第四話

雨、逃げ出した後

 

シンジは3日程学校を休んだ。

内実はシャムシェルの擬人化と、サキエルが用意した住まいの調整だったが、ミサトはそれを先の戦闘での確執のため引き籠もっていると考えた。

 

下手に騒がれると面倒なので、シンジはまだ動き回ると調子が悪いので大事を取るとリツコに連絡を入れており、レイもシンジを看病すると連絡を入れていた。

 

 

 

―名もない南の孤島―――――――――――――――――――――

シンジとレイはサキエルの用意した南の孤島に来ていた。

勿論、擬人化したシャムシェルも一緒である。

シャムシェルは、赤っぽい金髪の短髪にエメラルドグリーンの目だった。

サキエルの用意した服のなかで、革のズボンにタンクトップ、革ジャンを選択した。

さしずめ女王様?と言う印象をシンジは持った。

鞭の印象が強いのだろう。

 

サキエルの用意した孤島は、結構広く海沿いは砂浜になっているが家が建っているところは、かなり高いところにある。

家は、元々リゾート地のホテルだったらしく、各部屋にバストイレのユニットがある他、大浴場もあり、なかなか快適な環境だった。

 

ロビーで全員くつろいでお茶を飲みながら談話している。

 

「よくこんな良い物件があったねぇ?」

「はい、たまたまこのホテルが売りに出ておりまして、島ごと買い取らせて頂きました。今リフォームの計画を立てておりますが何かご要望はございますか?」

「地下にプールを作って貰おうかな」

「プールで御座いますか?」

サキエルの話方は丁寧すぎるのもあるが、おっとりしていてとても上品に感じる。

 

「うん、LCLを貯蔵しておきたくてね。いちいちドグマに行くのも面倒だし」

「畏まりました、浄化装置等も併せて設置しておきます」

「うん、お願いするよ、後コンピュータが欲しいな」

「コンピュータですか?」

「うん適当な大型のサーバ機と後はノート端末でいいかな?MAGIに対抗したいけど一から作るのは大変だからね」

「畏まりました」

「どこか大きめの部屋をコンピュータルームにすればいいよ、元があれば後はウルが適当に遊ぶだろうし」

「そうですね、早く皆様とご一緒に暮らしたいですわ」

「もうすぐだよ」

 

「俺好みの服が少ない」

シャムシェルは少しご機嫌が悪いようだ。

 

「後は好きなのを自分で買いにいけばいいよ、カードはサキが持ってるから」

「御意」

シャムシェルのご機嫌は簡単に治った。

 

「後はここで皆のんびり暮らせばいいし、お金の心配はいらないから自由に楽しめばいいよ」

「・・・碇君?」

「どうしたの?綾波」

「・・・お金はどうするの?」

「今は、ゲンドウから掠め取ったお金があるし、ほら、例のものが発動される前に日本の株を大量に空売りしておけば・・・」

シンジがゲンドウ張りのニヤリを炸裂させた。

「・・・解ったわ、でもそのニヤリは止めて欲しいわ」

「ふふ、悪かったよ」

シンジがニッコリと微笑んだ。

「・・・いい」

ポッとレイが赤くなった。

 

「多分、皆が集まる頃には、退屈で何かしたくなると思うんだ。僕も考えておくけどサキ達もやりたいこととか探しておいてね」

「畏まりました」

「御意」

「・・・わかったわ」

 

穏やかな時間が流れていく。

 

シンジが回想する。

 

赤い海・・・

赤い空・・・

LCLの海に崩れ落ちている巨大な綾波の顔・・・

「気持ち悪い」の一言を残し消えたアスカの残したプラグスーツ・・・

 

何もなかった・・・

一人だと思ってた・・・

補完が発動した時、全ての人の意識が流れ込んで来た・・・

人は他の人を求め補完されていった・・・

知人の意識を探った・・・

皆、誰かと幸せそうに話していた・・・

 

しかしシンジは誰にも求められていなかった・・・

 

シンジを求めてくれたのは、シンジを見てくれたのは・・・

最後の時に父を捨て自分の所に来てくれたレイだけだったと知った・・・

 

「・・・綾波ごめんね、そしてありがとう」

その時、シンジの前にLCLの海の方から淡い蒼い光が近づいて来た。

シンジは直感的にそれがレイだと解った。

 

「・・・綾波・・・綾波・・・」

その光はシンジの前で微かに点滅している。

(・・・碇君、私とひとつになりましょ)

シンジはそう聞こえた気がした。

実際聞こえていたのだが、音として認識できなかったので気がしたと自分で思ったのだ。

 

「勿論だよ、綾波」

シンジは泪を流しながら微笑みそっとその蒼い光を抱きしめた。

3人目を避けていた自分、巨大になったレイに恐れて錯乱してしまった自分それらが情けなく、それでも自分のところに来てくれたレイが愛しくなんの躊躇もなかった。

 

(・・・碇君)

「綾波・・・綾波・・・よかった・・・よかった」

周りから見ると自分を抱きしめ泣いて独り言を言っている危ない奴だが、シンジは自分の中にしっかりとレイを感じていた。

 

(・・・暖かい)

「綾波・・・」

(・・・私にはもう力が残っていないの、碇君とひとつになれてよかった)

「僕も嬉しいよ、綾波」

 

それから長い時間、二人は色々と話し合った。

レイが解らないと言った事もLCLの海に入りその事に集中すると知識が流れ込んで来た。

どれくらいの時間が過ぎたのか皆目見当がつかなかった。

ほんの数週間だったのかも知れない、数百年だったのかも知れない。

しかしシンジの容姿は年もとらず、何も食べなくても問題なかった。

そのうちシンジの周りに15の淡い光が集まって来た。

そう、かねての使徒達である。

使徒達はLCLに溶けず、精神体として存在していた。

使徒達がシンジの元に来た理由はひとつ、アダムに回帰してきたのだ。

即ちシンジはサードインパクトでアダムと成ったのだった。

ではリリンは?

 

それは皆が溶けたLCLであった。

人が目論んだサードインパクトによって階梯を上る事は失敗したのだ。

全ての生命が溶けたLCLは一つの生命と成ったが、その精神は一つには成り得なかった。

ある意味ゲンドウの目論見は成功したのかも知れない。

全てが始まりに戻る・・・つまり原初の海に戻ったと言う事だろう。

しかし、この命のない世界からは何も生まれない、何も始まらないのである。

 

シンジは幸せだった。

求めて止まなかった家族がここにある。

15もの意識が自分を無償に求めてくれる、優しくしてくれる。

レイは求める以上に、無償に愛してくれるし慈しんでくれる。

 

身体はLCLの海から作れた。

そこに至るまでかなり長い時間が掛かったのだが、使徒達全員に身体を与える事に成功した。

シンジ達17の使徒は長い時間を一緒に過ごした。

 

レイはLCLからどんな生命体も作れた。

そのため料理を作ったりする事もできた。

LCLの海からいきなり食材を取り出す姿はかなりシュールであったが・・・

 

死んだ人やLCLに溶けた人を作る事も出来ると聞いたがそれは行わなかった。

それは同じ形をしていてもその人本人ではないから。

自分達に都合の良いその人の形をした存在でしかないから。

”貴方が望めばどんな世界にもなるわ”と言うのはこう言う事だったのだろうと思った。

 

ただ、時々シンジはふと寂しい顔をする事があった。

レイに膝枕をされ、髪を撫でられながらレイに尋ねられた。

「・・・どうしたの?」

レイの言葉は相変わらず少ない。

 

「いや、今がすごく幸せで、無い物強請りの我が儘だとは解っているんだけどね・・・」

「・・・何?」

「・・・青い空と白い雲、青い海とか緑の山々を時々思い出すんだ」

「・・・そう」

レイは少し俯いた。

 

「シンジ様?」

使徒達はシンジの事をアダムと呼んでいたが、シンジが頑なに呼び方を変えさせていた。

「なに?リエ」

同様に使徒達にも名前を付けようとしたが、使徒達が難色を示したため愛称と言う事で落ち着いた。

リエとはレリエルである。

 

因みに

アダム=シンジ

リリス=綾波(レイ)

サキエル=サキ

シャムシェル=シエル

ラミエル=ラミ

ガギエル=エル

イスラフェル=ラフェール

サンダルフォン=サン

マトリエル=リエル

サハクィエル=クィエル

イロウル=ウル

レリエル=リエ

バルディエル=バル

ゼルエル=ゼル

アラエル=ラエル

アルミサエル=ミサ

タブリス=カヲル

となっている。

 

タブリスとバルディエル以外、女性体である。

バルディエルは身体を作る時、トウジのイメージが結構強かったらしい。

同様にアルミサエルはレイにかなり似ているし、アラエルはアスカに似ている。

 

「かなり力を必要としますが虚数空間を使えば過去に戻れますよ」

「えっ?」

「ただ、未来でなく過去の場合、身体の実態や魂がそこに存在できなくなるとは思いますが」

「それって平行世界じゃなくて?」

「多分、介入した時点から平行世界が始まるはずです」

「成る程、過去に戻って老人達と髭の目論見を阻止すれば、青い空と白い雲の元この家族で暮らす事ができると言うわけだね?」

カヲルが結論を述べた。

 

「そっかぁちょっと調べて見て安全に行ける方法があるなら行ってみようか?」

「行こう行こう♪」

ラミエルは軽い・・・

「それも楽しそうですわね」

サキエルは上品だ。

「青い海で泳げるのね♪」

ガギエルは目をランランと輝かせている。

反対する者は居ないようだ。

 

色々と調べた結果、前例と呼べる物がないため確実な情報はなかった。

そこで出来るだけ安全にと検討した結果、精神体だけをATフィールドで包み魂の力を全て使って望みの時間へ行くのが一番安全ではないかと言う結果になった。

 

つまり行った先の同一の魂に精神を上書きすると言う方法である。

そして、各々が途中で分散しないように一時シンジに全て融合し、シンジ一人として時を遡り、それぞれの魂に精神を融合させると言う事で落ち着いた。

 

それから各々準備を開始した。

その時代の一般常識や、有効な知識等をLCLの海から吸収したり、遡った後の計画を立てたりであった。

結局、あまり史実と違った行動を取ると予測が付かなくなるため、大きくは変えない事となった。

しかし、レイへの対応はシンジが看過できるものではないため、そこだけはシンジは譲らなかった。

 

そして準備が整った。

まずレイがアンチATフィールドでシンジと重なる。

そして、一人ずつ次々とシンジに重なって行った。

 

今シンジの中では、17の精神と17のS2機関が渦巻いている。

それぞれはそれぞれの物として機能しているので特に暴走はない。

大体、使徒がアダムと接触するとサードインパクトが起こると言うのも真っ赤な出任せだったと言う事だ。

セカンドインパクト級の爆発を起こす事は確かにできるが・・・

 

シンジは一つになった精神をATフィールドで包む。

ディラックの海を形成し虚数空間へ行き、全ての力を使い、あの時を強く意識する。

真っ暗な虚数空間に小さな光が見える。

そちらの方に意識を集中すると、第三新東京市に向かう車両の中のシンジが見えた。

全ての力を使いそちらに集中し、シンジの中に入る。

その世界のシンジは寝ていた。

そこに時を超えたシンジが入って来たため夢の中の出来事のように無理なく入る事ができた。

「君は誰?」

「僕は碇シンジ」

「それは僕だよ」

「僕も碇シンジだよ」

「どういう事?」

「僕は君の一つの可能性」

「可能性?」

「そう、僕にこれからを委ねないかい?」

「委ねる?」

「僕と一つになるってことさ」

「僕はどうなるの?」

「どうもならないよ、僕の知識と精神が君のものになるだけだよ」

「僕が僕でなくなるの?」

「僕は君だからそんな事はないよ」

「君が何を言ってるか解らないけど、僕はもうどうでもいいからいいよ」

「そう?では一つになろう」

「・・・・・こ、これは」

そうして碇シンジは一つになり第三新東京市へと足を踏み入れた。

 

 

 

「・・・くん」

「・・・碇君?」

 

「あっ綾波、ごめん」

「・・・どうしたの?」

「いや、昔の事を思い出してたのさ」

「・・・昔の事?」

「そう、皆で時を遡ろうとしてた頃さ」

「・・・そう、あの頃は楽しかったわ」

「今は?」

「・・・今も楽しい」

薄らと目を細め、微笑んでるレイ。

「また皆で暮らせるのも、もう少しだよ」

「・・・えぇ楽しみ」

 

「・・・そろそろ3日目だね・・・戻ろうか」

「・・・そうね」

「じゃぁ、後の事はお願いするね、サキにシエル」

「畏まりました」

「御意」

 

 

 

―コンフォート17―――――――――――――――――――――

家に居る時、シンジとレイは殆ど喋らない。

監視カメラや監視マイクをそれ程排除していないからだ。

 

別に声に出さなくても二人は意思疎通できるので何の問題もない。

ATフィールドの応用で自分を形成しているATフィールドを若干弱めるのだ。

そうすると相手の表層意識が流れ込んで来る。

このことにより、考えることで会話が成立するのだ。

逆にATフィールドに乗せて強い意志を遠くの相手に伝える事もできる。

アラエルの精神攻撃の簡易版みたいなものだ。

 

そして、シンジはレイの膝枕か、壁に凭れているシンジの足の間にレイが入りレイがシンジに凭れている体勢を取っている事が多い。

ベッドや椅子に腰掛けて居るときは、シンジの太股の上にレイが座りシンジに抱きついている事も多い。

 

とにかく、いつもベッタリとくっついて居ると言う事だ。

 

寝る時は、シンジのベッドに裸のレイが潜り込む。

シンジはトランクス一枚だ。

そのためシンジの部屋だけは、何時も監視カメラや監視マイクは壊れた状態になっている。

シンジの部屋だけは何度仕掛けても壊れるので予算も馬鹿にならず、諦めた感がある。

 

その他の部屋は特に監視カメラや監視マイクを壊していないのだが、レイが裸でうろうろしようとするためシンジは苦肉の策としてバスローブをレイに与えた。

タオル地で、ガウンのような感じのやつだ。

 

これはレイも気に入った様で、朝やお風呂に入った後は殆どバスローブのままだった。

 

「・・・食材がないなぁ、買いに行こうか?」

「・・・わかったわ」

シンジとレイは着替えて買い物に出かけた。

 

近所の商店では二人は有名になっており、レイはよく

「若奥さん、今日も可愛いねぇ」

とか声を掛けられる。

 

他人との付き合いを行わない二人だが、これにはレイもまんざらでもないらしく、何時もニッコリと微笑みを返している。

その天使の微笑みに皆サービスしてくれるのもご愛敬であった。

 

なので、レイは二人で買い物に出かけるのも結構気に入っていた。

 

 

 

―第三新東京市立第壱中学校―――――――――――――――――

「あれから三日かぁ」

未だ腫れが引かない顔でトウジが呟く。

「俺らがこってり絞られてからか?」

それにケンスケが応える。

「転校生が来んようになってからや」

 

「ほら」

ケンスケはメモを渡した。

「気になるなら電話でもしてこいよ、転校生の電話番号」

 

学校の公衆電話の前で受話器を持って立ちつくすトウジ。

 

「電話繋がったか?」

「いや、やっぱ直接会って謝らんと男らしゅうない」

 

「なあ、トウジ、今日の放課後にでも謝りに行かないか?」

「家、知っとんのか?」

「ああ、任せとけよ」

「ケンスケ、いっつもお前どこから情報仕入れてくるんや?」

「企業秘密さ」

何故かケンスケの眼鏡が光ったような気がした。

 

 

 

―コンフォート17―――――――――――――――――――――

碇とネームプレートにかかれた部屋の前にトウジとケンスケがいる。

トウジは長い躊躇の後、インターホンを押した。

暫くして隣のドアが開いた。

 

「あら?貴方達は・・・シェルターを抜け出した子達ね」

ミサトが二人に声を掛けた。

 

「あ・・・あの・・」

「碇君と同じクラスの相田と鈴原と申します」

「その節はとんだご迷惑をお掛けしました」

 

トウジがビシッとして頭を下げる。ケンスケもそれに続く。

 

「実はあれから碇君がずっと休んでいるので、気になってこっちに見に来たんですけど・・・」

 

「シンジ君は今ね、ネルフの訓練施設にいるの」

と言ってしまった。

 

「そうですか・・・」

「あの、これ、机にたまってたプリント。碇君と綾波さんの分です」

とミサトにプリントを手渡すケンスケ。

「レイも休んでるの?」

「ええ、何時も碇君と一緒に居るので碇君に渡せば届くだろうって委員長が・・・」

 

「そう、わざわざごめんね、ありがと」

「ほな僕達、失礼します。碇君によろしゅう伝えてください」

 

にこにこしながら、去っていく二人に手を振るミサト。

ドアを閉めてから考え込む。

「レイまで休んでるって・・・駆け落ち?」

 

一方、マンションから出てくるトウジとケンスケ。

二人、傘を差す。

 

「今のお姉さん、碇とどーゆー関係なんだろ」

ぽつりとケンスケがいう。

 

「ごっつう、べっぴんやったな」

ふぬけた顔をしてトウジがいう。

 

「ま、思わぬ収穫って奴だ、碇の顔は見れなかったけど、よしとするか」

 

 

 

―リツコ執務室―――――――――――――――――――――――

「えっ?シンジ君とレイが駆け落ち?」

リツコは素っ頓狂な声を上げた。

 

「そうなのよ昨日、クラスメートがプリントを持って来たんだけど3日も学校を休んでるんだって。それもレイも一緒に」

「あぁ、その事だったら連絡を受けてるわよ」

「えっ?」

「シンジ君が調子悪いから大事を取るって、レイはその看病ね」

「でも昨日クラスメートが来た時、居なかったわよ」

「それって何時頃?」

「えーーっと4時ぐらいだったかしら?」

「ちょっと待ってね・・・昨日の4時頃はっと・・・仲良く二人でお買い物だったようよ」

ふぅっとコーヒーを飲むリツコ。

 

「何それ?」

「MAGIの第三新東京市の監視モニターよ、二人はチルドレンだから検索が簡単なの」

「なぁんだ、思い過ごしだったのね」

「思い過ごしって?」

「いや、こないだの戦闘後の件でシンジ君引き籠もっちゃったかなぁなんて・・・あはは」

 

「どうかしらね、貴方に対する不信感が増加したのは間違いないでしょうけど」

「リツコォ〜〜〜」

「あんまり名誉挽回しようと突っ走らないでね」

「どういう意味よぉ」

「貴方が突っ走ると話が変な方向に飛んで行っちゃうからよ」

 

「リツコ!今度うちで御飯食べない?」

「貴方が作るの?」

「へっへーーん、シンジ君の家に乱入するのよん」

「そんなの一人でやって頂戴。私は忙しいのよ」

「だってぇ〜一人だと突っ走っちゃうわよん」

「はぁ〜ぁ解ったわ、でも今回限りよ」

「恩にきるわ♪」

 

 

 

―司令室――――――――――――――――――――――――――

「碇、レイは随分シンジ君に懐いているようだな」

「・・・問題ない」

「孫の顔は早く見られそうだな」

「・・・レイがシンジに縋って居るなら機会を見てシンジを殺す」

僅かにゲンドウの顔が歪んだ様に見えたが横に居る冬月には解らなかった。

 

「碇・・・」

(まさかシンジ君に嫉妬しているのか?)

 

「・・・その時に優しくされればレイは私に縋るようになる」

「それで良いのか?」

(あくまで目的の為に手段を選ばずか・・・)

 

「・・・その時までシンジには好きにさせておきますよ」

「シンジ君を殺すとレイが反感を持たないか?」

「・・・事故に見せかければ済む事です」

「そう旨く行くかな?」

「・・・労せずとも使徒との戦いで死んでくれる可能性も高いですよ」

「確かにな」

 

「・・・二号機パイロットが来れば三角関係になるかも知れません」

「随分シンジ君がもてる事に確信があるのだな?」

「・・・あれはユイの子供です」

「そのユイ君の息子をも駒にするのか」

「・・・その時シンジにレイの秘密を話してもいい」

「それはシンジ君には耐えられないだろうな」

 

「・・・人の心はとっくに捨てましたよ。冬月先生」

ゲンドウはニヤリと笑った。

 

―ブー―

扉の外に人が来た事を知らせる音が鳴る。

「赤木です。シンジ君の検査結果の報告に参りました」

「・・・入れ」

 

―プシュッー―

自動扉が開き、赤木博士が中に入って来る。

「シンジ君ですが、身体的にはシンジ君本人であることを示しています。クローンの可能性もありません」

「・・・そうか」

 

「諜報部の報告では、過去に他組織と接触した可能性は存在せず、第三新東京市に来てからも接触した兆候は見いだせておりません」

「・・・あの性格は?」

 

「筆記試験にて確認したところ、調査結果とほぼ同様の内気で内罰的な傾向が見られます」

「その割にはあの態度は毅然としているな」

 

「ここからは推測となりますが、まず、過度のストレスによる緊張状態の中、認めてはおらずとも肉親に対する安心感から強きな発言が出たものと推測されます」

「成る程、テンションが高かったと言う事か」

 

「NERVに対しと言うより、葛城一尉、私、碇司令、冬月副司令に対しては、かなり嫌悪を示しているようです。特に葛城一尉の戦闘時については子供の喧嘩のようです」

「嫌悪から来る反抗心も加わっていると言う事か」

 

「MAGIにて再シミュレーションを行ったところ、想定できる誤差範囲内でした」

「・・・よかろう、サードの検査並びに調査はこれで打ち切りとする」

 

「ただ、シンジ君の部屋だけ監視カメラと監視マイクが壊れると言う現象が発生しております」

「・・・問題ない、子供のささやかな反抗だ。放っておけ」

 

「レイがシンジ君の家に居座っていますがどう致しましょうか?」

「・・・問題ない、放っておけ」

冬月は先程の話を思い出し、顔を少し歪めた。

 

「以上で報告を終ります」

「ご苦労だったね、下がっていいよ」

冬月が労いの言葉を投げる。

 

「では、失礼します」

踵を返しリツコは司令室を後にした。

(あれ程拘ってたレイなのに・・・何か企んでいるわね)

 

 

 

―第三新東京市立第壱中学校―――――――――――――――――

シンジとレイが教室に入るといきなりトウジが近寄って来た。

レイは剣呑な表情でトウジを見ている。

 

「碇ィ、済まん!この前は知らんだとはいえ、殴りかかってもうて、せやからわしも殴ってくれ!」

トウジはいきなり土下座して叫んだ。

「頼むわぁ碇、そうせなわしの気が済まんのや」

「こういう恥ずかしいヤツなんだよ。ま、一発殴ってやったら」

ケンスケが他人事の様に言う。

 

「・・・断るよ」

シンジが冷めた目で言った。

「なんでや?」

「君は八つ当たりで僕に殴り掛かった。どんな理由か知らないがシェルターを抜け出し僕の戦闘の邪魔をした。そして今度は自分の気が済まないから殴れと言う。勝手すぎない?」

「・・・ほな、わしはどないしたらええねん?」

 

「出来れば金輪際、僕たちに関わらないでくれるかな?そこのメガネ君も」

「どういうこっちゃ?」

「自己満足のために僕たちを利用しないでくれって事だよ」

 

「なんで俺まで?」

「君の撮って売ってる僕たちの写真、迷惑なんだよ。君、エヴァのチルドレンって事で僕たちの写真売っただろ?」

「い、いいじゃないか、皆英雄の顔を知りたいんだよ。これは報道の自由だ!」

 

「そのために僕たちが危険な目に遭うようになったって言うのに?」

「どういう事だよ」

「一般人にも危険な奴は居るってことさ、おかげでNERVの護衛は大忙しだし、簡単に第三新東京市を離れる事もできなくなったんだよ」

「そんな・・・だって・・・」

 

「そう言う訳だから・・・」

 

(・・・いいの?)

(・・・いいんだ僕たちに関わると彼らが傷つく、特にトウジは・・・)

(・・・そうね)

(・・・ごめん綾波)

(・・・何が?)

(・・・僕のせいで学校で友達を作れなくって)

(・・・碇君が居れば私はいい)

(・・・ありがとう)