Re:birth-福音再び-
〜第壱話 使徒、襲来〜
『緊急警報、緊急警報をお知らせします。 本日12時30分、東海地方を中心とした関東中部全域に特別非常事態宣言が発令されました。 住民の方々は速やかに指定のシェルターへ非難してください』
『繰り返しお伝えします――――――』
駅のホームにたたずむ人影。 モノレールの掲示板は全て「全線不通」の文字を表示していた。
「『ちぇっ、電話もだめかあ。電車も止まっちまったし、こんなところで足止め食ってどーすんだよ』」
公衆電話の受話器を置きながら少年がどこか懐かしげ、楽しげにつぶやく。 少年は、黒髪に真紅の瞳と闇夜のカラスのような容姿をしていて、女の子と間違われそうな端正な顔立ちしている。 だが、微妙に気だるそうな瞳が全てを微妙なものに変えていた。
「我ながらよく覚えてるね…。といってももう忘れることはとっくに忘れた」
ふっと笑みをこぼしながら少年は一人ごちた。
「とりあえず、駅の外に出よう。しばらく待って誰も来ないようなら歩かないといけないし。…独り言は虚しいな」
外に出ると頭上を一機の戦闘機が低空飛行で通り過ぎていく。 そして陽炎の中に一人たたずむ青みがかった銀色の髪の少女にシンジは目を奪われる。
「久しぶり、といっても君とはまだ言葉を交わせない…」
通り過ぎた後の突風で暴れる髪を押えながら少年はつぶやいた。 次に少女の姿を見ようとしたとき、既にその姿はなかった。
「そろそろ来るかな〜。第三新東京市の蒼い稲妻ことミサトさんのルノー」
待ち人来たらず、そしてなにやら物騒な二つ名が付けられていた。
「さて、来るまでは国連軍vs巨大怪獣を楽しみますか」
戦闘機が飛び去った方角を見ながらのんきに彼は言う。謎の巨大生命体が目の前に現れても緊張感の欠片すらない。
「いい加減に来てくれないと、流石に二駅歩く時間も無いしなぁ。それに、僕も死んじゃうよ」
一人ボソボソと呟いている少年をよそに巨大生物の攻撃により戦闘機が撃墜される。 そして、空中で発火した戦闘機が近くに墜落して爆発…する直前に少年と戦闘機の間に蒼い車体が滑り込んで爆炎から彼を守った。
「碇シンジ君? 急いで乗ってちょうだいにげるわよ!」
青く見える黒髪の女性が運転席のドアを開けて一気にまくし立てる。
「あなたが葛城ミサトさんですか?」
「そうよ、急いで乗ってちょうだい」
「分かりました」
ドアが閉まると同時にタイヤの擦れる音とともに発進するルノー、無事な道路をものすごい速度で走り抜けて町の外を目指す。
宇宙船の指令所のような広い部屋で慌しげにオペレーターたちが状況を報告して行く。
『目標は依然健在。第三新東京市に向かい進行中』
『航空隊の戦力では、足止めできません』
「総力戦だ。厚木と入間も全部あげろ」
「出し惜しみは無しだ!! なんとしてでも目標を潰せ!!!」
軍の人間と思われる三人の人物が苛立ちを浮かべながら指示を出している。
「なぜだ!? 直撃のはずだっ!!!」
切羽詰っている彼等とは対照的にオペレーターのそばに立っている二人の男はいたって冷静のようだ。
「…やはりA.T.フィールドかね?」
「ああ…使徒に対し、通常兵器では役にたたん」
高官の手元に位置している電話が鳴り、彼はすぐに受話器を取った。
「はっ、わかりました。予定通り発動します…」
まさに蒼い稲妻と化したミサトのルノー。見る者がいたならそのドライビングテクニックに唖然としただろう。
「か、葛城さん早い、早いですって」
「ミサトでいいわよ、シンジ君。それより…」
タイヤが路面を滑る甲高い音を立てて交差点を攻略して行く。旧首都高に君臨したというドリフトキングも真っ青だろう。
「しゃべると舌かむわよ」
湖面の白鳥の優雅な姿がルノーの走りだとするなら、車内の状態は水面下の白鳥の足だろうか。 いや、もっと適切でわかりやすい表現があった。そう、車内は洗濯機のようだった。
「無事で居られると願いたいね」
「どうかしたの? シンジ君」
「いえ、独り言です」(…口に出しちゃったよ)
ルノーが街中を離れてしばらくした後、巨大生物と交戦中の戦闘機が撤退を始めた。
「あ、葛城さん。皆離れていきますよ」
「っ! 身体を伏せて腕で頭を守りなさい!!」
ミサトはルノーを停止させて安全な体勢を取ることを促す。 直後、激しい閃光とともに音が消えた。
「―――――!!」
「―――!?」
光と無音の衝撃が去って、二人が閉じていた目を開くと、そこには跡形もなく消し飛んだ街がさかさまに見えた。 蒼いルノーは無様に横転して逆さまになり、中でミサトだけが天井に頭が触れていた。
「ああぁ! 私の愛しいルノーちゃんがぼこぼこに! うぅ…ローンが33回も残ってるのにぃ〜〜!! サングラスまで粉々だし!」
車の中から這い出してのミサトの開口一番はそれだった。
「あいてて、結局ひっくり返るのか…。そして町は瓦礫も残らないと」
シンジは街のあったほうを眺めていた。どうすることもできないこともある。 知っているからこそ悔しかった。だからシンジは振り返って言った。
「これからどうするんです? 車はこうですし、目的地まで後どれくらいなんですか?」
再び場所は指令所。 巨大なスクリーンに爆発によって生じたきのこ雲が映し出されていた。
「わはははは! やったぞ!」
「見たかね! これが我々のN2地雷の威力だよ。これで君の新兵器の出番はもう2度と無くなったという訳だ!!」
「碇君、君の出番はなくなったよ」
高官と思われる三人の男たちは子供のように勝ち誇る。 オペレーターの後ろに立っている二人のうち一人が、長髪の男性オペレーターに話しかけた。
「倒したのか?」
「電波障害のため目標確認までしばらくお待ちください」
オペレーターの青年は移り変わるデータを何一つ漏らすまいと次々に視線を移す。 ドーム状に何かが映し出されていたモニターに変化が訪れる。
「爆心地にエネルギー反応!」
「なにぃ!」
高官たちの間に動揺がはしる。
「映像、回復しました。使徒生存確認!」
「なんと言うことだ…」
そして、拡大された使徒と呼ばれた生命体の、人間で言えば胸部にあたる部分にある仮面のような部位が映された。
「くそっ、N2地雷までもが効かないとは…化け物め」
悔しそうにモニターを見る高官の前で、使徒の仮面は横にずれて奥にまた仮面のようなものが映った。 その瞬間! 仮面の目に当たる部分が輝いたかと思うと映像は途切れた…。 そして、再び電話がかかってくる。
「はっ、わかっております。はい、では失礼します」
受話器を置いた高官は眼下に立っている二人の男に対し、告げた。
「これより、本作戦の全指揮権はネルフに委ねられることになった。お手並み拝見といこうじゃないか。」
「我々国連軍の所有兵器が敵目標に対して無効であった事は素直に認めよう。だが碇君、君なら勝てるのかね?」
老人の横に立つサングラスをかけた男――碇ゲンドウはその言葉に振り返ると。
「ご心配なく…そのためのネルフです」
指でサングラスをクイッと直しながら答えた。 サングラスは怪しく輝いていた。
目的地に着いたミサトは自動車用のエレベーターで地下へと潜りながらシンジに話しかける。
「特務機関ネルフ…ですか」
「そうよ〜、国連の非公開組織でね。私もそこに所属しているのよ、まぁ国際公務員ってやつね。あなたのお父さんと同じね」
「人類を守る立派な仕事ってやつですか?」
「なにそれ、皮肉?」
「さぁ?」
そういって不敵な笑みを浮かべるシンジ。
「シンジ君のお父さんはそこで指令をしているわ」
シンジは少し考える素振りを見せて黙り込む。
「どうしたの?シンジ君急に黙っちゃって」
「あっ、いえ…少しボーっとしてました。すみません」
「久しぶりにお父さんに会えるのに嬉しくないの?」
「たぶん会ってもギクシャクするだけですから…」
困ったような笑みを浮かべながら答えるシンジにミサトは慌てて言葉を繋げる。
「きっと会えば何か話せるわよ…きっと」
「だといいんですけど?」
それっきり二人は黙ってしまった
「UNも御退散か」
「………」
「碇指令、どうなさるおつもりです?」
「初号機を動かす」
「そんなっ!!無理です、パイロットがいません! レイにはもう…」
「問題ない、たった今予備が届いた」
「ミサトさん、さっきからずいぶん歩いてますけどまだつかないんですか?」
「ギクッ!だ、大丈夫よ、もうすぐつくから心配しなくていいわよ」
(おっかしいわね確かこっちでいいはずなんだけど…)
シンジの問いに内心冷や汗だらだらのミサトは何とか隠そうと必死だった。 そのとき後ろからミサトにとっての救いの声がかかった。
「ちょっとあなたたち何処に行くのかしら?」
「あっ…リツコ」
振り向くとそこには白衣を着た金髪の女性が立っていた。
「あんまり遅いから迎えに来たのよ。人手も時間もないんだから…グズグズしてる暇はないのよ」
「うっ…。ごめ〜ん迷っちゃったのよ、まだ不慣れで…」
じろりと睨みながらミサトを追い詰めたあとシンジをちらりと見るリツコ。
「その子ね? 例のサードチルドレンは」
「あ、初めまして、碇シンジです」
「あたしは技術一課、E計画担当博士の赤木リツコよ。よろしく」
リツコは報告書とは違うシンジの社交的な態度に少し疑問を抱いたが初めて会う人の挨拶ぐらいはできるのだろうと判断した。
「残された時間は少ないわ。ついてらっしゃい」
手をひらひらと振ってエレベーターに乗り込むリツコ。シンジもすぐに置いてけぼりのミサトは不貞腐れつつその後を追った。
「いらっしゃい、シンジ君。お父様に会わせる前に見せたいものがあるの」
「見せたいもの…ですか?」
エレベーターが止まりドアが開くと、オレンジ色の液体が満たされた場所にボートが浮かんでいた。
『総員第一種戦闘配置。繰り返す、総員代一種戦闘配置』
『対地迎撃戦初号機起動用意!!』
ボートに乗り移動していると不意に警報が鳴り響きアナウンスが流れた。
「ちょっとどういうこと? レイは重症だしパイロットがいないわよ?」
「……」
「なに考えてるのかしら指令は…それで、N2地雷は使徒には効かなかったの?」
「ええ、表層部にダメージを与えただけで依然進攻中。やはりA.T.フィールドも持っているみたいね」
リツコは最初の質問は無視して2つ目の質問に答えた。
「おまけに学習能力もあって外部からのリモートコントロールじゃなくてプログラムで動作する一種の知的生命体だとMAGIシステムは答えているわ」
「それってまさか…」
「そう、エヴァと同じ。着いたわ、ここよ」
足場に平行になるようにボートを止めて少し上にある入り口を示す。
「暗いから気をつけてね」
リツコは壁を探ってレバーを入れてライトをつける。
「これは…ロボット…?」
そこには紫色の装甲をつけた鬼のような巨大な顔があった。
「厳密に言うとロボットではないわ。人類の生み出した究極の汎用決戦兵器! 人造人間エヴァンゲリオンよ」
「我々人類最後の切り札、その初号機よ」
「…これも父の仕事ですか?」
「そうだ」
問いかけるシンジの頭上から声がかかる。
「久しぶりだな、シンジ」
「本当に、十年ぶりかな? 今更何の用?」
見上げるとそこには碇ゲンドウの姿があった。 シンジは腕を組みしっかりと見返していて、その様は何か異様なプレッシャーを放っていた。
(うっ…何かしらこのプレッシャーは)
(なにこれ、シンジ君からこんなプレッシャーを感じてるって言うの?)
「シンジ、今から私が言うことをよく聴け。これにはお前が乗るのだ、そして使徒と戦うのだ」
ゲンドウはシンジのプレッシャーを苦ともしない様子で続ける。 密かに手足が震えているが遠くからでは判らない。
「そんな! 待ってください指令、レイですらシンクロするのに7ヶ月もかかったのですよ? 今日来たばかりのこの子にはとても無理です」
「座っていればいい、それ以上は望まん」
ミサトの反論に意も返さずゲンドウは冷徹に言い放つ。
「しかしっ「葛城一尉! 今は使徒撃退が最優先事項よ」
食い下がる彼女を今度はリツコの言葉がさえぎった。
「そのためには誰であれわずかにでもエヴァとシンクロ可能なある人間を乗せるしか方法がないのよ。それとも、他にいい方法があるというの?」
「くっ」
「さぁ、シンジ君こっちへ来て」
ミサトには反論するすべが浮かばなかった、それをよそにリツコはシンジをつれて行こうとする。 だが彼は動かずにゲンドウを見据えたまま再び口を開いた。
「父さんは、僕にこれに乗ってあれと戦えっていうの?」
「そうだ。説明を受けろ。お前が一番適任…いや、他の人間には無理なのだ」
「へぇ、断ったらどうなるの?」
「人類が滅ぶだけだ」
「ふ〜ん、どうして滅ぶなんてわかるの?」
「今は分からなくてもいい。出撃しろ」
親子の感情が篭らない異様な会話が続く。 シンジはくつくつと笑い始める。その様はまるで悪魔が笑っているようだった。
「こんなことのために十年、そう十年も放って置いた僕を呼び寄せたって言うの?」
「埒が明かんな。人類の存亡を掛けた戦いに臆病者は不要だ。冬月、レイを起こせ」
『使えるのかね?』
「死んでいるわけではない、こっちへ遣せ」
ゲンドウはシンジの言葉を勝手に否定と受け取って別の命令を下した。
(大怪我してるんだろうけど、ごめん綾波)二人の白衣を着た男が人を乗せたストレッチャーを押してくる、上には体中至るところに包帯を巻かれた少女が横たわっている。 瞼を開いてはいるものの彼女の赤い眼は何を見るでもなく焦点が定まっていなかった。
「レイ…予備が使えなくなった。もう一度だ」
ゲンドウはどう見ても重傷の少女に対し冷酷ともいえる命令を下した。
「…はい。くっ、ううっ」
彼女は何とか起き上がろうとするが、動くたびに全身を襲う痛みに苦悶の声を上げる。 あまりに痛々しい光景にミサトは密かに視線を逸らしている。
「そんな身体で動いちゃだめだ。じっとしているんだ」
それでも起き上がろうとしている少女をシンジはストレッチャーに押さえつけた。 その衝撃に少女は思わず苦悶の声を上げる。
「くぅっ…あなたは誰? 何故…私を止めるの?」
「あ、ごめん。僕は碇 シンジ。君は何であれに乗るの?」
(綾波、久しぶり)
「碇…指令と同じ苗字」
(碇君…やっと逢えた)
声には出さずに触れ合ったA.T.フィールドで会話をする二人。扱いに長ければこのようなことも可能なのだ。 テレパシストはこの要素が先天的に高い人間で、長距離にまで効果を及ぼすことがある。
「そうだね、僕とあの男は親子だ。それで―――――」
突然の轟音がシンジの言葉をかき消した。
「この音は!」
「奴め、ここに気づいたか」
激しい地鳴りと揺れがケイジを満たす液体に無数の波を作る。
「天井都市が崩れ始めたっ!?」
「危ない!!」
シンジは崩れ落ちてきた天井のライトと瓦礫から彼女を守るように抱き寄せた。
「そんな…彼を守ったというの?」
何かが液体を割って出てくる水音と凄まじい衝撃音が響いた。反射的に目を閉じていたリツコは、その光景に驚愕を覚え目を見開いた。 彼女の驚きも当然だった、なぜならあわや瓦礫の下敷きかと思われたシンジ達を水面から生えた巨大な手が守るかのように覆っていたのだから。
「大丈夫?」
(ごめんよ、辛い思いさせて)
「…死んではいないわ」
(大丈夫…ありがとう)
「君の名前は?」
(後は任せて)
「…綾波 レイ。あなたはどうして私を守ろうとしたの?」
(お願いするわ。でもお互い知っているのに名乗るのって変な気分だわ)
「それの答えはまた後で」
(でも、これで堂々とお見舞いにいけるよ)
手の影で二人が話している間に復活したミサトが駆け寄ってきた。
「二人とも大丈夫?シンジ君怪我は無い?」
「僕は平気です。父さん! これには僕が乗る! それと…後で話がしたい」
「いいだろう。ふっ、出撃!」
「シンジ君、よく言ったわ! さ、こっちよ。操縦システムについて説明するわ」
リツコはシンジを誘導すべく手で行く方向を示す。 レイは再び運ばれてきたストレッチャーに乗せられてすぐに連れて行かれた。
「大丈夫。僕は死なないさ、まだまだやりたい事もあるしね。だから見ててくれよ」
何処へともなく呟いてシンジは再び闘うためにエントリープラグへ歩いていった。
『冷却終了。ケイジ内全てドッキング位置』
『パイロット、エントリープラグ操縦位置に着きました』
『了解、エントリープラグ挿入!』
矢継ぎ早に確認と操作の声が飛ぶ、発進の準備が進むにつれ指令所の空気が張り詰めていくのがわかる。
『プラグ固定終了!第一次接続開始!』
『エントリープラグ注水開始』
足元から赤い色をした液体がせり上がってくる。腰まで浸かったシンジは気味悪そうに口を開いた。
「…水攻めですか?」
「そんなわけないでしょう。その液体はLCLといってそれが肺の中に満たされれば直接酸素を取り込んでくれるわ」
シンジは皮肉が大好きのようだ。
「へぇ、面白いですね…ゴボガボボボ…本当だ。でも血の味がしますね」
「我慢しなさい! すぐに慣れるわ」
実際は我慢しろと言われてできるものではない。 実は人間の血液には嘔吐する成分が含まれているので、生理的に人はその味を受け入れない。 それによく似た味というLCLの中にいるのだ。不快感は凄まじい。
「ずいぶん落ち着いてるわね、彼」
「えっ?」
「考えても見なさい? いきなりあの中に入れられてあんなに落ち着いてるなんて」
「そりゃあ…目一杯我慢してますからね…」
(何度入ってもこの味だけは嫌いだ…)
「…今度改善案でも探しておくわ」
「そうしたほうがいいと思います」
(イチゴ味とかにされてもそれはそれで嫌だけどね…。万に一つもないだろうけど)
『主電源接続、全回路電力伝達。起動スタート!』
『A10神経接続異常なし。初期コンタクト全て異常なし。双方向回線開きます』
エントリープラグの中を様々な文字や虹彩を映し出した後、自分の目で見るかのように外の様子が見える。
「すごいわ…シンクロ誤差0.3%以内よ。いけるわ」
「エヴァンゲリオン初号機、発進準備!」
『第一ロックボルト解除』
『解除確認、アンビリカルブリッジ移動』
『第一第二拘束具除去』
『1番から15番までの安全装置解除』
さらに準備が進みエヴァの全体像が見えてくると、やはりロボットというにはあまりにも人間じみた輪郭をしている。
『内部電源充電完了。外部電源コンセント異常なし!』
『エヴァ初号機、射出口へ。5番ゲートスタンバイ!』
『進路クリア、オールグリーン。発進準備完了!』
「了解! 碇指令、かまいませんね?」
「もちろんだ、使徒を倒さぬ限り人類に未来は無い」
「発進!」
弾けるような音が鳴って初号機の姿が見えなくなる。
「くぅっ」
すさまじいGと共に初号機が急上昇していく、数秒で地上に到着したリフトは衝撃と共に停止した。
「最終安全装置解除!初号機、リフトオフ!」
ゆらりとシンジを乗せた初号機は地上に降り立った。
続け!