」」」」

 「喜べ男子! 極上の美人だ」

 「「「「おおーーー「……ったんだけど」 ー?」」」」

 本来呆れられるのが専門のミサトが珍しく呆れた顔をして意味不明な切り方をしたので、生徒は一様に?を顔に浮かべていた。

 「まだ来てないみた 「すいません遅れましたーーー!」……来たみたいね」

 まだ来ていないみたいだから取りあえず後にしましょう──と言うつもりであったがなんとか間に合った(?)
 転校生が教室に凄い勢いで駆け込んできた。

 転校生の少女は蒼みを帯びた銀髪をしていた。
 染めたものではなく先天的なものであるのはその透き通るような輝きからも明らかであった。
 さらにその肌も雪のように白かった。

 少女は……確かにキレイだった。

 ……ただし……

 「じゃあ早速だけど自己紹介して貰いましょうか?」

 「ぜぇはぁぜぇはぁ……わ、私は……はぁはぁはぁ……」

 息を切らしながらも喋ろうとする様は鬼気迫るようであったが……

 「あ〜、落ち着いてからでいいわよ」
















 ──閑話休憩──

















 「今度このクラスに転校してきた綾波レイです。
  この街に来て間もないのでいろいろ分からないことも多いと思いますが、よろしくお願いします」

 「「「おおーーーー!!!」」」

 一騒動合ったが、転校生──レイが挨拶と共にニッコリと笑うと男子は喝采を上げた。
 珍しい蒼い髪である他に少女は紅い瞳をしていた。
 それが不思議な雰囲気を出して、少女をより魅力的に見せていた。

 このクラスの誇る美人──惣流アスカは赤髪に碧眼なのでほとんど対照的な印象であった。

 「「……ばっかみたい」」

 ソバカスの少女と赤髪の少女を筆頭に女子は騒ぐ男子達に向かって軽蔑の眼差しを送っていた。

 ソバカスの少女の声と視線がたった一人に向かっていたのは、当人達を除くクラス全員の知るところである。

 「それじゃあ綾波さんの席は……シンちゃんの隣が空いてるわね」

 教室を見回すミサトに対してここ、ここと自分の隣を指差す男子を無視してミサトはシンジの隣を指定した。

 途端にブーイングが上がるがそんなことをしてもこの担任には一切通用しないことも解りきっていることである。

 「って言ってもわからないか。シンちゃん手を上げて」

 シンジが手を上げ、レイがシンジを見た瞬間───彼女は爆弾を投下した

 「あーーっ!



  今朝の…………


























     ……誘拐犯!」







 「「「「「………………」」」」」



 「「「「「………………」」」」」



 「「「「「………………」」」」」



 「「「「「………………」」」」」



 「「「「「………………」」」」」



 「「「「「………………」」」」」








 「「「「「ぬぅわぁにぃーーーーー!!!!」」」」」



 「ちょっと、シンジ! あんたとうとうそんな事にまで手を出したの!?」

 如何にこのクラスといえどもこの爆弾の威力は凄まじかった。
 アスカも思わずシンジに問い詰めた。
 初めて会う転校生の言うことを信じる、というよりシンジのことを全く信じていないような言い方だ。

 シンジを疑う余地の方が明らかに多いのもまた悲しい事実であるが……

 「言いがかりはやめ「あーーー!!!」ん?」

 爆心地にいながら冷静に自分の身の潔白(?)をアスカに説明しようとしたが、再び声を上げるレイにクラスの視線がシンジからレイに戻った。
 
 「今朝の…………














    誘拐されてた娘!?」



 その指は……アスカを指していた。

 「えーーーー!………って何で皆そんなに静かなのよ?」

 レイが二つ目の爆弾を投下したのにも関わらず、先程と違い全く騒ごうとしないクラスメイトにアスカは非難混じりの声で言った。


 「だって……なぁ」

 「そうだよ」

 「別に……だよなぁ」

 クラスメイト達は周りの生徒と目を合わせながら、濁すように言い合っている。

 「別に何なのよ!」

 ハッキリしない態度に苛々したアスカが怒鳴ると……



 「「「「「シンジ(碇)とアスカ(惣流)だしな〜〜〜」」」」」


 「どーいうことよ!」

 「どうもこうも貴方達なら今更何があっても驚くようなことはないでしょう」

 「…………く!」

 大いに納得できなかったが、呆れたように言うミサトを見るとそれ以上何も言えなくなった。

 ふとシンジを見ると、やれやれとばかりに呆れた視線をこちらに向けていた。

 「(むかっ! 元はといえばあんたが原因のくせに!)」

 アスカの額には青筋が浮かんでいた。




























 「と・こ・ろ・で、できれば詳しいことを教えてくれないから綾波さん」

 「…………」

 興味津々とばかりにレイに尋ねるミサト。
 場を沈めるどころかますます煽ろうとしている辺り、担任教師としての自覚があるのかが非常に疑わしいことである。

 本人曰く「担任だからこそ、生徒のことは知っておく必要があるのよ」……だそうであるが。

 「綾波さん?」

 爆弾を投下した張本人であったのにも拘らず目の前の出来事に少々思考停止気味だったレイが、再度ミサトに問いかけられてハッと気付いた。

 そして少女は語りだす……




 「え!? あ、はい。

  えーとですね……今朝私が─────

























  まったく……いくら私がよく遅刻するからって言っても流石に転校初日に遅刻はしないわよ。

  お母さんもちょっと心配しすぎなのよね。
  よりにもよって二時間も早く起こすんだから。

  ……眠くてしょうがないじゃない

  ま、おかげで歩いていっても余裕で間に合うけどね。

  緊張の転校初日なんだからもうちょっとこうねぇ。

  はぁ…………眠いわ。


  学校までの道は予め下見をしていたから迷うことはなかったわ…………でも。



  ん?

  交差点の前まで来た時、丁度誰かが来たの。

  危なかったわ〜。
  いつもみたいに走ってたら間違いなくぶつかってたわね。

  勢いがついたまま、頭同士なんかをぶつけた時なんてとっても痛いのよ!

  あれは体験したことのある人じゃないと解らない痛みよね。

  ……え、あ……続きですか?


  えーと、ですね。


  あれは……人……男の子? 担いでるのは……女の子?








  レイの頭の中で

  意識不明の女の子を肩に担ぐ男の子≒アレな趣味を持つ誘拐犯

  という式が成り立ちかけたとき、先の少年がレイのほうを向いて笑った……


  ニヤリ


  と







  その瞬間レイの脳内で

  目の前の男の子=凶悪な誘拐犯

  が確定した。












  で、さすがに見て見ぬ振りはできなかったし……

  考えるより先に体が動いたって言うか何と言うか……

  気付いた時には全力でその男の子を追いかけてたってわけで……

  けど、私も足の速さには結構自身があったんだけど全然追いつけなくて……

  何とか見失わないようにするのが精一杯って感じでした。


  女の子一人背負ってるのにも関わらずよ。

  …………正直、自信喪失しそうだったわ。


  え、そんなことはどうでもいい?

  そんなこととは何よ! 重要なことじゃない!



  ………………わかりましたよ。


  で、とうとう見失っちゃって…………しかも周りを見ると全く知らない場所だし。

  はっきり言って焦ったわね。

  このままじゃあの娘も危ないし、それ以前に私も学校に遅刻しちゃうし。

  あ〜転校初日から遅刻なんてシャレになんないわよ…………



  取りあえず近くのコンビニで場所聞いたらビックリしたわ。



  だって隣街だったのよ!

  これは本気で遅刻確定かなって思ったら近くにバス停があって、しかも丁度バスが来てて。

  しかもそのバスが転校するはずのこの学校の近くを通るってコンビニの店員さんに教えて貰ったから…………






  走ったわよ!



  だってバスが発進しちゃったんだもん!


  でも、バスの運転手さんが親切な人で直ぐに停まってくれたの。

  世の中まだまだ捨てたものじゃないわね。あんなに親切な人もいるんだもの。



  なんとかこれで遅刻は避けられるって思ったらなんか安心しちゃって……

  ほどよい揺れが気持ちよくて……


  バスの中で…………



















  寝ちゃったのよ!



  しょうがないじゃん!

  走ったから疲れてたんだもん!

  朝早かったから、眠かったんだもん!








  起きた(運転手に起こされた)ら学校を過ぎちゃってました……えへ!



  ……………………

  ……………………

  ……………………

  とにかく走ったわよ!

  力の限り走ったわよ!





  おかげで世界が見えた(気がした)わ!





  学校に駆け込んだ後に職員室でクラスを訊いて、さらに速度を上げて……


























  ─────で、今に至る……と…………ってなんで皆さんそんな顔してるんですか?」

 「綾波さんって……よく喋るのね…………話し出すと性格変わるのね

 辛うじてミサトがそう答えた。

 後半の呟きは余りに小さかったので隣にいたレイにすら、聴かれることは無かった。


















 「……それで、一応真相を訊いておこうかしらシンジ君?」

 「キリキリ白状しなさいよ、シンジ!」

 なんとか普段の調子を取り戻したミサトに便乗して、アスカもシンジに問い詰めた。

 そして、やれやれ……とばかりに少年は語りだす……


 「真相といっても別に大したことでは無いんですが……まぁ掻い摘んで話すと─────

  今朝アスカが僕の部屋に襲撃をかけようとしていたんですが、予め察知した僕が逆にアスカを返り討ちにしたんです。
  内容としてはトラップを仕掛け、それに見事に掛かったアスカを催眠ガスで眠らせたんですよ。
  幸いそれ程強力な物ではないので副作用などもありませんが……さすがにそのまま寝かせて置くと遅刻が確定してしまう。

  よって、仕方がないので僕が背負って学校まで向かうことにしたんです。

  途中で見知らぬ少女……ええ、綾波さんと遭遇しましたが、構わず学校に向かおうとしたんです。
  が、何を勘違いしたのか綾波さんが追いかけて来ましたので…………





  …………逃げました。(ニヤリ)




  だって、追いかけられたら……

  普通逃げるでしょ?


  しかも中々のスピードで追いかけてくるから……

  僕も結構本気になっちゃいましたよ。

  でも、全力で走ると直ぐに撒いてしまうので……



  程よくスピードを調整しながら……

  入り組んだ道を進みつつ……

  学校とはかけ離れた方向へ……




  逃げました!




  え、何で学校から離れた方向に向かったかですって?

  追っ手に行き先を悟られたら、逃げる意味がなくなりますからね。

  先回りとかされたりしたら嫌ですし……



  で、そろそろ学校に遅刻しそうな時間になりつつあることに気付いたので……

  一気に全力で走り出しました。


  遅刻は嫌ですからね。



  五分もすると学校が見えてきて、その頃には……


  きちんと撒くことに成功しました(ニヤリ)

  思ったより早く学校に着いたみたいで、まだ誰も来ていませんでした。
  後はアスカを席に寝かせて、委員長の机の上にメモを残して……皆が登校し始めました────ってところですね」


 「つまりアスカを背負ったシンジ君を綾波さんがひたすら追い掛け回したってこと?」

 「そうなりますね」

 「まぁいいわ。じゃあHRの続きを「よくなーーーーい!!」……何、アスカ?」

 「シンジ!」

 「何?」

 何事もなかったかのようにHRを再開しようとするミサトを遮って、アスカが抗議した。

 アスカにしてみれば、今朝の事を「まぁいい」で済ますつもりは毛頭ない。

 ビシッとシンジを指さすと一気に言い放った。

 この時点でアスカの怒りのバロメータは99.89%の臨界点付近にまで達していた。

 「あんたね〜。アタシを眠らせてそのまま街中を走り回っといて何考えてるのよ!」

 「…………特にコレと言っては」

 「ふ、ふざけ「それよりもアスカ」な、何よ!?」

 あっけらかんと答えるシンジにとうとう境界線を越えかけたアスカだったが、シンジが至って普通に……


















 「…………太ったね(ニヤリ)」


 N2爆雷を投下した。









 「……………」

 「…………(ニヤリ)」

 「…………こ……」

 「「「「「「こ?」」」」」」

 バロメータはどんどん上昇し終には400%にまで達し……自我境界線を越えた……


 「こぉんのぶぅぁかシンジぃーーー!!!」




 「だいたいアスカは甘いものの食べ過ぎ「まだ言うかーー!!」


 2年A組の教室で突如として大型の赤い台風が発生し、猛威を振るい始めた。


























 「と、止めなくていいんですか?」

 「このクラスはこんなだから……担任の先生からしてあれだし」

 戦場と化しつつある教室を眺めているレイが少し引きながら近くにいたヒカリに話し掛けると、ヒカリは達観したような目でミサトを指差した。


 「いけいけアスカ〜! 負けるなシンちゃ〜ん!」

 戦場ではほとんどアスカが一方的に攻撃を仕掛け、シンジがそれを避けるという状態であった。

 無論、射線上にいるモノは巻き添えを食らっていたが……




 「は、はぁ……(ここは本当に学校……?)」

 「あ、私は洞木ヒカリ。このクラスの委員長をやってるわ。よろしくね綾波さん」

 「よ、よろしく。洞木さん」

 「大丈夫……こういうことは日常茶飯事だから……直ぐ慣れるわ」
 
 「あんまり慣れたくないような……」

 「……それも多分大丈夫よ」

 「?」

 「綾波さんも…………碇君達と……同じ素質を持っている気がするから」




















 「……………………(えっ!?)」

 「……………………」

 「……………………(それって)

 「……………………」

 「……………………(どういうこと?)

 「……………………」

 「……………………」


 嫌な沈黙が走る。

 ただし、後ろでは相変わらず暴風が吹き荒れていたが…………








































 その後アスカのドロップキックがシンジに炸裂し、 吹き飛ばされたシンジがミサトを巻き込みながら黒板に激突した形で戦い(?)は終結した。

 ちなみにレイの話の途中で一時間目の始業ベルが鳴っていたが、誰も気付くことはできなかった。

 幸か不幸か一時間目はミサトの授業であったが為に…………

 激突音に驚いた隣のクラスの教師がやって来るまでは誰も授業のことなど忘れていた。

 後に隣のクラスの担任は語る

 「いや〜、騒がしいのはいつもの事なんで諦めてるんですけど。今日のは地震かと思いましたよ」

 

 シンジ・アスカ・ミサトが放課後、初老の教頭先生から有難いお説教を頂いたのは別の話。

 「ふ、無様ね」担任の友人

 「少しは反省してよ」ソバカスの少女

 「…………」現実逃避気味の蒼髪の少女



 (フフフ……問題ないさ。全ては僕のシナリオのままに)










 夜、教頭先生が鏡を見ると……頭部の絶対防衛線が一センチ程後退していたのはもっと別の話。








  おわり  つづく?






あとがき

……言い訳?……愚痴(汗)


まずは……
この話を読んでくださった方々、本当にありがとう御座います m(_ _)m

実は私はエヴァの二次創作を形にしたのはこれが初めてです (^ ^;)

今までは読む専門でしたので……書くのは本当に大変ですね〜。

多くの作家様方を改めて尊敬いたしました!



シンジの性格を変えて、学園モノを書いたらどうなるかなって思ったのがきっかけでこの話を書いてみました。

私が小説を書くとき自然とシリアス・ダークよりになってしまう事に書き始めてから気付き、そうならない様に意識的に書きました。
笑ってむずかしいですよね……(汗)

あくまで短編ですので連載はしません……(たぶん)
設定といくつかの話は考えているんですけどね〜

それではまた機会があれば。

感想等送っていただければ幸いです m(_ _)m
ウィルスは勘弁してください(笑)
   bouvardia_worp_11102004@yahoo.co.jp


余裕があれば続編でも書こうかな〜(笑)