第拾壱話
静止した闇の中で
（進路相談・・・か・・・）
クラスの担任がホームルームで「近いうちに進路相談の面接があるので、その事を親に伝えておくように」と話していた。
（・・・何か問題があるの？）
（・・・いや、多分今日停電とマトリエルが来るなって思って）
（・・・そうね）
（・・・なんか楽しそうだね？）
（・・・そう？そうかもしれない）
冷や汗をかくシンジだった。
―ネルフエレベータ―――――――――――――――――――――
「お〜い！ちょい、待ってくれぇ！」
男がそう叫び、なおかつ駆けつけてくるのに、エレベーターは無情にもそのドアを閉じようとしていた。
ドアとドアの隙間にわずか手を差し込み、エレベーターのドアの安全機構を利用して、男は、なんとかミサトの乗るエレベーターに間に合うことが出来た。
「こんちこれまた、御機嫌斜めだね」
ドアに手をかけたまま、加持は涼しい顔でそうミサトにいった。
「来た早々、あんたの顔、見たからよ」
「つれないねぇ」
「それより、あんた一体いつまでここにいるつもり？」
顔をムッとしかめて、ほとんど言いがかり的な内容と口調でくってかかる。
「辞令がまた出るまで、だな」
さらりと加持は受け流す。
「そうツンケンするなよ、お互い疲れるだけだろ？」
「ふん・・・勝手でしょ」
ぷい、とそっぽを向く。そして思い出したように、
「いつまでもドア押さえてないで、さっさと乗ってよ」
「へいへい、お許しを得ましたからね」
そういって加持が手を離すなり、ドアが閉まっていく。
―ネルフ第二実験場―――――――――――――――――――――
「・・・いい？それじゃカウントよろしく、マヤ」
「ハイ、５・・・４・・・３・・・２・・・１・・・」
―ブシュウゥゥーッ―
ちょうどゼロのタイミングで、パイロットランプが全て消えていく。
突然暗やみに包まれ、びっくりして目をぱちくりさせるマヤ。
「主電源ストップ。電圧０です」
それでも報告は忘れない。
リツコが起動ボタンに手をかけた瞬間、全ての電源が落ち、マヤを除く全ての職員が責めるような視線でリツコを見た。
「わ、わたしじゃ、ないわよ・・・多分・・・まだ・・・押してないし・・」
押して無くても「多分」と言うリツコ、心当たりがあるのだろうか？
「そうです！私は先輩を信じます！」
マヤはリツコの味方についたが、誰もリツコに向ける視線を変え様とはしなかった。
―発令所――――――――――――――――――――――――――
「だめです。予備回線、つながりません」
冬月にそう報告しながらも、シゲルは落ち着いたもので、この状況で必要になるであろう、使用可能な回線を早くもチェックし始めていた。
「生き残っている回線は全部で１・２％。２５６７番からの旧回線だけです。残った電源をマギに優先的に回しますか？」
「セントラル・ドグマの維持にもだ！」
「そうすると、全館の生命維持に支障が生じますが」
「かまわん！」
受け答えする冬月の横では、ゲンドウの色眼鏡がキラリと、非常灯に照らされて不気味に光っていた。
「やはり、ブレーカーは落ちたと言うよりは落とされたと考えるべきだな」
「原因はどうであれ、こんな時に使徒が現われたら大変だぞ」
「所詮、人間の敵は人間、ということか」
―ゲート――――――――――――――――――――――――――
シンジがゲートを開けるためにセキュリティーカードを通したのだが、センサーは全く反応を示さなかった。
「何やってるのよ、ほら代りなさいよ」
見かねたアスカが自分のカードを何度も通してみるが結果は同じ。
「もう、壊れてるんじゃないのこれ！」
「こっち！」
緊急電話で本部内と連絡を取ろうとしていたアスカへ声を掛けてから、シンジは非常用のハッチのある方へと歩き出し、着くとすぐに脇にあるハンドルを廻して扉を開けて中へ入って行った。
「ちょっと、どうしちゃったのよ！」
「たぶん停電だよ。発令所へ向かわなきゃ」
「なんでそんなに急ぐのよ。停電なら、すぐに復旧するはずでしょ」
「・・・緊急時のマニュアル」
シンジは鞄からそれを取り出しアスカに見せた。
「ここは正、副、予備の３系統の電源があるんだ、停電自体が緊急時だよ」
「ふ、ふん！じゃぁあたしが先に行くわ！あんたはついてらっちゃい！」
「はいはい・・・」
シンジは「こっちだと思うなぁ」と分かれ道ではそれとなく、方向を示しついて行った。
―府中総括総隊司令部――――――――――――――――――――
レーダースクリーンに突如現れた反応に、一瞬気を取られる。
しかし、そちらの方を誰もが顧みはしたものの一向に慌てた様子もなく、担当のオペレーターが落ち着き払った声で計測されたデータを読み上げる。
「対地レーダーに正体不明の反応、あと２分で旧熱海に上陸します」
「おそらく、８番目の奴だ」
「ああ、使徒だろう？」
司令と副司令と思われる人物達の会話は、至ってシンプルなものだった。
「どうします？」
「一応保安シフトにしておけ。それが決まりだからな」
「どうせまた、奴の目的地は第三新東京市だ」
「そうだろうな。ま、俺達がすることは、何もないさ」
「ではあと、何分で到達するか、賭けますか？」
スクリーンに映っている映像では、そのあまりの足の高さに四本の長い足しか見えていない。
「使徒、依然進行中」
「第三新東京市は？」
「沈黙を守っています」
「チッ・・・一体、ネルフの連中は何をやっとるんだ。おい、催促の電話をかけてやれ」
「はっ！」
「・・・駄目です。ネルフ本部とは全ての通信手段がふさがれています。それはおろか、第三新東京市とさえ連絡が取れません」
「何？！」
「どうする？使徒はもうそこまで来ているぞ」
スクリーン上で進行していく使徒の姿は、いつの間にか全身を捉えられるまでカメラとの距離が開いてしまっていた。
ダークグリーンの肌にいくつもの目、それはまるで昆虫の擬態のようである。
「統幕会議を至急。政府にも意見を仰いでおけ、返事は解っているがな・・・無能な政治屋どもが！」
それから急に落ち着きなく、熊のようにうろうろと歩き回っていたかと思うと、オペレーターへ
「とにかく、ネルフの連中と連絡を取らねばならん」
「と、いうと・・・」
「決まっている、直接行くんだよ」
―発令所――――――――――――――――――――――――――
リツコ、マヤらが発令所にたどり着いたのは、実験場を出発してから実に一時間半以上もの時間が過ぎた頃だった。
「タラップなんて前時代的な飾りだと思っていたけど、まさか使うことになるとはね」
「備えあれば憂いなし、ですよ」
「そうね・・・赤木博士、伊吹二尉他数名、只今到着しました」
ようやくたどり着いた発令所では、ロウソクの火をデスクの上に灯し、ハンディスピーカーでやりとりしているアンダーフロアのオペレーター達の姿があった。
碇、冬月の両重鎮は、まったく動揺したところを見せずにいつものポジションで、いつものようにしていた。
「御苦労。さっそくで悪いが、マギによるプログラム操作の痕跡の検知、並びに外部との接触回線の復旧を頼む。後者が最優先だ」
「はい」
冬月の出す命令。
この非常時に当の司令は、司令席に座り顔の前で手を組むポーズを堅持したままだ。
さっそく作業に取りかかるリツコ達だが、途端、発令所内の熱気に閉口する。
「暑い・・・」
「まずいわね。このままじゃ空気もよどむわ」
常夏の気候だけにうちわはどこでも必需品となっている。
近代科学の粋を凝らしたネルフ本部であってもその原始的な涼しさは魅力的であったらしく、リツコとマヤはそれぞれ手近にしまってあったうちわを取り、着衣を僅かはだけさせ、そこから風を送り込んでいた。
その２人の隣で、もうずっと先だってから作業を続けているシゲルなどは、オペレーターの制服を腕まくりして、前もはだけている。
額といわず顔中を汗が流れ落ち、コンソールパネルに雫となって落ちる。
マヤはそれを眉をひそめながら見て、それから上にいる碇、冬月の両名を見る。まったくと言っていいほどにその服装に乱れはない。
「さすがは司令と副司令。この暑さにも動じてませんね」
リツコも上を仰ぎ見る。
そして当の２人は、非常用に常備されているもの、あり合わせを使って、バケツの中に冷却剤と水を入れてその中に足をつっこんでいた。
下から見上げたときに彼等の足下など見えはしない。
「ぬるいな・・・」
「・・・ああ」
冬月とゲンドウがボソリと呟いた。
―ネルフ通路――――――――――――――――――――――――
発令所へ向かいながらシンジとアスカは話をしていた。
「進路相談のプリントが配られたね。アスカはどうするの？」
「あたしは、前に言った通り大学も出てるし、そのままNERVよ」
「そっか、僕はまず高校かな？」
「あたしも学校に行こうかなぁ」
「高校に？」
「あんたバカァ？大学出てるんだから大学院に決まってるでしょ？まぁもう一度別な専攻で大学と言う手もあるけど」
「なるほど・・・」
『・・・・しと・・・・ひつ・・・・・あり』
「なんか声しなかった？」
「え？聞こえなかったわよ」
耳を澄ます二人。
『ジオフロント上に使徒接近中、速やかに迎撃の必要あり！！』
「日向さんだ！」
「使徒！！」
「急がないと！」
行き止まりに突き当たり、シンジはいきなりダクトを壊し始めた。
「ちょ、ちょっとあんた何してるの？！」
「ダクトを壊して、そこから進む」
「あ、あんたって意外に怖い性格してるわね。目的のためには手段を選ばないタイプ、いわゆる独善者ね」
「・・・どうもっ、それで先に行く？後ろからついてくる？」
―発令所――――――――――――――――――――――――――
『き、きゃ〜っ！！』
けたたましい車のブレーキ音と共に、女性の悲鳴が車のスピーカーから司令部に流れる。
『航空自衛隊の情報では、使徒が襲来しているそうです！』
続いてスピーカーから流れてきたのは、日向マコトのものだった。
「エヴァンゲリオン各機の手動による発進準備を急げ！私も、行こう」
「碇司令！」
思わずリツコが声をあげる。だが、それに答えたのは冬月だった。
「君たちは引き続き、マギによる回線の復旧作業に当たってくれ」
「は、はい」
リツコのみではなく、少なからずネルフスタッフは司令自らがそのような事を行うということに驚いていた。
「日向君、君もただちにエヴァンゲリオン各機の手動発進準備に取りかかってくれ」
『はい、了解しました！』
「スピーカーで喋るのはやめてくれたまえ。暑さが増す」
実はクーラーの利いている車内が一番快適なことに気付いていたマコトは、さりげなく降り渋っていたりもした。
―ダクト――――――――――――――――――――――――――
「あんた、ぜぇ〜〜ったい前を見るんじゃないわよ」
だったら後ろからついてくればいいのに何故かアスカは前を進んでいる。
「はいはい・・・」
シンジはさも興味なさそうに返事をした。
「きぃ〜〜〜っあたしのお尻じゃ魅力ないって言うの？！」
「そんな事言ってないじゃないか」
「うるさいっ！！」
「わ、わ蹴るなって〜」
―ガッシャン―
ダクトが壊れ二人が落ちたところはケージだった。
「あら、貴方達」
リツコの横でマヤが嬉しそうな顔をしていた。
「エヴァは？」
アスカは起き上がりながら尋ねた。
「既に準備は出来てるわよ」
「電気が来ていないのにどうやって？」
「人の力で、碇司令のアイデアです」
マヤは嬉しそうに答えた。
ケージの上の方で何十人ものネルフ職員がロープを引っ張っていた。その中にはゲンドウの姿が見えた。
２人ともエヴァに乗り込み準備が完了した。
『各機発進！自力で拘束具除去！』
ゲンドウの命令が下った。
『油圧ロックボルト手動で開け！！』
ネルフ職員が油圧ロックボルトのパイプを切った。
「くうううっ！」
初号機は自力で拘束具を除去した。
『ディーゼルエンジン始動、エヴァ射出準備』
十数機のディーゼルエンジンが始動し、エヴァがゆっくりと射出口に移動した。
『発進！！』
エヴァが上に上がり始めた。
エヴァに乗り込んだ２人は、横穴を這いながら地上に向かう竪穴に向かって動き出した。
「も〜、恰好悪い〜！」
「じゃあ、引き返す？」
「そんな事するわけ無いでしょ！！」
アスカはシンジの言葉を間髪入れずに否定した。
しばらく行くと、ようやく竪穴が見えてくる。
「待って！」
竪穴に出ようとしたアスカをシンジは止めた。
「なによ、シンジ」
「何か落ちてくる」
シンジは初号機の手を竪穴に出した。
ポタッ・・・
「っつぅ！！強酸性！上にいるね、作戦を考えよう」
「じゃぁ先行する人が使徒のＡＴフィールドの中和、後ろの人がパレットガンで攻撃、これでいい？」
「じゃあ僕が先行するよ」
「あたしが先行に決まってるでしょ！」
「危ないよ？」
「この間の借りも返したいから、あたしが行くわ！」
アスカが宣言する。
アスカは竪穴をよじ登り始め、シンジそれに続いた。
ポタポタ・・・
竪穴の上部から液体が多量に落ちてきた。
アスカは弐号機を穴の下を向くようにすると両手両足を目一杯に広げて溶解液が下に落ちないようにし、ＡＴフィールドを中和した。
「シンジ、お願い！」
「準備はいいよ。どいて！」
弐号機が身を躱すと同時にシンジはパレットガンを上に向けて発射し使徒を殲滅した。
―ガシン！―
同時に落ちてくる弐号機を初号機が受け止める。
作戦終了後、エヴァから降りた２人は丘の上の野原に寝転んで星空を見上げていた。
「電気・・・人口の光が無いと星がこんなに綺麗だなんて皮肉なもんだね・・・」
「でも、明かりが無いと人が住んでる感じがしないわ」
その時、停電が復旧したのか街に一斉に明かりが灯りだした。
「ほら、こっちの方が落ち着くもの」
「・・・人は闇を恐れ、火を使い、闇を削って生きてきた・・・か」
「哲学〜！」
―ネルフエレベータ前――――――――――――――――――――
―プシュッー―
電源も復旧しエレベータの前でリツコとマヤが待っているとエレベータが開いた。
そこには、非常口から出ようとしていたミサトとそれを下から支えていた加持が、急にエレベータが動き出したため、崩れて重なっていた。
「不潔ですぅ」
「・・・無様ね」
―司令室――――――――――――――――――――――――――
電源も復旧し、司令室に戻ったゲンドウと冬月。
そこには、驚愕する人物が立っていた。
「「レ、レイ・・・」」
暫くの沈黙の後、ゲンドウは席につきいつものポーズを取り、冬月はその隣に立った。
「生きていたのかね、レイ君」
冬月が切り出した。
「・・・私はリリス」
「「！！」」
二人は再度驚愕した。
ゲンドウもいつものポーズを取っていられず、思わず立ち上がった。
「・・・今までどうしていた？」
ゲンドウがなんとか平静を取りなし尋ねた。
「・・・身体を構成していたわ」
「・・・どういうことだ？」
「・・・魂の稀薄な綾波レイはＬＣＬに溶けてしまった」
「そのためにリリス本体の力で今の身体を構成したと言うのかね？」
「・・・そうよ」
「・・・これからどうするのだ？」
「・・・私はアダムの妻、そして今アダムは・・・」
「・・・そうか」
ゲンドウはニヤリと笑った。
加持から受け取ったアダム（魂の抜け殻だが）は、今ゲンドウの右手に融合している。
ゲンドウはこのレイの言葉に自分に従うと受け取った。
「・・・では、お前は約束の時までドグマにいろ」
「・・・それは嫌」
「・・・何故だ？」
いきなりの反抗にゲンドウは狼狽した。
「・・・私はリリス、綾波レイの記憶を持つ者」
「・・・シンジの元へ行くと言うのか？」
「・・・綾波レイならそうする」
「そうか、確かにレイ君が復活したならシンジ君のところに行くのが自然だな。碇、ここは幽閉するより、今まで通りの行動を取らせた方が怪しまれないぞ」
シンジの元へレイをやるのは嫌だが、アダムは自分と融合していると思っているゲンドウは、もうレイは自分の駒だと確信し、敢えて怪しまれる行動よりは今まで通りに戻した方が良いと納得する。
「・・・む、そうか解った。今まで生死の境に居たため極秘に治療していた事にする」
「・・・解ったわ」
「・・・ダミープラグの開発が頓挫している。早急に実験に協力しろ」
「・・・それは協力できないわ」
「・・・何故だ？」
「・・・私はリリスだから」
「そうか、エヴァとシンクロしないと言うことかね」
「・・・そうよ、動かす事はできるけど」
「動かせるのかね？」
「・・・従えさせる」
「成る程・・・」
「・・・後、ダブルエントリーの準備をしておいて」
「どういう事かね？レイ君」
「・・・専属のエヴァが無いからパイロットとしてのレゾンテートル」
「可能なのかね？」
「・・・初号機なら問題ないわ」
「・・・赤木博士を司令室に」
ゲンドウはリツコを司令室に呼んだ。
暫くして、リツコが司令室の扉の前に立つ。
「赤木です」
―プシュッ―
司令室の扉が開き中に入ったリツコは驚愕した。
「レ、レイ・・・生きていたの・・・」
「・・・赤木博士、レイは瀕死の状態で極秘裏に治療していた事とする」
「・・・わかりました」
「・・・後は今まで通りだ」
「ダミープラグの開発は再開するのでしょうか？」
「・・・それも今まで通りだ、委員会には偽造データのみを送っておけ」
「再開はしないと？」
「・・・そうだ」
「その代りと言っては何だが、初号機のダブルエントリーの準備を進めてくれたまえ」
「ダブルエントリーですか？」
「・・・そうだ」
「レイの検査は？」
「・・・必要ないわ」
レイが答える。
「貴方には聞いてないわ、レイ！」
死んだと思ってた嫉妬の対象である人形が戻って来た苛立ちを交えた口調でリツコが言う。
「・・・私はリリス、貴方の命令は受けないわ」
「！！」
今まで従順だったレイが反抗したことと、自らをリリスと名乗った事にリツコは驚きを隠せなかった。
（覚醒したと言うの？・・・）
「・・・赤木博士、そう言う事だ」
「わ、解りました・・・」
ゲンドウのニヤリに引きつりながらもリツコは応えた。
「・・・以上だ」
「はい、失礼します」
リツコは踵を返し司令室を後にした。
続いてレイも司令室を後にした。
「碇・・・」
「・・・冬月先生、これで元のシナリオに戻りました」
「本当にそうなのか？」
「・・・元のシナリオより確実かもしれません」
「そうだといいがな」
ゲンドウは笑いを堪えられない様子でいつものポーズながら肩を震わせている。
冬月は何故か釈然としないものを感じていた。
―更衣室――――――――――――――――――――――――――
レイはシンジの更衣室で待っていた。
途中すれ違う人達から、驚きの目を向けられたが、特に気にせず更衣室まで来た。
更衣室に入って来たシンジはレイを見つけると抱きついた。
「綾波！！」
「・・・痛いわ碇君」
「・・・ごめん」
そして見つめ合ってる。
（・・・旨く行ったんだね？）
（・・・えぇ）
（・・・一緒に帰れる？）
（・・・問題ないわ）
「シャワー浴びてくるから待ってて」
「・・・解ったわ」
シンジはシャワーの最中にちょっとした悪戯を思いついた。
更衣室から出るとシンジはレイに言った。
「綾波、アスカが居るか見て来て」
「・・・何故？」
「紹介したいからさ」
「・・・解ったわ」
レイは女子更衣室を覗くとシャワーの音がする。
「・・・シャワーを浴びているようだわ」
「じゃぁここで待っていよ」
「・・・いいわ」
そして更衣室から出てきたアスカ。
レイの蒼銀の髪と紅い瞳は資料で見た事がある。
「あ、あ、あんた・・・ま、まさかファースト？」
シンジはニヤニヤしている。
「・・・そうよ」
レイが答えた。
「あ、あんた、し、死んだんじゃ？」
「・・・私はここに居るわ」
「そ、そうね・・・惣流アスカラングレーよ！よろしく」
「・・・綾波レイ」
アスカの差し出した手をレイは握り返し握手が成立した。
そして３人でコンフォート１７へ帰って行った。