第弐拾五話
終わる世界
発令所でマヤ、シゲル、マコトの三人が話している。
「本部施設の出入りは全面禁止？」
マヤがひそひそ声で聞く。
「第一種警戒態勢のままか」
「何故？最後の使徒だったんでしょ？あの少年が」
「ああ、全ての使徒は消えたはずだ」
「今より平和になったって事じゃないのか？」
「じゃぁここは？エヴァはどうなるの？先輩は執務室に閉じ籠っているし・・・」
「ＮＥＲＶは組織解体されると思う、俺達がどうなるのかは見当も付かないな」
「シンジ君の言う通り、退職して逃げた方が良かったか・・・」
「どっちにしろ残っているのは、もう俺達と諜報課ぐらいさ」
「補完計画の発動まで自分たちで粘るしかないか」
マコトが呟いた。
―ミサト車中――――――――――――――――――――――――
（出来損ないの群体として既に行き詰まった人類は、完全な単体への生物へと人工進化させる補完計画、まさに理想の世界ね、そのためにまだ委員会は使うつもりなのね、アダムやＮＥＲＶではなく、あのエヴァを・・・シンジ君の言った通りにね）
「加持君、何してるのよ・・・」
ミサトは加持と連絡が取れない事に苛ついていた。
―モノリスの並ぶ会議室―――――――――――――――――――
『約束の時が来た、唯一リリスの分身たるエヴァ初号機を失った今、ロンギヌスの槍及びリリスによる遂行を願うぞ』
「ゼーレのシナリオとは違いますね」
ゲンドウがいつものポーズで話す。
「人はエヴァを生み出すためにその存在があったのです」
冬月が口を出す。
「人は新たな世界へと進むべきなのです。そのためのエヴァシリーズです」
『我らは人の形を捨ててまでエヴァと言う名の箱船に乗る事はない』
『これは通過儀式なのだ、永続した人類が再生するための』
『滅びの宿命は新生の喜びでもある』
『神も人も全ての生命が死を以て、やがて一つになるために』
「死は何も産みませんよ」
『死は君達に与えよう』
キールが締め括りモノリスが消える。
「人は生きてゆこうとするところにその存在がある。それが自らエヴァに残った彼女の願いだからな、しかし、リリスも槍も無い今、補完計画は瓦解したな」
冬月が呟く。
―機械室――――――――――――――――――――――――――
端末を操作しハッキングするミサト。
「そぉう、これがセカンドインパクトの真意だったのね」
いきなり端末の画面が変わりDELETEの文字で一杯になる。
「気付かれた？！」
「いえ、違うか、始まるわね、加持君早く戻って・・・」
―発令所――――――――――――――――――――――――――
『第六ネット音信不通』
「左は青の非常通信に切り替えろ、衛生を開いても構わん、そうだ、敵の状況は？」
冬月が司令を出す。
『外部との全ネット、情報回線が一方的に遮断されています』
「目的はＭＡＧＩか・・・」
「全ての外部端末からデータ進入、ＭＡＧＩへのハッキングを目指しています」
シゲルが状況報告を行う。
「やはりな、侵入者は松代のＭＡＧＩ二号か？」
「いえ、少なくともＭＡＧＩタイプ５、ドイツと中国、アメリカからの進入が確認できます」
「ゼーレは総力をあげているな。兵力差は１：５・・・分が悪いぞ」
『第四防壁、突破されました』
「主データベース閉鎖、駄目です！進行をカットできません！」
マコトが叫ぶ。
「更に外殻部進行、予備回路も阻止不能です」
マヤも叫ぶ。
「まずいな、ＭＡＧＩの占拠は本部のそれと同義だからな」
―リツコ執務室―――――――――――――――――――――――
―プシュッ―
扉が開き、黒服が迎えに来ていた。
「解ってるわ、ＭＡＧＩの自立防御でしょ？」
「はい、詳しくは発令所の伊吹二尉からどうぞ」
「必要となったら捨てた女でも利用する、エゴイストな人ね」
リツコは白衣を着ると黒服に付いて行った。
―発令所――――――――――――――――――――――――――
「状況は？」
ミサトが電話で確認してきた。
「おはようございます、先程、第二東京からＡ−８０１が出ました」
「Ａ−８０１？］
「特務機関ＮＥＲＶの特例による法的保護の破棄、及び指揮権の日本国政府への委譲、最後通告ですよ、えぇそうです、現在ＭＡＧＩがハッキングを受けています。かなり押されています」
（シンジ君の言った通りね・・・）
「伊吹です、今赤木博士がプロテクトの作業に入りました」
ブザーと共にミサトが上って来た。
「リツコが？！」
カスパーの内部に入りキーボードを操作するリツコ。
「私、馬鹿な事をしているわね、ロジックじゃないものね、男と女は。そうでしょ？・・・母さん」
カスパーの本体に触れ呟くリツコ。
『強羅地上回線、復旧率0.2%に上昇』
「後どれくらい？」
ミサトが日向に話しかける。
「間に合いそうです、流石赤木博士です」
（ＭＡＧＩへの進入だけ？そんな生やさしい連中じゃないわぁ、多分・・・）
「ＭＡＧＩは前哨戦に過ぎん、奴らの狙いは本部施設及び、残っていると思っているエヴァ２体の直接占拠だな」
冬月がゲンドウに呟く。
「・・・あぁリリスそしてアダムさえ我らにある」
「老人達が焦るわけだ」
（碇・・・現実を放棄したか・・・）
「ＭＡＧＩへのハッキングが停止しました、Ｂダナン防壁を展開、以後６２時間は外部進行不能です」
マヤが状況報告を行う。
「母さん、また後でね」
リツコがカスパーに呟く。
―モノリスの並ぶ会議室―――――――――――――――――――
『碇はＭＡＧＩに対し第６６６プロテクトを掛けた、この突破は容易ではない』
『ＭＡＧＩの接収は中止せざるを得ないな』
『出来うるだけ穏便に進めたかったのだが致し方あるまい、本部施設の直接占拠を行う』
―第三新東京市郊外―――――――――――――――――――――
「始めよう、予定通りだ」
起きあがる戦自の兵士達。
飛来する戦闘機、横行する戦車、軍関係車両。
高射砲と留弾がジオフロント上部を襲う。
―発令所――――――――――――――――――――――――――
『第八から十七までのレーダサイト沈黙』
『特科大隊、強羅防衛戦より進行してきます』
『御殿場方面からも二個大隊が接近中』
「やはり、最後の敵は同じ人間だったな」
冬月が呟く。
「総員第一種戦闘配置」
ゲンドウが指示を出す。
「戦闘配置？相手は使徒じゃないのに、同じ人間なのに・・・」
マヤが呟く。
「向こうはそう思っちゃくれないさ」
「戦自約一個師団を投入か占拠は時間の問題だな。大袈裟な事だ・・・」
「冬月先生、後を頼みます」
ゲンドウは発令所を後にする。
「解っている、ユイ君によろしくな」
（碇・・・レイがドグマに居ると思っているのか・・・）
次々と報告される被害状況。
「たち悪いなぁ使徒の方がよっぽどいいよ」
マコトが愚痴る。
ミサトがなんとか持ちこたえようと指示を出す。
「第三層まで破棄します、戦闘員は下がって、８０３区間までの全通路とパイプににベークライトを注入！」
「はい」
「これで少しは持つでしょう」
「非戦闘員の白兵戦闘は極力避けて！向こうはプロよ、ドグマまで後退不可能なら投降した方がいいわ」
「分が悪いよ、本格的な対人邀撃システムは用意されてないからな」
そう言いながら銃を用意する日向。
「ま、精々テロ止まりだ」
「戦自が本気を出したら、ここの施設なんて一溜まりもないさ」
「今、考えれば侵入者邀撃の予算縮小ってこれを見越しての事だったのかなぁ」
「ありうる話だ」
蹲るマヤに銃を渡すシゲル。
「ロック外して」
「私、私、鉄砲なんて撃てません」
「訓練で何度もやってるだろ！」
「でも！その時は人なんて居なかったんですよ！」
「馬鹿！打たなきゃ死ぬぞ！」
「よぅ待たせたな」
加持が上って来た。
「何やってたのよ！遅すぎるわよ！」
ミサトが嬉しそうに憤る。
「副司令、脱出ルートを確保しました、逃げましょう」
「私は最後までここに残るよ、君達は行ってくれ、碇に付き合ってくれてありがとう、すまなかったな」
「副司令・・・」
「私は、碇と共に罪を重ね過ぎた、もう、ここから逃げても行く場所はないよ」
「解りました、さっ早く！」
加持が先導して、残って居たオペレータを誘導する。
「先輩は？」
マヤがリツコが居ない事に気が付く。
「リツコはきっと司令のところよ・・・」
ミサトが俯きながら告げる。
「そんな・・・」
「マヤちゃん、リツコの願いを叶えさせてあげて」
―ターミナルドグマ―――――――――――――――――――――
「レイ、やはりここに居たか、約束の時だ、さぁ行こう」
ゲンドウは誰も居ないところに向かって話している。
ターミナルドグマに向かうゲンドウ、だが一人だった。
紅い十字架の前で佇むゲンドウ。
「お待ちしておりましたわ」
リツコが座って待って居た。
ゲンドウに銃を向けるリツコ。
ゲンドウは何かブツブツ言っている。
「私と一緒に死んで下さい」
リツコが白衣の中でスイッチを押した。
爆発する本部施設。
現実逃避して狂ってしまったゲンドウをカスパーも見限っていた。
―第三新東京市郊外―――――――――――――――――――――
加持の用意したルートは、戦自が駐屯しているのとは反対側の山の中腹に出るルートだった。
本部施設の爆発を見守る５人。
ＮＥＲＶに居たのはゲンドウ、冬月と赤木リツコ、そしてこの５人だった。
「本部、爆発しちゃいましたね・・・」
マヤが呟く。
「きっとリツコがＭＡＧＩを操作したのね・・・」
ミサトが答えた。
そして、本部施設近くにセカンドインパクトで見た光の巨人が見えた。
「あ、あれは・・・」
ミサトが驚愕する。
上空から飛来するウイングキャリー、そこには白いエヴァが一体ずつ、今まさにエントリープラグが挿入されるところだった。
エントリープラグ挿入と同時に爆発する白いエヴァ。
上空に爆発を見たミサト達は呆然とする。
「量産型エヴァが爆発？」
「９体全部爆発しました！」
双眼鏡で見ていた日向がミサトに報告する。
「どういう事？」
「あのダミープラグは僕が元だからね、挿入されたら自爆するように細工してあったのさ」
「あ、あ、あ、あんたは！！」
ミサトは素っ頓狂な声を上げた。
そこに居たのはカヲルだった。
銃を構えようとしたミサトが次ぎに認識したのは、カヲルの後ろにいるアスカだった。
「アスカ！！生きていたの？！」
「まぁね、このあたしがあんな爆発ぐらいで死ぬわけないでしょ！」
「ア、アスカちゃん、生きていたのね・・・」
マヤは泣いている。
「最後の仕上げに来たんですけど、まさかここに出てくるとは思いませんでしたよ、加持さん」
微笑みながらシンジが言った。
その横には当然のようにレイが居てシンジの腕にしっかりと絡みついている。
そこにはＮＥＲＶの誰も見たことない、天使の微笑みをたたえて。
「シンジ君！レイ！」
ミサトだけは、相変わらず騒がしい。
「チルドレンが勢揃いか・・・」
加持が呟いた。
「シンジ君、本当の事を教えてくれないか？君は何時から君なんだい？」
加持は、あれから最後の準備を進める中、シンジの事も調べていた。
しかし、シンジについてはＮＥＲＶの調査以上の事は何も解らなかったのだ。
第三使徒襲来時にＮＥＲＶに来るまで、内気で内罰的な平均以下の中学生でしかなかった。
そしてＮＥＲＶに来てからも、多少大人びているがそれ程目立った変化は見られなかったのだ。
しかし、ここに来て彼は強大な力を持っているらしい、更に、全ての糸を引いていた節がある。
「困りましたねぇ、教えないと加持さん、今度はそれを求めて突っ走りそうですね」
シンジは苦笑混じりに言った。
「ここに居る方達は、残存するＮＥＲＶの中核たる人達ですから知っておいても良いかも知れませんね」
「・・・碇君、いいの？」
「この人達にはこれが良い結果なのかどうか悩むところだろうしね」
そう言うとシンジは手を翳した。
光りに包まれるＮＥＲＶの５人。
５人に見えた物、それは・・・
――――――――――――――――――――――――――――――
初号機ゲージで震えているシンジ、乗る事を強要するゲンドウ、リツコ、それにミサト。
ストレッチャーから落ちたレイを抱え「乗ります！」と叫んでいるシンジ。
初号機の暴走により殲滅される使徒。
同居するシンジとミサト。
エントリープラグに民間人を二人乗せ、腹部を貫かれながらも使徒に向かうシンジ、その後、命令違反による独房。
ミサトの家から逃げ出したシンジ。
ゲンドウと微笑み合いながら話すレイ、それを見つめるシンジ。
第五使徒の加粒子砲に晒され、初号機を庇う零号機、その後、後部装甲を引きはがしエントリープラグを抜いて駆け寄るシンジ。微笑むレイ。
ＪＡの背中から乗り込むミサト、押さえる初号機、停止するＪＡ。
甲板でスカートを翻すアスカ、叩かれるシンジとトウジとケンスケ。
第六使徒が、海上に出た所で使徒の口を開ける弐号機、護衛艦の零距離射撃で殲滅する使徒。
第七使徒に敗退する初号機と弐号機、ユニゾン訓練により同居する事になるアスカ。ユニゾンによる二点同時加重で倒される第七使徒。
マグマに潜る弐号機、落ちて行くところを寸での所で受け止める初号機。
第三新東京市に訪れる停電と共に現れる第九使徒、夜空を見上げる３人のチルドレン。
三体のエヴァが疾走する。第拾使徒を受け止める初号機、次いで零号機、止めを指す弐号機。
ラーメン屋の屋台に並ぶミサトとチルドレン３人。
裸でエントリープラグに乗る３人のチルドレン、苦しむレイ、射出されるプラグ。
アスカのシンクロ率を抜いて喜ぶシンジ。独断先行するシンジ、使徒の影に飲み込まれる初号機。使徒の身体から出て来て咆吼する初号機。
そして・・・
松代で爆発する実験場。使徒が侵食し腕が切り離される零号機。エヴァ３号機に襲い掛かられる無抵抗な初号機、ダミープラグの起動を行うマヤ、喚くシンジ、握りつぶされたエントリープラグ、そこから担ぎ出されるトウジ。
一瞬で両腕を切り落とされる弐号機、使徒に突っ込んで行く所で首も落とされる。片腕なのに、残った腕にＮ２爆弾を抱え使徒に突っ込む零号機。初号機の咆吼と暴走。使徒を喰う初号機。エヴァに取り込まれるシンジ。
留守電に泣き崩れるミサト。
距離が離れていくミサトの同居人達。
加持の死を告げるシンジ、憤慨するアスカ。
使徒の光線を受ける弐号機、精神汚染され喚き散らすアスカ。ロンギヌスの槍を投げる零号機。
使徒に接触される零号機、起動できない弐号機。初号機に襲いかかる使徒。ＡＴフィールドを反転させ使徒を押さえ込み自爆する零号機。
病院で「・・・知らない、多分、私は３人目だと思うから」と言うレイ。
ミサトとリツコとシンジで向かうターミナルドグマ。
ＬＣＬの水槽に浮かぶ複数のレイ。スイッチを押すリツコ、崩れゆくレイ達。泣き崩れるリツコ。
ロスト後７日して見つかるアスカ、その変わり果てた風貌。
そして現れるカヲル。弐号機を伴いターミナルドグマに下降するカヲル。
十字架に貼り付けられているリリス、その前でカヲルを握りつぶす初号機。
病室のアスカ。
責めて来る戦自。血の海になるＮＥＲＶ本部内。戦自に銃をつきつけられるシンジ、それを救うミサト。
シンジが受け取るミサトのクロス。エレベータの前で崩れるミサト。
白いエヴァと戦う弐号機。１度は殲滅するものの再起動する白いエヴァ。陵辱される弐号機。
喚くシンジ。白いエヴァに降臨された初号機の前に月から戻るロンギヌスの槍。
ゲンドウに撃たれるリツコ。去っていくレイにすがるゲンドウ。現れる巨大なレイ。ＬＣＬとなる人々。
ＬＣＬの海の前にある白い砂浜に寝ているシンジとアスカ。
――――――――――――――――――――――――――――――
光りが消え、暫く５人は呆然としていた。
「こ、これは一体なんなの？」
ミサトが漸く言葉を紡ぐ。
「これが、僕の見てきた世界、本来、起されたサードインパクトです。僕の自我を崩壊し、依り代として起されたサードインパクト」
「君は時代を遡ったと言うのかい？」
加持が考えられる結論を述べた。
「そうですね。でも僕が来た時点でこの時間軸は僕が経験した時間軸からは外れたはずです。つまり別な可能性、ユグドラシルの世界樹で言えば別な枝となったはずです」
「平行世界・・・」
マヤが呟く。
「そうですね、依り代となった僕はアダムの力とロンギヌスの槍を受け継いだ。あの世界での皆との暮らしも幸せだったんですが、僕は青い空と白い雲、青い海と緑の山が恋しくなりましてね」
「皆って誰なの？」
「僕の家族ですよ、綾波と後１５の使徒達」
「なんですって？！」
「全ての生命はＬＣＬに溶けた、その後、自我を持っていられたのは、使徒であった生命体しか居なかったんです。精神体でしかありませんでしたけどね」
「俺は死んでいたんだな・・・」
「そうですね」
加持の呟きに静かにシンジは答える。
「貴方はＮＥＲＶを・・・司令やリツコや私を憎んでいたのね・・・」
ミサトが俯く。
「それは違いますよ」
「えっ？」
「今の僕が有るのは皆のおかげだし、今となっては憎しみはないんです」
「・・・人はこれまでの時間と他の人たちとの繋がりによって自分になったのよ・・・
他の人たちのふれあいによって今の自分が形作られていくの・・・人とのふれあいと時間の流れによって自分の心を変えていくの」
レイが言葉を紡いだ。
「じゃぁ何故、私達を助けてくれたの？」
「一応、皆に手は差し伸べてきたつもりです。僕の出来る範囲で。その手を掴んだのがアスカだけだったと言う事です。助けたつもりはありませんよ」
「手を掴んだのがアスカだけって・・・」
「えぇ、アスカが悲しむから加持さんを助けました。葛城さんが泣いているのをアスカが我慢できないので加持さんを助けた事を教えました。それだけです、後は皆さんが皆さんの判断で下した行動ですよ」
「そうだな、シンジ君が至るところでヒントをばら蒔いていたのは俺も感じたよ」
「加持っ！あんた解ってたの？」
「俺の場合、レイちゃんに眼が行っててな、あまり気に留めなかったってのが正直な所さ、それよりも、シンジ君はＮＥＲＶに来る必要なんてなかったんじゃないのかい？」
「現存するエヴァを全て破壊する事、そして使徒を待ち受けるにはＮＥＲＶが都合がよかっただけです」
「そう言う事だったのか・・・」
「今、見せた事には、貴方達は何の責任もないし、僕自身の理由でしかありません。だけど放っておいたらそうなったと言う事だけ覚えていてくれればいいです」
「シンジ君はこれからどうするつもりなんだい？」
日向が質問した。
「青い空と白い雲、緑の山と青い海に囲まれて家族と平和に暮らしますよ」
「まぁったく爺臭いんだからぁ！」
「・・・碇君と一緒、それはとてもとても幸せな事」
シンジの腕をしっかりと掴み少し頬を紅潮させ微笑むレイ。
「はいはい、あんたのシンジ至上主義は解ってるわよ」
「僕もシンジ君と暮らすのは幸せに繋がるんだけどねぇ」
「煩い！このホモ、あんたあたしとじゃ幸せは無いっての！」
「い、いや、そんな事は言ってないじゃないか・・・あはは」
５人の悲壮感など関係なく楽しそうなアスカ達、それを見て５人も毒気を抜かれてしまった。
「それじゃぁ、皆さんも幸せになってください、日向さんだけは幸せは遠いかもしれませんが」
「そ、それはどういう事だい？」
日向が問いかけたがシンジはそれに答える事はなかった。
シンジ達は微笑みながら黒い穴に消えて行った。
「結局、大人は子供達を利用していたつもりだったが、子供達の方が何枚も上手だったと言う事か」
「未来を作るのは未来を担う者達だったって言う事ですかねぇ？」
マヤの素直な感想だった。