第弐拾六話・最終回

世界の中心でアイを叫んだけもの

 

 

西暦2021年、あれから5年の歳月が経っていた。

 

NERVは本部が爆発したため、実質的解体。

各国の支部はお金を出していたところ、主に国だが、そこに研究機関として吸収されて行った。

 

ゼーレはまた裏社会に潜ったようで、その存在は世間には公表されなかった。

既に強引な延命措置によって生き延びて居た者が殆どてあったゼーレは当時の首脳陣が生きているかは疑わしい。

 

公式な発表では、使徒殲滅時に全てのエヴァは爆発、そのチルドレンは死亡。

量産型エヴァの存在は隠蔽された。

 

最後の使徒はNERV本部に潜伏、それを倒すために戦自まで投入され結局本部爆破により殲滅され人類のサードインパクトの危機は去ったとされた。

 

NERV本部勤務者は最後の戦いの前に殆どが疎開、本部に残った者達、司令、副司令、赤木リツコ博士、葛城ミサト、伊吹マヤ、日向マコト、青葉シゲルは爆発により死亡と発表された。

 

主にゼーレの息のかかった国連組織が行った発表であった。

 

加持達は、加持が準備していた新しい戸籍で生活を始めていた。

 

ミサトは加持と結婚し、第二新東京市で喫茶店を営んでいた。

マヤ、シゲル、マコトは会社を設立し、そこそこの業績を上げている。

 

結局、シンジ達が生きている事を知っているのはこの5人だけで、学校のクラスメート達も公式発表以上の事は知らなかった。

 

だが、エヴァに強烈な憧れを持っていた相田ケンスケ、短い間とはいえアスカと親友関係だった洞木ヒカリ、その恋人鈴原トウジは、今も友達関係を続けており、時折話題に上る事はあった。

 

人は忘れる事で生きていける。

5年も経てば、その痛手を受けていた第三新東京市以外は、その跡形もなく、使徒襲来等が有ったことすら人々の話題には上らなくなっていた。

 

元々NERVが情報を隠蔽していたため、第三新東京市以外に住んでいた人々に取ってはあまり情報もなく、諸外国に至っては知らなかった人々の方が多かったのであった。

 

 

 

―第二新東京市―――――――――――――――――――――――

 

第二新東京市にある『喫茶店チルドレン』。

夜の9時、そこの扉が開く音がした。

 

―カランコロン―

 

「いらっしゃい、ごめんねぇ今日はもう閉店なのよ、また明日来てねん」

軽い口調で店の女主人らしき人が言う。

 

「いえ、今日はお二人をお迎えにあがりました」

「へっ?」

 

そこには、どこかのコスプレ店から来たかのようなミニスカートのメイド服を着た銀髪のセミロング、薄いブルーの眼をした少女が立って居た。

 

「お迎えってどういう事だい?」

奥からこの店の主人らしき、だらしない格好と無精髭の男が顔を出した。

 

「そのままの意味でございます。お二人をお連れするようにとシンジ様に申しつけられました」

 

「シンジ?・・・ってシンジ君?!」

「はい、左様でございます」

至って丁寧に応対する少女。

 

「急ぐのかい?」

「あんまり遅くなる訳には参りませんが、お着替えをされるお時間は御座います」

 

「そうか、どんな格好で行けば良い?」

「喪服でなければ、なんでも宜しいかと存じます」

 

30分程して着替えた終ったミサト達は少女と共に黒い穴へと消えて行った。

 

「やっぱりこれなのね、一度入って見たかったのよ」

ミサトは嬉々として興奮している。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

そして3人が出たところは、西欧風の教会だった。

太陽が燦々と照り輝いている。

時間的に日本の裏側なのだろう。

少女に案内され、中に入ると、金髪に青い眼でモデルかと思われる様なスタイルの女性が近付いて来た。

 

「ミサトも加持さんも老けたわねぇ」

「ア、アスカなの?!」

「こりゃまた凄まじい美人になったもんだな」

 

「加持さんもミサトなんかよりあたしを選べば良かったのにって後悔してるでしょ?」

そう言いながらポーズを取るアスカ。

 

「あぁ全くだ」

「加持ぃ〜っ!」

 

「まぁ中に入って座りなさい、あんた達で最後だから」

そう言うとアスカは二人を席に案内した。

 

そこにはマヤ、シゲル、マコトも来ていた。

そして5〜6歳の女の子が二人と何人かの美人達、そしてカヲルも居た。

 

―パパパパーン、パパパパーン、パパパパン、パパパパン、パーパンパッパパパパ・・・

 

ウエディングマーチと共に開かれる入り口。

そこから入ってくるのは、真っ白なウェデイングドレスを纏ったレイと白いタキシードを着たシンジだった。

 

「「「おぉ〜!」」」

 

レイの美しさに感嘆を漏らす来賓者達。

 

相変わらずの蒼銀の髪はベールに隠れあまり見えないが、深紅の瞳は白い衣装に一際、神秘的な輝きを放っている。

身長も当時に比べ若干高くなっていて、スレンダーな体つきだが出るところは出ている事がドレスの上からも見て取れた。

そしてその笑顔はまさしく天使の微笑みであった。

シンジも背が高くなっており、若干精悍さをつけたものの、相変わらずの中性的な顔つきに満面の笑みを浮かべエスコートしていた。

 

誓いの言葉、誓いの口吻が滞りなく終り、拍手に包まれた。

マヤとミサトとアスカは泣いている。

 

ブーケはしっかりアスカがキャッチしていた。

ライスシャワーの後、シンジが挨拶をした。

 

「今日はわざわざお越し頂いてありがとうございました。本当は身内だけで行うつもりだったのですが、皆さんにも僕達は幸せに暮らしている事を知って貰いたくて、強引ではありましたが、招待させて頂きました。この後、食事も用意してますので、是非、歓談にお付合い頂ければ幸いです」

 

「勿論よ!」

ミサトが泣きながら言う。

うんうんと頷くだけのマヤ。

 

「是非お供させて貰うよ」

シゲルだった。

「僕もお願いするよ」

マコトも同意した。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

そして黒い穴に消えていく全員、着いたところは、シンジ達の暮らしている島だった。

元々ホテルだったため、広い部屋も多量にある。

 

銀髪の腰まである髪と紅い目が印象的な色白の美しい女性がロビーの様な所に案内した。

食事の用意が済むまで、ここで待っていてくれとの事だった。

 

出された紅茶を飲みながら、ミサト、加持、マヤ、マコト、シゲルは歓談している。

 

「あの二人が、あんな結婚式をするなんてねぇ」

ミサトが切り出した。

 

「呼んで貰って感激ですぅ」

もう20代も後半に差掛かっているマヤだが相変わらずであった。

 

「マヤちゃん、あんたは結婚しないの?」

「そ、それが・・・」

「報告してなくて済みません葛城さん、僕達結婚したんです」

「「え〜〜〜〜!」」

シゲルの報告にミサトと加持が叫んだ。

 

「マヤちゃんは青葉君に取られたちゃったのか・・・」

「何言ってんのよ!加持っ!日向君は知ってたの?」

「えぇ、シゲル達とはあれからも付き合ってますから」

マコトはどこか寂しげだ。

 

「そう、日向君もそのうち良い人みつかるって!ほら、さっき案内してくれた女の人なんてすっごい美人だったし、アスカもすっかり美人になってるし」

ミサトは元気付けてるつもりだった。

 

「アスカちゃんは、本当、綺麗になりましたねぇ、それにレイちゃんも」

「はぁ」っとマヤは溜息をついた。

 

そうこうしているうちに、用意が出来たと知らせが来た。

 

案内された場所は、ホテルの外にあるテラスだった。

テーブルに用意された食事は、豪華過ぎる程豪華だった。

和食、洋食、ブッフェ形式に用意され、今まさに火が通っている肉等、セカンドインパクト前でも、これ程豪勢な物を並べるのは大変だっただろうと思われる物だった。

 

お酒も充分に用意されている。

ビールやシャンパンは勿論、ヴィンテージ物のワインや、幻と言われた銘酒まである。

 

周りに見える景色は、緑の山と青い海、青い空と白い雲、まさにシンジが言っていた景色だった。

 

そして二人が出て来た。

その二人はさっきとは違い、中学二年の時そのままの姿だった。

「「「「「え?」」」」」

 

5人が素っ頓狂な声を上げた時、アスカが言った。

「あの二人って年取らないのよねぇ、あたしだけ年取ってるみたいで嫌んなっちゃうわよ、まあこの身体気に入ってるからいいんだけどね」

 

「年取らないって、さっきは成長してたじゃない!」

「あれは余所行きの身体、普段はあの二人はあのままよ」

 

まさしく人外であることを実感する5人だった。

 

「皆さん、急にお呼び立てして申し訳ありませんでした」

シンジが頭を下げた。

 

「いやいや、呼んでくれて嬉しかったよ」

加持が答えた。

「そうよん、私なんか嬉しくって泣いちゃったじゃない」

ミサトはまた涙眼になってる。

 

「僕らまで呼んでくれて、本当感謝してるよ」

シゲルが言う。マヤはまた涙ぐんでうんうん頷いているだけだった。

 

「でも、その身体って・・・」

ミサトが呟く。

 

「そうですね、僕達は心の形がそのまま身体の形になってしまうんです。僕は、この身体の形が印象強くて、普段はどうしてもこうなってしまうようです。流石におもてに出るのは不便なんで、外では結婚式の時と同じ形にしますけど」

そう言って笑っている。

「・・・心の形が人の形を作るわ」

レイが補足する。

 

「羨ましいやら、可哀想やら、複雑な気分ねぇ」

ミサトが困惑した表情で言った。

 

「羨ましいですぅ」

マヤは羨ましいだけなようだ。

 

「まぁ今日はお酒も沢山用意しましたから、葛城さんも遠慮なく飲んでください」

「そう?ありがとう♪遠慮なく頂くわ!」

 

その間もレイはシンジにくっついて離れない。

 

日向はサキエル達と歓談している。

 

加持とミサトにアスカは捕まっている。

「でもさぁ、アスカ、あの子達って時間を遡ったのよねぇ」

「ん?あぁそんな事も言ってたわね」

 

「じゃぁさ、この時代に飽きたらまた遡ったりするのかしら?」

「シンジが飽きたら、やるんじゃない?」

 

「あんた、いい加減ねぇ・・・」

「だってあいつら全然スケール違うんだもん、いちいち気にしてらんないわよ」

そう言いながらアスカがハンバーグを食べている。

この年になってもハンバーグは好物なようだ。

 

「スケールって?」

「あいつ、紅い世界に飽きたから遡ったって言ってたでしょ?」

「まぁ言い方を変えれば、そうね」

「それって、よくよく聞くと、どうやら太陽の膨張が始まってたらしいのよ」

「へ?」

「だから56億7千万年程経ってたって事よ」

 

「それって・・・」

「精神年齢は年上なんてレベルじゃないな」

加持が頭を掻いていた。

 

「でしょ?だからいちいち奴らの話すスケールを気にしてらんないのよ」

「確かにそうね・・・でも、そんな気の遠くなるような時間を経てもあの二人の初々しさって・・・」

 

「だから何があってもレイのシンジ至上主義は揺るがないのよ!」

アスカは鬱陶しくなってきて、他の皆を紹介する事にした。

 

アラエルとアルミサエルを紹介した時は皆、驚いた。

髪と眼の色以外アスカとレイにそっくりなのだから仕方ないだろう。

 

「これが心の形が作ると言うことなのね・・・」

ミサトが呟いた。

 

マヤとシゲルも他の使徒達と歓談している。

ラミエルとサンダルフォンは走り廻っている。

マヤはその二人がかなり気に入ったようだ。

 

理由はミサトをおばさんと呼んだのに対し、マヤにはお姉ちゃんと呼んだかららしい。

マヤは「可愛い!!!」を連発し抱き締めては頬ずりしていた。

 

「お部屋もありますので、お疲れになったら仰ってくださいね」

サキエルがそう言うと

 

「じゃぁ少し休ませて貰おうかな」

加持が返事をした。

 

実は、ここは漸く夜の9時ぐらいになった所だが、加持達は徹夜状態で日本に帰れば朝の7時頃だったのだ。

 

そして、皆疲れて寝静まった頃、シンジとレイが海を見ながら肩を並べていた。

 

「僕はやっぱり、加持さんやミサトさん、そしてマヤさんや青葉さんや日向さん達が好きだったのかも知れない」

「・・・そうね」

 

「あの人達は、結局僕を見てくれていた数少ない大人達だったんだよね」

「・・・あなたの世界は変化の連続で出来ている・・・何よりもあなたの心次第でいつでも変わるものなのよ」

 

「そうか、そうだよね」

「・・・私はここに居てもいいのね」

 

「違うよ、綾波、僕が居て欲しいんだ」

「・・・私も居たいわ」

 

「今日はどうだった?」

「・・・嬉しかったわ」

 

「僕の夢の一つだったんだ、綾波のウェディングドレス姿、思った通り綺麗だった」

「・・・何を言うのよ」

真っ赤になるレイ。

 

重なる唇。

 

部屋に戻った二人は、シャワーを浴び、シンジが横になっているとレイがバスローブ一枚でやって来た。

 

いつもの事なのだが、なんかレイの様子がおかしい。

 

「どうしたの綾波?」

「・・・今日は初夜なの」

 

「た、確かにそう言う風には言うね」

「・・・初夜は結ばれる物と本に書いてあったわ」

 

「そ、そうなんだ」

冷や汗を流すシンジ。

何時まで経ってもシンジはシンジだった。

 

ハラリとバスローブを落とすレイ。

スススっとシンジの横に潜り込んだ。

 

抱きつくレイ。

「いつもと変わらないと思うのは僕だけなんだろうか・・・」

「・・・こういう物はシチュエーションが大事とアスカが言っていたわ」

 

「やっぱりアスカか」

微笑みあう二人。

 

二人の夜はまだまだ続くようだ。

 

 

 

―ミサト達―――――――――――――――――――――――――

 

「これは凄いなスウィートじゃないのか?」

加持が部屋の広さと豪華さに驚いた。

 

「本当ねぇ、随分お金あるのねぇ」

「あぁ、それがさっき聞いたんだが、どうやら葛城のお陰らしいぞ」

加持はニヤニヤ笑っている。

 

「どう言う事?」

「なんでもA-17の発令前に日本株を多量に空売りしていたらしい」

 

「あいつらぁ〜っ!!」

「流石って感じだな」

加持は笑っている。

 

「でも、幸せそうで良かった・・・本当に」

「ああ、そうだな」

 

「世間に公に出る事が出来ないから、どんな暮らしをしてるのかと思ってたけど・・・」

「あぁ、俺らなんかよりよっぽど良い暮らしだな」

 

「本来なら世界を救った英雄達ですもの」

「そうだったな」

 

「アスカはどうするつもりなのかしら?」

「アスカの事だ、ちゃんと考えているよ」

 

「そうね、私達が思うより全然しっかりしているもんね」

「あぁ、そうだ」

 

「おっこんなとこにヴィンテージ物のワインみっけ♪」

「まだ飲むつもりか?」

 

「今日飲まないで何時飲むって言うのよ!」

「はいはい、お姫様の仰る通りに」

 

その時、ドアがノックされた。

 

「はぁい」

ミサトが出るとそこにはワゴンに乗せた料理を押して、ラフな格好に着替えたアスカが立っていた。

 

「どうせ、加持さん達はまだまだ飲み足らないんでしょ?」

「いや、俺は充分なんだが、葛城は足らないらしい」

加持は苦笑いした。

 

「まぁ色々あったけど、あたしも公然とお酒飲める年になったし、今度何時逢えるか解らないしね」

「あぁアスカなら大歓迎だよ」

 

そしてアスカを交えて何次会なのか解らない飲み会が幕を開いた。

 

「でも、アスカはこれからどうするつもりなの?」

ミサトがさっきの疑問を尋ねる。

 

「そうねぇ博士号もいくつか取ったから、なんか研究でも始めようかな?」

「どっかの研究機関に入るの?」

 

「まっさかぁ、何処に行くより、ここでやってた方がなんでも揃うわよ」

「そうなの?」

 

「お金は有り余ってるし、第壱拾壱使徒かなイロウルがいるから、世界中のコンピュータが束になっても敵わないコンピュータもあるし」

 

「えっ?そうなのかい?」

「そうよ、進化の過程を取ったからリツコとMAGIに自滅させられたけど、普通にハッキングやプログラムなら文字通り人間業じゃないんだから」

 

「成る程・・・」

「それでリリンにやられたって意地になってMAGI以上の物を作るんだって作っちゃったらしいからね」

 

「そりゃ、凄いな、マヤちゃんが聞いたら見せてくれって煩そうだな」

「だって、皆、NERVの生き残りだって全くばれなかったでしょ?あれ、ウルが悉くデータ消しちゃってたからなのよ」

 

「そ、そうだったの?」

ミサトが驚いた。

自分たちの知らない所で守られて居るとは思ってもいなかったのだ。

 

「まぁそう言う事だから、あたしはあたしのやりたいように人生を謳歌するわ」

「そ、そうね・・・」

「そうだな、有る意味ここより安全で平和に何でも出来る所は、ないのかも知れないな」

 

「そうよ、有る意味、ここは『世界の中心』なのよ」

アスカは、昔ながらの腰に手を当て胸を張ったポーズで言った。

 

 

 

―マヤの部屋――――――――――――――――――――――――

 

「すっごいですぅ、これスウィートじゃないですか?」

「あぁそんな感じだな」

 

「今日は私も幸せですぅ」

「新婚旅行に来たみたいだったな」

 

「はぅ・・・あの二人は幸せそうでしたぁ」

「俺も肩の荷が降りた気分だよ」

 

「そうですねぇ」

「マヤちゃんも苦しんでたからね、ミサトさんも」

 

「えぇ、中学生でしたもんね、今考えても仕方なかったなんて言えないですよね」

「あぁ、でも幸せそうなんでホッとしたな」

 

「はい、今日はゆっくり寝れそうですぅ」

そう言ってベッドに横になるマヤ。

 

「えっこんな良い環境で寝ちゃうのか?マヤちゃん?マヤ?・・・マ〜ヤちゃん?」

さめざめと涙を流すシゲルだった。

 

 

 

―日向の部屋――――――――――――――――――――――――

 

「おぉ、ここにもこんな良いワインが・・・」

「そうだ、サキさんにさっきの余りないか聞いてこよ」

いそいそと出かけるマコト。

厨房らしきところに居たのはシャムシェルとゼルエルだった。

美人ではあるのだが、なんか怖くて取っ付き難い。

 

「ん?どうした?」

シャムシェルがマコトを見つけ尋ねた。

 

「い、いや、休もうと思ったんだけど眼が冴えちゃって、部屋に飲み物があったから、さっきの料理の残りでも貰おうかなと思いまして・・・」

「それなら、そこにあるのを好きなだけ持って行っていいぞ」

 

「あっどうも、それじゃ遠慮なく・・・」

 

そして部屋に帰り一人で飲んでるマコトだった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

翌朝、ミサト達をレリエルが送って行った。

また会う事を約束して。

 

白い砂浜で並んでビーチチェアーに寝そべるシンジとレイ。

向こうの方でイルカの様に跳ねて泳いでいるのはガギエルだ。

遠目で見ると人魚の様に見える。

 

砂で遊んでいるラミエルとサンダルフォン。

 

鼻歌を唄っているカヲルとイスラフェル。

アスカはその横でギャーギャー何か喚いている。

またカヲルが余計な事を言ったのだろう。

 

アルミサエルとアラエルとバルディエルとゼルエルでビーチバレーをしている。

シャムシェルとマトリエルとサハクィエルが応援だか野次だか解らない声援を送っている。

イロウルはここでも端末をぱちぱちと打っている。

 

サキエルとレリエルが冷たい飲み物を皆に持ってきてくれた。

 

「ありがとう」

「・・・ありがとう」

受け取るシンジとレイ。

 

「・・・碇君、お願いがあるの」

「何?」

 

「・・・私を好きだと叫んで」

「えっ?」

 

「・・・嫌なの?」

上目遣いで見上げるレイ。

「ぐっ!・・・」

 

「・・・好きじゃないの?」

「そ、そんな、好きに決まってるじゃないか!」

 

「・・・駄目なの?」

「解った、ちょっと待ってて」

 

そう言うとシンジは立ち上がり、大きく息を吸い込んだ。

 

「僕は、綾波が、大好きだぁ〜〜〜〜!!」

 

驚いてシンジの方を向く全員。

真っ赤になってそそくさとビーチチェアーに戻るシンジ。

満足気に満面の笑みで迎えるレイ。

 

「今更、何やってんだか馬鹿シンジ!まぁ結婚式の次ぎの日だから多目に見てあげましょ」

アスカが呟いた。

 

「そう言うものなのかい?」

カヲルが尋ねる。

「超奥手のあの二人だし、他に誰もいないからいいんじゃない?」

アスカは素っ気なく答えた。

 

他の皆は微笑ましく二人を見ていた。

 

「やっぱ綾波だな・・・」

ボソッと呟くシンジだった。

 

 

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後書き

 

ここまで読んで頂きありがとうございました。

有る意味突貫で仕上げてしまいました。

 

もっと綾波を活躍させたかったり、ミサトとアスカを無下に扱ったりしたかったのですが書いているうちに、こんな風になってしまいました。

これが書いていると勝手に人物が動くと言う奴なんですね。

 

およそ、2週間程で書き上げたので、感想等はまだ一通も頂いていません。

 

18禁物の要請と色が読み辛いと言うのは来ましたが・・・(T_T)

 

私の観点からは綾波が感情が稀薄だとか、子供のようだと言う感じはなかったんですよね。どちらかと言うと、感情は豊で、自分を殺しているから表現しないだけ。

そして理屈で理解しているところもあるため、理性で押さえきれない感情に戸惑っているような、そんな印象を受けていました。

GAINAX10周年記念と言う事でキッズステーション(ケーブルTVです)で見て、昔見た記憶が蘇ってついつい書いてしまいました。

 

一応一番気になってた逆行物は一段落したので、今度は異世界物とか萌え物、18禁物にも挑戦していきたいと思ってますので生暖かく見守ってやって下さい。

 

私が18禁物書くと、イタモノになりそうで怖いんですが・・・(^_^;)

 

絵心がないので挿絵などは書けないです。すみませんm(_ _)m