第弐拾話
心のかたち 人のかたち
LCLの漂うプールの脇に佇む人影。
「・・・本来のLCLは生命の源、原初の海に酷似しているわ」
「人間は身体の消滅と共に魂も稀薄になり、そのうち消滅してまうんだ」
「・・・私達にとって身体は入れ物、心の力ATフィールドで、魂は消滅する事はない」
「人類は群体であるが故に、そのATフィールドは自らを形作る事以上には使えない。使っている事すら意識できない」
「・・・でも形作っているのは心の形、ATフィールドがその人の形を現わしている」
「でも、群体である人間はその形は周りの人の影響も受けているんだ」
「・・・他人の中にもアスカが居るわ」
「私の中のアスカ、碇君の中のアスカ、クラスメートの中のアスカ、NERVの皆の中のアスカ、アスカの中のアスカ、それら全てがアスカを形着けているんだ」
「・・・使徒と呼ばれたヒト達は他人の中にはない」
「だから僕達はLCLから身体を構成する事ができるんだ」
「ふ〜〜〜ん、なんか解ったような解んないような曖昧な話ねぇ」
シンジは胸から青い光を取り出すとLCLに浸けた。
それは、みるみる実体化していき、プラチナブロンドのロングヘアーで赤い目の美女が現れた。
「ちょ、ちょっと裸じゃない!」
「それは、仕方ないよ・・・」
シンジは苦笑した。
「ゼル、身体の具合はどうだい?」
「はい、若干、寝起きのような気怠さがありますが、概ね良好です」
「それは、仕方ないね、じゃぁサキ、クローゼットへ案内してあげて」
「畏まりました」
そして、サキが案内しゼルエルを連れて行った。
「しっかし、なんで使徒達って皆、美男美女なのよ?」
「僕は美男じゃないと思うけど・・・」
「あんた、自分がどれだけ学校でモテているか、自覚ないのね」
ふぅっとアスカが溜息をついた。
「僕と、綾波とカヲル君は、先に形ありきなんだよ、だから、その形が当たり前なんだけど他のヒト達は、先に心ありきだから、どうしても綺麗になってしまう見たいだね」
「それってどういう意味?」
「アスカも彼らに接して解ると思うんだけど、彼らは驚く程、純粋なんだよ」
「確かにそうね、悪意なんてこれっぽっちも感じないもんね」
「そういう心が体の作りをイメージすると、自ずと綺麗になると思わない?」
「そっか、じゃぁ見た目も美しくナイスバディな私は、心も美しいと言うわけね!」
「そ、そうだね・・・」
シンジはアスカの思考に冷や汗を流した。
「・・・胸の大きさは心の傲慢」
レイが冷たい視線で言う。
「そ、そうなの?」
アスカが慌てる。
「・・・葛城三佐も胸は大きいわ、赤木博士も」
「・・・・・」
項垂れるアスカ。
「綾波ぃ・・・アスカ?胸の大きさと傲慢さは、関係ないから気にしないで、それより人間は遺伝子の影響が強いから」
「・・・そう、私の胸も遺伝子の影響なのね」
「レイ?あんた胸が大きくなりたいの?」
「・・・個人差よ」
レイは照れを隠すようにそっぽを向いた。
「ところで、今日、カヲルはどうしたのよ!」
「そろそろゼーレも架橋に入って来たみたいでね、カヲル君も結構駆り出されいるようなんだ。詳しくはリエかウルに聞けば解ると思うけど?」
―モノリスの並ぶ会議室―――――――――――――――――――
「初号機のあの強さ、尋常ではないな」
「今回の使徒は、力を司るゼルエル、それをああも簡単に葬り去るとは・・・」
「初号機はサハクィエル以降、ダブルエントリーをベースとしている」
「ファーストチルドレンの力か?」
「ファースト、サードの相乗効果と報告されている」
「我らゼーレのシナリオとは大きく違った出来事だよ」
「この修正容易ではない」
「碇ゲンドウ、あの男にネルフを与えたのがそもそもの間違いではないのかね」
「だが、あの男でなければ、全ての計画の遂行はできなかった・・・碇、何を考えている」
「だが、自体はエヴァ初号機の問題だけではない」
「何故か、使徒を殲滅すると霧散、使徒のサンプルも収集できてはいない」
「さよう、そのために、不確実な模造品での実験による第二支部消滅。参号機の使徒侵食による凍結。被害は甚大だよ]
「我々がどの程度の時と金を失ったか見当もつかん」
「これも碇の首に鈴をつけておかないからだ」
「鈴はついている。ただ鳴らなかっただけだ」
「鳴らない鈴に意味はない。今度は鈴に動いて貰う」
―とあるホテル―――――――――――――――――――――――
ミサトと加持が密会している。
「ところでどうなの?」
「何がだい?」
「人類補完計画、どこまで進んでいるの?」
「それが知りたくて俺に会っているのか?」
「それもあるわ、正直なところね」
「ご婦人に利用されるのは、悪い気はしながね」
「こんな所では話せないな」
「今は、いいの私の希望だけ知っていてくれれば」
「あっぁっ・・・・あっ・・・こんな事で誤魔化さないでよ」
「あっぁっ・・・ちょっとぉ変な物入れないでよ」
「プレゼントさ8年ぶりの・・・最後かもしれないけどな」
加持は最後の言葉を遠くを見つめて呟いた。
ミサトの手にはカプセルの錠剤があった。
―司令室――――――――――――――――――――――――――
「碇、始まらなんな」
「・・・あぁ」
「老人達は初号機の強さに疑問を抱いているようだな」
「・・・レイが乗っているのだ、当然の強さだ」
「我々のシナリオは大丈夫なのか?」
「・・・問題ない」
「初号機が覚醒しない場合どうする?」
「・・・まだ使徒は来る」
「しかし、力を司る使徒でさえ初号機を覚醒させられなかったのだぞ」
「・・・使徒は進化している」
「ダブルエントリーがまずいのではないのか?」
「・・・レイの希望だ」
「レイはお前を見ているのか?」
「・・・アダムは私と共にある」
「それだけが頼りだな」
「・・・老人達は約束の日に量産機で攻めて来るだろう」
「だろうな」
「・・・その時にはシンジの単独エントリーだ」
「その時にレイはお前の元に居るはずだからな」
「・・・それまでレイに頼っていたシンジは負けるだろう」
「そうなれば、嫌でも覚醒するか」
「・・・それまで使徒を楽に倒せるなら好都合だ」
自分達のシナリオは如何なる不足の事態にも耐えられると確信する二人だった。
―第壱中学校――――――――――――――――――――――――
「ふぅぅん心の形が人の形を作るかぁ・・・」
アスカは先日のシンジの話を思い出し溜息をついた。
(たしかに、あの眼鏡は盗撮とかしそうには見えるわねぇ・・・)
(ジャージは、心もジャージ着てたりして・・・)
アスカは自分の想像にニヤニヤしてしまっていた。
「どうしたの?アスカ・・・なんか不気味よ」
ヒカリが見かねてアスカに声を掛けてきた。
「いや、なんでもないのよ、ちょっと思い出し笑いしてただけ」
アスカは考えていたことを見透かされたような気がして取り繕った。
(そう言えばヒカリってジャージが好きなのよねぇ)
(ヒカリってば、なんかお姉さんって感じよねぇ・・・)
「な、何じっと見てるのよアスカ」
ヒカリは少し頬を染めていた。
「あっごめんごめん、ヒカリってなんかお姉さんって感じするなあって思って」
「はぁあ、やっぱり家で家事ばっかりやってるとそう見えるのかなぁ」
ヒカリは溜息をついた。
「でもジャージにはお似合いよ」
「な、な、何を言ってるのよアスカ、鈴原とは何でも・・・」
「で?今日もお弁当渡すんでしょ?」
ヒカリの残飯処理作戦は成功しており、トウジもパイロットとして選抜されることがなかったため、それ以来、お弁当を持ってきているのだった。
「そ、それは・・・」
ヒカリは耳まで染めている。
「はぁあ、あんな奴のどこがいいわけぇ?」
「そ、それは・・・優しいところ」
蚊の鳴くような小さな声でヒカリが答えると、アスカは大粒の冷や汗をかいた。
シンジとレイは相変わらずくっついている。
ベタベタしているわけではないし、どちらかと言うと二人別々な事をやっている。
しかし、そこには他人が入り込む余地がない不可侵領域が出来上がっている。
(うーーん、あの不可侵領域・・・あいつらATフィールド張ってるんじゃないでしょうね)
奇しくもそれは真理に近づいていた。
人を寄せ付けぬ雰囲気と言うものはATフィールドによる拒絶を人が感じたものであったのだ。
そして、件の二人は、周りと関わりを持とうと考えていない。
それは、一頃のレイが周りを拒絶していたのとは違い、関わり合いになることで巻き込まれる事を懸念しての事であった。
―リツコ執務室―――――――――――――――――――――――
例によってミサトが油を売っている。
「最近暇ねぇ・・・」
「私は忙しいわよ」
「でもエヴァの修理は終ったんでしょ?」
「修理だけが私の仕事じゃないわ、参号機の調査も行き詰まっているし、使徒はサンプルも採れないから全然調査できないし・・・」
「それは、どうしようもないんじゃない?」
「後、何体使徒が来るかも解らないから武器の開発も行わなければいけいないわ」
(ふっ嘘付きね、使徒が後3体なのは解っている事・・・)
リツコはまた嘘を織り交ぜてミサトと話をしている自分を嘲笑った。
「そ、それは期待しているわよ」
「せめてもの救いはチルドレン達のシンクロが安定している事ぐらいかしら」
「そうねぇ、あの子達は本当、良い子達だわ」
(レイは解る、リリスとして覚醒しているのだろう、しかし、脆弱な精神に育ったはずのシンジ君、エヴァに拘りエースパイロットである事に拘っていたはずのアスカが何故ここまで高シンクロ率で安定しているのか・・・)
「そうね」
リツコは少し翳りを含んだ顔で答えた。
(私はもしかしたら、とんでもない考え違いをしていたのかしら・・・)
シンジやアスカについての認識が全く間違っていたのかとリツコは考えた。
「ミサト?」
「ん〜?何?」
「最近、シンジ君達とはどうなの?」
「どうって?」
「前は、結構ギスギスしていたじゃない?」
「古傷をぉ〜っ!!ヤシマ作戦の後、ずっと疎遠だったのよ。でもレイが帰って来てから話しかければ応えてくれるぐらいにはなったわ」
「そう・・・」
「どうしたの?」
「いえ、私も最近レイと疎遠だから、ちょっと気になっただけよ」
「へぇ〜あんたがねぇ」
ミサトはニヤニヤしている。
「な、何よ」
リツコはミサトの笑みに引きつった。
「あんたが対人関係を気にしているとは思わなかったわ、それもあのレイに」
「私だって人の顔色ぐらい伺うわよ」
「じゃあさ、たまにはパーッと飲みに行って憂さ晴らしでもしましょうか?」
「いいわね、それ」
―プシュッー―
マヤが入って来た。
「これ、集計が終ったデータです」
「そう、ありがとうマヤ」
「それにしてもシンジ君達のシンクロ率って安定してますよね」
「そうね、精神的に安定しているってことね」
「シンジ君とレイちゃんは解るんですが、葛城さんと住んでるアスカも安定してますよね」
「それは、シンクロ最大の謎ね」
「ちょっち、それどういう意味よぉ、どっちかと言うと、チルドレン達の近くに住んでる私の功績じゃないのぉ?」
「それは有り得ないわ」
「ありえませんね」
「あんた達ねぇ・・・・」
拳を握りしめるミサト。
「そ、それじゃぁ、私はこれで・・・」
危険を察知したマヤは引き上げようとした。
「あぁちょっち待ってマヤちゃん」
ミサトが引き留めた。
「何でしょうか?」
恐る恐る聞くマヤ。
「たまにはパーッと行こうって今話して居たんだけどマヤちゃんも来る?」
「えぇっ!良いんですか?是非、お供させて頂きます♪」
「じゃぁ今日は仕事終ったら皆でパーッと行きましょう」
「ミサト、貴方の場合、日向君に押しつけたら・・・の間違いじゃないの?」
「うっ、そ、そんな事ないわよ・・・」
―コンフォート17―――――――――――――――――――――
「話は解りました。でも、それでなんで僕の家で宴会になるんですか?」
シンジの家でミサト、リツコ、マヤの3人が食事をしている。
しかも3人とも良い感じに気持ちがよさそうだ。
当然レイとアスカも居る。
「いやぁそれがね?3人で居酒屋に行ったのよぉ、そしたらリツコが「そう言えばシンジ君の料理は美味しかったわね」って言い出したのよ」
「だってあそこの料理を平気で食べてたのミサトだけじゃない!」
リツコが反論する。
「そうですよぉ葛城さん、よくあんなの平気で食べられましたね」
マヤも同調する。
「そう?私は全然平気だったけど?・・・そしたらね、マヤちゃんも「私も一度食べてみたいですぅ」って言い出して」
「だ、だって先輩が美味しいって言うんだからよっぽど美味しいんだなっと思って・・・」
顔が赤いのはお酒のせいだけではないようだ。
「まぁミサトの味音痴は今に始まった事じゃないわよ!」
アスカがレイとゲームをしながら口を挟む。
「何言ってるのよ、アスカ、私だって美味しい物ぐらい解るわよ!」
「でもシンジ君の料理って本当、美味しいですねぇ」
マヤが感激している。
そんな和気藹々としているムードの中でもリツコは、アスカが楽しそうにレイとゲームをしているのを見ている。
(あのアスカが仲良くゲームねえ・・・それよりもそれに付き合ってるレイなんて想像できなかったわ、しかも笑っている)
「赤木博士もゲームを遣りたいんですか?」
シンジがリツコに問いかけた。
「いや、レイが笑ってゲームをしているなんて想像つかなかったから・・・」
「でしょうね、綾波の家には何もなかったですからね」
「シンジ君のおかげね」
ぼそっとリツコが本音を漏らした。
(そうか私は、シンジ君と幸せそうにしているレイが羨ましかったのね・・・無様だわ)
「本当、シンジ君が来てからレイちゃん素敵になりましたもんねぇ」
マヤが目をハートマークにしている。
「アスカもなぁんか気負いみたいなのが無くなって丸くなっちゃったもんねぇ」
ミサトも追い打ちをかける。
「皆さん結構、酔っぱらってますね?」
シンジが、かわそうとした。
「あぁらこれくらいのお酒で私達が酔っぱらう訳ないでしょん!どんな手を使ったのか教えてん♪シンジくぅん」
ミサトは完全に出来上がっている。
「はぁ・・・僕は正直に向き合ってるだけですよ」
「正直に向き合う・・・」
ミサトが反応した。
「ふぅ・・・エヴァに乗って居て少し解った事があるんです」
「何かしら?」
リツコが身を乗り出した。
しかしかなり飲んでいるのか顔は真っ赤である。
「エヴァは考えた通り動いてくれると赤木博士は言ったのですが、実は考えと言うより思いの方が強いと感じています」
「どう違うの?」
「例えば、ATフィールドです。そこに壁を作るイメージでも発生はするのですが、どちらかと言うと拒絶する心なんです」
「興味深いわ」
「この間の使徒なんか、ATフィールドを中和しても傷がつかない程堅かったですよね?」
「そうね、アスカの攻撃は全くと行っていいほど効いていなかったわ」
「でも僕は、コアに向かって貫手を翳している時、「貫いてくれ」と強く思ってました」
「それが、思いで動くって事ね」
「えぇ心が形を作るって言うのかな?エヴァに乗っているとそんな事を感じます」
「それが正直に向き合うって言うのとどう関係があるわけ?」
ミサトが痺れを切らしたように尋ねる。
「思いとか心って嘘がつけないじゃないですか?醜い笑いを浮かべている人って怪しい事を考えているって思いますよね?」
「思いが人の形にも影響しているってこと?」
リツコが興味津々に聞いてくる。
「確かにそんな事は感じますねぇ」
マヤが眠そうな眼を擦りながら入ってくる。
「僕は心の形が人の形を作っているんじゃないかと感じているんです」
「それがエヴァに乗って解ったと言うの?」
「そうですね。復讐に駆られた人はその時、醜い顔をしています。嫉妬に歪んだ顔とかも良く言いますよね?そしてその逆もしかりです」
ミサトとリツコが困惑した表情をしている。
「逆って?」
マヤが聞いた。
「痘痕も靨って奴ですよ、この人は素晴らしい人だと思っていると輝いて見えるし、この人は復讐に拘っていると思えば鬼の形相に見える」
「そうね、私は何時も先輩が輝いて見えてますぅ・・・」
―バタン―
「マヤ?」
マヤはそのまま眠りに落ちた。
「ふぅ・・・興味深い話をありがとうシンジ君、マヤも寝ちゃったし、そろそろお暇するわ」
「そうですか、マヤさんは家に泊まって行ってもらいますか?」
「そうしてくれると助かるわ」
「わかりました、じゃぁ気をつけて」
「ありがとう、おやすみなさい、料理美味しかったわ」
「おやすみぃシンちゃん、またねぇ」
「おやすみなさい」
ミサトとリツコが帰って行った。
「どう思う?」
扉を出てエレベータまで歩きながらミサトがリツコに尋ねる。
「興味深い話だったわ」
「そうじゃなくて、私達、見透かされているような気がしない?」
「考えすぎじゃない?単なる中学生よ」
「私にはそうは思えないのよ」
「まあ、お風呂にでも入って、ゆっくり寝なさい、明日も仕事はあるのよ」
「そうね、じゃぁまた明日」
リツコはエレベータに消えて行った。
「心のかたちが人のかたちを作るか・・・彼は何か知っているのかしら」
リツコはエレベータの中で呟いた。
「・・・良かったの?」
「何が?」
「・・・赤木博士がきっと不信に思っているわ」
「そうかもね、でもあの人も被害者だからね」
「・・・助けたいの?」
「気がついてくれれば嬉しいけどね」
「・・・葛城三佐も?」
「そうだね、結局いくら僕が言っても本人達が気付いて変えないとどうしようもないからね」
「・・・そうね」
マヤを布団に運びながらレイとシンジは話していた。
マヤはぐっすり眠っている。
「加持さんはどうしたの?」
アスカが急に尋ねて来た。
「どうしたって?」
「隠しても駄目よっ!この間二人で話ししてたってレイに聞いたんだから!」
「・・・言ってはいけなかった?」
レイが済まなそうにシンジに聞いた。
「いや、そんな事はないよ」
シンジはレイに優しく微笑む。
「加持さんには、情報を与えただけだよ、後、どうするかは加持さんが決める事さ」
「そりゃそうだけどね、で、何を話したの?」
「使徒を全て倒した後、どうなると思うかって聞いただけだよ」
「それが何で情報を渡した事になるのよ?」
「加持さんだって、ある程度情報を持っているんだ、僕がこの時点でその話を切り出すだけでも加持さんには有益な情報なんだよ」
「そんな物なの?」
「まぁ、後は加持さんを信じるだけだよ。僕が何かできるわけじゃないし」
「それもそうね、じゃぁあたしも帰るわ、おやすみぃ」
アスカは手をブラブラと振りながら帰って行った。
ベッドに入ったシンジとレイ。
「・・・心のかたちが人のかたちを作る、だから私の身体は不安定だったのね」
前の世界で、レイは遺伝子治療を受けなければ身体を保てなかった。
その事を言っているのだろう。
「そうだったのかも知れない」
「・・・今は安定しているわ、碇君のおかげ」
そう言ってレイはシンジの腕をギュッと抱き絞めた。
「それは僕も同じだよ」
シンジはレイの髪を空くように頭を撫でた。
「後、少しだ・・・」
シンジが呟いた。
「・・・そうね、碇司令はどうするの?」
「僕は、別に誰かをどうこうしようとは思ってないよ」
「・・・そうね」
「ただ、手を差し伸べれば救えるかも知れない人には、差し伸べてみているだけで、それすらも責任を持っていない」
「・・・碇君の思う通りにすれば良いと思うわ」
「ありがとう綾波、でもアスカは家族になっちゃったね」
「・・・そうね、でも楽しいわ」
「僕はもっと手を差し伸べるべきだったのだろうか?」
「・・・それは傲慢だと碇君は言っていたわ」
「そうだね、僕の出来る事なんてたかが知れているからね」
「・・・碇君は優しいわ」
「綾波も優しいよ」
「・・・な、何を言うのよ」
レイは言葉とは裏腹にシンジを抱く手に力を込めた。
「だって綾波が居なければ、今の僕は居ないからね」
「・・・それは私も同じ」
「これからもずっと一緒だよ」
「・・・えぇ」
「・・・碇君、私とひとつになりましょう、それはとてもとても気持ちの良いことなの」
「わかったよ綾波」
(・・・碇君、暖かい)
(・・・綾波も暖かいよ)
そしてシンジとレイはひとつになって眠りについた。