第七話

人の造りしもの

 

「また君に借りが出来たな」

『返すつもりもないんでしょ。で、どうです?例のものは。こっちで手、打ちましょうか?』

「いや。君の資料を見る限り、問題はなかろう」

『では、シナリオ通りに』

「気をつけたまえ」

『あなたこそ、気をつけた方がよろしいのでは?最近はまた、うるさ方もいらっしゃるようで』

「フッ・・・問題ない」

『そうですか・・・では』

 

 

 

―司令室――――――――――――――――――――――――――

ヤシマ作戦の翌日、リツコは司令室に呼び出されていた。

「では、初号機のコアに変化は見られないと言うのかね?」

「はい、今までのデータと何ら変わりはありませんでした」

 

「ふぅむレイはどうなったと思うかね」

「全くの憶測で申し訳ありませんが、元々3人目に移行した際に何かが足りず素体から補填したと考えておりました」

 

「その報告は確かに聞いた」

「故に、まだ魂として脆弱で使徒の加粒子砲にて熱せられたLCL内では、個を保ち切れなかったのではないかと・・・」

 

「LCLに溶けたと言うのかね?」

「はい、過剰シンクロの形跡は見受けられませんでしたので、溶けたと考えるのが妥当ですが、普通の人体であればあれ程綺麗に溶けてしまう事はあり得ません」

「確かにそうだな」

 

「魂の行き先とリリスの消滅はどう推測する?」

「リリスにつきましては、先の3人目への移行と同じく足りない物を求めたのかと、魂の行き先につきましてはLCLとなりそのまま漂っているか、初号機へ回帰したかぐらいしか今のところ推測できません」

 

「そうだな・・・」

「申し訳ありません、まず魂を持ったままLCLへ溶けると魂はどうなるのか?また魂の移行が行われていたレイの魂は?となりますと、なにぶん情報が少なすぎて確固たる結論が出せない状況です」

 

「この件については引き続き調査をお願いするよ」

「了解致しました。失礼致します」

リツコは踵を返し司令室を後にした。

 

司令室を出たリツコは歪んだ微笑みを浮かべていた。

(私は嬉しいのかしらね、あの人が求める人形が居なくなって)

 

「碇、どうする?」

「・・・現状あるものでシナリオを進められる様、シナリオを修正する」

「その修正内容をどうするのか聞いているのだが?」

「・・・まずは二号機とアダムだ」

(まだ修正案はないようだな、それより修正できるのか?)

冬月はかなり危機感を覚えていた。

 

 

 

―第壱中学校――――――――――――――――――――――――

何時もレイと一緒に登校するシンジが一人で登校したため委員長がシンジに話しかけた。

「碇君、綾波さんは怪我でもしたの?」

「綾波は・・・居なくなったんだ」

 

「え?」

「綾波の乗ってた零号機は爆発してしまったんだ。エントリープラグにも綾波の姿はなかったんだ」

「そんな・・・」

(・・・委員長悲しませちゃったね)

(・・・そうね)

 

昼休み、屋上で弁当を食べているシンジ。

(・・・今度の休みにでも皆のところに行こうか)

(・・・そうねラミも早く身体が欲しいって)

(・・・ラミは元気だからねぇ)

(・・・えぇ)

 

昼休みを終え教室に戻るとケンスケがシンジの所にやって来た。

「あ、あの・・・碇?」

「何?」

「これ、よかったら貰ってくれないか?」

ケンスケは、B5くらいの二つ折りの写真立てをシンジに渡した。

 

開くと、満面の笑みを浮かべたレイの写真が入っていた。

「いや、迷惑ならいいんだけど・・・」

ケンスケが口籠もっている。

 

「いや、ありがとう頂いておくよ。これのデータってあるのかな?」

「あ、あぁデジカメだからあるよ」

「そのデータもくれないかな?コンピュータの壁紙にしたいんだ」

「あ、あぁお安い御用さ、明日持ってくるよ」

「悪いね、ありがとう」

 

(・・・よく撮れてるね)

(・・・そう?わからないわ)

(・・・ケンスケも良いとこあるよな)

(・・・前は親友と言っていたわ)

(・・・あの英雄願望さえなければねぇ)

(・・・素質さえあれば使いやすいと赤木博士は言っていたわ)

(・・・だろうね)

 

 

 

―発令所――――――――――――――――――――――――――

「シンジ君、元気ないわよね」

ミサトが呟く。

 

「しかたないですよ、あんなに仲良かったんですから」

マヤが涙ぐんでる。

 

「最近はよく双子山に出かけているそうよ」

「きっと面影を見ているんでしょうね」

マヤが更に暗くなる。

 

耐えきれなくなったミサトが話題を強引に変える。

「ところでマヤちゃん、初号機の胸部生体部品はどう?」

「中破ですから。零号機がなくなった分予算は充分あります」

「そう・・・なんか素直に喜べないわね・・・これでドイツから弐号機が届いても大丈夫なのかしら?」

「どうでしょうか。使徒の処理も必要なくて予算は余ってるはずですが」

 

「そうね。おかげで使徒のサンプルも手に入らなくって調査も行き詰まっているわ」

「リツコ、あなたね〜・・・」

 

「それでも予算は集めて来なければ苦しいのが現状よ」

「ホント、お金に関してはセコい所ね。人類の命運をかけているんでしょ?ココ」

「仕方ないわよ。人はエヴァのみで生きるにあらず。生き残った人達が生きてくにはお金がかかるのよ」

「なにしろ腕一本修理するだけで、小さな国が半年喰ってけるものね〜」

「おまけに維持費もタダじゃありませんから」

「あ〜あ、予算予算か・・・てことは、司令はまた会議なの?」

「ええ、今頃はすでに機上の人よ」

「司令が留守だと、ここも静かでいいですね」

 

「ところでアレ、予定通り明日やるそうよ」

リツコがミサトに言う。

 

ミサトはそれに対し、顔を上げて真面目にこう答えた。

「わかったわ」

 

 

―成層圏・SSTO内――――――――――――――――――――

 

耳をつんざく爆音が響く機内の中、一人の男が歩いている。そして窓外側の席にいる、その機内でのたった一人の同乗者に声をかけた。

 

「便乗ついでに失礼。ここ、よろしいですか」

 

反応しないゲンドウに構わず、その隣に座る30も後半あたりの中国人らしき男。

 

「初号機の修正と本部の修正予算、あっさり通りましたね」

「委員会も自分が生き残ることだけを考えている、そのための金はもう惜しむまい」

「使徒はもう現れない、というのが彼等の論拠でしたからね。もう一つ、朗報です。アメリカをのぞく全ての理事国がエヴァ6号機の予算を承認しました。アメリカも時間の問題でしょう。失業者アレルギーですからね、あの国」

「君の国は?」

「8号機から、建造に参加します。第2時整備計画はまだ生きていますから。ただパイロットが見つかっていない、という問題はありますが」

「使徒は再び現れた。我々の道は、彼等を倒すしかあるまい」

「私も、セカンド・インパクトの二の舞はもうごめんですからね」

 

 

 

―双子山――――――――――――――――――――――――――

シンジは零号機のエントリープラグを置いたところに座っている。

(・・・随分見晴らしが良くなったねぇ)

(・・・そうね)

(・・・でもやっぱり冷や冷やもんだったよ)

(・・・私は熱かったわ)

(・・・そう言う意味じゃないんだけど・・・)

 

(・・・監視の人たちも遠巻きに落ち着いたみたいだね)

(・・・そうね)

シンジは林の方に行き、黒い穴を作り消えて行った。

 

 

 

―名もない南の孤島―――――――――――――――――――――

「やぁサキにシエル元気だった?」

「はい、シンジ様もご機嫌麗しゅう」

「快調です」

突然現れたシンジに驚きもせず挨拶をする二人。

 

「プールは設置できてるかな?」

「はい、準備できております」

「じゃぁLCLをそこに貯めよう、その前に服はどこの部屋かな?」

「こちらでございます」

サキエルがシンジを案内し、シャムシェルも後に続く。

 

服の一杯ある部屋でシンジと分離し実体となるレイ。

レイは白いフレアなワンピースを選び着た。

「似合ってるよ綾波」

「・・・ありがとう」

ポッと頬を染めるレイ。

 

「ところで下着はつけないの?」

「・・・後ですぐ脱がなければいけないからいいわ」

赤くなるシンジだが、レイは戻る時にはまたシンジに融合するため、すぐ脱がなければいけないと言っただけだった。

 

地下のプールに移動する4人。

「うーんとディラックの海の出口をドグマのLCLの中にすればいいかな?」

プールの上に黒い穴が展開し、そこからプールにLCLが落ちて行く。

 

「こんなもんか」

シンジは胸から取り出した淡い光をLCLに浸けている。

LCLが人型を取り、序々に人間の容貌と成って行った。

 

「ラミたん参上〜〜〜っ!!」

5〜6歳の容姿にウェーブの掛かった長い銀髪に蒼い目の元気な女の子が誕生した。

 

早速、服を見繕い、髪をツインテールにリボンで留め、幼女趣味の極めつけのような格好になった。

 

リビングで5人がティータイムを楽しみながらこれからを話あってる。

「そうですか零号機を爆破させレイ様を亡き者にしたのですか、かなり予定が早まりましたね」

「サキ、亡き者って・・・」

シンジがバツが悪そうにしている。

 

「・・・髭が善からぬ事を考えだしたみたいだったの」

レイが助け船を出した。

 

「むぅぅラミたんが加粒子砲で殲滅してくれるぅ」

ラミエルは漸く身体を得たので、元気が有り余っているようだ。

 

「それで今後はどうされるおつもりですか?」

「そうだね、もうすぐ二号機が来るはずだから暫くは大人しく行くかな」

「俺たちはどうしてれば良い?」

「うん、ここでのんびり好きに暮らしててくれればいいよ。お願いしたい事が出来ればその都度お願いするから」

「畏まりました」

「御意」

「わかったぞぉ〜」

 

「・・・二号機パイロットはどうするの?」

「あんまり考えてない」

シンジは苦笑した。

「普通に接して、成長すれば良し、成長できなければそれまでだね」

「・・・解ったわ」

「まぁある程度介入するよ、カヲル君が興味があるみたいだからね」

「・・・二号機パイロットは碇君を傷つけるわ」

「あれはお互い子供だったんだよ、今は大丈夫だと思うよ」

「・・・そう良かったわね」

「綾波ぃ・・・」

 

周りの3人は笑いを堪えている。

 

「綾波はどうしたい?」

「・・・変なの」

「変?」

「・・・手を差し伸べてあげたい気もするけど、関わり合いたくない気もするの」

「嫉妬?」

「・・・そうかもしれない、私は醜い?」

「そんな事ないよ、僕だって綾波が他の男と仲良くしてたら嫉妬するよ」

「・・・そう」

レイは少し顔を赤らめ俯いている。

 

「多分、綾波はアスカに幸せになって貰いたいけど、僕が関わると僕が傷つくかも知れないから関わり合いたくない気もするんじゃないかな?」

「・・・そうね、そうだと思う」

「それはね、優しいって言うんだよ」

シンジはレイを抱き寄せ頭を撫でた。

レイは目を細め気持ちよさそうにしている。

 

それを見ている3人も微笑んでいた。

 

「それじゃぁそろそろ戻るね」

「はい、お気をつけて」

「こちらはご心配なく」

「いってらっしゃぁ〜い」

 

レイはサッと服を脱ぐとシンジに抱きつき唇を重ねシンジと融合して行った。

(・・・服を脱ぐのは解るけど口吻も必要なの?)

(・・・これは儀式なの)

 

「それじゃ後を宜しく」

そしてシンジは黒い穴に消えて行った。

 

「レイ様も大胆になられたわ」

「そうだな」

「うぅラミたんには早いですぅ」

 

 

 

―双子山――――――――――――――――――――――――――

林の中からシンジが出てきた。

監視は一人しか居ないようだ。

シンジが林に消えて帰ってこないので他の監視は捜索に出たのだろう。

 

シンジは零号機のエントリープラグを置いたところに座った。

(・・・そろそろかな)

(・・・そうね)

(・・・呼び出しがかかるまでここに居よう、ここからなら行くのは無理だと思うし)

(・・・行きたくないのね?)

(・・・止まるの解ってるし、面倒じゃない?)

(・・・葛城一尉がまた暴れるかも)

(・・・それが一番面倒)

(・・・そうね)

 

端から見ると、亡くした恋人を弔っているように見えるが内実は世間話をしている恋人同士だった。

 

 

 

―旧東京――――――――――――――――――――――――――

放置されたままのインテリジェントビル群。

下は海面。ドス黒く、一部は七色に輝いている。

全く生命を感じない場所。

広大な埋め立て地。所々、傾いたビルが顔を出している。

 

「ここがかつて、花の都と呼ばれていた大都会とはね・・・」

 

ミサトはその上空をヘリで飛びながら、眼下に広がる惨状に思わず呟いた。

 

「眠らない街、とも言われていたみたいですよ」

 

パイロット席から声がする。

 

「眠らない街、か、悪いわね、こんな事まで頼んじゃって」

「いえ、これも仕事ですから」

 

パイロット席の男は笑って答える。

 

「見えたわよ」

 

その声に促されミサトが前を見ると、そこには巨大な箱状の建物が見えた。

またしても声を上げるミサト。

「何もこんなところでやらなくてもいいのに・・・で、その計画、戦自はからんでるの?」

「戦略自衛隊?いいえ、介入は認められず、よ」

「どうりで好きにやってるわけね」

 

 

記念パーティー会場では、先程から延々とJA(ジェットアローン)に関する説明がされていた。

会場真ん中に置かれたネルフの招待席、他の席と違い料理は無く、真ん中にビールが数本置かれているだけだった。

 

「質問を宜しいですか?」

「これは、これは、御高名な赤木リツコ博士、どうぞ」

「先程の説明ですと、内燃機関を内蔵とありますが」

「ええ、本機の大きな特徴です。連続150日間の作戦行動が保証されております」

「しかし、格闘戦を前提とした陸戦兵器にリアクターを内蔵することは、安全性の点から見てもリスクが大きすぎると思われますが?」

「5分も動けない決戦兵器よりは、より役に立つと思いますよ」

 

 

ここで会場から小さな失笑がわく。

毅然とした態度で続けるリツコ。

 

「遠隔操縦では、緊急対処に問題を残します」

「パイロットに負荷をかけ、精神汚染を起こすよりは、より人道的と思います」

 

リツコの傍らで、つまらなそうにミサトはストローを口で遊んでいる。

 

「よしなさいよ、大人げない」

 

だがリツコは耳も貸さない。

 

「人的制御の問題もあります」

「制御不能に陥り、暴走を許す危険極まりない決戦兵器よりは、より安全だと思いますよ。制御できない兵器など、ヒステリーを起こした女性と同じですよ。手に負えません」

 

先程よりもやや大きめな冷笑が会場にわいた。

なおも気にせず続けるリツコ。

 

「その為のパイロットとテクノロジーです」

「まさか、科学と人の心があの化け物を抑えるとでも・・・本気ですか?」

「ええ、もちろんですわ」

 

なかば嘲るような男の問いに、大真面目に答える。

 

「人の心などと言う、曖昧なモノに頼っているから、ネルフは先のような暴走を許すのですよ。その結果、国連は莫大な追加予算を迫られ、某国で二万のが死者を出そうとしているのです。よかったですね、ネルフが超法規にて保護されていて。あなた方はその責任をとらずに済みますから」

「何とおっしゃられようと、ネルフの主力兵器以外、あの敵性体は倒せません」

「ATフィールドですか。それも今では、時間の問題に過ぎません。いつまでもネルフの時代ではありませんよ」

 

今度こそあからさまに、ホールに響く笑い声。

真っ赤になりながらも、その場で耐えているリツコ。

手に持っているパンフが震えている。

ストローを口にくわえたまま、取り澄ましているミサト。

 

控え室に入るとリツコは表情を一変させた。

「大した事ないわね・・・ただ、誉めてもらいたいだけのつまらない男」

リツコはパンフレットに火をつけ、ごみ箱に捨てた。

 

ミサトはロッカーに当たり散らして居た。

「どうせうちの利権にあぶれた奴らの嫌がらせでしょ」

 

「それよりも極秘情報がダダ漏れね。諜報部は何やってるのかしら?」

 

 

集まった人達の眼前に広がる埋め立て地、そこでスライドしていく建物。

中から巨大ロボットの姿が現れてくる。

 

「これより、起動テストを始めます。なんら危険は伴いません。そちらの窓から安心してご覧ください」

 

みんな一斉に双眼鏡等を顔に当てる。

冷めた目で見ているリツコ。

 

時田はそれにはもう構わず、指令を下した。

 

「テスト開始」

 

その声と同時に管制員二人がせわしくキーを叩き始めた。

 

「全動力開放」

「圧力、正常」

「冷却機の循環、異常なし」

「制御棒、全開へ」

「動力、臨界点を突破」

「出力問題なし」

「歩行開始」

「歩行、前進微速。右脚、前へ」

「了解。歩行、前進微速。右脚、前へ」

 

右足を前に出し、二足歩行を始めるJA。

トーチカ内にオオォ、と感嘆の声が上がる。

 

「バランス、正常」

「動力、循環、異常なし」

「了解。引き続き、左脚、前へ。よーそろ」

 

ゆっくりと歩行を続けるJA。

 

「へ〜ぇ、ちゃんと歩いてるじゃん」

「自慢するだけのことは、あるようね」

 

突如ビーッと警告音がなり始める。

 

「なんだ、どうした?」

「変です。リアクターの内圧が上昇していきます」

「一次冷却水の温度も上昇中」

「減速材は!?」

「駄目です!!ポンプ出力低下!」

「そんな馬鹿な!?」

 

前進を続けるJAが真っ直ぐ、トーチカに向かってくる。

 

「ちょっと、まずいんじゃない?」

 

ミサトは腰が引けてきた。

一同すでに、慌てて軌道上から蜘蛛の子を散らすように逃げている。

 

「いかん!リアクター閉鎖。緊急停止!」

「停止信号、発進を確認」

「受信されず!」

「無線回線も不通です。制御不能!」

 

目前に迫るJA。

 

「うわあああっ!!」

 

トーチカを踏みつぶし、なおも前進するJA。

 

「造った人と同じで礼儀知らずなロボットね」

 

ビーッと鳴り始めるさっきよりも派手な警告音!

真っ赤に変わるモニター。

 

「加圧器に異常発生!」

「制御棒、作動しません!」

「このままでは、炉心融解の危険もあります」

 

「そんな馬鹿な・・・JAにはあらゆるミスを想定し、全てに対処すべく、プログラムは組まれているのに。このような事態は有り得ないはずだ」

「だけど今、現に炉心融解の危機が迫っているのよ!」

ミサトは時田に突っかかっていった。

だが時田はただ首を横に振るだけだ。

 

「こうなっては自然に停止するのを待つしか方法は・・・」

「自然停止の確率は?」

「0.0000002%。まさに奇跡です」

 

管制員の一人がフォローする。

ミサトはそれを聞くと、再び時田に詰め寄った。

 

「奇跡を待つより捨て身の努力よっ!停止手段を教えなさい」

「方法は全て試した」

「いいえ、まだ全てを白紙に戻す、最後の手段が残ってるはずよ。そのパスワードを教えなさい」

「全プログラムのデリートは最高機密、私の管轄外だ。口外の権限はない」

「だったら命令をもらいなさい!今すぐっ!」

 

フラフラとしながら部下の一人に差し出されたボロボロの電話を使う時田。

 

「第2東京市の万田さんを頼む。そう内務省長官だ」

 

しかしなかなか話は進んでいないようだ。

 

『ああ、その件は八杉君に任せてある。彼に聞いてくれ』

 

『そういう重要な決定事項は口頭ではねぇ。正式に書簡で回してもらえる?』

 

「くそっ!」

 

「たらい回しか」

 

やがて電話をおく時田。

 

「今から命令書が届く。作業は正式なものだ」

「そんな、間に合わないわ!爆発してからじゃ、何もかも遅いのよ!」

 

そうこうしている間にもモニターには、廃墟の街を進むJAの姿が。

 

「JAは厚木方面に向かい、進行中」

 

新たな警告音。

赤ランプの警告灯がまた一つ増える。

 

「時間がない。これより先は私の独断で行動します。悪しからず!」

 

控え室ではミサトが着替えながら電話をしていた。

 

「あ、日向君。厚木に話、つけといたから。どうだった、連絡取れた?」

『それが、シンジ君をロストしています』

「えっ!!」

 

ミサトのしようとしていることを考えてリツコは、呆れるのを通り越して怒っていた。

「無駄よ!おやめなさい、葛城一尉。第一どうやって止めるつもりなの」

「人間の手で、直接」

 

そう言って開いたロッカーの中には、放射線防護服。

『あっシンジ君、双子山で発見されました』

「うぞっ!!こっちに来るのにどれくらいかかる?」

 

『迎えに行って戻るとなると、30分以上は・・・』

「解ったわ、厚木には連絡入れとくわ」

着替えを止め項垂れるミサト。

 

「どうしたの?」

リツコが尋ねる。

「シンジ君、双子山に居るって・・・間に合わないわ」

 

「そう」

ホッと胸をなで下ろすリツコだった。

 

1秒で爆発と言うところでトーチカ内の八角形のモニターでは、次々とレッドの区画がグリーンに変わっていく。

歓喜の声を上げる一同。

 

JAの暴走は止まった。

 

 

 

―司令室――――――――――――――――――――――――――

「葛城一尉の行動以外シナリオ通りでした。シンジ君が双子山に居たおかげで葛城一尉の行動も未遂に終りました」

「そうか・・・・ならば問題ない」

「はい、失礼致します」