Re:birth-福音再び-
〜プロローグ〜
場所はとある研究所
来るべき時に備えてエヴァンゲリオンと呼ばれる汎用人型決戦兵器の開発が行われていた。 そして、今日は碇シンジの母親であり、碇ゲンドウの妻である女性、碇ユイをパイロットとした起動実験が行われる運命の日である。
「人類の明るい未来をこのこにも見せてあげたい」
その日は、碇ユイ本人の言葉によって息子のシンジを立ち合わせての実験であった。 父親であり研究機関のトップであるゲンドウとシンジは超強化ガラスによって守られた部屋で起動実験を見守っていた。 しかし、実験は失敗に終わり碇ユイは帰らぬ人となった。
シンジは、母親が居なくなってしまったという事実に傷つき、葬式以来部屋に閉じこもって泣いていた。 そして、ある日部屋から出てきたシンジを見たゲンドウは目を疑った。 シンジの髪の色が真っ白になり、その上目の色が真っ赤になっていたのだ。 泣き腫らして充血したのではなく、瞳の色が真っ赤に染まっていたのだ。まるで、生まれつきそうであったかのように…。
シンジは普段は家にいることのないゲンドウを見て訝しげに尋ねた。
「あれ?お父さんなんでお家にいるの? それにお母さんがいないよ?」
ゲンドウはその言葉を聞いても眉一つ動かさずにこう答えた。
「ユイは死んだ。私が家にいるのはユイが死んだばかりだからだ、しばらくは休む」
「え? お母さんが死んだってどういうこと!? お母さんいつ死んじゃったの?」
「…シンジ、その髪と目はどうした」
ゲンドウはシンジの問いをはぐらかし銀髪赤眼になってしまった息子の姿への疑問を口にした。
「髪と目がどうかしたの? お父さん」
「ちょっと鏡を見て来い」
「?」
よく判らないという顔で洗面所のほうに歩いていったシンジは鏡を見に行った。
「うわぁ…髪の毛が真っ白だし目が真っ赤になってるよ…なにがどうなったの? お父さん」たった今気づいたように驚いている。 それを聞いたゲンドウは、受話器を取りメモリーにある番号へと電話をかけた。 数回のコールの後相手が受話器を取るのを確認する。
「冬月…私だ。実験を見せたシンジに異常が起きたので至急そちらへ連れて行きたいのだが。…ああ、そうだ。…わかった。…ではそちらへ行く。…よろしく頼む」
電話が終わると、シンジはいつの間にか隣に来ていて、ゲンドウに問いかけた。
「お父さんどこかに行くの?」
「ああ、知り合いのところに行く。シンジ、お前も準備をしなさい一緒に行くぞ」
「? は〜い」
ゲンドウはシンジをある人物のところへ連れて行った。
この後、シンジはとある夫婦に預けられる。 そして、ここから新しいシナリオがスタートする。
あの事件から10年余りが経過したある日。 とある町の一角にある表札の無い一軒の家。 荒れた様子は無いので人は住んでいるようだ。
その家に一通の手紙が届いた。 宛先名は碇シンジ、差出人の名前は無かった。 帰ってきたこの家の住人らしい少年は、手紙を発見しニヤリと笑みを浮かべた。 急いで家に入り手紙を開封すると、中には一枚の写真と共に便箋にワープロで一言「来い。ゲンドウ」とあった。 この手紙から老人達のシナリオが少年のシナリオへと書き換えられていく。緩やかに、それゆえに確かに。
続くのか
終幕